幻想郷の嫌われ者『悟り妖怪』
その古明地こいしは、周りからの理不尽な差別を受ける。

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第1話

悟り妖怪。

意識しなくても相手の心が読めてしまう、という気持ちの悪い妖怪だ。

つまり、皆から忌み嫌われ、差別される対象である。

当然のことだ。

誰だって、自分の心を読まれるのは嫌。

 

「古明地こいし、だっけ?アンタ、悟り妖怪なんでしょ?」

 

「う、うん。でも、悪いことは何もしないよ...?」

 

「いや、悟り妖怪ってだけで気持ち悪いんだよね。近づかないで。」

 

「...はい。ごめんなさい。」

 

何処に行っても、何をしていてもこの様な扱いは当然のことで、誰も疑問には思わない。

…私は、『悟り妖怪』だから。

意識しなくても、勝手に相手の心は読めてしまうし、その所為で会話も噛み合わない。

それでも、全て私が悪いから。

 

 

 

家に帰ると、私の心が読めてしまったのか、お姉ちゃんが話し掛けてきた。

 

「こいし、ごめんなさいね。私が不甲斐ないばかりに...」

 

「...お姉ちゃんは何も悪くないよ。」

 

「いえ、私の所為なの。ちゃんと私達も認めて貰える場所、見つけられないから...」

 

そんな楽園のような場所、在るわけがない。

探すことなんて、疾うの昔に諦めていた。

悪いのは、お姉ちゃんじゃない。この世界の方だ。

何故私達がこんな目に遭わなければならない?

平穏な生活を望んでいるのに、それすら見向きもされない。

嗚呼、理不尽だ。

 

 

 

 

 

それは、ある日のことだった。

いつもの散歩の帰り道、何やら周りが騒々しい事に気が付く。

 

「おい!危ないから、今すぐ此処から離れろ。」

 

「え、自分の家が近くに在るのですが...」

 

「家?君もしかして...」

 

その人の話では、私の家が火事になっていたらしい。

原因は、私達を良いように思わない連中の放火。

偶然降ってきた雨のお陰で、他の家へ移る事態は避けられた。

 

「お姉ちゃんは、何処にいるのですか。」

 

家に彼女を置いたままだったことを思い出す。

不安感が私を襲った。

 

「大丈夫。元気よ。」

 

その声に一瞬安堵を覚えたが、すぐに絶望に変わった。

足に回復に時間が掛かる程大きな怪我を負っていた。

 

「こんな怪我で、元気なわけ無いじゃん。」

 

「本当に大丈夫だから。それよりも、こうなってしまって、ごめんなさい。」

 

お姉ちゃんが謝ることじゃない。

何で、何で私達がこんな目に遭わなきゃいけないの?

唯普通に暮らしたいだけなのに。

 

「.........」

 

 

 

 

 

自分の弱さに、魔が差した。

もう、嫌だ。

何もかも投げ出して、楽になってしまいたい。

楽になって、幸せというものを感じてみたい。

自分のエゴだと解っていても、どうしようも無かった。

 

「もう、逃げ出してしまおう。」

 

土砂降りの中、駆け出した。

誰にも染まりたくない。染まれない。

限界だ。

たった一つのエゴを持って、幻想少女は走り出す。

その、閉じてしまった瞳には、何も映りはしなかった。

映らなくても良いと思った。

自分が周りから視えなくなってしまえば、解決する。

そして、

走って、走って、息を上げて、走り続けて、辿り着いた先に、夢と出会った。

 

「嗚呼...綺麗だ。」

 

美しい海。

幻想郷には存在しない筈の、大きな水平線が見える。

汚れきった心が、少しずつ薄れていく。

向こうへと、大声を上げて、叫んだ。

何を言ったのかは覚えていない。

最初で、最後の『私』の声。

届かなくても、伝えたかった。

 

 

 

この世界は、理不尽で構成されている。

妹、こいしが突然消えたあの日から、一度も姿を見ていない。

 

「ごめんなさい。ごめんなさい、こいし...」

 

彼女を見たという人物は、私に語った。

「虚ろな目をしていていた。」と。

変わってしまった。彼女は変わってしまったのだ。

 

 

 

何故、私達は『悟り妖怪』として生まれてこなければならなかったのか。

何故、こいしがこんな目に遭わなければいけなかったのか。

 

 

 

その真相を知る者がいるのならば、この理不尽を止めて欲しい。

 

 




古明地姉妹...
幻想郷の嫌われ者ですね。
結構いい感じに書けた気がします。

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