パチンコ大好き山伏女がダンジョンの下層階で遭難した美人配信者に注文通りハンバーガーセットを届けたら全世界に激震が走った件   作:羽黒楓

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第142話 おまけSS①

 パチンコパーラーパラパラ。

 そのスロットコーナーに、一人の女性が座っていた。

 ノースリーブのシャツにショートパンツ。

 そこから伸びる手足はすらりとしているが、ただ細いだけではなかった。

 しっかり鍛え上げられた筋肉のラインが浮き出ていて、一目でアスリートなのだとわかる。

 彼女はスロットの前の椅子に足を組んで座り、ほとんど無表情でスロットのボタンを押している。

 髪は短めのショートカット、目鼻立ちが整っていて、キレのある美人だった。

 

「おい、あれすげえかわいくね?」

「そうだな、あのレベルの女なんてそうはいねえぞ」

 

 同じシマにいる男たちがヒソヒソと話している。

 

「おい、お前、話しかけて来いよ」

「いや無理だよ、ちょっとあれはレベルが高すぎる」

「お前、いつも気軽に女をナンパしてるだろうが」

「さすがにあそこまで美人だとなあ……」

 

 その話し声は、スロットを打つ女性にも聞こえていた。

 なにしろ、鍛え上げられたニンジャなのだ。

 聴力もハンパないのである。

 

「まったく、男ってのは……」

 

 ブツブツいっている彼女こそ、S級探索者、山田トメであった。

 トメは目の前で回るリールをみつめている。

 その動体視力の前では、高速で回るリールですら、比喩ではなく止まって見えていた。

 だが、おかしい。

 どうやら、この機械は7をそろえればよいらしいのだが、トメが完璧なタイミングで7を狙ってボタンを押しているのに、一向に揃わないのだ。

 

 

「チッ、インチキか……」

 

 トメはそう呟く。

 実際は、パチスロというものはリールを回すためのレバーを押し下げた瞬間に、大当たり判定が行われる。

 そして、7が揃う状態かそうでないかは、そこですでに決まっているのだ。

 機械の中で大当たりのフラグが立たない限り、どれだけ7を狙ってボタンを押しても、絶対に揃わないようになっているのだ。

 が。

 トメはそんな仕組みを全然知らない。

 ただ、零那(れいな)に誘われて初めてパチンコ店にきたのだから当然といえば当然である。

 トメの持ちコインはあっという間になくなった。

 彼女は無言で席から立ち上がり、パチンココーナーに行く。

 あいつはどこにいるだろう、と探していると。

 すぐに見つかった。

 タール化学のロールパンとかいう台の前に座ってハンドルを握っている。

 

「おい、山伏」

「あ? ああ、トメさんか……ふふふふひひひふふふ、見て、見てよこれ」

 

 零那(れいな)が指さしたのは頭上のデータ表示器。

 大当たり回数が23になっている。

 確かに、零那(れいな)の席の後ろには、ドル箱がいくつか積まれていた。

 

「ふふふ、今日はめっちゃ調子がいいわよ。もう楽しくて仕方がないわ。で、トメさんはどうだったの?」

「あのパチスロとかいうやつはインチキだな。ちゃんと狙っているのに全然7が揃わないんだ」

「そうでしょ、あれはインチキなのよ」

 

 重ねて言うが、パチスロは狙えば揃うもんではない。

 

「でしょでしょ? 私は二度とやらないわ、あんなインチキ」

「そうだな、私もこっちをやるか」

 

 ここはバラエティコーナーなので、零那(れいな)の隣の台は魔法少女モドキ・マジカとかいう台だった。

 サンドに一万円を投入し、打ち始める。

 と、いきなり液晶画面がピカピカ光り、役物がシュイーンと音をたてて動き始め、キュインキュイン! とものすごい音がした。

 

「すっごい! トメさんお座り一発だ!」

「まあ、私くらいの実力があればこんなもんさ。……で、どうすりゃいいんだこれ」

「右打ちよ、右打ち。ハンドルを右にぐいっと回して!」

「お、こうか。すごいな、いっぱい玉が出てきたぞ……。で、虹子のやつはどこにいるんだ?」

「それがね、虹子さんは今日全然当たらなくて……あっちでカニ歩きやってる」

 

 零那(れいな)が指さす方向を見ると、向こうのシマに虹子がいた。

 少し打ってはすぐに隣の台に移動している。

 

「あれはなにやってるんだ?」

「カニ歩きというパチンコ必勝法よ。今のトメさんみたいに打ち始めてすぐに当たることってあるでしょ? それを人為的に起こすために、最初の500円分だけ打って外れたらすぐに隣に移る……。すると、いつかは当たるって寸法よ。私が教えてあげたの」

 

 ちなみにこの必勝法、完全にオカルトなのでマネするとサイフからお金がなくなるためまったくおすすめできるものではない、というのを、トメはあとで調べて知ることになるのだが。

 

 そうこう言っているうちに、また零那(れいな)とトメの台が大当たりする。

 そっちの方に集中しているうちに、いつのまにか虹子がトメの隣の台までたどり着いてきた。

 

「ううー……トメさん、当たってるんだね……私は全然ダメだぁ……もう何万円もなくなっちゃったよお……ハッピーセットが何個買えたんだろ……」

「……虹子、お前、朝会った時から半日で白髪が増えてるぞ……」

 

 トメの言葉に、

 

「嘘、マジで?」

 

 と自分のショートボブを触る虹子。

 

「もうやめたらどうだ? 私もあのスロットとかいうインチキでけっこう負けたし、そろそろ昼飯の時間だ。……いや、もう二時か。戻らないと怒られるぞ」

 

 それを聞いて零那(れいな)も自分のスマホを見て、

 

「あ、ほんとだ! ヤバい、今日はごはん食べたら羽衣たちを水族館に連れて行く予定だったのに! ヤバ、羽衣からの鬼電きてる……。早く、早く終わらせないと!」

 

 パチンコ七不思議なのだが、こういうときに限って大当たりが終わらないのだった。

 零那(れいな)とトメの台は爆発を続け、結局店を出たのはさらに三十分あとになった。

 

          ★

 

 店から出ると、すぐそこには二人の少女がいた。

 高校生くらいの少女と、小学校低学年くらいの黒髪おかっぱ少女。

 もちろん、羽衣と、聖華(せいか)だった。

 二人ともほっぺたを膨らませて怒っている。

 

「お姉ちゃん! なんで電話出ないの!」

「い、いや、ごめん、なんか大当たりが止まらなくなって……」

「今日は一緒にご飯食べてから水族館に連れて行ってくれる予定だったでしょ! 私と聖華(せいか)ちゃんでもうご飯食べちゃったから! ね、聖華(せいか)ちゃん」

 

 聖華(せいか)もジト目で零那(れいな)を睨んでいる。

 

「はい。羽衣(うい)お姉ちゃんの納豆汁はおいしかったです。噂に聞いた水族館を楽しみにしていたのに、零那(れいな)ママたち、全然お店から出てこないのです」

「いやー、だったら店の中まで迎えに来てくれたらよかったのに」

 

 それを聞いた羽衣(うい)は、黙って店の入り口にある看板を指さす。

 そこには、『十八歳未満入店禁止』と書いてあった。

 

「いやー、まじでごめんごめん。じゃ、私たちもごはん食べたらすぐ水族館に連れて行くから!」

「ダメです」

「え、なにが」

「もう待ちきれません。零那(れいな)ママたちはごはん抜きです。すぐにあのアルファードで水族館に連れて行くのです」

 

 ちなみにアルファードはトメの車である。

 

「え、私が連れていくのか」

「当たり前です。時間に遅れた零那(れいな)ママと同罪ですから」

「マジかー。水族館って結構歩くから、すきっ腹にはつらいんだが」

「これ以上羽衣(うい)お姉ちゃんと私を待たせるのは許されません。ほら、虹子ママもですよ。さあ、行くのです」

 

 虹子はげっそりとした顔で、

 

「パチンコで負けた上におなかすかせて水族館かー。つらい……」

 

 などと言っている。

 

「まあしょうがない。じゃあ連れて行ってやるから乗れ乗れ」

 

 今日もそんな、平和な一日をみんなで過ごしたのであった。

 

 




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