混沌の魔法騎士王(リメイク)   作:森雄

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女神の力

「ヤミ、ズリィぞ。一人だけ楽しいのを相手にしやがって~どうだアイツら、裂き応えがあんのかァァ?」

「いやいや全然無いね。ホント紙っぺらレベル」

「カカカ! ムリあんだろォ! つーかこのスキにオマエ裂いちまうかァ? 今までの怨みを込めてよォ~~」

「あ~出たわ、コイツバカだわ」

 

 ヤミがそう言うとジャックは右腕の鎌をヤミの首筋に突き出した。

 

「すみません、勘弁して下さい」

 

 ヤミは棒読みながらも謝罪した。

 

「カカカ! バ~~~~カするわけねーだろが。やるんならテメーが万全の時にやるっつーんだよ。じゃねぇと裂き甲斐が無ぇ‥‥‥!!」

 

 ジャックはそう言ってヤミに突きつけた鎌を離れさせた。

 

「いつまで尻餅をついている‥‥男のくせに情けのないヤツだな」

 

 ジャックとヤミの会話が終えると、今度はシャーロットがヤミに辛辣ながらも話しかけた。

 

「バカタレ。大地がオレを愛しすぎてケツをはなさねーんだよ」

「馬鹿は貴様だ。大地が貴様の様な無法者を愛するわけがないだろう」

「おーキツイキツイ。オマエそんなんだと何時まで経っても嫁にいけねーよ?」

 

 ヤミがそう告げると、シャーロットが彼の首に荊を巻き付けた。

 

「いらん。戦場が我が伴侶だ」

「戦場が我が伴侶って‥‥哀しいヤツだな」

 

 ヤミはシャーロットの発言に一般的な女性の思考から離れている事に率直な想いを口遊んだ。

 でも、シャーロットの本当の想いは‥‥‥

 

「(ううう~~~どうしてまたこんな悪態を‥‥!! というよりもどうしても私は、あのような者は好きになってしまったのだ~~~~だが、どうしようもなくヤツのことを想ってしまっている‥‥!! 今さら好きだなどと言えん)」

 

 どうやらシャーロットはヤミに異性として好意を抱いていた。

 しかも彼女は、素直になれない気質。つまりツンデレと呼ばれるタイプの女性だった。

 

 そんな彼女の好意など先程の態度や言動を考えるとヤミは気付いていなかった。

 氣を感じ取れば分かる事ではあるのだが、それに関してはヤミが異性としての好意に気付かぬ朴念仁である為、どっちもどっちな二人であった。

 

「我が国を襲った逆賊のトップが雁首揃えているとは‥‥またとない好機‥」

 

 無論、シャーロットの好意は他の者にすら気付かれて居らず、テロリスト[白夜の魔眼]のトップと三幹部に敵意を向けているノゼルが最後にヤミに話しかけた。

 

「この手で葬ってくれよう。貴様は早く消えるがいい異邦人」

「いやーお気遣いありがどうございます。プライドの塊さん」

 

 ヤミの言うとおりプライドの塊な発言だが、負傷しているヤミを思っての優しさから来る発言にも聞こえるものだった。

 しかし、その意味であっているのか、間違っているのか定かではないが、ヤミはノゼルの前髪について自身の団員達と話し始めた。

 

 [黒の暴牛]団の会話を聞いたノゼルは左頬に怒りマークが浮き出ており、ヤミを睨み付けていた。

 

「まずは貴様から葬ってくれようか‥‥!?」

「異邦人に魔力の無駄遣いはやめよう」

 

 冗談だとヤミは告げる。

 

 三人の団長が参戦した事にアスタは先程以上に元気よく大声で告げる。

 

「うぉぉぉおおおお!!! なんだか燃えてきた!! オレも一緒に戦いまぁす!!」

「引っ込んでいろ下郎。我々団長が出張った戦場‥‥生半可な戦力では足手纏いだ。特に貴様の様な魔力のない下民にはな‥‥‥!!」

「‥‥‥」

 

 アスタはその言葉に何か言いたげだったが、沈黙に留まった。

 彼のその沈黙は、先程の一件で自身が何も出来なかった事に悔しんでいた。

 そんなアスタにアーサーが話しかけた。

 

「いつでも動ける様にしろよ、アスタ。必ずつけいる隙がある」

「っ!おう!!」

 

 アーサーは魔力を回復することに専念していた。

 

 そして‥‥‥

 

「新手か‥‥良いだろう!! 果てしなき闘争の果てにこそ、神の絶望がある!! いくぞ!! 二人とも!!」

「‥‥‥‥」

「なんかヴェットくんノリノリなんだけど‥‥メンドーだな~」

 

 ヴェットはやる気満々に言葉を発し、ファナは答える事はなかったが、ノゼル達と殺し合う気持ちはあった。

 そしてライアは欠伸をしながらもめんどくさがった。

 しかし、すぐさま目つきをかえて他の二人や三人の団長よりも早く先陣を切った。

 

「────ウチはあのキレーなお姉さんとやるわ!! ウチが勝ったら一緒に飲みに行ってもらうよ~」

「ならば貴様と盃を交わすことは無いな‥‥!」

 

 シャーロットはライアの口説きを拒絶しながら荊魔法を発動した。

 

 ──────荊創成魔法"軀狩りの荊棘樹"──────

 

 ──────模倣魔法"闇纏い・無明斬り"──────

 

 ライアは模倣魔法に応戦した。

 

 そしてヴェットに向かって一つの斬撃が襲った。

 

 ──────裂断魔法"デスサイズ"──────

 

「テメェはオレだ────デカブツぅ!!」

「ほぅ‥‥カマキリの団とは‥虫ケラが、この我とやろうと‥‥!?」

「カカカ! 虫ケラ舐めんじゃねぇ!!」

 

 そう言ってジャックはヴェットと戦い始めた。

 彼等の魔法や団名と名の通り、カマキリと獣の戦いが起きたのだ。

 

 そして残ったノゼルはというと、彼のライバルであるフエゴレオンの右腕を切り落し、命の危機にまで追い込んだリヒトを倒す為に水銀魔法を行使した。

 

「私が用があるのは‥‥貴様だ」

 

 ──────水銀魔法"銀の槍"──────

 

 水銀によって形成された一本の槍が回復中のリヒトへと襲う。

 しかし、その水銀が炎で溶けた。

 

「アナタも‥リヒトを傷つけるのね‥‥憎い‥‥! 死んで‥‥!!」

「カカカ! 水銀が炎で溶かされてんじゃねーか! 代わってやろうか銀ピカァ!」

 

 それを戦いの最中視認したジャックはノゼルに提案する。

 

「‥‥ぬかせ、この程度の炎でやられるものか──────‥‥私が誰と‥競ってきたと思っている‥‥!!」

 

 そう言って、ノゼルとファナの戦いも起きた。

 

 一分もしないうちに天変地異と言って過言ではない土煙と爆風の最中、突如。

 この場にいる全員が冷や汗を流す事になった。

 

 ズッ!!!! 

 

 この場にいる全員が今まで感じた事のない異質な魔力を感じ取った。いや、たった一人だけ感じた事がある。

 だが、その時よりも更に黒く禍々しく濁った魔力だった。

 

 そしてその魔力の正体が天から光を刺す大穴から現れた。

 

 それは誰でもない。カルだった。

 

 アーサー達の前に復活したカルが現れた。

 

「まったく……もう少しで死にそうだった。もう一体の悪魔……リリスの力を使わされるとは思わなかったよ」

 

 その姿はアーサーが戦っていた時の悪魔憑きの姿に加えて左頭部に氷の悪魔の角が生えて、同時に右腕が氷のごとくパキパキと凍っていた。

 アーサーはもう一体いたことに驚いていた。

 

「もう一体と契約していたのか」

「そういうこと~」

 

 ──────魔氷魔法"黒雪(ダークスノウ)"──────

 

 カルが右腕を天に掲げると黒い雪が降り注いできた。

 

 なんだとアーサーは思っていると、シャーロットの荊魔法が黒い雪と接触した。すると、触れた瞬間に黒く塗り替えられた。

 同時に、生えていた木の葉が塵のように消えた。

 

「荊が死んだっ!?」

 

 シャーロットは荊魔法で作りだした荊の命が消えている事に驚いた。

 アーサーはすぐさま太陽魔法で雪を蒸発させた。

 

「随分と厄介な力を持ってやがるな」

「カッカッ!裂きごたえがあるじゃねぇか」

 

 ヤミはカルの魔法に危険性を感じ取っており、ジャックは腕のナイフを舌舐めずりしていた。

 

「三属性持ちか。厄介だな」

「それだけだと思うかい~?」

 

 ──────魔炎×魔氷魔法"魔氷魔炎相克波(ジェ・グレイド)"──────

 

 概念に干渉した氷炎一体の魔法がアーサーへと襲う。

 アーサーは混沌魔法を行使した。

 

 ──────混沌魔法"天冥域破壊砲(テオ・デルイア)"──────

 

 光と闇を併せ持つ魔力砲を放った。

 

 二つの魔力砲が衝突したが、アーサーが"魔氷魔炎相克波"の下側に当たるように放ったことで、上空へと二つの魔法が上昇して爆発した。

 

 上空で大きな爆発が起きながらもカルがアーサーの目の前に現れた。

 

 ──────魔炎魔法"紅蓮滅掌(ガデス)"+魔氷魔法"災牙氷掌(ガルムンク)"──────

 

 それぞれの属性の手に魔法を乗せた殴りにかかるカルにアーサーは全力で混沌魔法で防御した。

 

 ──────混沌魔法"最高の矛盾"──────

 

 無限に成長する歪な生命体で出来た矛にして盾がカルの魔法を防御したと同時に攻撃をしていた。

 しかし、その攻撃が灰燼に帰すと同時に凍結していき、攻防の成長力を上回る破壊力で突破された。

 

 アーサーは光速移動で回避しようとしたが、周囲に毒魔法でできた煙が充満していた。

 

 ──────毒魔法"煉獄の毒煙"──────

 

「ゴフッ……!?」

 

 アーサーは口や目から出血した。

 細胞すらも侵し続ける猛毒がアーサーの身体を蝕む。"混沌の再生"で治し続けるがイタチごっこの状態だった。

 しかし、カルがアーサーの目の前に移動すると三属性による極大複合魔法を放った。

 

 ──────毒×魔炎×魔氷魔法"煉獄の亡者"──────

 

 魔炎・魔氷・毒魔法によってできた巨大な骸骨の頭部がアーサーを襲った。

 骸骨に押されて大地に叩き付けられたと同時に、毒の瘴気がこの一帯に充満しようとしていた。

 

「アーサーッ!」

 

 アスタが大声で叫ぶ。

 

「はっは~!噂の混沌の魔導士も、悪魔憑きの僕には通用しなかったねぇ~」

「悪魔憑きだとっ!?」

「どういういみかな?カル」

 

 カルが笑っているとリヒトやライア達がカルが悪魔憑きであることを知り驚愕と同時に敵視していた。

 

「そんな怖い顔で睨まないでくださいよ~リヒト様~」

 

 しかし、リヒト達への態度はとても軽々しい雰囲気で喋るカル。

 

「せっかく混沌の魔導士を始末したんですから、喜んで下さいよ~」

「テメェッ……!」

 

 アスタが怒り心頭でカルを睨み付けるが、弱者の遠吠えのようにしか感じていないカルはなんとも感じていなかった。

 

「さぁ。次は魔法騎士団長を……ッ!?」

 

 カルが魔法騎士団長を狙おうとした瞬間にアーサーが倒れた場所から巨大な光が天へと昇る。

 同時に光からまるで天使の翼のようなものまで蠢いていた。

 

 誰もがその魔力に視線を向ける。その魔力はあまりに神々しく見ているだけで心を奪われ信仰したいと思えるほどの神聖な光だった。

 

 そんな光の下から人影が出てきた。

 その人影は天使の翼を思わせる十翼の翼を側頭部や背中などに生やした三枚刃の手裏剣のような紋様を瞳に宿したアーサーだった。

 

「あ、アーサー……」

「なんだよ、アスタ。馬鹿な顔が更に馬鹿さ加減が増してるぞ」

「誰が馬鹿だぁぁあああ!!!」

 

 アスタが怒り心頭に言葉を発する。

 そんなアスタにフッと笑みを浮かべたアーサーだったが、カルに意識を向け直した。

 

「生きてたんだ~」

「あぁ。新しい力と一緒に戻ったぜ」

「なんだい?その力って」

 

 カルがそう訪ねると、彼と契約している二体の悪魔が話しかけた。

 

「待て」

「待て」

 

 クスクスと笑っている最上位の悪魔が二体。カルの精神に大きな虚像として現れた。

 

「奴の力は危険だ」

「危険だね」

「どういうことだい~ナハマー、リリス」

 

 カルが契約した存在とは最上位悪魔で兄妹でもある。

 魔炎魔法の最上位悪魔ナハマーと魔氷魔法の最上位悪魔リリス。クリフォトの樹と呼ばれる冥府の7層内で現世に一番近い第一層を担う最上位の悪魔にして統治者。

 そんな悪魔を二体も契約するなど人格が壊れても可笑しくない行為であるにも関わらず人格が壊れていないのはカルの才能なのかもしれない。

 

 そんなカルが二体の悪魔に理由を尋ねた。

 

「その人間の力は女神の力だ」

「女神の力だね」

「女神?」

「魔神と相反する存在」

「天府の魔力で変貌できる存在」

 

 悪魔はアーサーの新たな力の正体を知っていた。

 

「彼は天府から魔力を手にしたってことかい~」

「違う」

「違うわ」

 

 カルの考えをナハマーとリリスが否定した。

 

「混沌は天使の長・最高神を作りだした」

「最高神を作り出せるなら、女神の力を使えるのも当然」

「当然だね」

「悪魔の魔力を受けて覚醒したね」

 

 そう話している三人の精神での会話は終わった。

 いや終わるしかなかった。アーサーが攻撃をしてきたからだ。

 

 ──────混沌魔法"聖櫃(アーク)"──────

 

 光の粒子でカルを球体状に囲った。そして粒子によってカルの身体が分解されていく。

 

「なっ!?」

 

 身体が分解されていく中、カルは自身の身体を維持させようと魔炎魔法と魔氷魔法で抵抗しようとしていたが、アーサーはすぐさま<閃光>と<太陽>で出来た特殊結界へとカルを転送させた。

 

「ここは?」

 

 カルは突然と光に満たされた世界にいた。

 そして、足場には太陽があった。

 太陽から溢れる膨大な熱気と炎と光がカルを一瞬にして燒き盡くさんと燃やしていく。

 

「っ!……っ!!」

 

 言葉など告げられないほどに熱気と炎で焼かれ、光で更に熱量が増し続ける。カルは地獄ともいえる特殊空間から逃げようと藻掻こうとするも既に悪魔の力で出来た肉体が灰燼さえも残さないほどに燒き盡くされていった。

 

「ここまでだ」

「ここまでだね」

「楽しかったよ、カル」

「面白かったよ、カル」

 

 ナハマーとリリスは容易くカルを見捨てた。

 見捨てられたカルは発言すらも出来ぬ状態である為、二体の最上位悪魔に対して文句を告げたくても叶わず、アーサーによるトドメの攻撃を受けるのだった。

 

 ──────混沌魔法"シュマシュの断罪"──────

 

 太陽から無限に続く太陽光線がカルを呑み込んだ。

 そして、カルの魔力が完全に消滅したのだった。

 

「じゃあな、カル。テメェのお陰で強くなれた」

 

 カルを殺害したアーサーは強くなれた事への感謝を告げながら戦いを終えた。

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