現パロのウツシ×カガミです(左右要素はほとんどなし)。
注:本作はAI(Gemini)を使用しています。ネタ・プロットは自分、自身の文章を学習させた上でAIの考えた文の使用率は全体の26%です。
※pixivとAO3にも投稿済み。
カガミ Side
腐れ縁と言っていいかもしれない。そう思いながらも、ウツシと過ごす時間が減るたびに胸がざわつく。俺はずっと――あいつに恋をしていた。だが今まで気持ちを伝えたことはない。
進学のために共に地元の村カムラから都市に出たウツシと俺は幼馴染で就職も現地で果たした。彼はスポーツジムのインストラクター、俺はそこそこ大きな会社の会社員。三十路を過ぎた今でもウツシとはよく飲む。大抵ウツシの家で。あいつが住んでいる家は村所有の貸家で、都市での仕事を請け負った際に村人が短期間(時には長期に及ぶこともあるが)滞在するための拠点だった。部屋数はそれなりにあり、俺とウツシは大学時代、そこでルームシェアをしていた。就職を機に俺は社員寮に入ったが彼は(恐らく高額な都市の家賃を敬遠して)そこに留まっている。そんな事情から、他の村人が滞在していないときに訪れては宅飲みしていたのだが――今春タイシが進学のために村から出てきて貸家に住むようになった。卒業するまでずっとそこにいるだろう。そしてタイシが来てからというもの、俺とウツシは今までのようには会えなくなった。
折しも季節は冬……クリスマスが近づいている。
*
「デイキャンプ?」
久しぶりに会った安い居酒屋でカガミに『イヴにデイキャンプに行かないか?』と言われて思わずウツシは訊き返した。
「ああ。デイキャンプだ。どうだ?水曜日は休みだろう?俺も有給を取ったんだ。」
「休みだけど……よりによってクリスマス・イヴにかい?」
ウツシが怪訝な顔をする。彼の反応に、カガミの心に不安が擡げた。今までのイヴ、彼に仕事以外の予定があったことはない。今年は違うのだろうか?
「……予定があるのか?」
ひどく意気消沈したような声になってしまい、カガミは自分自身に驚く。ウツシは『んー…』と頭を掻いた。
「ないけどさあ……イヴをいい歳した男が二人で過ごすって、寒くない?」
「べ、別に誰かに何か言われるようなことでもないだろ?」
そうは言ったものの、現実、もし『イヴをいい歳した男が二人で過ご』していたら、好奇の目で見られるのはわかっていた。だから知り合いに出くわす可能性の低い郊外のキャンプ場を選んだのだが。
「そうかなぁ?けど何でイヴに?」
「今年のイヴがたまたま水曜日で、お前の仕事が休みだからだ!」
ウツシは『?』という顔で沈黙した。はっきり言って理由になっていないのはわかっている。カガミとウツシは現状“友達”でそれ以上ではない。だがウツシに片思いしているカガミは何年も前からイヴをウツシと過ごしたいと思っていた。ルームシェアをしていた頃は同郷の者同士、家族のように過ごしていたが、社会人になってからは一度もその機会は訪れていない。だが今年のイヴは水曜日でウツシの職場の定休日、このまたとない機会を逃すわけにはいかなかった。カガミは更に畳み掛ける。
「と…友達だろ?」
「“友達”だから変なんだよ。彼女とかならわかるんだけどさ。」
カガミはウツシの物言いに少しばかりイラっときた。
「いつでもどこでも俺たちは一緒だ。…って学生の頃、誓っただろ?」
「……何で今、それ?」
ウツシは呆れながら溜息を吐いた。
「…まあ、いいよ。君が行きたいなら。」
そう言ってウツシはぐい、とジョッキを傾けた。
*
そしてクリスマス・イヴ当日。
「あれ?君いつの間に車買ったの?」
「最近だ。」
ウツシは貸家にメタリックダークグレーのセダンで現れたカガミに目を丸くしたが、開けたサイドウィンドウ越しにあっさりと返される。この車はウツシと今日の約束をした翌日、カガミが早速ディーラーに行き、展示車に一目惚れして即買いしたものだった。
「……乗れ。」
「ああ。」
カガミが短く言い、ウツシはリュックを後部座席に放り、助手席に乗り込んだ。
「それにしても…」
車が走り出してからウツシは改めてカガミを見て、思わず自分自身を見下ろした。ウツシの今日の出で立ちはライトグレーのタートルネックニットにカーキ色のダウンパンツ、黒のダウンジャケット、対するカガミは銀灰色のタートルネックニットにダークブラウンのコーデュロイパンツを合わせ、ビンテージブルーのチェスターコートを羽織っていた。
「さすが君、大企業に勤めているだけあって垢抜けているよね。俺、君といて浮かないかな?」
「今から行くところに知り合いなんていないだろ。浮いていたって問題ない。」
前を向いたまま、カガミが話す。
「“手ぶらでBBQ”プランを予約してあるから、道具一式と食材は用意されている。あと、着替えは持ってきたか?」
「持ってきたけど…日帰りでしょ?」
「ああ。だがキャンプ場内に温泉施設がある。せっかくだから利用しようと思ってな。」
「温泉!いいね!」
ウツシが途端にハイテンションになる。が、急に大人しくなって。
「こんなことならハンタさんも誘えばよかったかな…」
「ハンタ?」
「スポーツジムの会員さんだよ。イヴの予定を訊いてきてさ。俺が友達と過ごす、って言ったらすごく残念そうな顔をして行ってしまったんだ。」
――ウツシを先に誘っておいてよかった。
カガミは心底そう思う。
「お前はジムの会員ともっとビジネスライクに接した方がいい。トラブルになりかねん。」
「何のトラブル?」
ウツシがきょとん、として訊き返すと。
「色恋沙汰のだ。」
カガミが真面目な顔で答えた。ウツシはそれを聞いて笑ってしまう。
「ははっ…ナイナイ。ハンタさんは俺より一回り年下の男子大学生だよ?」
「……」
――こんな鈍感な奴に惹かれたハンタ青年が憐れに思えてくる。…って、俺もか。
カガミが運転しながら思う。車内には時折カーオーディオから流れるクリスマスソングだけが響いていた。
「…ところで。この車、走行も滑らかで運転しやすそうだ。君、いい車を買ったね。君にしては思い切ったな。」
ウツシが感心したようにハンドルを握るカガミを見つめる。
「ああ。やはり車があると便利だ。それに……これからはもっと色々なところに行きたいと思ってな。」
――願わくばお前と二人で。
「ふうん…いいと思うよ。」
カガミの心の声はウツシには聞こえず、彼は車によって友人の世界が広がることをただ純粋に願った。
車で一時間ほど走った先にあるキャンプ場は、クリスマスの飾り付けがさりげなく施され、焚火の匂いが心地よく漂っていた。
「さすがに12月だと人、少ないね。」
快晴の空の下、小高い丘になっている緑の芝生のキャンプ場を見渡しながらウツシが呟く。
「まあ、オフシーズンだからな。だが返って今のような時期の方が真にキャンプを愛するキャンパーが集うものだ。」
「おおー、なるほど。」
自分たちは『真にキャンプを愛するキャンパー』ではなかったが、とりあえずウツシは感心して見せた。別にそんな小さなことに上げ足を取ってカガミの気分を害したくはない。彼がこの日のために準備してくれたことの方がずっと大きかった。
施設で受付を済ませ、テント設営のサポートを断り、地元の新鮮な野菜と上質な肉を受け取ると、二人はBBQサイトの割り当てられた区画に向かう。そこには既にコンロやテーブル、二人用ドームテントが用意されていた。
「うわ、すごい!流石カガミ。手配がスマートだ。」
ウツシはさっそく火起こしに取り掛かり、慣れた手つきで炭に火を入れ始めた。スポーツジムのイベントなどで、彼はアウトドアに慣れていた。その真剣な横顔に、カガミは普段の彼とは違う新鮮な魅力を感じる。見ると、12月だというのに蟀谷に汗が滲んでいた。
「飲むか?」
出発から何も飲んでいないことに気づき、カガミは持参した保冷バッグから缶ビールを取り出し、プルトップを開けてウツシに差し出した。
「おお、気が利くねー」
ウツシが缶ビールをごきゅっごきゅっと呷る。その姿は豪快で、彼の男らしい喉ぼとけにカガミは思わず見惚れた。そしてはっと我に返り、見惚れていたことを気づかれないように、何気ない動作でノンアルコールの缶ビールを取り出し口をつけた。
「火は興したから、焼くのは任せちゃっていい?俺はテントを張るよ。」
ウツシはそう言ってテントの設営に取り掛かった。手慣れた様子でテキパキとテントを張っていく。
一方カガミは空腹のまま待つのは辛いと思い、とにかく早くありつけるようにBBQ網の半分にキャベツや玉ねぎなどの比較的焼け易い野菜、半分に肉を置き、焼き始める。
ほどなくしてテントの設営も終わり、網にめいっぱい載せた食材も焼けたので、二人はステンレスの皿に取ってタレをかけ、折り畳みチェアに座って食べ始めた。
「くぅー、美味い!やっぱ外で食うと格別だね!」
「そうだろう?」
風が冷たいことは冷たいが、冬にしては暖かい日で、何より火の傍にいることで寒さが紛れた。次々と焼いては食べる間、同郷の後輩タイシや互いの近況、職場の話、面白いエピソードなど色々な話をして、カガミは普段の真面目な仕事ぶりからは想像できないような、リラックスした笑顔を見せていた。
すべての食材を食べきると、ウツシは満ち足りた腹を撫でて椅子に凭れた。
「なーんか…こういうの、すごい久しぶり、な気がする。」
晴れた空をぼんやりと見上げてウツシが呟く。周囲にはもちろん人がいたが、十分な距離があり、二人だけの静かな時間が流れる。
「……タイシが来てからさ、君と二人でゆっくり話す機会が本当に減ったな、って感じてたんだ。」
ウツシの率直な言葉に、カガミの心臓が大きく跳ねた。
「俺もだ。だから、今日お前を誘った。」
「そっか!同じことを思うなんてやっぱり俺たちマブダチだね!」
ガバッと身を起こし、目を輝かせて言ったウツシに、カガミは内心ガッカリして。
「そうだな…マブダチだ。」
と力なく同意した。ウツシはそんなカガミの様子に気づかない。
「うーん…お腹がいっぱいで苦しい…ちょっと横になろうかな。せっかくテントもあることだし。」
「ああ、俺も運転して疲れたから横になりたい。」
能天気なウツシにカガミも同意し、二人でテントの中に入る。フラップを閉じると風が入らないため、寒くは感じない。冬の優しい陽射しがテントの生地に透けている。二人はリュックを枕代わりに、並んで横たわった。
*
ウツシ Side
思い起こせば、幼いころからいつだってカガミは俺の隣にいた。それが普通で日常だったはずが……今春、村からタイシが来て以来、彼を家に呼べなくなって、ほとんど会えなくなった。そしてそれと同時に漠然とした焦燥にかられることが多くなった。仕事は充実している。人間関係も良好で健康にも不安はない。…となるとやはり、カガミと以前ほど会えなくなったことが原因だろうか?そんなことを考え始めた矢先……俺は彼にイヴのデイキャンプに誘われた。
*
「……おい、起きろ、ウツシ。」
「んあ?」
ウツシは肩を揺さぶられて目を覚ました。テントの中で横になってカガミと他愛のない話をしているうちに転寝してしまったようだった。
「俺、寝てた?今、何時だろ?」
「2時過ぎだ。そろそろ温泉に行かないか?」
「そうだ温泉!」
ウツシは勢いよく起き上がった。腹筋の力だけで瞬時に起き上がれる彼の筋力にカガミは素直に感嘆する。二人は受付スタッフにプランの終了を告げて温泉施設に向かった(BBQセットやテントは片づけてくれるということだった)。
キャンプ場に併設された温泉施設は、オフシーズンの平日とあって利用客はまばらだ。
「わあ、いいねえ!貸し切りみたい!」
ウツシは施設の中に入るとついはしゃいでしまった。カガミが少し口元を緩めた気がする。
「ほら、ロッカーキーだ。」
受付で鍵を受け取ったカガミが一つをウツシに渡し、二人連れ立って男湯の暖簾をくぐった。
脱衣所に入ると、他に入浴客の姿はない。ウツシは迷いなく服を脱ぎ始めた。
「さっさと入って温まろう!」
ウツシは瞬く間にすっぽんぽんになったが、カガミは一瞬、彼をチラッと見て視線を逸らした。そしてゆっくりと自分自身の服を脱ぐ。
大浴場はパノラマウィンドウから雪化粧を始めた山々が見える静かで落ち着いた造りだった。体を清め、湯船に浸かると、『ふぅ』と二人同時に息を吐いた。一日の喧騒を忘れさせるかのように、身体が暖まり力が抜けていく。
「いや〜、極楽極楽!」
ウツシがつい満面の笑みを浮かべてしまう。
――32の男のリアクションとしてはちょっとおっさんっぽかったかな?
隣で静かに湯の温かさを感じているらしいカガミを見て、ウツシは思った。色白のカガミの顔が湯気で少し上気している。
「お前はいつも、こういう時、本当に気持ちよさそうだな。」
「そりゃそうだよ。温泉が嫌いな人なんていないだろ。特に冬は最高だ。君こそ、仕事で疲れているだろうから、もっと肩の力を抜いたらどう?」
そう言いながら、ウツシは少し身を乗り出し、カガミの肩に手を置いた。
「ほら、ここの筋肉がカッチカチだ。ストレッチしてあげようか?」
「い、いい!やめろ!」
だがカガミは咄嗟にその手を振り払った。
「なんだよ。俺はインストラクターだよ?」
ウツシは拗ねたように唇を尖らせたが、それ以上は何も言わなかった。カガミはパノラマウィンドウの外の景色をじっと見つめている。数秒の沈黙が、ウツシには永遠のように感じられた。
――何かさ。そんな反応されたら、俺のことを意識していると誤解してしまうだろ。
ウツシがカガミをちらりと見て、思う。思い起こせば、そういう瞬間は今までにもあった。特にルームシェアをしていた大学時代は。
「そうだ!露天風呂に行ってみないか?」
大浴場の端にあるドアの脇に“露天風呂⇒”と書かれたプレートが貼ってあるのを見て、ウツシはこの何となく重い雰囲気を打破しようと、明るい調子で提案した。
「そうだな、行こう。」
カガミはホッとした様子で微笑み、頷いた。
露天風呂は、手入れの行き届いた庭園の中にあった。冬の寒さと湯の温かさのコントラストが心地よい。空を見上げると、大きな白い雲が浮かんでいた。
「雪がなくてクリスマスっぽくないけど、そもそもクリスマスと関係ないデイキャンプをして温泉にも入っているもんね!俺たち。」
ウツシが解放感にはしゃぐ。そしてふと真面目な顔で親友の方を見た。
「カガミ。今日は誘ってくれて、本当にありがとう。BBQも美味かったし、温泉も最高だ。やっぱり二人でいるのが一番、気が楽でいいな。」
そう言って笑った。の、だが――何故かカガミは一瞬傷ついたような顔をして、そっとウツシから視線を外し、
「……そう、だな。」
と呟いた。ウツシは、カガミの横顔をじっと見つめた。冬を思わせる彼の銀髪と白い肌が美しいと思った。
――どうしてこんな風に、彼との間に“壁”を感じるんだろう?幼い時からずっと一緒だったのに。
それは今のようにカガミと二人きりでいるときに時折起こることだった。彼はどう思っているのか訊こうと、何度思ったかしれない。だが結局、いつも何も言えなかった。今も。
温泉施設を出た二人は、冷たい外の空気に触れると、湯上がりの体がひやりと引き締まるのを感じた。
「ふー、気持ちよかった。体の芯から温まったね。」
ウツシがダウンジャケットのジッパーを上げながら、満足そうに息を吐く。
「ではそろそろ帰ろうか。」
時刻は4時になろうとしており、一時間もしないうちに暗くなり始めるだろう。慣れない道を暗くなってから運転するのは避けたかった。
「そうだね。」
ウツシが答え、二人で車へと歩く。カガミはウツシが乗車してから車に乗るとエンジンをかけた。車内に彼のこだわりが詰まった少し大人っぽいジャズアレンジのクリスマスソングが静かに流れ出す。
暫く走ってヒーターが効き始め、車内が暖かさに満たされると、BBQの満腹感と温泉の心地よさが一気に押し寄せたのか、
「ふぁあ……ねむ……」
ウツシは大きく一つ欠伸をすると、シートベルトを締めたまま、ヘッドレストに頭をもたせかけた。
「眠いなら寝ていてもいい。着いたら起こすから。」
カガミは運転しながら、穏やかな声で言った。だが。
「いや、大丈夫……寝ちゃうともったいないし。……こんなに静かな空間で君と二人で過ごすの、本当に久しぶりだから、さ。」
ウツシは瞼を擦りながら、絞り出すようにそう答えた。
「ああ。」
カガミは短く応じる。この“二人でいる時間”は、彼が今日一日を仕組んだ最大の理由だ。
「……タイシが村に帰るまでは、もうこんな風には過ごせないだろうな。」
カガミが静かに呟く。そもそも、ウツシの職場は水曜日が定休日で他に週一日、シフト上の休みがある。カガミは土日休みだ。基本的に休みが合わない。それでも今まではウツシの貸家で過ごすことができたからよかったものの、それもなくなるとなると、本当に一緒にいられる機会を苦労して捻出せねばならなかった。だが“友達”が頻繁にそこまでするのは不自然だった。
「そうか?タイシだって誘えば俺たちと出掛けると思うし、ハタチになれば宅飲みだって参加できるだろう?」
ウツシはカガミの言わんとしていることを履き違えていた。カガミがハンドルを握る手に力を込める。
――そんなことを言っているんじゃない。俺が欲しいのは、俺とお前だけの、誰にも邪魔されない時間なんだ。
タイシが来るまでは、カガミがウツシへの気持ちを“友達”という枠の中に閉じ込めておくための、最後の防波堤だった二人きりの時間を持つことができた。だがその時間が激減したことでその防波堤が崩れ始め、募る気持ちを持て余すようになった。つまり、“会いたくて堪らない”のだ。
「……ねえ、カガミ。」
カガミが答えないのでウツシは彼の名を口にした。また、漠然とした焦燥。何かを言わなければならない気がした。
「なんだ。」
「俺と、ルームシェア、しないか?」
カガミの時間が止まる。
――それはつまり……?
それはただの提案のようで、心臓の奥を突く言葉だった。カガミは次のウツシの言葉を待つ間、自分の心臓の音がうるさくて音楽も他の音も何も聞こえなかった。
「今まで村の貸家に図々しくも居座っちゃったけど、タイシも来たことだし潮時かな、って。君も独身寮にずっといられるわけじゃないんでしょ?だからどうかな、って思ってさ。都会は家賃高いし。」
「それはいいな。」
ウツシの考えは合理的で、カガミが期待した理由ではなかったものの、彼には十分だった。知らず、口調に嬉しそうな響きが混じってしまう。ウツシが更に続けた。
「……ってのは建前で。俺、君のこと、好きかもしれない。このまま何年もほとんど会えないまま過ごすのは耐えられない、って思ったんだ。」
今度こそ、カガミは自身の心臓の音で世界のすべての音が消えた、と感じた。
「わっ!?」
カガミが急に車を路肩に寄せ停めたのでウツシは前につんのめりそうになった(が、もちろんシートベルトをしていたので大丈夫だ)。
「ウツシ!!」
「な、なな何だ!?」
真剣な顔で振り向いたカガミにウツシが動揺して応えると。
「俺もお前が好きだ!ずっと、昔から。」
「…………」
赤い顔で必死に言う親友を暫しポカン、と見つめて。それから、ウツシは笑い出した。
「ほんっと、君って最高だよ。」
そして。『あ。』と何かを思い出したように。
「メリークリスマス。」
ウツシが言うと、カガミも笑ってハイタッチした。
~終わり~