林間学校最終日
「惇、先行ってんぞ。」
惇「ああ。」
惇「最終日か・・・」
昨日、林間学校に戻ってから、一花は逃げるように自分の部屋へ向かった。惇も、そのまま自分の部屋へ向かい、肝試しやキャンプファイヤーの準備を行った疲れからか、そのまま泥のように寝た。
その間、三玖はどこか疑惑の目で惇を見ていたのだった。
惇「・・・さて、朝飯食いに行くか。」
惇は部屋を後にし、食堂へ向かった。
「じゃあ三玖ちゃん、食堂行ってるね。」
三玖「うん・・・すぐ行くね。」
三玖(私達は平等・・・だとしたら、私はどうしたら・・・)
一花「いやー、悪いね・・・」
一花は、体調を崩し、ベッドに横になっていた。
一花「こんな時に体調崩すなんて、ツイてないなー・・・」
五月「きっと、疲れが溜まったんだと思います。無理せず、日中は大人しくしていて下さい。」
一花「えー。」
五月は、一花に付き添って、手を握ってくれていた。
一花「あ、五月ちゃんは私に付き合わなくて良いから、スキーしてきな。」
五月「ですが・・・」
一花「私も回復したら合流するから。」
一花「・・・それとも、ジュン君と顔合わせづらい?」
これには、五月は目を見開いた。
一花「あの旅館から、ずっと警戒してたもんね。」
五月「やはり・・・あれは一花でしたか。」
すると
五月「上杉君と足立君に会って、上杉君に勉強を教えて貰って、まだ三ヶ月です。あの日の出会いから、まさかこんな事になるなんて・・・」
そう五月は深刻そうに眉根を寄せながら言った。そんな五月に、一花は苦笑を浮かべながら
一花「フータロー君もそうだけど、そんなにジュン君は悪く見えるかな?」
と言った。
五月「そ、そういうわけでは・・・」
一花の言葉に、五月は言葉を濁したのだった。
その頃惇は
惇「おお、風太郎と四葉。おはよう。」
風太郎「うっす!今日も良い朝だな!」
四葉「おはようございます、足立さん!」
風太郎と四葉の2人に会っていた。
惇「朝からテンション高ぇなぁ、お前ら・・・」
惇は、2人のテンションの高さに若干引いていた。
風太郎「当然だ!!俺は全力で楽しむと決めたんだ!!今日は自由参加のスキーを目一杯楽しんでやるぜ!」
四葉「流石上杉さん!」
惇「別に良いんだけど・・・」
しかし
惇(この馬鹿・・・テンション高すぎねーか・・・?)
惇は、風太郎の異様なテンションの高さに不信感を抱いた。
四葉「足立さんはどうするんですか?」
すると、四葉がスキーを滑るかどうかを惇に聞いた。
惇「ああ・・・悪いな。俺この足だから無理だわ。」
惇は、試合で怪我した足を上げて四葉に無理だと答えた。
四葉「あっ・・・そうでしたね・・・」
惇「気にすんな。その代わり、めちゃ楽しんできな。」
四葉「はい!」
四葉は、惇に楽しんでこいと言われ、快活な笑みを浮かべると
四葉「さあ上杉さん!今日は全力で滑り倒しますよーっ!」
風太郎「おーっ!」
風太郎に楽しもうと言い、風太郎も答えた。
惇「つーかお前、滑れたっけ?」
そんな彼に、惇はツッコミを入れると
風太郎「ああ!滑れねーぜ!」
風太郎は素直に認め
「「あっははは!!」」
四葉と笑い合った。
惇「何だそりゃ・・・」
惇(やっぱコイツ、変だな・・・やけに顔赤ーし・・・)
風太郎の様子がおかしいとやはり感じていた惇。
そんな中
惇「つーか、一花はどったの?見ねーけど。」
惇は、一花が見ない事に気づいた。
四葉「一花は体調崩して、五月が看病してくれてますよ。」
惇「えっ!体調崩したの!?」
惇(ああ、でも・・・あんな格好だったら、しゃーねーか・・・)
惇は、一花が体調崩した事に驚きつつも、昨夜あのような薄着で作業してたら仕方ないかと思った。
惇「因みに二乃は?」
四葉「二乃なら、もう友達と一緒に滑りに行きましたよ。」
惇「そっか・・・」
すると
惇「んっ?おお三玖!」
三玖を見たので声を掛けるが
三玖「あ・・・お、おはよう・・・」
三玖は惇を見るや、頬を染めながら顔を背けた。
惇「?」
惇は、彼女が何故顔を背けるのか不思議に思ったが
惇「今日、滑るのか?」
三玖「うん・・・ジュンは?」
スキーをするのか聞き、三玖は滑ると答えた。
惇「俺はこの足だから、無理するわけいかねーわ・・・」
惇は四葉同様足を上げて無理と答えた。
三玖「そっか・・・」
惇「まぁ・・・お前は楽しみなよ。折角の林間学校なんだからよ。」
三玖「うん・・・」
風太郎「おお!だから楽しもうぜ、三玖!」
・・・お前は横から入ってくるな。
惇「取り敢えずお前は落ち着け。」
惇は、テンション高い風太郎を落ち着かせようとしたのだった。
そして、朝食を食べ終え
四葉「行きますよー!!」
風太郎「おおーっ!!」
この2人はテンションMAX状態でスキーに向かったのだった。
惇「アイツ・・・やっぱおかしいな・・・」
三玖「うん・・・なんか・・・怖い・・・」
惇と三玖は、テンションMAXの風太郎に改めて不信感を抱いた。
その時
「おーい惇〜!」
惇「んっ?おお、今行く!」
惇が呼ばれたので
惇「じゃっ。」
三玖「んっ・・・」
惇は三玖の頭を撫で、その場を後にした。
その後、皆はそれぞれスキーをして楽しんでいた。
惇の方は
「んじゃあ、俺行くな。」
惇「おお。変な怪我すんなよ。」
「ああ。」
野球部の子と別れ、1人になった。
惇「さてと・・・どうすっかなぁ・・・?」
惇は、1人になったのでどう時間を潰そうかと考えていた。
すると
惇「んっ?おお、三玖!」
三玖「っ!」
丁度良いタイミングで三玖を見つけた。
しかし
惇「え?」
何故か腕を掴まれ
惇「うわっ!?」
かまくらの中に入った。
惇「何だよ、み・・・」
三玖「しっ!」
三玖は、何か言おうとする惇に指を当てて静かにと言うジェスチャーをした。
そのタイミングで
四葉「あれ・・・?」
四葉の声が聞こえた。
三玖「危ない・・・捕まるところだった・・・」
惇「捕まるって・・・えっ?何?」
惇からしたら、どういう意味か分からなかった。
三玖「突然ごめんね・・・実は・・・」
そんな彼に、三玖は事情を説明した。
惇「成程・・・」
三玖「うん。それで四葉から逃げてきたの。」
実は、スキーは滑れない風太郎に四葉が教えたのだが一向に上達せず、丁度良いタイミングで一花が現れ、楽しく覚えようと言って鬼ごっこで遊んだのだ。
因みにターゲットは五つ子と風太郎、そして惇も入っていた。
そんな状況で三玖は逃げていき、偶然惇と出会ったのだ。
惇「それはそうと・・・結構良い感じで出来てるな・・・メッチャあったけーぞ・・・」
惇は、かまくらの出来の良さに驚き周囲を見渡していると
三玖「ジ、ジュン・・・狭いから、あんまり動いちゃ駄目・・・」
三玖が恥ずかしそうにモジモジしながら言った。
よく見ると、惇の肘が、三玖の胸に当たっていた。
惇「わりい。・・・んじゃあ俺は出るから。」
そう言って腰を浮かせて出ようとする惇のウェアの裾を、三玖は掴んだ。
惇「・・・ん?」
三玖「い、行かないで。出るのも・・・駄目・・・」
三玖「もう・・・よく分かんない・・・」
惇「三玖?」
その顔は、どこか離れるのが辛そうな表情だった。
三玖「ほ、ほら、まだ四葉がいるから・・・」
惇「確かに・・・もう暫く邪魔させてくれ。」
三玖の言葉に納得し、惇は腰を下ろした。
三玖「う、うん!それが良いよ!」
惇「えっ・・・てかあのスキー場からずっと四葉は動いてるって事か・・・アイツ何つースタミナだよ・・・」
三玖「私も、ここがなかったら捕まってた。」
惇「てか・・・何かスキー関係なくね?そんな気ぃすんぞ。」
三玖はこの時
三玖(私・・・何でこんな事・・・)
三玖は自分で自分の気持に翻弄されて、混乱していたのだった。
惇「それで、この状況どうやって乗り切るんだ?」
惇は、このような状況下でどのように逃げるか三玖に聞いた。
三玖「それなら・・・そうだ、四葉にはハンデを貰おうよ。」
惇「ハンデ?何の?」
三玖「何か・・・荷物を持って貰って、足の速さを平等に!」
三玖のアイデアに
惇「まぁ・・・確かにその方が盛り上がるな。」
三玖「うん。じゃあ・・・」
しかし惇は
惇「だが、それは俺の足が四葉より遅かった場合だ。」
提案を却下した。
三玖「あっ・・・」
惇「それに、俺はあんまし好きじゃねーな。」
三玖「え・・・」
惇「お前ら5人は、多分元は同じ身体能力だったろ?五つ子だし。だったらあの運動能力は、四葉が後で身に付けたもんだ。」
三玖「そうだけど・・・」
惇「たかが遊びで何言ってんだって話だけどさ・・・その努力を否定したかねーな。恐らく、風太郎も同じ事言うと思う。」
惇は、真っ直ぐな目で言った。
その時、三玖の頭の中を、色んな思いが渦巻いた。
前田『相手を独り占めしたい。これに尽きる。』
一花『本当に私で良いの?』
三玖『一花なら心配ない。』
三玖『平等・・・一花が相手になってあげて。』
最後に一花に相手になってあげてと言ったが、本当は辛くて苦しかった三玖。
すると
惇「俺は風太郎と違って頭悪りぃから上手く言えねーけど、全員平等も間違っちゃいねー。けど、そこに至るまでを否定しちゃいけねー。平等じゃなく、公平に行こう。な?」
彼の言葉で、三玖の心の中のモヤモヤが晴れた。
そして、矢も楯もたまらず立ち上がったのだが
ゴンッ
惇「はっ?」
かまくら天井に思い切り頭をぶつけてしまった。
三玖「・・・うう・・・痛い・・・」
しゃがみ込んで頭を押さえる三玖を見て
惇「何やってんだよ、全く・・・」
惇は呆れつつも優しい笑顔で見たのだった。
すると
三玖「・・・『公平に行こう』」
三玖は口元をふっとほころばせ、彼の言葉をなぞった。
そんな彼女を見て惇は
惇「って、何からしくねー事言うんじゃねーな。外の空気吸ってくる。」
照れ臭そうに言い、外に出た。
1人残った三玖は、スマホを取り出して、ある人に電話をかけた。
その相手は
一花『何三玖?どうしたの?』
三玖「一花、あのね・・・話したいことがある。」
一花だった。
一方四葉は
四葉「三玖ー!」
三玖を探していた。
因みに言うと探してるついでに風太郎を見つけ、一緒に探しているのだが
風太郎「よ、四葉・・・待ってくれー!」
・・・ついていけていなかった。
そりゃ当然だ・・・滑った事無いんだから・・・。
二乃は、友達と一緒に滑った後、一旦別れてロッジの周辺をウロウロしていた。
その訳は
二乃「足立くーん!」
二乃(どこにいるんだろう・・・一緒にご飯食べようと思ったんだけど・・・)
惇と一緒に昼飯を食べようと思ったからだ。
そんな中
五月「・・・」
五月は1人、粉雪の舞う山の頂上にて別の思いを胸に囚われていたのであった。