のんのんびより ― ある田舎男子の日常 ―   作:NIZI

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第9話 念願のツーショットを撮った

 

 朝食を終えた食堂には、まだのんびりとした空気が漂っていた。

 

「このちゃんとひか姉の様子はどう?」

 

 小鞠ちゃんが少し心配そうな顔でこちらを見る。

 

「半分くらいとはいえ、朝食はある程度は食べられたから、少し休めば大丈夫だとは思うけど、大事を取って昼頃までは休んでもらうことにしたよ」

 

 そう答えると、「そっかぁ、せっかくの旅行なのに残念だね」と、なっちゃんが少し肩を落とす。まぁ、その気持ちは分かる。せっかくここまで来たんだ。皆で一緒に行きたかったに決まってる。

 

「まぁ、無理をして悪化したら元も子もないし、今日は自由行動だから、こういうのもアリだと思うよ」

 

 そう言って笑ってみせると、今度は蛍ちゃんが申し訳なさそうに頭を下げた。

 

「私達だけ先に行ってしまって、すいません……」

 

「大丈夫。気にしないで楽しんでおいで、蛍ちゃん! こっちも、二人がある程度回復したら、ゆっくり散策するつもりだし!」

 

 せっかくの旅行だ。誰かが遠慮して部屋に籠もる必要なんてない。それに、オレ自身も今日は“観光を満喫する日”というより、“のんびりと過ごす日”くらいに考えていた。

 

「じゃあ、どこかで会うかもしれないんな!」

 

 れんげがぱっと顔を明るくする。

 

 楓ちゃん達みたいに船に乗って遠出する訳じゃない。この小さな島の中なら、案外ふらっと鉢合わせすることもあるだろう。

 

 そんな風に考えていると、今日のみんなの案内役を務めるあおいちゃんが、にこりと笑ってこちらへ向き直った。

 

「何かあったら、宿の人間、誰でも良いので、声をかけて下さいね!」

 

「ありがとうあおいちゃん。今日はみんなの案内、よろしくね!」

 

「はい! それでは、行ってきます!」

 

 元気な声と共に、なっちゃん達は宿を出ていった。

 

 ばたばたとした足音が遠ざかっていき、玄関の戸が閉まる。すると、さっきまで賑やかだった食堂が急に静かになった気がした。

 

 これから、なっちゃん達はあおいちゃんの案内で島の名所巡りをするのだろう。

 オレも一応、二人が回復した時のために、徒歩で回れそうな場所をいくつか聞いておいてある。

 

 二、三ヶ所――いや。

 

「一つでも行けたら御の字だな……」

 

 小さく呟きながら、事前に貰っていた手作りの島内マップを広げる。

 

 紙には所々にデフォルメされた牛のイラストが描かれていて、観光用というより、誰かが丁寧に作ってくれた案内図みたいな温かさがあった。簡易的な地図なのに不思議と見やすく、道順も頭の中で自然と組み立てやすい。

 

「だとすると、まずは宿から一番近いこの桟橋から回って、そこから初日に泳いだビーチを通って南下して行ってっと……」

 

 指で道をなぞりながら、オレはああでもないこうでもないと、のんびり今日の予定を考え続けていた。

 

――――――――――――――――――――

 

 四人部屋――サンダンカの間。

 

 昼前の柔らかな光が障子越しに差し込み、部屋の中をぼんやり明るく照らしている。そんな中、冷房はしっかり効いていて、室温は快適そのもの。

 

 ……しかし、マジかよ。

 

 いや、もうみんな出かけてるんだから、こうなるのは必然なんだけどさ。

 

 ……今この部屋は、私とこのみの二人きりだ。

 

 布団の中で天井を見上げながら、私は心の中で盛大に頭を抱えていた。

 

 このみは昨日のことを「ほとんど覚えてない」なんて言っていたけど、正直どこまで本当だか怪しい。アイツのことだ、全部覚えた上でシラを切ってる可能性だって十分ある。

 

 ……というか、何より気まずいんだよ!

 

「ひかげちゃん、起きてる?」

 

 布団越しに聞こえてきた声に、私は小さく顔をしかめた。

 

 いっそ寝たふりしてやり過ごしたい。だが、話しかけられて無視するのも居心地が悪くなる。

 

 それに――あの時の、身の毛もよだつような顔。アレを思い出すと、どうにも警戒してしまう。

 

 でもまあ、普通に話しかけてきたってことは、少なくとも今は落ち着いてる……って考えていいのか?

 

 

「起きてるけど、なんか用?」

 

「用って程でもないんだけどさ……、昨日の出来事について、少し気持ちの整理をしたくて……」

 

「なんだ? お前がよしおを笑えないくらいのブラコンだった事以外で何か気になる事でも?」

 

 軽口混じりに返すと、このみは「うっ」と小さく言葉を詰まらせた気配を見せた。

 

「その、私が昨日よっくんにした事を思い出してきて、今更だけど、少し恥ずかしくなってきてね……」

 

 視線を向けると、このみは頬を赤くしながら布団を口元まで引き上げている。

 

 まぁ……そりゃそうだろ。実の弟にべったり張りついて、キスまでしてたんだから。

 

 もし自分だったら、恥ずかしさだけで数日は寝込める自信がある。そもそも私はあのバカにそんな事しないけどな。

 

 ……そういえば、東京行く前にキスせがまれた事があったっけ。

 

 ……いやいやいや、何思い出してんだ私は。しないから……。

 

 突然思い出してしまった思考を振り払いながら、私は無理やり咳払いをした。

 

「なんだ……、一体何を思い出したんだ? 言ってみ?」

 

 気持ちを切り替える意味を込めて、軽い気持ちで尋ねた。

 

 

「えっと……、私がベッドの中で、よっくんのチ〇〇をな●●●してた事なんだけど……」

 

知るかアホ! 一人で勝手に悶えてろ、この痴女!!

 

 

 ……思わず全力でツッコんだ。

 

 急に何を言い出すんだコイツは!? 別の意味で頭痛くなってきたわ!

 

「ひかげちゃんが言えって言ったのに……。でもごめん、流石にベッドの中は、見る事が出来ないよね……」

 

「当たり前だろ!! 見えてたら今頃もっと気まずいわ!」

 

 もう本当に勘弁してくれ……。額を押さえていると、このみがふっと小さく笑った。

 

 その笑い方はいつもの調子に近かったけど、どこか無理に明るく振る舞ってる感じもあった。

 

 

「でもさ。ひかげちゃんって、ズルいよね?」

 

「また何だよ、急に……」

 

「だってよっくんに一番頼られてるじゃん?」

 

 

 ――ああ。

 

 その言葉を聞いた瞬間、昨日このみが見せた、あのぞっとするような表情の意味が、少しだけ理解できた気がした。

 

「昨日、私の事を凄ぇ顔で見てきた事に関係あるのか?」

 

「……私、そんな凄い顔してた?」

 

「してたしてた! 視線だけで人殺せそうだったからな!? 寿命縮んだわ!」

 

 半分冗談、半分本気だ。あの時のこのみ、マジで怖かったんだぞ。

 

「ごめんね……、でも私、自分でもびっくりしてるんだ」

 

 ぽつりと落ちた声は、さっきまでの軽い調子とは違っていた。

 

「何が?」

 

「よっくんが少し離れたと思っただけで、あんなに取り乱しちゃった事……」

 

 このみは布団を胸元まで引き寄せ、指先でぎゅっと握りしめる。そしてポツポツと語り始めた。

 

「昔からね、よっくんって、いつも私の後ろをついてきてたの。痛い目にあったら泣いて、困った時は真っ先に助けを求めて来て……それが当たり前だった」

 

「まぁ、"助けて"、"なんとかして"は、あのバカの口癖みたいな物だしな」

 

 実際、昔からよしおはそういう奴だった。面倒ごとがある度に、すぐ誰かに泣きつく。私も何度も丸投げに近いSOSを向けられたし、特にこのみに対しては、それが顕著だった。

 

「でも今は、受験勉強もちゃんと続けて、蛍ちゃんや、今回の旅行でも、宿の娘さんとも、自分の力だけですぐに打ち解けて、自分の足で歩いてる」

 

 語り口が少しだけ震えてくる。

 

「それって本当は嬉しいことのはずなのに……」

 

 そこで、このみは小さく苦笑した。

 

「私がいなくても平気なんじゃないかなって思っちゃってさ……だから、きっと、つい確かめたくなっちゃったのかな……?」

 

 そこで言葉が途切れる。

 

 部屋の中には、冷房の低い駆動音だけが静かに流れていた。

 

 障子越しの光は柔らかく、外からは遠く波の砕ける音がかすかに聞こえてくる。

 

 このみは布団を胸元まで抱え込んだまま、しばらく俯いていた。

 

 まるで、自分でも上手く言葉に出来ない何かを、ゆっくり探しているみたいだった。

 

「何をだよ」

 

「よっくんの中で、私はまだ『特別』なのかなって……」

 

 そこまで言って、照れ隠しみたいに肩をすくめてみせた。

 

 ……なるほどな。

 

 昨夜のあの異様な執着も、全部ここに繋がってたのか。

 

 このみはいつもの調子で笑ってごまかしてるけど、多分これ、かなり本音だ。

 

「いやー、まさか実の弟のアレをその手で確かめる事になるとは思わなかったけど♪」

 

「確認方法が完全に方向性見失ってんだよ! 体温計じゃねぇんだぞ!!」

 

「いや、我ながらどうかしてたよ♪」

 

 このみは吹き出した。

 

 でも、その笑い声の奥に、少しだけ泣きそうな響きが混じっている気がした。

 

「……変だよね。こんな歳になっても、置いていかれるのが怖いなんてさ」

 

 私は天井を見上げて、深く息を吐く。

 

 重い。

 重すぎる。

 

 本当にめんどくさい姉弟だ。

 

 なんで私がこんな湿っぽい話の相談役をやってんだよ。よしおといい、このみといい、私を何だと思ってんだ。

 

 でも――。

 

「とりあえず断言してやる。あのバカがお前を特別だと思ってないわけないだろ」

 

「……そうかな」

 

「そうだよ。あいつの中の一番は、間違いなくお前だ。さっきだってみんなの前で言ってただろ! "旅行よりもお前と一緒にいたい"ってさ!」

 

 そう口にすると、さっきまで張りつめていた空気が、少しずつほどけていくのが分かった。

 

「なんだ、聞こえてない振りして、ひかげちゃんもしっかり聞いてたんだね……。 "重要なのは、どこへ行くかじゃなくて、誰と一緒に過ごすか"って言葉」

 

 ……ん?

 

 そんな事言ってたのか、アイツ。

 

 私は「またシスコン発言してんな」くらいにしか思わなくて、適当に聞き流してたんだが。

 

 どうせまた漫画か小説の受け売りだろ。アイツのことだし。

 

「つまり、お前が重度のブラコンだって事は昨日嫌ってくらい思い知ったし! アイツも同じくらいは重いシスコンなんだよ!」

 

「そうかも……、ひかげちゃん、ありがとね……」

 

「別に……」

 

 お礼を言われるようなことは言ってない。ただ、事実を言っただけだ。

 

 でも、これだけはちゃんと言っておかないとな。

 

「いいか? 今回みたいな心臓に悪い事はまっぴらだ! 今後は、不安になったら、普通に相談しろ!」

 

「うん!」

 

 このみは力強く頷いた。

 

 その笑顔を見て、胸につかえていたものが少しだけ軽くなる。

 

 なんだかんだで、こいつはただ怖かったんだろう。

 大事なものが、少しずつ変わっていくことが。

 

 

 

「ただいまー!」

 

 そんな中、部屋の空気をぶち壊すような明るい声と一緒に、よしおが能天気な顔で戻ってきた。

 

 両手には、茶色い筒のような物が山ほど抱えられている。

 

「二人とも、大分顔色良くなってきたな! ほら、女将さんから採れたてのサトウキビを貰ったから、一緒に食べよう!」

 

「ほぅ、これが砂糖の原料の……」

 

「かじると甘い汁が出るんだ!」

 

「へー、なんか美味しそう! やってみよっと!」

 

 

「ざわ……ざわ……ざわ……」

 

 早速齧ろうと思って手に取ると、よしおは意味深な表情で、意味不明な効果音を口にし始めた。

 

「なんだ? そのアゴが尖った連中が麻雀始めそうな音は?」

 

「サトウキビ畑のうた!」

 

「"ざわわ"だろ! "わ"がひとつ足んねえよ!」

 

 ……コイツもコイツなりに変わってんのか?

 

 このみが言うんだから、きっとどこかしら変わってるんだろう。

 

 でも、こういうくだらないやり取りをしてる姿を見ると、やっぱり昔のままな気もする。

 

「ひか姉! 見てこれ! パンフレットにさ! 書かれてるここ! この部分!」

 

 よしおにぐいぐいパンフレットを突きつけられる。

 

 

 何気なく視線を落とすと、そこには『皆治(カイジ)浜』の文字。

 

「ひか姉ひか姉! 今こそ言うべきだよ! "エスポワール!"って!」

 

「いや"エンポール"だろ! 多重債務押し付けられそうな挨拶にすんな!」

 

「二人ともさっきから何を言ってるのか分からない……やっぱり悔しい……」

 

 このみがジト目でこちらを睨んでくる。

 

 いや、そんなことで嫉妬されても困るんだが。

 

「フフフ、姉ちゃん……、これはオレとひか姉だけの特別な絆……、例え姉ちゃんでも入り込む余地はないぜ!」

 

「そうなのか? 私も今初めて知ったんだが……」

 

 私も初耳だからそんな目で見んな。

 

 あと、よしお。意味もなく煽んな。

 

 やっぱコイツ、根本的には全然変わってねえじゃん。

 

 呆れ半分でため息をつきながら、私はサトウキビを一本手に取ってかじる。

 

「お、甘っ!!」

 

「あ、ほんと! おいしい!」

 

「だろ? 頭が痛い時は甘い物だ! まだまだあるから、沢山食べて早く元気になろーぜ!」

 

 窓の外では、相変わらず波の音が穏やかに響いていた。

 

 とりあえず今は、焦らず休むとしよう。

 

 少しでも元気になって、一秒でも多く、この島を回れるように。

 

――――――――――――――――――――

 

 そして午後。

 

 昼前まで部屋でゆっくり休んでいた姉ちゃんとひか姉も、ようやくある程度は動けるくらいまで回復した。まだ本調子とは言えないけど、二人とも顔色は朝よりずっと良い。

 

 オレ達は宿のすぐ隣にある沖縄そばの店で軽く昼食を済ませて、そのまま歩いてすぐ近くにある桟橋へ向かうことにした。

 

 民宿から歩いてほんの数分ほど。集落の道を抜けた瞬間、視界が一気に開けた。

 

 空と海の境界が分からなくなるほどの青の中へ、真っ白な桟橋が、一直線に伸びている。

 

 まるで海の上に浮かぶ道だった。

 

 陽射しを反射した白いコンクリートは眩しいくらい輝いていて、その先端は、遥か遠くの水平線へ溶け込むみたいに霞んで見えた。

 

 海の色は、言葉にするのが難しいくらい綺麗だった。浅い場所は透き通るようなエメラルドグリーンで、少し先は青、それより遠くは濃紺へと変わっていく。

 

 しばらく言葉が出なかった。ただ、潮風だけが静かに吹き抜けていく。

 

「すごいや……どこまでも続いてる……」

 

 ひか姉が思わずって感じで呟く。その声には、普段のひねくれた調子がほとんど混じっていなかった。

 

「まるで海の上を歩いてるみたいだね」

 

 姉ちゃんも、目を細めながら静かに笑う。桟橋は、海へ向かって長く伸びたコンクリートの一本道だ。

 

 左右を見渡しても、遮るものは何もない。

 

 足元にだけ白い道が続いていて、その両側には、どこまでも青い海が広がっている。

 

 一歩進むたび、本当に空と海の間を歩いているみたいな、不思議な浮遊感があった。

 

 潮風が吹き抜ける度、服の裾がばさばさ揺れた。オレは念のため、少しふらつき気味の姉ちゃんへ手を差し出す。

 

「姉ちゃん、危ないからちゃんと掴まってろよ」

 

「うん!」

 

 姉ちゃんは素直にオレの腕を掴んだ。

 

 その手はまだ少しだけ力が弱い。

 

 やっぱり無理させない方が良かったかな……なんて考えてしまう。

 

「無理そうならすぐ戻ろうな?」

 

「大丈夫だよ♪ 今日のよっくんは心配性だね?」

 

「そりゃ、ついさっきまで寝込んでたしな……。ひか姉も、そこから先は立ち入り禁止だから戻ってくるんだぞ!」

 

 桟橋の先端部分には、老朽化のせいか立入禁止のロープが張られている。なのにひか姉は、そのギリギリまで平気で歩いて行こうとしてた。

 

「よしおのくせに私に注意とか生意気じゃん……」

 

 そう言いつつも、ひか姉はちゃんと戻ってくる。その姿がなんだか少し面白くて、オレは思わず笑ってしまう。

 

 海を渡る風は心地良く、立ち止まっているだけで体の熱がゆっくり抜けていく。

 

 波の音は穏やかで、遠くでは小さな船が白い航跡を引いていた。

 

 桟橋の先は、途中で途切れている。

 

 本当ならもっと先まで行けたのかもしれない。でも今は、そこで終わっている。

 

 だけど、不思議と嫌な感じはしなかった。

 

 むしろ、その先が見えないからこそ、海はどこまでも広く感じるのかもしれない。

 

 隣の姉ちゃんは、潮風に髪を揺らしながら黙って海を見つめていた。

 

「せっかくだし、写真撮ろうぜ!」

 

 そんな中、ひか姉は携帯を取り出してカメラをこちらに向けてきた。

 

「よっくんよっくん! 二人で並んで撮ろうよ♪」

 

「あ、うん……わかった……」

 

 それをみて、姉ちゃんは笑みをこぼしてオレの近くへと寄ってくる。昨日の事を思い出して、少し身構えてしまったけど、流石にもう酔いは抜けてるだろうし大丈夫か……。

 

 オレも姉ちゃんの方に身を寄せて、そのままつつがなく写真は撮られた。

 

 

「ひかげちゃん! つぎは私のカメラで、よっくんとのツーショットを撮ってあげるよ♪」

 

 撮影が済むと、今度は姉ちゃんがひか姉に提案をする。お! これは念願のツーショット写真のチャンス!? ……あ、姉ちゃんとの写真は家族だしノーカンノーカン!

 

「いや私は別に……」

 

 ひか姉は遠慮がちになる。ここでオレががっつき過ぎると逆効果か? だが……、しかし……、撮りたい! 凄く撮りたい……!

 

 うずうず……うずうず……

 

「……はぁ……、わかったから、こっちこいよしお……」

 

 そんなオレの願いが通じたのか、ひか姉は仕方ないと言わんばかりの表情でオレを手招きしてくる。 やったぜ!

 

「おい! 暑苦しいから離れろ!」

 

「えー? 姉ちゃんともこれくらいくっついて撮ったんだけど……」

 

「私をこのみと一緒にすんな! やっぱり一人で撮るか……?」

 

「わー! ごめんごめん! 少し離れるからやめないでお願い!」

 

 そんなやりとりの後、姉ちゃんの携帯からシャッター音が鳴る。

 

 念願のツーショット写真を手に入れた! 

 

 

 空は高く、雲はゆっくり流れていく。

 

 時間まで、島の空気に溶けてしまったみたいだった。

 

 この景色を三人で見られただけでも、ここまで来た甲斐はあった。

 

 まだ時間はあるし、二人もまだまだ元気だ。次は何処へ向かおうかな?




ひか姉が丁寧にフラグを立てました。回収はりぴーと編の後半の話になります。

今回訪れた場所“西桟橋”は、劇場版公式サイトのトップ画面にもなっているキービジュアルの舞台です。劇場版本編では訪れていない場所だったので、今回よっくん達にしっかり回ってもらいました。

これまでの流れも含めて、ひと区切りついた回になったと思います。あとはよっくん達に、もう少しだけのんびり観光を楽しんでもらえればと思います。
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