かろうじて息しているので、しれ〜っと投稿。
トーナメント戦に変更あり。大筋は変わらないはず。
それでは本編どうぞ!
「それじゃあ組み合わせ決めのくじ引きしちゃうわよ。組が決まったらレクリエーションを挟んで開始になります!」
(えっ……ちではあるんですけど、男の子のときより幾分か大丈夫ですね)
【桜】の和装の上着を肩に掛けながら、性別変化の恩恵をしみじみと感じる。逆に、気に入っている男子に近づくとまだ少しドキドキするようで、今は肌が見えない葉隠や色気の少ない耳郎(※枝瑠職比)の近くかつ、B組寄りの外周に立っている。
鉄哲からの驚愕の視線に気付いていないフリをしながらミッドナイトの進行に耳を傾ける。
「レクに関しては進出者16人は参加するもしないも個人の判断に任せるわ。息抜きしたい人も温存したい人もいるしね」
(レク……運動会みたいなもの?)
小学校・中学校の運動会に似た競技内容のレクリエーションに興味を持っていない枝瑠職は参加するつもりが無いらしい。
「んじゃ1位チームから順に……」
「あの……! すみません」
抽選ボックスを持つミッドナイトの言葉を遮り、申し訳なさそうに尾白が片手を上げた。その表情は憂いに満ちていて今から紡ぐ言葉が明るい話題ではないことを物語っていた。
「俺、辞退します」
──なぜ? そんな困惑が彼の周囲の生徒へ広がっていく。A組の面々が口々に尾白へと疑問を投げかけていく。
「尾白くん! 何で……!?」
「せっかくプロに見てもらえる場なのに!!」
「騎馬戦の記憶……終盤ギリギリまでほぼボンヤリとしかないんだ。多分、奴の〝個性〟で……」
“奴”──尾白が参加していたチームの騎手、そして普通科唯一の通過者である
「チャンスの場だってのはわかってる。それをフイにするなんて愚かな事だったのも……! でもさ! 皆が力を出し合い、争ってきた座なんだ。こんな……こんなわけわかんないまま“そこ”に並ぶなんて……俺には出来ない」
「素晴らしい心持です! 尾白くん!」
「せっかくなら……」「気にしなくていい」──誰かが言おうとした、尾白が求めぬ言葉を遮り、枝瑠職が声を上げた。【白耐性】を持つ【桜】*1の影響によって心の琴線が厚くなっているにもかかわらず、
「ありがとう……というかなんで君チアなんだ……」
「…………僕も同様の理由から棄権したい! 実力如何以前に……何もしてない者が上がるのは、この体育祭の趣旨と相反するのではないだろうか!」
「なんだこいつら……! 男らしいな!」
「貴方もですか! 貴方も素晴らしい人ですね!」
尾白の絡まれ方を見ていた
《何か妙な事になってるが……》
《ここは主審ミッドナイトの采配がどうなるか……》
「そういう青臭い話はさァ……好み!!!」
──庄田、尾白の棄権を認めます!
彼女は陰鬱とした晴れ晴れとしない空気を鞭で裂いた。
自由が校風の雄英らしく、主審の好みで決まったが結果として2人の要望は通った。ちなみに、尾白と同じ立場にあった青山は出場する気のようだ。まぐれであれ何であれ手に入れたチケットを手放さないのも一つの選択。誰も彼を咎めることはできない。
空いた2人の枠にはB組の鉄哲チームから鉄哲、塩崎が選ばれた。順当に行くのであれば、5位の拳藤チームだったが、大した活躍のできなかった自分たちではなく、試合全体を通して上位を保ち、より上を目指して奮闘していた鉄哲チームに権利を譲った。
そこにも感銘を受けた枝瑠職が再び騒ぎ立とうとしていたが、進行が遅れてしまうことを心配した葉隠によって開いた口にポンポンを押し当てらる。
「ちょっとだけ静かにしててね~」
「もがもが……!」
「というわけで、鉄哲と塩崎が繰り上がって16名! 組はこうなりました!」
大型モニターに表示されたトーナメント表は以下の通りである。
第1回戦 緑谷───心操
第2回戦 轟────瀬呂
第3回戦 八百万──枝瑠職
第4回戦 飯田───発目
第5回戦 上鳴───塩崎
第6回戦 常闇───青山
第7回戦 鉄哲───切島
第8回戦 麗日───爆豪
「最初のお相手は……八百万さんだぁ!」
物を作り出す〝個性〟。その仕様は自分の〝個性〟とは大きく異なるが、入学時の体力テストからずっと気になっていた相手との間に用意されたリングに心躍らせる。
枝瑠職が気に入るメンバーが多く集まったトーナメント。今までのような全員が同時に争う戦場ではない。正真正銘、己の力だけをぶつけ合う1対1の
(ああ……とてもとても楽しみ……待ちきれない!)
エゴの押し付け合いこそが枝瑠職の根底でありルーツ。自分自身の価値を初めて見出し、認められた取り柄。それを全力で発揮できる、数少ない機会。
(絶対に負けません!)
枝瑠職の胸の内を支配するのは勝利への貪欲さ、
《よーしそれじゃあトーナメントはひとまず置いといてイッツ束の間。楽しく遊ぶぞレクリエーション!》
──この後滅茶苦茶応援した。【リストカッター】【今日の表情】【悲鳴】*2を交互に切り替えて心を落ち着かせ、柔らかい体を利用した葉隠とのアグレッシブなパフォーマンスは好評であった。急に現れる気色の悪いマスクと、鮮血滴る手首の包帯による分のマイナスをぎりプラスで補えるくらい好評であった。
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「枝瑠職って……
一回戦が始まる前、セメントスがセメントを操って戦いの場のステージを形成しているときのこと。A組の生徒に用意された観客席で上鳴がふと思わずといった様子で呟いた。
「どっち? どういう『どっち』ですか!?」
「いや……だからその……さ」
視線が2人に寄る。そうでなくとも耳を傾ける。
人にセンシティブな事を訊いていると上鳴は分かっているため、質問内容の明らかな開示をしようとはしていないが、雄英に合格できるほどの学力とそれに比例した疑問に対する好奇心に加えて
上鳴に限った話ではない。蛙吹も気になったことは何でも言っちゃう性格であるために枝瑠職の変わり身については前々から詳しく聞いてみたいと思っていた。試合の待機のため此処にはいない緑谷も、今まで機会が無かったが〝個性〟で出来ることを言細やかに聞き出したいと思っているし、みんな大なり小なり気になっていることが多い。
今の枝瑠職は言わば袋閉じで構成された
「……! では、こうしませんか!」
──私に勝てた人に“私がなんでも叶える券”をあげます!
上鳴の複雑そうな表情に何を思ったのか、枝瑠職はそのような提案をした。自分自身を報酬として提示する、ある意味で自信に満ち溢れた行動。
「えっ……マジで言ってんの?」
「はい! あ、もちろん上鳴くん以外の方も構いませんよ! で、でも……きょっ、公序良俗にっ、反しない事でお願いします……!」
「ははっ、言われなくてもわかってんよ。……うしっ、なんかテンション上がってきたな!」
求める・求められるの関係に喜びを隠せず、ニコニコと愛くるしい笑顔を浮かべる。
付加価値が生まれた
それの瞳の奥が、ドロリと輝くのに気付けた者は片手で収まるほどしかいなかった。
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《色々やってきましたが!! 結局これだぜガチンコ勝負!! 頼れるのは己のみ! ヒーローでなくともそんな場面ばっかりだ! わかってるよな! 心・技・体に知恵知識!! 総動員して駆け上がれ!!》
セメントスによって作られた長方形の競技場。互いの姿を見据えることを遮る障害物は一切なく、逃げ・隠れ・奇襲などができない戦場環境となっている。
そこへ2人の少年が立つ。片や
選手が出揃ったことで、プレゼント・マイクが選手紹介に入る。
《一回戦!! 成績の割に何だその顔。ヒーロー科 緑谷出久!!
《ルールは簡単! 相手を場外に落とすか行動不能にする。あとは「まいった」とか言わせても勝ちのガチンコだ!! ケガ上等!! こちとら我らがリカバリーガールが待機してっから!! 道徳倫理は一旦捨ておけ!!》
(状況にもよるでしょうが【青】は今回も使えそうにないですね。すっかり対物専用になってしまいました。でも、天哉さんの超加速みたいに! “必殺技”と言いますか“奥の手”とでも言いますか! そういう路線も悪くないのでは!?)
《だがまぁもちろん命に関わるよ―なのはクソだぜ!! アウト! ヒーローは
未完成の精神に強すぎる力は時として己だけでなく他者すら蝕む毒となる。ここには対象の無力化や拘束・隔離に長けたミッドナイトとセメントス、今は病み上がりだが個性を消せるイレイザーヘッドが控えている。この体育祭を開催できるのは教師陣の優れた能力があってこそのモノなのだろう。
《そんじゃ早速始めよか!!》
血潮滾る雄英体育祭最後の競技が幕を開ける!!!
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「ああ、緑谷! せっかく忠告したってのに!!」
「デクくん……!?」
試合開始の合図とともに声を荒げて走り出した緑谷が、一歩進んだとたんに不自然な止まり方をしたことに観戦者たちは困惑する。十中八九、彼の対戦相手の〝個性〟だろうが、その理不尽さや得体の知れなさに戸惑う。
尾白の動揺に比例して、彼の腰から生えている尻尾が忙しなく動くのを、枝瑠職が猫のように目で追う。
「枝瑠職は騎馬戦前に奴と何かトラブルになっていたようだが、今の緑谷の状態と何か関係しているのか?」
その近くにいた障子が増やした口を近づけて枝瑠職に質問した。
「え、……あっ! 心繰さんのことですね!」
ふわふわ尻尾を横目にようやく試合状況を見た枝瑠職が騎馬戦前の記憶を思い出し始める。
「騎馬戦前に少しだけ話しただけです! え~っと、彼が私に話し掛けてきたあと返事して……やや? 気付いたら彼が瞬間移動していたこと以外何も覚えていません!」
「ちょ、ちょっと質問いいかな!?」
「ややっ? どうしましたか尾白さん!」
私たちへ鬼気迫るような表情で尾白くんが迫ってきた。
「枝瑠職はまさか自力でアレに抵抗したのか!?」
「アレ?」
再び視線を緑谷たちへ向ける。
尾白の言っているアレとは緑谷の放心状態、意識を強制的に沈ませられているあの状態に関することを指しているのだと理解する。
思い出すのは“魅了”────一部の
──だとしても、
「むむ〜……確定はできませんが恐らくは、と言ったところですかね!」
「いや、ありがとう……! だったらまだ勝機があるってことだ!」
それだけ言い終わると、尾白は再び競技場へ視線を向ける。抵抗なく命令に従って場外へと歩んでいく緑谷の復活を願っているようだ。
打算なく人を想う彼の思いが通じたのか、一方的な展開がガラリと変わる。
己の指を破壊するほどの威力で使われた超パワー。指は内部からのダメージで痛々しいほどに変色してしまっているが、衝撃によって洗脳を自力で振り払い、間一髪場内に踏み止まった。
「すげぇ……無茶を……!」
──そこからは緑谷くんが心繰くんとの取っ組み合いを制して場外に押し出して勝利した。終始地味な感じで終わった一回戦だったが、互いに……特に心操くんには大きな分岐点になったようだ。現ヒーローのおべっか無しの明るい口コミの数々。彼のヒーロー科への編入も案外そう遠くないかもしれない。
枝瑠職も『洗脳』の使い道について色々考えてみた。
(死を恐れぬ特攻兵を作りたい放題ってことですか! それってすごく便利ですね! あ、無理矢理はよくないですかね?)
有用性を高く評価したが、目の付け所がヒーローのそれらとは酷くズレていた。声に出して言わなかったことだけが、枝瑠職の低め倫理観による100点満点の成果だったようだ。
トーナメント戦はまだまだ続く……。
次回以降から枝瑠職の戦闘シーンが入るのですが、軽めの欠損描写が入る予定なので苦手な方はお気をつけください。
痛がっているときの表現が不慣れなのですが頑張ります!
総合ポイント的なのが300いってました!ありがとうございます!
ご感想、誤字報告などありましたらよろしくお願いします!
オリ主のイメージ像欲しい?(絵下手な奴がマウスで描いた)
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寄越せ
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いらん
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どけ!私が描こう
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自己補填できてるので大丈夫です