重病を発症した幼馴染みの豊川祥子の為に若葉睦は動いた……。

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甘美なるフィナーレ

 

 「祥」

 

 薄緑色の美しいロングヘアーに少し気怠さを感じる野暮ったい目をした少女は自身が口にした少女をジーと見つめる。

 カーテンが閉められ外界と閉ざされた部屋に居るのは……部屋の主、若葉睦と彼女の幼馴染みである豊川祥子の二人のみ。

 CRYCHIC、Ave Mujica……睦は祥子が創りあげた世界に魅せられてきた。

 だがAve Mujicaは活動休止せざるを得なくなった……祥子が重病を発症した為に。

 彼女は今……睦の部屋のベッドで寝ている。

 中世の高貴な王女が如く。

 

 「む、つ……み………」

 

 「なぁに。祥」

 

 「まだ間に合います……まだ貴女は救われます……。お願い……もう……貴女自身を解放してあげて」

 

 「……祥。ごめんね」

 

 

 『もう私は戻れない』

 

 

 

 

 

 —————

 

 

 

 

 

 日に日に彼女の身体は弱くなっていく。

 

 「祥……」

 

 「…睦」

 

 「……私祥に会えて良かった。祥の幼馴染みになれて良かった」

 

 「わ、たくしも……で、すわ………」

 

 祥子が眠る白いベッドはところどころ赤く染まっていた。

 まるで深紅の薔薇に眠る姫のような可憐さと儚さが睦の脳裏に焼き付く。

 

 「……これが私の運命。皆に迷惑を掛けた愚かな女に相応しい末路です」

 

 「祥が愚かなら私はもっと……愚か」

 

 「……はぁはっ……」

 

 「さ、き……」

 

 「……ふふ、今頃初音は気が気じゃないでしょうね。海鈴もかしら……にゃむは愚痴でもたれてるかもしれませんわね」

 

 「かもね。大方当たってそうな予想」

 

 「睦。貴女はどうなのです?」

 

 「うん。祥が苦しむ姿をもう見ていたくない」

 

 睦の手に包丁が握られる。

 

 「……睦ありがとう。私を救ってくださりますのね(・・・・・・・・・・・・・)

 

 「……うん祥。いやオブリビオニス(・・・・・・・)。貴女は神として死ぬ」

 

 「ありがとうモーティス(・・・・・)。さぁ私に与えて甘美で棘のあるフィナーレを」

 

 生々しい音が響いた。

 グチュグチュと音をたて、突き刺された祥子の心臓から止め処なく血が溢れる。

 

 「か、はぁ……」

 

 口からも赤き鮮血が漏れた美しい。

 思わず彼女の口に舌を入れる……血腥いが不思議と嫌悪感はない。

 祥子の体温が急速に下がっていく。

 

 「……む、つみ……わ、たくしは貴女を殺した(・・・)。貴女から二人の………人格を殺した………」

 

 「祥。それは仕方のないこと……。元々若葉睦()は空っぽなんだから。あの子達の不運は役を得てしまったこと」

 

 「…で、も私は……。満足ですわ。あの子達と同じ消失を私自身に与えられ……て」

 

 「祥……」

 

 祥子は息絶えた。

 彼女はずっと気にしていたのだ。

 睦の人格を消失させてしまったことを……。

 

 「祥。余命宣告されてからよく半年以上も生きてくれたね」

 

 『もう私も思い残すことはないよ』

 

 睦は何の躊躇いもなく醜い外界に通ずる窓を開けた。

 聞こえる、外界の煩わしい人の形をしたモンスター達の声が。

 その煩い声も今日で終わりだ。

 

 「……待ってて祥」

 

 

 

 

 

 —————

 

 

 

 

 『ここで元ガールズバンドグループAve Mujicaのメンバー間の監禁殺人事件についてのニュースを報道致します。容疑者若葉睦は豊川祥子さんを2週間前に監禁。現場に突入した機動隊によれば豊川さんは既に亡くなっており若葉容疑者も加担した物と見て捜査を進めています。若葉容疑者は本日突然監禁している部屋の窓を開け警察は拡声器などで投降を呼びかけましたがそのまま飛びおり死亡しました』

 

 「……さきちゃん。睦ちゃん」

 

 部屋からテレビを見ていた一人の少女は迷うことなくキッチンに向かった。

 

 

 

 

 

 

 


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