あれから荼毘、トガ、死柄木はヒーローに敗北。及び死亡。
スピナーは病院内で黒霧を解放後、取り押さえられ、捕まった。
そして楓も同様に捕まっている。
戦いの後、アメリカをはじめとした多くの国からたくさんの支援が続々と届き、手付かずだった復旧作業が急速に進んでいた。
ヒーロー社会も大きく変わった。
あの後群訝山荘に来た荼毘との戦いにより元No1ヒーロー、エンデヴァーは負傷、ヒーロー活動を引退。
また、ホークスについても同様にヒーロー活動を引退し、公安委員長に就任した。
いまだ復興ばかりで、治安の戻っていない全国各地で敵の出現は絶えないが、それでもヒーローは健在。即制圧されるのが日常となっていた。
そんな中、敵病院で療養する楓のもとに、面会の知らせが届く。あいては緑谷 出久。死柄木を破ったヒーローだった。
「どうしたのさ?私ら別に接点なんかないでしょ?」
「話を、しにきた。
君は、どうして敵になったの?」
緑谷の言葉に楓はせせら笑って返した。
「保須で言わなかったっけ?楽しむためだよ」
「あれは敵になったからにはって言葉だった。敵になった理由じゃない」
「そうだったっけ?...うーん、そうだなぁ」
楓は思い返すように頭上を見上げ、少しずつ話す。
「私は、最初から敵だった。
個性が発現したその瞬間からね。
...4歳のころから犯罪を繰り返して、10歳で親を殺して、裏社会に入ってからも殺し続けた。
それが...当たり前だった。悪いことだってのは知ってたけどね。
でも...生きるため...いや、違うね。騙すためにそれを続けた。」
「騙すため?」
「私の個性は聞いてるでしょ?【詭術】、すべてを騙すための力。
...一度やったのなら、より大きく、全部を欺いてやる。私にはそれだけだった。
こんな個性をもって、こんな舞台に立って。私は小さいままじゃ終われなかったんだよ」
緑谷は楓の答えに押し黙ってしまう。
「で、それを聞きに来ただけ?」
「いや、死柄木の最期を伝えに来た。死柄木が伝えてほしいって。
...死柄木は、最後まで壊すために戦ったって。」
それを聞いた楓は笑いを返す。
「アッハ!...じゃあ私も、欺くために戦うんだよ」
その言葉に緑谷は構える。
「何を...!?」
「今じゃないよ。それに、
構えを解いた緑谷はまっすぐに楓を見据えて言う。
「何をするのかはわからないけど、ヒーローは何度だって君を止めるよ」
そういって出て行った緑谷を見送った楓はだれに言うでもなく呟いた。
「止める...か...私はとっくに動いてないんだよ...」
それから数か月。
楓はその罪の大きさから裁判による判決は死刑。楓自身もそれを受け入れていた。
そしてすぐにその時はやってくる。
――死刑執行日
「今日、お前の死刑が執行される。最後の晩餐に希望は?」
早朝に告げられた宣告に楓は無表情のまま答える。
「...寿司がいいなぁ」
それから寿司を食べ満足げな彼女に死刑は執行される。
「...何か言い残すことはあるか?」
「うん。あるよ。」
楓はその場で天を見上げ、声を張り上げた。
「世界よ!答え合わせをしよう!
...私はとうの昔に、死んでいた」
その言葉と共に個性の使用を検知するセンサーが唸りを上げる。
「な、止めろ!」
その声に看守が止めに入るが、その瞬間、
彼女の体が爆ぜ、肉片が周囲に飛び散っていた。そこには様々な傷跡が残されていた。
打撲、切傷、裂傷、火傷痕...
その光景に看守は大パニック、刑務所は一時、騒然となったのだった。
最後に一つ、昔話をしましょう。
藤堂楓、彼女は四歳で【幻】の個性を手に入れ、それから10歳になるまで、親に促されるまま窃盗、スリなどの軽犯罪に手を染める日々を送っていました。
両親がともにヴィランで、暴力に耐えながら指定されたものを盗み出す日々。
幼い体には二人の大人からの暴力は耐えられず、しかし巧妙に服の下に傷を隠しているため、世間体として入れられた小学校では誰にも気づかれない。
そんな日々を送る中で、彼女は何度も絶命しました。そう、何度も。
両親にとっては子供の生死など興味もなく、彼女の周り、担任や同級生、その親は彼女が暴力を振るわれていることは知らない。
だからこそ、死んだなどとは考えなかった。いや、生きていると信じていました。
”万人が信じる嘘は真実になる”
これこそが彼女の本当の個性【詭術】の真の力でした。
彼女は生き返った。いや、初めから死んでいなかった。
何度も死を繰り返すうちに自身の個性を理解した彼女は両親を殺して自殺に見えるように偽装し、裏社会に飛び込んだ。そうして今日まで生き残ってきました。
最後の瞬間に彼女は、世界に真実を叩きつけたのです。今までのは全て噓。私は最初から死んでいると。
藤堂楓は彼女の生涯の、その最後の瞬間まで、世界を欺き続けたのでした。
ここまで読んでいただき本当にありがとうございました。
想像以上に多くの人に読んでいただけたようで感謝が尽きません。
次の作品書くかどうかとかは特に考えていませんが、ご縁があればまたお会いしましょう。
改めまして、ありがとうございました。