原稿に書き足したりしています。
サラは父に面会した。面会室ではなく、直接触れ合う形で。収容されていた場所が帝都ではなかった事が幸いして死は免れた。が……
「サラ…あの痴れ者の小娘を殺すのだ!お前はあの娘と知り合いだろう!ならば奴らも油断するはず!正しきブリタニア貴族…」
家の栄光……それともそれを象徴する金と権力だろうか?未だに固執する父にサラは初めて、平手を喰らわせた。
「いい加減にしてください、お父様!もうクラウザー家の栄光は地に落ちたんです!お父様が自ら貶めたんです!!」
「サラ?」
「私は何度も言いましたよね…スザク君や有紗と……相手がナンバーズでも良い関係でいたいと!それに耳を貸さないで、ライル様の気の迷いなんて都合の良い言い訳を並べた結果がアレじゃないですか!」
父は呆然と娘の言葉を聞く。
「あんな事にならなければ、ライル様だって政略でも私との結婚は受け入れてくれてたんです!それをお父様が全部ご自分でダメにしたんです!!」
そう、土壇場で思いとどまったフィリドール家等もあの事件と今回の政策で被害を受けたが、クラウザー家と比べれば僅かにマシだ。
「わ、私は…わた………!」
「それに、あの子は…ナナリーは私と同じ学校に通っていた子の忘れ形見です!そんなの嫌です!」
「…あ…あ……」
もう、何を言っても無駄だろう。父の目に映るのは金と権力だけ。ノーブルオブリゲーションなんて言葉……父には無縁の言葉だ。
「…もう、何を言っても無駄ですね。一生を刑務所で終えてください!」
ティーナはハウエルズ子爵家と連携し、アルバートフ家の維持に動いていた。アルバートフ家は財閥を経営しており、ルルーシュの政策で解体を命じられた。反感はあったが、散発的な叛乱をしても勝ち目はない上にあの時は行方不明だったライルがどうなるか分からない。
それらの観点から、財閥をいくつかの会社に分けて再編する事とした。結果としてアルバートフ家は没落を回避し、ハウエルズ家も地元からの信頼及び他の大貴族達からの信頼があったために完全な没落は避けられた。
皮肉にも、爵位を失ってエリア11となった日本での学校経営以外事業を失ったアッシュフォード家が維持されているのと同じように、事業を経営していた貴族は生き残ることとなった。
「ライル殿下……やっぱり有紗達とちゃんと結婚式を挙げられなかったことは残念に思っているみたいです。」
父は苦笑した。
「全く……一度に十人も娶るからそうなるのだ。」
「少し前に聞きましたけど、指輪だけはルルーシュ皇帝が亡くなるまでの間に用意していたみたいです。」
「我が遠縁の子ながら愚直な方だ……今となっては、それが好ましいが。」
父の答えにティーナも笑い、親戚の皇子に思いをはせた。
「一人か二人分くらい、式の融通してあげようかしら?」
リーザはノイエンドルフ家の立て直しのために没落を免れた『ユーロ・ブリタニア』貴族達との新事業立ち上げのために奔走していた。もう純血ではないという理屈は通じない。保守的な貴族はまだしがみつくが、そんなことに拘っては取り残されてしまう。
父達はそこを分かっており、少しでも同調する貴族達は各地への復興支援事業への参加を表明していた。
「兄さん…ノイエンドルフ家は貴族としては終わったけど……まだ私は生きているの。だから、新しいノイエンドルフ家の歴史を見守ってて。」
兄の墓に花を添えて、リーザは共同墓地を後にした。
海棠は日本の共同墓地にいくつもの墓を建てた。あの戦争の後、保護して海棠が育て上げて死んだ子供達全員の分だ。
「みんな、大佐が来てくれて喜んでいますよ。きっと。」
セーラが言ってくれると、橋本も頷いた。
「土田さんも安心してくれてますって。」
「だと、良いんだがな。……さて、もうしばらく碌でもないクソ親父でい続けますか。」
あの後、妙に馬が合うようになったエルシリアとセラフィナは『黒の騎士団』の任務で、海棠も『黒の騎士団』だがどちらかといえば海棠自身はナナリーが顧問となる形で設立される支援機関の護衛を希望していた。将来的にはそちらにも行きたいくらいだ。
稲垣と西野はホッカイドウで池田の墓に来ていた。ここには、あのときの同志達も眠っている。敬礼し、二人は立ち去る。
あの後、ライルを憎いと思った。だが、あの戦いを間近で見て同時に思った。軍人として、パイロットとして互いに全てをかけて戦った。
ライルとも少し話して分かる。池田が執着するだけのことはあると……許すことは出来ないだろう。だが、復讐をするのとは違った。距離をとろうと決めたのが彼らの結論だった。
リュウタはブリタニアの学校に通っていた。あの後、リュウタは『黒の騎士団』への不平不満をぶちまけた。だが、結局世間の見る目は変わらない。
挙げ句に両親がルルーシュのシンパ扱いだ。流石に子供故に命を奪われることはなかったが、これ以上日本に留まるのは危険だと判断してバルテリンクが妻とユリアナと一緒に本国へ返した。
「ねえ、本当にお父さんとお母さんが悪いの?どんなに悪いことしても、皇帝陛下が好きじゃダメなの?」
それに対し、ユリアナは頭をなでた。
「ごめんね…私もよく分からない。でも、おじさん達がルルーシュ皇帝の味方じゃないのは本当だって分かるから。」
ユリアナはライルの顔を思い浮かべた。彼なら、なんて言うだろう?いや、多分彼でも中々これに対する答えは出せないかもしれない。
少なくとも、『ルルーシュの仕業』や『名誉ブリタニア人になったのが悪い』、まして『ブリタニア軍に保護されたのが悪い』などという論法は絶対に通じないし、通じてはいけない。それだけはユリアナでも言い切れることだった。
山本秋水はトウキョウ租界がフレイヤで消滅した後も、日本系とブリタニア系の生き残った財界人と軍、政治家達のパイプとして奔走することを重視していたことでルルーシュからも害されることはなかった。あくまで職務を遂行しただけで、ルルーシュが深く干渉しなかっただけだ。
彼を筆頭とした当時の和平派を断罪すべきという声もあったが、今必要なのは日本とブリタニアの国交正常化であり、彼らの築いたパイプはまだ残っている。それを潰すのは愚策として神楽耶を筆頭とした合衆国代表達がこれまでの政務に従事させるのを許した。今、貴重な人材を無駄にする余裕などブリタニアにも日本にもないのだ。
「では首相、旧ゲットーの教育水準の立て直し及び支援計画のご了承はいただける、と言うことで?」
「はい、お願いします。子供達の教育の立て直しと衛生回復を最優先です。」
かつての戦いの功績で首相となった扇要の了承を得て、山本は退室した。長野もブリタニアからの出兵という形で『黒の騎士団』所属で従事し続けている。
「やれやれ、まだ引退はさせてもらえないな。」
ライルは有紗と共に日本を観光していた。十人分山積みになった新婚旅行の第一弾だ。
『ロンスヴォー』との戦いの後、貴族御用達の宝石業者がまだ残っていたため、蒼、赤、緑、白、黄色の五色の宝石を二個ずつ着けた指輪がライルの左手に……対になるように皇妃達にはそれぞれの宝石を贈った。気の利いた贈り方が出来なかったが、皆喜んでくれたとは思っている。
ウェディングドレスも着る機会を設けてあげたいが、暫くは無理だ。新婚旅行が先と順番が滅茶苦茶になってしまったのが痛い。
「ああ……貴族制度の廃止がこんな嫌な形で響かなくても。」
そう思いながら、今いる光景を眺める。観光していたのはオキナワ…かつて琉球と呼ばれる王国もあった南洋の島だ。
日本では一年を通して暑い気候で、夏場は海水浴にうってつけだ。ブリタニア帝国時代もここは租界があったが、本州と比べれば重要度は低く、半ば放置されていたような状態だった。
それ故か、ブリタニア皇族への敵意は強いようで弱い。そんな曖昧な部分もあった。だが、用心には用心を重ねて眼鏡で軽い変装をしていた。
「この後、やっぱりトウキョウ租界に行くんですか?」
「ああ、どうしても…ね。」
危険は承知だが、やはりライルにとっては弟が二度に渡って死んだ国だ。どうしても、感情移入をしてしまう。
バッシングはあるだろうから、花を一輪くらい供えるのが限度だろう。それでも……
「私にとっては、9歳の弟のままだから。」
ルルーシュ……君が残したこの世界、僕なりに生きてみるよ。ダメなら、思い切り嗤ってくれ。
弟を思い、ライルの眼には澄み切った空と海が広がっていた。
池田…君は私にとって、生涯の好敵手………永遠に越えるべき壁かもしれない。
友になれたかもしれない男………彼を殺した後悔と喪失感は恐らく永遠に背負うべき業。
そして………あの日、有紗を庇って死んでしまった少年。彼の両親も健在で、現在は家の方針転換に奔走している。フェリクスの実家も同様で、セヴィーナの家族も………
三人の家族がライルに向ける眼は憎悪を抑えようとする複雑なものだった。そう………自分のせいだ。
いつそちらへ行けるかは知らないけど………土産話は出来るだけ用意するから、気長に待っていてくれるかな?
晴天の空とそれを映した海………戦いに明け暮れ、いつの間にか疲れていたライルの心にはとても染み渡る光景だった。
ブリタニア貴族のうち、事業経営をしていたり州の議会などにいた貴族は何とか助かったと思います。
けど、ふんぞり返るだけの貴族は租界のブリタニア人下手すれば、本国でも反感を買っていた貴族は………
ヘクセン家は元々地元の信頼があったから助かったようですし、アッシュフォード家も学校経営が命綱になったという感じですね。こっちでクラウザー家はサラのおかげでギリギリ踏みとどまり、フィリドール家は悲惨だけど没落だけは何とか免れた。
出てこなかったけど、ニコラは実家に戻ってます。
尚、ライルと皇妃達の指輪は五色の二個ずつ。虹は派手すぎるし、黒や茶色なんて結婚指輪につける宝石じゃないと思うので。
尚、そちら系のネタですが少なくとも別れるまでの間ライルは十人を毎晩一人…でした。そして、指輪はちゃんとその夜の時に一対一で渡しています。
ここまで、ガンダムSEEDからほぼ休まずだったけど流石に疲れたので……当分離れます。
下手の横好きにお付き合い頂き、ありがとうございました。
種はFREEDOM ZEROのブルーレイが出たら、またやるつもりです。早く見たいです。