イルとダイの大冒険   作:NBRK

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エピローグ

 

 『勇者』と『大魔王』の戦いから2年の時が経った。地上と魔界の統合に伴う混乱こそあれど、世界は概ね平和を保っている。

 

 イルが世界を統合した『大魔王』であることは、結局世に知られることはなかった。彼女の存在はハドラーとの戦いで命を散らした悲劇の少女として人々の記憶に刻まれたのだった。

 

 真実を知る者達からすれば複雑な面もあったが、無理に事実を明らかにして彼女の評判を揺らすことを彼らは避けた。そこには彼女がまたこの世界を訪れた時、少しでも過ごしやすい世界であるように、という願いがあった。

 

 そんな願いを胸に抱きつつ、彼らもまたそれぞれの日常へ戻っていった。

 

 ある者は魔導士としての道を深め、ある少女は故郷の村で暖かな日常を送っている。骸骨の父と共に旅をする剣士もいれば、騎士の国にて責任を取らされた家庭教師もいた。

 

 では、役目を終えた『勇者』はどうなったのか。場面はパプニカ王国の城内に移る。

 

 

「ダイくん、入るわよ・・・ってこらっ!起きなさい!」

 

「むにゃ・・・。わっ、レオナ!?」

 

「もうっ、ずっと見られてると落ち着かないって言ったから自習時間にしたのよ?ちゃんと勉強しないと、また先生をつけるわよ。」

 

「わかってるよ。でもやっぱり勉強は苦手だ・・・。」

 

 

 ぐでっ、と机の上に伸びるダイ。それを見たレオナは一度頬を膨らませた後、仕方ないな、とばかりに苦笑した。こんなやり取りが、彼らの日常となっていた。

 

 戦いの後、ダイはパプニカ王国に食客として滞在していた。

 

 故郷であるデルムリン島、ダイを見初めたロモス、竜を崇めるテラン、師の治めるカールなど選択肢は様々であったが、最終的にはレオナの熱心な誘いに乗る形でパプニカを選択したのだった。

 

 そんな経緯もあって、レオナとダイの仲は周知の事実である。ダイがまだ幼いこともあり正式な婚姻には至っていないが、幸せな報告が世界を駆け巡る日は近いだろう。

 

 そんな立場になったダイは今、2つのことに取り組んでいた。1つは目の前に広がる本の山。パプニカの王族となる為の準備である。もっとも、なかなか順調とは言えない様子ではあるのだが。

 

 そしてもう1つ。

 

 

「あっ、もうこんな時間だ。そろそろ行ってくるね。」

 

「あら、本当ね。・・・戻ってきたら覚悟なさい?」

 

「ひっ。い、行ってきまーす!」

 

 

 そう言ってダイが窓を開けると、外には友を待つ1匹の石の竜が羽ばたいていた。竜はダイの姿を見て、上機嫌に口を開く。

 

 

「遅ぇぞダイ!ようやく見つかったってのにもたもたしやがって!早く乗れ!」

 

「ごめんごめん。よろしくね、ヴェルザー。」

 

「ケッ、行くぞ!しっかり掴まっとけよ!」

 

 

 ダイを背中に乗せて、ヴェルザーは大空へ飛び立った。野を越え山を越え海を越え、辿り着くのは旧アルキードの地。イルとダイが、最後に戦った場所である。

 

 そんな地に降り立ったダイはふっ、と目を閉じ、『竜の紋章』を光らせた。『竜闘気』に反応して、地面のある一点が光を放つ。

 

 すかさずヴェルザーがその場所を掘り起こすと、そこには地下へ続く階段があった。階段の先は何やら青白く光っており、どこか神聖な雰囲気を感じさせる。

 

 

「行こう。」

 

「おう。後ろは任せな。」

 

 

 階段を降りていくふたり。警戒はしたものの、特に障害もなく、あっさりと最深部に辿り着く。

 

 そこにあったのは、質素な台座と、そこに乗るひとつのタマゴだった。

 

 

「間違いねえ。ダイ、触れてみろ。」

 

「うん。・・・うわっ!」

 

 

 ダイが生暖かいそれに触れると、タマゴはドクン、と鼓動を打って揺れ始めた。ピシピシ、と殻にヒビが入り、そこから光が溢れ出す。

 

 そして遂に、それは姿を現した。

 

 

「マザー、ドラゴン・・・!」

 

「・・・彼女には感謝してもしきれませんね。まさか、私を蘇らせるとは・・・。」

 

 

 現れたのは、ダイ達『竜の騎士』の母とも言える存在、『マザードラゴン』だった。最後の力をイルの蘇生に注ぎ、その存在を消した彼女は、奇しくもそのイルの『配合』によって再びこの世に生を受けることとなった。

 

 

「カカカッ!イルの野郎、世界を無茶苦茶にして帰っていったと思ってたが、こんな準備をしてやがったのか!天界が廃れた今、この世界には管理者が必要だ・・・あいつはこの世界に『神』を置き土産として置いていったってわけだ!」

 

「そういうことですか。こうもお膳立てされた上に、恩まであるとなれば、その役目を引き受けないわけにはいかないですね。」

 

「・・・ねえ、マザー。イルのことなんだけど・・・。」

 

 

 この世界の新たな『管理者』となったマザードラゴンに、ダイはおずおずと願いを告げた。それを聞いたマザードラゴンは、もちろん、と頷いた。

 

 

「私はイルによって生み出された存在です。彼女の痕跡を辿ることなど造作もありません。」

 

「本当に!?それじゃあ!」

 

「・・・何なら、もう来ているようですよ?実質イルの配下である私が、この世界の『管理者』となること自体が『カギ』だったようです。」

 

「!!」

 

 

 マザードラゴンの話を聞いて、ダイは外へ続く階段を駆け上った。外に出たダイは辺りを見渡す。そして見つけた。緑の装束。赤いおさげ。記憶より少し伸びた背。

 

 少女もダイに気づいて振り返る。そしてころころと笑い、鈴のような声で問いかけた。

 

 

「ねえ、勇者よりかっこいい職業を知ってるかな?」

 

「・・・モンスターマスターはやめとくよ、って前から言ってるでしょ?」

 

 

 ええっ、と少女は大袈裟に驚いてみせる。メソメソと泣く振りをしたのち、けろりと表情を変え、少女は笑顔で言葉を紡ぐ。

 

 

「ただいま!」

 

「おかえり、イル!」

 

 

 

 

 

 




これにて、イルとダイの大冒険は完結です。

約7ヶ月の長い連載となりましたが、沢山の方に応援いただきとても楽しく書かせていただきました。

ここまで読んでいただいて、本当にありがとうございます。是非感想や評価を聞かせてもらえれば幸いです。また、活動報告にあとがきを掲載するので、興味があればそちらもご覧ください。

繰り返しになりますが、この物語を見守っていただき本当にありがとうございました。

次回作の投稿予定は未定ですが、皆さんとまたお会いできる日を楽しみにしています。
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