なんだこれは(なんなんだこれは)
n番煎じの設定垂れ流しでもいいじゃないか

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酒呑童子と鬼滅のやつ

 産屋敷耀哉が齢七つのころである。

 長らく病床に臥せっていた耀哉の父が、突然耀哉に『酒を持ってきなさい』と言いつけた。

 かつて悪鬼を輩出した罪を背負う産屋敷の一族は、仏罰によるものかその身極めて弱く、生まれつき病魔に侵されゆく宿命にある。神職の娘を娶ることでどうにか寿命を延ばしているものの、それは死痛に苦しむ時間が延びるのと同義だ。耀哉は父がその身を蝕む辛苦に耐えきれず、酒に一時の安楽を求めたのかと思った。

 

 困り顔を浮かべる耀哉に、父は死相の浮かんだ顔で、しかし微笑みながらゆっくりと頭を振った。

 

「確かに僕はあまり心の強くない性質だけれどね。使命くらいは果たさなければ……」

 

 酒は産屋敷家の最奥、地下の小部屋にあるという。そも、地下に部屋があることすら耀哉は知らなかった。さらに重ねられた父の一言で、耀哉はさらに困惑を強めた。

 

「小さな酒壺と柄杓があるはずだ。一人で持ってくるように。他の誰にも見つからないようにね」

 

 しかし当主の言は優先されるべき権威を伴う。言われたとおり、耀哉は地下室へ赴き、そこで酒壺を手に入れ、誰にも見つからずに父の自室へと帰還した。人の気配というものは、あれでかなり目立つのだ。特に使命を帯びた人間のそれは、自然のように根強く雄大であるから、察するのは容易い……帰ってきてそう宣った耀哉に、耀哉の父は目を細めて「そうか」と言った。どことなく、安心したような目つきだった。

 

 数度咳き込んでから、父は億劫な手つきで酒壺の封を外す。途端、先ほどまでは微かにも感じられなかった酒気が、部屋いっぱいに広がった。震える手で猪口を支え、柄杓によって掬い上げた透明な液体を少しばかり注ぎ入れると、父はそれを耀哉に向けた。

 

「飲みなさい。一息に」

「は……」

 

 短く、しかし有無を言わせぬ口調。身体は痩せ衰えて久しく、半ば死人のようですらあった父が、この時ばかりは鬼気迫る眼光を宿していた。あるいはそれは、死地に赴く剣士の覚悟の表情にも似ていた。

 

 猪口を受け取り、耀哉は水面に視線をやる。

 そして、言われたとおりにそれを一息で飲み干した。

 

「──!」

 

 熱い。食道から臓腑へと伝う液体は灼熱を帯びたように粘膜を焼いた。一瞬で全身に熱が回り、心臓がまるで強大な生物のそれと取り替えたみたいにドクンドクンと拍動する。その暴力的な強心作用に、耀哉は脂汗を浮かべ、胸を押さえてうずくまった。耀哉とて身体の強いほうではない。裡に潜む怪物を鎮めるように、身体を丸めて耐える耀哉の右手の甲に、藤の花の家紋にも似た痣が浮かび上がる。それを、父はじっと見ていた。

 

 やがて、波が引くように脈拍が緩む。顔をあげ、肩で息をしつつ、耀哉は父の顔と、それから自分の手の甲に浮かんだ文様を交互に見た。説明を求める息子の視線に応えるように、耀哉の父は己の右手に巻かれていた包帯をゆっくりと剥がした。

 

「藤花彫りと原理は似ているけれど、意味は全く違う。それは、こうやって使うんだ」

 

 耀哉は目を瞠る。父の右手の甲にも、痣があった。しかしそれは耀哉のと比べて二回り小さく──まるで、力を失ったような──

 

 その掌を握りしめて、父は力強く宣った。

 

「令呪を持って命ずる。鬼殺の任を継承せよ、酒呑」

 

 掲げた拳から、痣の色が抜けていく。

 耀哉はそれを見上げ、そして、己の隣に誰かが座っていることにようやく気付いた。

 

「――!?」

「なんや、もうええの?」

 

 びゃっと猫のように肩を跳ねさせた耀哉を意にも介さず、少女は流し目を父に向けている。

 着崩した着物の間から覗く生白い肌、少女然とした姿に似合わぬ色香、そして額から天に逆立つ二本の紫角。

 

 『鬼』。

 

 産屋敷家と遠い血縁関係にあるひとりの悪鬼が生み出した、人肉を喰らう化生。それが、鬼殺隊を束ねる当主の傍に音もなく現れるという異常事態に、耀哉は息をするのも忘れた。

 

「うん、僕はじきに死ぬだろうから」

「さよか。ま、約束は約束やさかい、もう少しだけ付き合うたるわ」

 

 2人は示し合わせたように笑い、耀哉だけが状況を理解できずにその様子を見つめていた。だが、心のうちにうっすらと、敵ではないのかもしれないという考えが芽生えていた。その勘が間違いではないことは、父がすぐに言葉で示した。

 

「……彼女は酒呑童子という。鬼舞辻無惨が鬼になる以前から生きている、正真正銘の化生だよ」

「最後まで鬼とは呼んでくれへんのやね。はぁ……これやから紛いもんが看板あげるんは嫌やわぁ」

「君と悪鬼は分けて語られるべきだろう」

「うふ、ふ。こないに角とがらせた鬼捕まえて、悪いことせえへん鬼やって言うんは旦那はんくらいやわ」

「そうでもないよ。だろう、耀哉?」

 

 そうしてようやく、耀哉は酒店の目を見たのだ。とろけるような果実の酒気を帯びた、紫の目を見たのだ。

 

「この痣は彼女に対する絶対命令権。力を籠め、酒呑に命令を聞かせることで、効力を発揮する」

「なぁんでも、なぁんでもや。うちにできることなら、何してもかまへんよ……?」

 

 産屋敷耀哉。齢七つ、流石にまだ初心であった。

 酒呑童子の雰囲気にやや当てられながら、彼はこう口にした。

 

「……ならば、令呪を持って命じます。今代にて鬼撫辻無惨を討つ――その助力、頂きたく」

 

 酒呑童子は満面の笑みを浮かべた。

 まるでようやく願いが叶ったかのように。

 

 

 

▼

 

 

 この時のミーハー転生者の心情を述べよ。(配点10点)

 模範解答は以下のとおりである――

 

 いやはや、ようやく原作に合流できそうで一安心である。500年くらい前に産屋敷家に適当な因縁をふっかけ、わざと知恵比べに負けた甲斐があるというものだ。

 

 ……うん? いやいや、こういうのは力で解決しちゃつまらない。相手の土俵に立つのが様式美ってものだよ。3枚のお札然り、船幽霊然り……酒呑童子伝説然り、ね。

 

 もっとも当時の当主は私の意図に勘付いていたような節もあったが、それはそれ、死人に口なしってやつだ。大事なのは今この瞬間、私が産屋敷耀哉の従者(サーヴァント)となり、原作を最前列かぶりつきで観戦できるチケットを手に入れたということだけ。前当主は過保護気味で隊士の救援にばっかり駆り出されて面白くなかったし、これからは暴れるぞー!

 

 ――なお、本来死ぬはずの隊士を救助したことで原作がとっくのとうに滅茶苦茶になっていることを付記した場合、追加で2点を加算するものとする。

 

 





藤花彫りってそれ令呪令呪令呪
思いついたなら形にせねばアイデアに対して無作法というもの……
転生憑依モノなので自動酒呑童子ロール状態、かつ主人公に衆生救済的な動機は全然ないです

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