本編開始前、従騎士時代のお話です。背景にマルシダ、マリエリ。
補足:本作はAI(Gemini)を使用しています。ネタ・プロットは自分、AIの考えた文の使用率は全体の13%です。
※pixivとAO3にも投稿済み。
「訓練、訓練、ってタリいなぁ~」
「真面目にやれ。」
「そうですよ、ルークさん。」
「もうっ、ルーク!ちゃんとやってよね!騎士になれるかどうかがかかってるのよ!」
隙あらば手を抜こうとするルークをロディやライアン、クリスといった第七小隊のメンバーが次々と窘める。今はアリティア騎士登用試験真っ只中の自主練時間。小隊ごとに分かれて隊長指導の下、皆が鍛錬に励んでいたのだが……
「でもよー、モチベが上がる何か…そうだ!何かご褒美とかが欲しいよな。」
「ご褒美ですって?」
ルークのボヤキに隊長のクリスが腰に両手を当てて眉を吊り上げた。
「たとえば、スパーリングで勝った相手に食事の時おかずを一つもらえるとか、そうじ当番を代わってもらえるとか?」
「………」
――せこっ!
クリスが心の中でツッコむ。ただアリティアのために、と幼い頃から祖父の厳しい訓練に耐えてきたクリスはルークの言葉にげんなりした。が、その時。彼女の頭に一つの考えが浮かび、何かを企むように目を僅かに細め、にっこりと笑った。
「いいわよルーク。それならスパーリング・トーナメントで優勝したらご褒美をあげるわ。」
「えっ!?本当かよ!?優勝したらおかず?当番?それとも…」
息せき切って尋ねるルークに、クリスはふふんと腕を組んだ。
「あなたが見事優勝したら…私の太腿であなたの顔を挟んであ・げ・る♡」
「お…女クリスの、太腿?」
ルークの顔が赤くなる。そして次の瞬間、笑顔でガッツポーズを取った。
「よ、よォーし!カタリナのあのムニムニ太腿に挟まれたい、っていつも思っていたが…女クリスの引き締まった中に柔らかさがある太腿に“ぎゅっ”てされるのもいいよな!やってやろうじゃねえか!」
周囲の寒い視線が突き刺さる中(カタリナに至っては極寒)、俄然やる気になるルーク。そして。第七小隊メンバーの宣伝により、他の隊の従騎士たちも加わって翌日従騎士たちのスパーリング・トーナメントが開催されることになった。
翌日。自主訓練時間に予定通りスパーリング・トーナメントが開催された。そのとき。
「あっ、マルス様!敬礼!」
「カタリナ、何かいつにも増して皆がスパーリングに真剣な気がするんだけど…」
訓練場を偶然通りかかったマルスが従騎士たちの異様な熱気に違和感を感じ、その場にいたカタリナに尋ねた。
「はい!今、スパーリング・トーナメントを行っております!優勝者はクリスの太腿に顔を挟んでもらえる、というので皆、頑張ってます!皆をやる気にさせるなんてさすがクリスです!」
カタリナがハキハキと説明する。だが。
「な…何だって?ダメだ!」
マルスの断固とした声にカタリナは目を丸くし、訓練場にいたクリスも主君の声に気づき、手を止めてやってきた。
「マルス様…」
「クリス。君は従騎士である前に一人の女性だ。優勝者の顔を腿で挟むとか…そんなはしたないマネは僕が許さない。」
「で、ですが、もうトーナメントは始まっています。今更なかったことには…」
ここで『やっぱやーめた。』では、クリスが嘘を吐いたことになってしまう。マルスは眉間にしわを寄せて大きな溜息を吐いた。
「…わかった。それなら、僕もトーナメントに出よう。僕が優勝して“褒賞”は拒否すればいいのだから。」
「……え?あの、マルス様を守るために皆が必死に騎士になろうとしているのに、なぜそのマルス様が従騎士たちとスパーリングを…」
本末転倒である。そこに慌ててカタリナが。
「マルス様!それならせめてトーナメントを勝ち残った者に貴方と戦える栄誉を与える形にしてご参加下さい!貴方に勝たなければ“褒賞”はない、ということで!」
マルスは彼女の言葉に『それもそうか。』と納得して頷いた。
そしてついにトーナメントが終わった。カタリナから報告を受けて執務室から訓練場に向かったマルスが模擬戦用の木剣を持ち、進み出た先には……
「クリス?君が優勝者なの?」
「はい!」
模擬戦用の木剣を胸の前に直立させて礼のポーズを取るクリスに、マルスが当惑して尋ねる。
「……その。君は君自身(の太腿)が褒賞なのにトーナメントにも参加していたの?」
「もちろんです、マルス様。私も従騎士の一人ですから。私は誰にも負ける気はなかったのであのような提案をしましたが、結果として貴方と戦うことができるなんて光栄です!」
「……」
――それでは一体何のために僕はこの場で(模擬戦用の木)剣を握っているのか。
マルスが一瞬呆けるが。
「それでは暗黒戦争を勝利に導いた英雄王マルス様とスパーリング・トーナメント優勝者クリスの模擬戦闘を開始します!」
カタリナが高らかに宣言し、マルスの戸惑いを余所に容赦なく模擬戦が始まった。
模擬戦が始まると、クリスは迷いなく一気に間合いを詰め、攻撃を仕掛けた
「ハッ!」
木剣とはいえ、クリスの振り下ろす一撃には、彼女が積み重ねてきた弛まぬ鍛錬の重みが宿っていた。マルスは辛うじてそれを受け止める。カン、と乾いた音が訓練場に響き渡った。
「くっ……!」
剣を交差させたまま膠着状態になるが、膂力で勝るマルスの剣を押し切れないと悟り、クリスは一旦後方に跳び退った。マルスも相手からの攻勢を待ってなどいない。今度は自ら斬りかかった。流れるような剣筋は、かつて暗黒竜を打ち破った英雄王の片鱗を垣間見せる。クリスはそれを紙一重で避け、一瞬の隙を狙い、マルスの肩を狙って素早く突きを繰り出す。だがマルスは俊敏に剣を跳ね上げ、クリスの突きを打ち払った。そしてそのまま激しい打ち合いへと突入し、周囲で見守る従騎士たちは誰もが息を呑んでマルスとクリスの本気の攻防に見入った。
攻防は数分続いただろうか。クリスの呼吸がわずかに乱れた瞬間を、マルスは見逃さなかった。
マルスは剣を大きく振りかぶり、クリスが反射的に頭上で剣を横に構えた瞬間、彼は素早くクリスの足元を払い、彼女を転倒させた。
「参った!」
体勢を崩したクリスの喉元にマルスの剣先が突きつけられ、彼女は潔く負けを認めた。マルスはホッとして剣を下ろし、笑顔でクリスに手を差し伸べた。クリスはその手を取って立ち上がる。
「勝者、マルス様!これにて、スパーリング・トーナメントは終了となります!」
カタリナの言葉に、周囲から大きな歓声と拍手が起こった。
立ち上がったクリスは改めてマルスに向き直り、深く一礼した。
「マルス様のおかげ(実際はクリスの太腿)で皆の熱意も高まり、私自身も良い経験となりました。ありがとうございます!」
「いや、僕の方こそ。これからもこの調子で頑張って。」
「はい!」
クリスは元気よく答え、マルスも笑みを返すと公務に戻って行った。
結局。誰も挟まれることなく終わったクリスの太腿だったが、数日後のある日、意外な人物にその機会が訪れようとしていた。
「もうちょっと上。」
「この辺?」
「うん。そのままもう少し先。」
「うーん…」
クリスが見えないながらもカタリナのナビに従って手を伸ばす。大木に抱き付くようにしがみ付いているクリスの手の先には、カタリナがいつも肩に緩く巻いているスカーフがあった。
「ごめんなさい、クリス。無理はしないで。」
城内の大木の下でハラハラしながら見ているカタリナは、強風に飛ばされて枝に引っかかってしまった自身のスカーフを取るために木に登ってくれたクリスに済まなそうに言った。
「あっ…これね?」
「カタリナ?どうしたんだい、こんなところで?」
クリスの指先にスカーフが触れたとき、ちょうど木の下をマルスとマリクが通りかかった。声を掛けられてカタリナが驚いて振り返る。
「あっ!マルス様…とマリク様。今、クリスが木の枝に引っかかったスカーフを……」
「きゃあーーっ!?」
「「「!?」」」
ちょうどその時、スカーフを手にしたクリスがバランスを崩して空中に投げ出された。だがさすがクリス。落ちる途中で張り出していた木の枝を掴み、ぐるん、と半回転し、地上に降りようとした――が、前から肩車するような体勢でマルスに突っ込んでしまい。
ぎゅっ
両手で木の枝を掴んだまま、クリスは思わずマルスの顔を腿で挟んだ。
「「「「……」」」」
4人の時間が止まる。最初に我に返ったのはクリスだった。慌てて懸垂して脚を外すとシュタッと地に降り立つ。
「マ、マママルス様!お怪我はございませんか?」
「あ、ああ。大丈夫、だよ。…ええと。もう、行かなきゃ。会議が、あるんだ…」
赤い、放心したような顔で言うと、マルスはマリクとともに行ってしまった。
彼らを見送った後、ふと思い出してクリスは近くに落ちていたスカーフを拾い上げると笑顔でカタリナに手渡した。
「……ねえ、マリク。」
会議を終えて。他の皆が去ったがらんとした会議室で窓の外を見ながら、マルスが話しかけた。
「はい。」
「女性の太腿に挟まれるのって、すごく気持ちいいね。皆がやる気になるのがよくわかったよ。」
「マルス様。」
――シーダ王女は一度もマルス様の顔を太腿で挟んであげたことがないのだろうか?
マリク自身は恋人であるエリス王女に何度もしてもらっていたため、マルスの言葉に首を傾げたのだが――そこで彼の頭に驚愕の憶測が浮かぶ。
――まさか……(まだ)プラトニック?婚約者とプラトニックな関係の相手に『そうですよね。』と相槌を打てば経験していることがバレてマウントになりかねない(しかも経験したのは彼の姉の太腿だ)。
瞬時にその結論を導き得たマリクは。
「……ですが。本来訓練は仲間と切磋琢磨し自己を高めるもの。不純な動機ですべきではありません。」
さり気なく論点をずらし、如何にもジェイガンが言いそうな理想論で返した。幸いなことに、マルスは論点をずらされたことに気づかずに。
「そうだよね…でも僕、きっと今日のこと、忘れられそうにないよ…」
遠くを見るような目で、よく晴れた空を見上げた。
~終わり~