今回の決闘は星刻と藤堂が立ち会っていた。万が一にもライルが勝っても、それを方便に余計なことをさせないためだ。ブリタニア側から何かしようものなら、逆になるが。
また、決闘である以上死んでも自己責任だ。
『黒の騎士団』からはライルを殺せという声が高い。
「覚悟しろ、『洗脳皇子』!!」
「ユーフェミアに並ぶ大噓つき!!」
「待ってろ!すぐに目を覚まさせてやる!!」
E.U.系にさえ鵜呑みにしている者がいて、『ロンスヴォー』の面々は呆れ果てていた。
海棠はバルディーニに耳打ちをする。ゼラートやクラリス、池田も聞く。
「副司令達を信用しないわけではないが、な。」
「ああ……」
「シュナイゼルに乗せられたような連中だからな。」
詳細は分からない。だが、ゼロの戦死や休戦条約に着いて確認しようにもはぐらかされてばかりだ。彼らの間では一つの仮説が持ち上がった。
何らかの方法でシュナイゼルはゼロと扇達の仲間割れを引き起こさせた。例えば、あの特区日本の事件がゼロによって仕組まれていたというもっともらしい証拠。
それによって、潜在的にくすぶっていたゼロに対する不信感を爆発させて排除を行わせた。それが事実であれば、あの不自然な休戦条約の締結も、ゼロの死亡以外何ら発表もない動きも頷ける。
しかし、これが事実であれば扇達はその手のデメリットをまるで考慮していなかったという事になる。シュナイゼルに乗せられたという事は、つまりシュナイゼルに『ゼロが裏切られた』という最悪のジョーカーを握られたという事だ。
もし、そのジョーカーをシュナイゼルに都合のいい形で公表でもされたらどうなるか。決まっている。
『ゼロは組織乗っ取りを企てた扇達に殺された』と解釈され、合衆国日本どころか『黒の騎士団』も指導者不在で空中分解を起こす。そうなれば、休戦条約それ自体も有耶無耶になり、そこを交渉でブリタニアに下る外交ルートをシュナイゼルは取るだけでいい。
日本奪還という当面の目的さえ果たしてもいない段階でリーダーを殺すような組織が信用を得られるわけがないのだ。
確証はない。只、状況から推測したに過ぎない。
しかし、これが事実であればバルディーニ達も迂闊に踏み込めない。踏み込めば、自分達も裏切りの共犯者にされてE.U.脱退国から自分達が追放される。
『知らず存ぜぬ』を通すのが現状では最良、その上でこちらの派閥で『黒の騎士団』の運営を安定させるように基盤を作る方が良い。
尤も、今この状況ではそれどころではなさそうだし…E.U.としてはまだライルに先日の外交的な恩義を返せていないからだ。
「ライル、貴方なら大丈夫よね…あんな、自分に都合のいいことしか見ない奴らに……」
浅海はライルの勝利を祈っていた。普通ならば、『黒の騎士団』を応援するはずなのに。分かり切っている。
好きだから…あの人が。
ブリタニアの皇子らしく、ナンバーズのことなんか見向きもしなければいいのに……それが植民地政策や世界制覇のためでもナンバーズ側の事情に目を向けていた。
対して、反ブリタニア活動をしていた浅海自身はそれを見向きもせず、都合のいい言い訳しかしなかった。
『いつか、独立がなる。そうすれば、飢えも病気も解決する』
今思い返せば、自分勝手極まりない傲慢な理屈だ。今すぐ、何とかしたい人達の言葉なんか聞こうともしなかった。それを彼に指摘され、ブリタニア当局を恐れて、仲間を抑えようとするゲットーの人々を見て自分の身勝手さを思い知った。
あの時にもう、ライルに心を奪われていたのだ。
パリで、彼に再会した時……あのまま強引に彼と関係を持っていたら彼の側に仕えることができただろうか?押し切られた責任を取る、などと言って骨を折りそうだ。
それは嬉しい一方、罪悪感も覚えてしまった。イレヴンの自分に便宜を計らってくれる上官のデルクや、オランダ軍の仲間を裏切ってしまう事へ。
鈴維はライルの成り行きを見守っていた。あの後、何度か会った。美水のおかげで不足しがちな政治アドバイザーが来てくれたと聞いた。彼女との結婚は母親の暴挙への詫びが他に浮かばなかったというのもあったとか。
本当に、不器用な男だな……
前に会った時もそうだったが、彼は誠実で愚直だ。
多分、私は彼のそういうところに惹かれたんだろう……
「だから、勝って。」
クラリスはローランで待機していた。扇達を信用していないわけではない。だが、ライルの『洗脳皇子』を鵜呑みにするか、今回のような連中が暴れだす可能性は非常に高い。
「まあ、ヴィンセントでもライルならあの素人に毛が生えた程度の連中なら大丈夫だとは思うけど……」
懸念は、勝った後だ。あの素人集団なら、やりかねない。
「理想はこのままライルが勝って、総司令達が素人共を止めてくれることなんだけど。」
いかんせん、今はゼロという抑止力を欠いているため、どうなるか分からない。しかも、ブリタニアの皇子であのユーフェミアに並ぶ極悪人と称されるライルだ。
同僚達をやるのは気が引けるけど……部下を助けてくれた恩人に着くわ。
海棠はため息をついた。クラリスと浅海とは何度か話しており、二人がライルに心を奪われていることに気づいた。海棠とて、四十年以上生きていて女の経験はそれなりに積んでいる。だから、なんとなくわかるのだ。あの二人がライルのことを語る顔が……
「ったく、だからって敵…それもブリタニアの皇子様じゃなくてもいいでしょうに。」
とはいえ、畑方秀作の人生同様に外野の海棠がとやかく言える話でもなかった。彼と話していて、『双剣皇女』の話題も出た。その中で、妹姫のセラフィナ・ギ・ブリタニアのことを語る秀作の顔は輝いていた。もし、冤罪が証明されて今後の流れで秀作がセラフィナと結婚するようなことがあれば……
ああ……色々と浮かぶが、俺の場合はあの馬鹿夫婦が皇族の縁戚を笠に威張りまくる未来しか浮かばない。
今頃あいつらは、地獄でブリタニア騎士として成功を収めた秀作を見て、歯ぎしりしているだろう。いい気味だ。自分でやろうとしなかった報いだ。
「とにかく、今は目の前だな。」
行村がこの場にいなかったのは幸いだ。奴ならば、思いつきの誘拐どころか停泊中の艦を爆破なり攻撃するなりしていただろう。そして、それらしい言い訳で扇達も味方につけようとする。
「まあ、やったら俺がぶっ殺していたが。」
部下や子供達も、今回の件についてはライルよりだ。イタリアの外人部隊や一部正規軍も同意見で、捕虜半分の保護半分という微妙な状態で外国の王族を誘拐しようとしたのだ。軍事的にも政治的にも、国際的にも重大な犯罪だ。外人部隊が嫌うボンクラ共でさえ、流石にまずいと考える手合いがいるのだ。
ライルのヴィンセント一機に対して、今回の騒動を引き起こした久保カイトらは暁五機。圧倒的にライルが不利で、亡命した日本人達もライルが殺されるのを心待ちにしていた。奴が死ねば、洗脳されたナンバーズたちも正気に戻ると信じて疑わなかった。
だが、始める前に……
「久保カイト、飯田有紗から君に伝えたいことがある。」
ライルはケアウェントからスピーカーで蓬莱島全体に届くように伝えた。
〈カイト君……〉
〈有紗…見ていろ、有紗!絶対にこいつを殺してお前を助けるからな!〉
蓬莱島の百万人は歓声を上げる。だが、有紗は……
〈私はそんなこと、頼んだ覚えはないわ。何度も言っている……でも、貴方がそうなったのは私の責任なのかもしれない。〉
そんなことはない。…と、ライルは言わなかった。言ったところで意味がないし、彼女を逆に傷つけるだけだろう。
〈でも、私や他の子達の事情を自分に都合良く解釈して、全部ライル様のせいにしているのは許せない。だから………さようなら。〉
それは、有紗からの絶縁宣言だった。
〈あ、え?…え?〉
「……引き下がれば、『黒の騎士団』からの除名処分に留めて貰うように、私からも向こうに申請するが?」
それは、ライルからこの男へ……いや、有紗への配慮だった。どれだけ腐ろうとも、この男は有紗にとっては戦後、共にハラジュクへ逃げ延びた仲だ…死んだらどれだけ嘆くだろうか。まして、自分がそれをやるのもライルは苦しかった。
〈う、うるさい!!あんなことを言わせやがって!何をしやがった!!〉
「何もしていない…」
〈嘘つけ!どうせ、他の女どもと一緒にベッドで弄んだんだろうが!!〉
「…それは、今ここで関係のある話か?」
〈あるさ!お前はそうやって、ナンバーズの女を誑かしたんだ!名誉ブリタニア人が祖国の被害者も嘘だ!〉
〈そうだ!全部、お前がそう吹き込んだんだ!!〉
〈俺達は正義の味方だ!お前らとは違う!!〉
他の団員達も勢いに任せ、飛びかかった。百万人は五対一でライルが殺されると期待し、それによって名誉ブリタニア人達が目を覚ます栄光の未来を思い浮かべた。
しかし、物事はそう都合よく進むものではなかった。
五機がライルを取り囲む。同時攻撃で一気に仕留めるのは間違いではない。だが、ライルは右前方の一機にグロースターのランスを手に突っ込んだ。ランスに貫かれた中の人間は砕けるが、それに眼もくれずにライルは次の相手を見る。四機がバズーカと機関銃で狙うがライルは停止した暁の一機を投げつけた。
撃たれた暁が爆発し、その爆炎からヴィンセントが飛び出した。左腕にはライフルではなく、先程撃破された暁の廻転刃刀が持たれていた。武器自体は起動し続け、それをそのままもう一機のコクピットに突き刺した。更にスラッシュハーケンで二機の暁の動きを鈍くするだけでなくこちらに引き寄せようとする。敵はフロートユニットで抵抗をするが、その抵抗こそがチャンスになった。ライフルでフロートユニットを破壊して二機は海に落とされる。運が良ければ助かるだろう。
そして、最後の一機久保カイトの暁だ。バズーカと機関銃を装備した重装備タイプだが、完全に尻込みしてる。経験と実力に差があり過ぎたのだ。
〈あ、ああ……〉
「最後のチャンスだ。降参すれば、命は助かる。」
だが、反応がない。完全に我を失っている。
「扇副司令、本人の希望とは言え戦う前に妃にあんなことを言わせた私の責任でもあります。ここまで来てなんですが、彼の戦意喪失という形にできませんか?」
〈あ、はい。そちらさえそれでいいのならば除名処分〉
〈ふざけるな―――――!!!〉
暁がバズーカを撃ってきた。ニードルブレイザーで受け止めてダメージはない。が、そのまま刀を振るう。
〈有紗をここまで!他の名誉ブリタニア人や皇妃もこうやって洗脳して!!ブリタニアがやったことを全部俺達に擦り付けやがって!!〉
「では聞くが、本当に日本とブリタニアに迫害された人間は?私の騎士はハーフだ!」
〈日本人がそんなことするか!百歩譲ってそうでも、悪いのはハーフで生まれたお前の女だ!!日本人は悪くない!!〉
その一言で、ライルの心から完全に有紗への配慮もこの男への慈悲も消えた。ランスを捨てMVSを抜いた。そして、二刀流で接近して相手が刀を振りかぶった瞬間を突いて二本のMVSがコクピットを貫いた。
〈げごぉあ!!〉
「本人にどうしようもないハーフという生まれをあげつらうなんて愚劣にも程がある。死ね。」
二本の剣が更に暁を斬り裂き、中の人間はもう肉片になっていた。その肉片を抱えたまま、暁は爆散した。
深いため息をついて、ライルは再度扇達に確認を取る。
「副司令……こんな結果になりましたが、当初の取り決め通りでよろしいのでしょうか?」
〈は、はい…〉
結局、久保カイトは最後まで現実を見ることをせず、想い人さえ自分に都合のいい形でしか見なかった。挙げ句の果てに『正義の味方』の看板に酔って、それで現実がその通りになる等と喚いた。ライルが嫌う、腐敗したブリタニア貴族と全く同じだった。
「私がこんなことを言う資格などありませんが、奴の発言……ブリタニア貴族と全く同じ言い草ですよ。そこだけは亡命した百万人の皆さんにもお分かり願いたいものです。」
それを言い終えた直後、他のKMF隊が現れてヴィンセントに襲い掛かった。
「覚悟しろ、『洗脳皇子』!!」
ライルはそれに反応し、迎撃しようとする。しかし、先に…
〈なってほしくなかったわ、こんなの。〉
聞き覚えのある声がして、襲ってきた暁を一機両断した。クラリスのローランだ。更に、二本の剣を持った月下タイプ…海棠のモーナットに槍を持った同タイプ、浅海が乗るソレイユも乱入してKMF隊を撃破する。
〈待機して正解だったな。〉
〈扇さん、すみません。勝手なことをしました。〉
海棠のモーナット、更にゼラートのガウェインベースの新型機アルプトラウムもシールドに内蔵されたキャノン砲で暁を撃墜する。他の歩兵や航空戦力はウェンディのシュテルンや暁のE.U.仕様デメルングとローランタイプのオリヴィエが抑えている。
「何を考えているんだ?」
〈助かったんだから良いでしょう?〉
クラリスの正論にライルはため息をつく。
「……星刻総司令、これに貴方は関与していないんですよね?」
中華連邦の新型機神虎に乗る星刻に問う。
〈ああ………それにしてもバルディーニ将軍。動くのが速すぎるのでは?〉
〈申し訳ありません。こちらも個人的な事情で勝手に準備していました。〉
〈個人的な事情、とは?〉
〈彼は先日のフランスとの講和の折に、不正に市民権や軍籍を奪われた者達…更に貢ぎ物にされた女達の復帰に積極的に協力してくださった。我がユーロピア市民の恩人という事になります。〉
ここで、あの時のことを持ち出すか。
〈将兵と市民を救ってくれた礼をしたくて、彼をここに連れてきたのですね?〉
〈ええ、実際に彼に救われた女がいます。今証言を取っても良いですよ。〉
なるほど、浅海は流石にライルとの個人的な距離が近すぎるがあの時助けた女の中には民間人も多い。そちらの方が説得力はあるかもしれない。
〈……分かりました。団員達の暴走を先んじて止めていただいたことには感謝します。しかし、彼への恩義も過ぎればどうなるかはお分かりのはず。しばしの間、不自由を強いることになります。〉
〈ええ、もちろん。ただ、彼らへのエナジーフィラーや水、食料を人道的支援として提供させてください。〉
「……市民と将兵を救ってくれた礼にしては、随分と安い。と言いたいですが、こちらとしても願ってもない展開。そこまでのご配慮、ありがとうございます。バルディーニ将軍。」
〈何、個人的にはあなたや貴方の側近達とは酒も飲みたいものですよ。〉
「生きていれば、機会もありましょう。」
その後、勝手なことをした団員達は藤堂と星刻の元で除名処分が通達された。上層部同士の決定を無視したのだから当然。処刑されなかっただけマシだと思うべきだと千葉や中華連邦の軍人達に窘められた。
そして、予期せぬエナジーフィラーの消耗などについてもバルディーニらE.U.参加軍が先日の恩義を返すという名目で提供してくれた。これで貸し借りなし、という事にするつもりでもあるのだろう。
しかし、この状況ではそれでも十分過ぎるほどだ。シマネと『セント・ガーデンズ』との戦闘で人員はいくらか欠けている。負担はかかるが、水と食料についてはゆとりが生まれた。皮肉なことに、満員分の食料と水をもらいながらも欠員がより余裕を持たせてくれたのだ。
「ったく、大将って実はとんでもねえ幸運なんじゃねえか?」
「あのな……」
ヴェルドが今回の騒動に茶々を入れ、良二が窘める。
「まあ、助かっているのは基本的に殿下の日ごろの行いが良いからだろう。」
「確かに、お前ら二人だったら絶対にこうはならない。」
「せめて、一割くらいはそうなるって言ってよ。」
デビーに幸也がさらに追い打ちをかけ、コローレが落ち込んだ。
「嫌よ、そんな体たらくだから年下に結婚も先越されるんでしょうが。」
雛がとどめを刺し、二人は完全にうなだれてしまった。
「…それにしても、ゼロがいなくなったことがあそこまで響くとはな。」
「大元の素人集団を、ゼロが纏め上げていた。殿下はそう分析していたけど、大凡あっていたようね。」
マルセルとテレサの意見に全員がうなずく。相手はこちらの情報をいくつか持っており、特に名誉ブリタニア人の情報は『フォーリン・ナイツ』の存在もあって相手も積極的に集める。だが、マルセルと幸也のような希少例さえライルの仕業にしているのは酷いとしか言いようがない。正規軍までもがこんなこじつけを鵜呑みにしている。
「こりゃあ、もらうもの貰ったら早々に退散した方が良いんじゃないか?」
「ブリタニア本国と『ユーロ・ブリタニア』の情報は調べたが、殿下が陛下を弑逆しようとしたという情報は公表されていない。『セント・ガーデンズ』もヴァリエール卿が戦死したという報告以外はしていないようだ。」
「それって肝心の皇帝がまた消えたからでしょ?」
そう、あの妙なオーロラの後また皇帝が消えてしまったのだ。シュナイゼルもビスマルクも何も言ってこない。今、極秘に戻っても抹殺命令を出した皇帝がいないのであれば…いや、下手をすればそれを理由にこちらを狙ってくる可能性もある。
「手詰まり、か。」
五日が経ち、『ロンスヴォー』がライル達の警護を率先してやることになった。バルディーニが言う市民と将兵を送り返してくれた恩義に、扇達には末端の牽制を頼みたいとのこと。
もっとも、遠回しに「末端の暴走に対して、迅速に対応できないようでは信用できない」と言っているようなものだった。本流側のブリタニア人の少年ラルフ・フィオーレも副司令の今のありように疑念があるのか『ロンスヴォー』に流れ、中華連邦の楊 鈴維も星刻側とのパイプ役として半ば『ロンスヴォー』に流れている。間違いなく、ゼロの死亡で小さいが『黒の騎士団』は分裂しつつある。
鈴維はライルに会っていた。先日の詫びで、わざわざ中国茶をもって入れてあげて、美水も一緒にいた。
「もう十分だと思うのだが?」
「私の気が済まない。それに…星刻様は私に何か隠しているような気がする。」
「何か?」
ライルが問うと、同席していた美水が…
「例えば、ゼロが本当は副司令達に殺された、とか?」
鈴維の肩が僅かに強張る。どうやら、彼女は星刻のことも疑っているようだ。いや、正確には……
「やはり、副司令達は兄様に乗せられたようだな。」
「そう考えるのは、貴方が弟だから?」
クラリスだ……何故か浅海も一緒にいる。
「内通を疑われるようなことをしているぞ?」
「既にバルディーニ将軍の言う恩義それ自体が内通にされそうよ。バルディーニ将軍の発言権を強化するため、わざとライルの元にこの子達を送って返してもらった…」
「扇さんたちは半信半疑だけど……!」
実際に裏切られ、相手がライルでなければ地獄だった浅海が足を思い切り地面にたたきつける。
「私達は助かったけど、ルーカスや他の貴族に売られた子は帰って来てないのよ!!そっちはどう説明するのよ!!」
「それ以上はよせ……」
「でも!」
「ところで…本当に亡命する気はないの?」
「領民や部下の家族もあるからな、それに本国は私の件どころではない。最近、兄の方も動きが不透明なんだ。」
鈴維もそれに唸る。
「ああ、『グリンダ騎士団』と共にカンボジアに行ったという未確認情報があるが、それっきりだ。」
カンボジア、か。そういえば、あそこのトロモ機関に何かを開発させていたという。アレを今手に入れてどうするつもりなのだ?
考えられるとすれば、扇達を焚きつけて殺そうとしたゼロに逃げられたためだが……
ベディヴィエールが使えないから専用のカスタムヴィンセントで勝負したけど、やはり一方的な勝負。『正規の訓練を受けて現場で鍛えたパイロット』と『勢いだけの素人』の差です。
そして、『ロンスヴォー』は扇達がシュナイゼルに乗せられたとほぼ気付いています。ただし、踏み込めば自分達もゼロ排斥の共犯者になりかねないから素知らぬ顔をしています。叩けば、ほこりは出てくるでしょうけどね。
実際、やらなかったけどアレをもっと都合の良い形でシュナイゼルがばら撒けば圧勝でしたね。やらなかったのは、混乱をブリタニアに飛び火させないため。最小のリスクである種最大のダメージを与えて、自分達がこれ以上巻き添えを食わないようにした。
いつでもチェックメイトをかけられる状態に留めてるんですよね。もっと悪辣にやれば、絶対にチェックメイトだったのに。どのみち、素性とギアスが知られた時点でチェックメイトですが。
そして、流石にE.U.のボンクラ共でもそれはまずいと思う手合いもいます。ボンクラ未満です。
どうも勝負の流れは強引になってしまいました。申し訳ございません。只、これで素人共の暴走を予期はしていても、対処が遅れた扇達と…最初から信用していなかったバルディーニ達である意味差が出てしまいました。
有紗からカイトへの絶縁宣言……実は原稿の段階では決闘の最中だったんですが、流石にそれはまずいと思い……始める前からの絶縁になりました。余計火に油を注いだけど…結果はご覧の通り、全く勝負になりませんでした。
自分達は『正義の味方』だから全てが正しいと思い込んでいる。ゼロでも、こういうバカを制御するのは大変だったでしょうね。だからこそ、藤堂や扇が必要だったのでしょうが。
『正義の味方』の自分達がライルを『悪の権化』だと言えば、世界が肯定する、ライルを殺せばみんなぱっと目が覚めると思ってたんでしょう。実際はそんなことないでしょうから、有紗達を殺して『洗脳皇子に操られた人々を救出したが、洗脳は強固で殺すしかなかった』とか何とか言うでしょう。