「……またここ?」
目を覚ますと、また真っ黒な空間にいた。
この前と同じように、目の前には真っ白な扉がある。
「……あの世ってわけでもなさそうだね……いや、あの世なのか?」
この前はまだ作戦が終わっていなかったから、あまりゆっくり出来なかったけど、今は余裕があるからもう少しこの空間を調べてみようと思う。
ここがあの世なのかそうじゃないのか、はっきりさせておこう。
「床は……なんの素材か分からないや」
地面……と思われる部分を手で触ってみても何も感じない。
というか扉以外、全部真っ黒なのになんではっきりと自分の体と扉が見えるんだろうか……。
ライトもないのに不思議だ。
あの世ってもっとこう和風な感じだと思ってたけど違うのかな?
中学の時の授業で、あの世はこんな感じですって大昔の絵と一緒に教えて貰ったけど……エネ姉さんのところで実際に三途の川が見えたけど……あれもギャグ描写ってだけで、実際は違うのかな?
「切奈たち怒ってるだろうな……」
ここがあの世なのではと思い始めると、切奈やトガちゃん、リューキュウや家族、緑谷くん達の顔が思い浮かんで胸が締め付けられる。
「……」
扉しかない真っ黒の空間に一人、どんどん不安になっていく。
敵連合に攫われた時に言われた、トガちゃんは僕が死んだら敵になるって言葉が頭を過ぎる。
「帰らないと……でも、どうやって?」
目の前の扉を避けるように、真っ黒な空間を走り回った。
不安を払拭するために、焦りを誤魔化すために僕はひたすら走り続けた。
どれだけ走っても疲れなかった。
どれだけ走っても息切れしなかった。
どれだけ走っても先は見えなかった。
どれだけ走っても空間は続いた。
「なん、なんだよ……なんなんだよッここォ!」
無限に続く真っ黒な空間に僕は叫んだ。
出口のないこの場所で、どうすれば元の場所に帰れるのか分からず発狂しそうになる。
……いや、違う……僕は分かっている。
……多分、あの扉なんだ。
あの扉が、ここから出る唯一の方法なんだ……でも、頭で理解していても体がそれを拒む。
「……」
『おいおい……また逃げんのか?』
「ッ!?」
後ろからコンプレスの声が聞こえて振り返る。
もちろん、そこには誰もいなかった。
『お前が俺と戦う覚悟から逃げたから、ヤクザは死んだんだよ』
「どの口がッ!!」
『お前が“圧縮”から逃げたから、被害は大きくなったんだよ』
「違うッ!!」
『違わねェよ……お前なら、作戦開始と同時に玄関前にいたヤクザ全員“圧縮”できただろうがッ!お前が“圧縮”を使えば、俺もオーバーホールもすぐに捕まえられただろ!!』
「やめろッ!」
『紛失したら危ないだとか、気絶させなきゃ戻した時に暴れるとか……理由ばっか並べて使わなかった』
「やめてくれ……」
『挙げ句の果てに、何も出来ずに死んだわけだ……本当に呆れたよ』
「黙れッ!!」
声の聞こえる方に勢いよく腕を振るう。
当然、そこには何も無く空ぶった腕に引っ張られ、バランスを崩し倒れる。
『お前が逃げてないって言うなら……この扉ももちろん開けられるよな?』
「うるさい!!」
『あぁそうかい……なら好きにしろよ。逃げて逃げて一生ここで蹲ってろ』
声が消えた。
静寂が空間を包み込む。
「……ッ!」
僕はこの静寂に耐えられない。
いつの間にか、目の前に現れた白い扉のドアノブを握った。
ドアノブを捻る……ビクともしない。
どれだけ力を入れて、ドアノブを捻ってもピクリとも動かず無駄に時間だけが過ぎていく。
「なんなんだよ!この扉が出口じゃないのかよッ!!」
怒りや焦り、不安から扉を強く叩いた。
その瞬間、足下から勢いよく幾つもの鎖が飛び出し、扉を固く縛った。
「ッ!?」
鎖を外そうともう一度扉に触れると、とてつもない衝撃が全身を襲い吹き飛ばされる。
十数メートル吹き飛ばされ地面を転がった僕は、立ち上がるともう一度扉に近づこうとする。
……足が動かない。
さっきと違い扉に近づこうと、必死に体を動かしているのに足がこの場を離れない。
「なんなんだよ……本当にもう」
動かない足に視線を向ける。
「ひッ!?」
僕は悲鳴をあげた。
なぜなら、どこからか現れた無数の黒い腕が僕の足を掴んでいたからだ。
黒い腕はポタポタと赤黒い雫を垂らしながら、僕の足を掴み扉に近づくのを邪魔してくる。
「邪魔すんなよッ!」
……お、おまえが……
「は?」
……おま、えがころし、た……
「ッ!?」
お前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺したお前が殺した
お前が殺した
「ゔぁ゙ぁ゙ぁ゙ぁ゙!!?」
僕は飛び起きた。
「はぁはぁ……はぁ……はぁ……なん、だ……今の……」
心臓が痛いくらいにバクバクと動き、汗が滝のように流れて、呼吸が安定しない。
状況を把握するために周りを見渡してみると、どうやら病室のようだ。
飛び起きたせいか、点滴棒が倒れて
「え?」
エリちゃん保護作戦で失った左腕が元に戻っている。
動かしてみても特に違和感もなく、本当に戻っていることを実感する。
左腕を動かしていると、点滴棒が倒れた音が響いていたのか、看護師さんが慌てて部屋に入って来た。
「……とりあえず、君の担任に連絡したからしばらく安静にしておいてね」
「すみません」
「まぁ……色々あったみたいだし、気が動転しても仕方がないよ……それじゃあね」
「はい……ありがとうございました」
僕はベッドに横になり先程まで見ていたあの光景を思い浮かべていた。
……あれは一体なんだったんだ?
悪夢にしてはタチが悪すぎる。
あんなものを見たせいで眠る気にもなれず、僕は相澤先生が来るまで安静にしていた。
「……目が覚めたのか」
「相澤先生」
「色々聞きたいと思うが……とりあえず、お前が倒れてから何があったか話そうか」
「お願いします」
僕の病室に来た相澤先生は、椅子に腰掛けると僕が倒れてから何があったか話してくれた。
治崎を倒した後、それまでの無理が祟った僕は心臓が止まり、文字通り死にかけていたそうだ。
僕の心臓が止まり皆がパニックになる中、エリちゃんが“個性”を使ってくれて僕の体を“巻き戻して”救けてくれた。
コンプレスとの戦いで失った左腕が元に戻っていたのも、エリちゃんのおかげだ。
「……今、エリちゃんは?」
「まだ熱も引かず眠ったままだ……今は隔離されている」
「そう、ですか……他の皆は?」
「お前が眠っていたこの二日間で無事退院したよ」
「二日も!?」
僕は驚いた、まさか二日間も眠り続けていたなんて思ってなかったからだ。
そんな僕を見て、相澤先生は作戦に参加した皆がどうなったか教えてくれた。
と言っても既にリカバリーガールによって治癒を施され完治しているみたいで安心した。
……サー・ナイトアイとミリオ先輩は無事ではなかった。
治崎との戦闘で、足に岩の棘が突き刺さり後遺症が残るそうだ。
しばらくは活動を見合わせ回復に努めるらしい。
ミリオ先輩は、エリちゃんを治崎達から守る際に、完成品の“個性”破壊弾をくらい、“個性”を失ってしまった。
「だいたいこんな感じだ……それでだ、俺からお前に三つ伝えないといけないことがある」
「ッ!……なんでしょうか」
僕が倒れた後、何があったか話し終えた相澤は僕の目を真っ直ぐ見て口を開いた。
「張理有ハル……お前は除籍だ」
「……ッ」
空気が一気に冷えたような気がする。
相澤先生の言葉に、僕は息が詰まった。
「何故か……なんて言わなくてもわかるな?」
「はい」
自分の命を雑に扱ったからだ。
エリちゃんを救けることに必死になり、焦って視野が狭くなって、自分の限界を無視した。
「お前は今回の作戦で死にかけた……エリちゃんがいなけりゃ死んでいたかもしれないんだ……もう二度とこんなことするなよ」
「はい……」
「さて、次に二つ目……張理有ハル、お前は復籍させる」
「え?」
……え?
「お前は自己犠牲を履き違えた……だから望み通り一度“死”を与えた……物理的にも死にかけたんだ、いい薬になるだろ」
「先生……」
「今回のこと忘れるなよ……そのうえで更に向上していけ」
「……はいッ!」
まさかまさかである……相澤先生に除籍を宣告されて瞬間、色んなことが頭をよぎって、これからどうしようとか考えてたら、復籍って言われてパニックだよね。
「最後に三つ目……お前が望むなら、捕縛布の扱い方を教えてやる」
「え!?いいんですか!?先生の十八番なのに!!?」
「急に元気になるな……別に俺だけの技術だなんて思ったことはない……それにお前のワイヤーの使い方を見て、使いこなせると判断したそれだけだ」
「お願いします!」
「なら、早く退院しろ」
「はい!」
相澤先生はそう言うと、椅子から立ち上がり病室の扉に向かって歩いていく。
「……元気な顔、アイツらに見せてやれ」
最後にそう言うと、相澤先生は病室を出た。
僕はその言葉に涙が出そうになる。
……早く退院して、皆に会いたいな。