現パロのマルス×クリス(男主人公)です。背景にマリク×エリス、アベル×エスト。他の現パロとは別もの。
注:本作はAI(Gemini)を使用しています。ネタ・プロットは自分、自身の文章を学習させた上でAIの考えた文の使用率は全体の30%です。
※pixivとAO3にも投稿済み
クリスマスが近い。そこここでイルミネーションが飾り付けられ、街の雰囲気も何となく普段より浮ついているように感じる。クリスがバイトする街中のカフェ“
「やあ、クリス。」
店のドアが開き、もうすっかり馴染みとなった笑顔がクリスへと向けられた。
「マルスさん、いらっしゃい。いつもご来店、ありがとうございます。」
クリスが丁寧に応対する。彼はマルス。クリスと同じ高校一年生だが、地元の公立高校に通う彼とは違い、マルスは中高一貫の名門私立高校に通う、所謂お坊ちゃまだった。夏が終わる頃に初めて来店して以来、下校時ちょくちょく“
「いつものでいいですか?」
「うん。」
今日も彼お気に入りのカフェラテだろうとは思ったが、念のためクリスが確認するとやはりそうだった。クリスはオーダーを受け、作ったカフェラテをいつもマルスが好んで座る窓辺のテーブルに届ける。
「ありがとう。」
ノートから顔を上げて、マルスがお礼の言葉とともに眩しい笑顔をクリスへ向けた。上質な紺色のブレザーの制服姿と相まって、その優し気な笑みは彼をどこかの国の王子のように見せ、クリスの胸をぎゅっと鷲掴みにする。だがそれを悟られないようにクリスは営業スマイルを浮かべて軽く会釈し、カウンターに戻ろうと踵を返しかけたとき。
「ねえ、クリス。」
ふいに呼び止められて、立ち止まりマルスを見た。
「“タリス”っていうシティポップ系ロックバンドを知っている?」
「“タリス”…って、あの、数か月前にデビューして一曲目でチャート入りした、今旬のバンドですか?」
もちろん、知っていた。友達にはファンもいる。
「そう。実はボーカルのシーダの父親は僕の父と古い友人で、クリスマスコンサートの招待チケットを僕と姉の分、2枚もらったんだけど、姉に予定が出来てしまって。…それで、まあ。もし…君がイヴ空いていたら、一緒にどうかな、って…」
「え!?俺なんかを誘ってくれるんですか!?」
――俺とは住む世界が違う人なのに。
クリスが驚き、一瞬気後れするが。
「…予定、空いてるの?」
「ええ!」
重ねて問われて思わず頷いてしまった。
「それなら、一緒に行こう。…これ、僕の連絡先。」
マルスはノートの余白にさらさらとペンを走らせて破り、クリスに渡すとにっこりと笑った。
夜8時。その日の閉店時間になって、クリスは店の奥の更衣室で着替えを済ませ、店長のアベルに軽く頭を下げた。
「お先に失礼します。」
「ああ、お疲れ様。…クリス。」
店を出ようとして呼び止められ、クリスは振り返った。
「今日、マルスさんと何か話していただろう?」
含みのある笑みを浮かべながら、尋ねる。アベルも常連である丸スの存在は当然知っていた。
「ええ。イヴのコンサートに一緒に行かないか、って…」
「ふうん?で、行くのか?」
「はい。何せ人気ロックバンド“タリス”のコンサートですし。」
「はは、そうか。ま、デート、楽しんで来いよ?」
「へ?デ、デート、だなんて。そんなんじゃ、ないです。お姉さんと行くつもりが、予定が入ってしまった、って…」
「……お前、気づいてないのか?」
アベルが呆れたような顔をしたが、クリスは訳が分からず小首を傾げた。彼の反応に更にアベルが溜息を吐く。
「……まあ。相手はいいとこのお坊ちゃんだ。つり合いが取れるような恰好をしていけよ?」
「そう、ですね。」
アベルに助言されてクリスは素直に頷いた。
一方その頃。
「マルス、これどう思う?」
鏡の前に立ったマルスの姉エリスはピンクのニットワンピースと白いショールを合わせてクルリと回ってみせた。
「とても素敵ですよ、姉さん。マリクもきっと見惚れるに違いありません。」
「まっ♡ マルス、ったら!」
マルスが笑顔で言うとエリスははにかんで頬を染めた。クリスマス・イヴにマリクとデートすることになってからというもの、エリスは度々、当日に着ていく服についてマルスに相談するようになっていた。もっとも姉は美人で、基本何を着ても似合ったのだが。それでもイヴのデートに最高のコーデをしたいと思う乙女心にマルスは微笑ましい気持ちになる。
マルスの感想に夢見るような表情でイヴの日に思いを馳せるエリスだったが、ふと何かに気づいたかのようにマルスを振り返った。
「そうだわ。“タリス”のコンサートはどうしたらいいかしら?シーダがせっかくチケットをくれたというのに…」
「姉さん、心配しないで。友達と行くから。」
「まあ!よかった。あなたも楽しんできてね。」
「はい。」
マルスは微笑み頷いた。
マルスは姉の部屋を辞して自室に戻るとスマホのラインをチェックした。親友のマリクからメッセージが来ている。
Merric:君が背中を押してくれて感謝してるよ。ずっと憧れていたエリスをクリスマスデートに誘うことができたんだから。
Marth:姉は絶対、君のことが好きだとわかっていたからね。僕も君のおかげで好きな人とイヴを過ごすことができるよ。
簡単に返信して寝ようとしたマルスだったが。すぐに受信を知らせるバイブの音がしてスマホを手に取った。
Merric:好きな人だって?初耳だ。今度会ったとき詳しく聞かせてよ。
Marth:それは構わないけど…でも、相手はデートだと思っていないかもしれないんだ。
Merric:そうなの?イヴに二人で会う、って言ったら普通デートじゃないの?
Marth:それが…かなり鈍いんだよね。
Merric:(・・; …まあ、健闘を祈るよ。あ、ところで『僕のおかげ』ってのは?
Marth:“タリス”のクリスマスコンサートに姉と行く予定だったけど、姉が君とデートすることになったから、余ったチケットでコンサートに誘ったんだ。そしたらOKしてもらった。
Merric:へえー…。コンサート会場もそこに辿り着くまでの道のりも混み合っているだろうから、はぐれないように手を繋いだり抱き寄せないとね?
Marth:Σ(・□・)それいい!
Merric:(`• ω •´)b
そして。二人はラインのやり取りを終え、眠りに就いたのだった。
*
クリスマス・イヴ。午後6時。
街はどこもかしこも赤と緑の装飾で溢れ、耳を劈くような賑やかなクリスマスソングが流れている。通り過ぎるカップルたちの楽しそうな笑い声が、余計にクリスの胸を騒つかせた。
――落ち着け、俺。俺は行けなくなったマルスさんのお姉さんの代わりでしかないんだから……
これはデートじゃないと何度も言い聞かせているはずなのに、イヴに二人で会うというだけでこれからマルスとデートするかのような錯覚に陥る。
クリスは待ち合わせ場所のガルダ駅前に早く着きすぎたことを少し後悔していた。手持ち無沙汰でスマホを取り出すも、何も見る気にならず、またポケットに仕舞う。
アベルに『つり合いが取れるような恰好を』と言われたことが頭を離れず、洋服店をはしごした結果。今日のクリスは黒とグレーのチェックシャツに白のVネックセーター、ミッドナイトブルーのクロスストレッチトラウザーパンツを合わせていた。自分なりに精一杯の“お坊ちゃまらしさ”を演出した格好だった。コートまではさすがにこづかいでは買えずに愛用のネイビーのダッフルコートを身に着けている。鏡で見たときは悪くなかったはずだが、今この場所で、マルスにどう思われるかを想像するだけで胃がキリキリした。
不安と期待に押し潰されそうになったとき、クリスは人混みの中に、目を奪われる一際美しい青年を見つけた。
「マルスさん……」
今日は制服姿ではない。パールグレーの上質なチェスターコートから覗く、ベージュのタートルネックニット、ダークブラウンのコーデュロイパンツ。そのシンプルながらも洗練されたスタイルは、周囲の派手なイルミネーションに負けない輝きを放っていた。まるで、物語の中から飛び出してきた王子様のように。
「クリス!」
彼がクリスに気づき、人波を縫って真っすぐにこちらへ歩いてくる。その一挙一動が優雅で、クリスは思わず見惚れてしまう。
「来てくれてありがとう。ごめんね、待たせてしまったかな。」
近くで見るマルスはいつも以上に嬉しそうで、同時に少し緊張したような面持ちにも見えた。
「いえ、俺も今来たところです。」
「バイト終わりで疲れていないかい?」
「ええ。今日は店長の恋人のエストさんが途中からシフトを代わってくれたので。お店が終わったら二人で過ごすとかで…」
「そうなんだ。」
マルスが相槌を打ちながらクリスを上から下まで見つめる。
「その服、とても似合っているよ。上品で素敵だ」
「あ、ありがとうございます!」
――アベルさんの助言のおかげかも。
予想外の褒め言葉に、クリスの顔が一気に熱くなる。
マルスはいつもの眩しい笑みを浮かべると、少しだけ顔を近づけて、囁くように言った。
「じゃあ、行こうか。素敵なイヴのコンサートへ」
マルスがさり気なくクリスの手を握る。
「え?ちょ…!?マ、マルスさん…!?」
「はぐれるといけないから、ね?」
マルスが悪戯っぽく微笑みウィンクすると、クリスは更に赤くなった。
クリスはマルスに手を握られたまま、人の波に押し流されるようにして歩き出した。手袋越しでもマルスの掌は暖かく、クリスの緊張を溶かすようで、騒つく気持ちとは裏腹にクリスは不思議と心地よさを感じていた。
コンサート会場にはほどなくして着いた。入り口は既に長蛇の列が出来ている。人混みの中、二人は列の最後尾につく。マルスは並んでしまうと一旦手を放したので、クリスはそれを寂しいと感じる。…間もなく。
「うわ!?」
マルスに腰を抱き寄せられて思わず叫んでしまった。
「親友に言われたんだ。混んでいる場所でははぐれないように手を繋いだり抱き寄せないと、って。」
マルスが耳元でそう囁き、クリスの腰を抱く力が少し強くなった。彼の声は近く、クリスは肌が粟立つのを感じた。マルスはそんなクリスの戸惑いについ、悪戯な笑みを浮かべてしまう。
「マ、マルスさんの親友、って…」
「ああ。マリクっていうんだけどね。とても思慮深くて、彼のアドバイスはいつも的確で助けられているよ。…君にもいつか会わせたいな。」
「は、はは…」
――マリクさん、って一緒に行く相手が友達でもそんなアドバイスをするんだろうか…?俺の場合“友達”っていうのも烏滸がましいけど…
クリスが不思議に思う。そして…二人で身を寄せ合いながら列が進むのを待つ間、ふとクリスの心に不安が擡げた。
「……マルスさん、本当に俺なんかを誘ったこと、後悔していませんか?」
クリスはもう一度確認せずにはいられなかった。
――いくらお姉さんの都合が悪くなったとはいえ、俺でなくともマルスさんと一緒にコンサートに行くのに相応しい人がいたはずなのに。
「どうしてそんなことを言うんだい?君と一緒に行きたかったから誘ったんだ。君といると楽しいからね。」
マルスの優しい瞳と言葉に、クリスの胸の鼓動が速くなった。楽しい、と言われたことが何よりも嬉しかった。
ついに受付を済ませ会場の中に入ると、外の喧騒とは打って変わって、熱気と期待に満ちた空気が充満していた。チケットの座席番号を座席表で大まかに確認してから探して行くと、二階のバルコニー席に辿り着いた。ステージのほぼ正面に位置していて、しかも最も高い列で全体を楽に見渡せる。
「わあ…!すごいですね!」
クリスは思わず声を上げた。
「この席、ステージがよく見えていいでしょ?」
マルスが得意げに言い、コートを脱いで席に着いたのでクリスもそれに倣う。会場は全館暖房が効いていてとても快適だった。まだ開演までに時間がある。その間にマルスはクリスのことをもっと知りたいと思い、話しかけた。
「クリスは将来、何をしたいの?」
「俺は…そうですね。街の人たちの役に立つような仕事がしたいです。何かを守るような…」
クリスが少し照れながら答えると、マルスは優しい眼差しでクリスを見つめた。
「クリスなら、きっと誰かのヒーローになれると思うよ。」
その言葉は、クリスにとって最高の賛辞だった。マルスに認められた気がして、クリスは全身が熱くなるのを感じた。
その他にも学校のこと、家族のこと、好きな食べ物、趣味など、二人は色々な話をした。
やがて。会場の照明が落ち、滑るように幕が上がると、ステージの上にロックバンド“タリス”のメンバーが現れた。中央前にボーカルのシーダ、彼女のやや後方、向かって右側にギターのオグマ、左側にベースのバーツ、中央後方にドラムのサジ、左側後方にキーボードのマジを見とめて観客の大きな歓声が響き渡る。
そして…演奏が始まった。激しいギターの音とドラムのリズム、ボーカルのシーダの力強くも透明感のある歌声が、会場全体を包み込む。アップテンポの曲に、クリスもマルスも自然と体が揺れる。階下の観客たちがノリノリでペンライトを振っているのが光の波のように見えた。
夢中になって聴くうちにあっという間に数曲が終わり、MCのターンになった。雪の妖精をイメージさせる衣装を纏ったシーダが楽しそうに観客に語りかける。
「今日はクリスマス・イヴ!みんな、大切な人と来ているんでしょう?今日は思いっきり楽しんで、最高の思い出を作ってね!」
シーダの言葉が、クリスの胸に突き刺さる。
――大切な人。
クリスはちらりと隣のマルスを見た。マルスはステージを見つめていたが、その横顔は少し火照っているように見えた。
シーダのMCの後、今度は今までのアップテンポの曲とは打って変わって静かなバラードが始まった。甘く切ない、冬のロマンスをテーマにした曲だった。曲のサビに入ったとき。ふいにマルスがクリスの手に手をそっと重ねた。クリスが驚いてマルスの方を見ようとした瞬間。
「…!!」
素早く頬にキスされて思わず呆然と見つめてしまう。
「クリス。君とイヴを過ごせて、本当に嬉しいよ。僕にとって、君は大切な人だ。」
はにかんだようにマルスが言い、今までに見たことのないような甘く優しい笑みを浮かべた。
「マ…」
言葉が出てこない。だがマルスの言葉に、クリスの心に巣食っていた不安と気後れが溶けて消えた。そして。これはデートじゃない、と繰り返し言い聞かせ抑え込んでいた感情が溢れ出す。
「マルスさん…。俺にとっても、あなたは大切な人です。あなたはいつでも誰にでも優しくてその上、俺にも気さくに話しかけてくれました。ちょっと落ち込むことがあっても、あなたが店に来る度に俺は心が浮き立ち、あなたの笑顔に元気をもらえた。…俺、あなたが好きです。」
「クリス…」
マルスは頬を染め呟くと、クリスの顔を両手で包み込み、彼の唇を奪った。
音楽も歌も、二人にとっては遠い世界の出来事となり、ただ互いの温かい唇の柔らかい感触だけが彼らの世界を満たしていた。
二人が離れたとき。いつの間にか、バラードは終わっていた。前奏とともに次の曲が始まる。二人は間近で微笑み合ってからステージの方へ身体を戻した。けれど彼らの手は指と指を組み合わせ、握られたまま…。そしてコンサートが終わるまで。どちらからともなく相手を見つめては何度も唇を重ねた。
-fin-