僕のヒーローアカデミア 空拳ヒーロー エアーマン   作:ダレ狐

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期末演習試験 第1戦

試験会場 砕条視点

 

俺は開始の合図と同時に、音が鳴る方にフックショットを使ってビルの屋上へ移動し、駆け抜けたが……着いた時には二人はノックアウト状態で倒れていた。

そして二人がリタイアというアナウンスを聞き、俺はセメントス先生の方を見る。

 

「この場合は……二人はどんな扱いなんですか? 要救助者ですか? それとも……」

 

「この場合は、君が来た時には殉職したヒーローだ。二人は後ほど、救護ロボがリカバリーガールの所へ運ぶ」

 

「つまり、俺と先生の一対一ですね」

 

「うん、そうなる……さて、悪いが今は私はヴィランなので、遠慮なく行くよ!」

 

道路からセメントの手が複数伸び、俺を拘束しようとする。

だが俺は、この前の障子との影鬼で、複数の腕による拘束時にどこが弱いか……理解している。

 

――回想 轟家 個性伸ばし特訓時

 

個性伸ばしの特訓の一環で、俺たちは影鬼で個性を使うヒーローから逃げることをしているが、障子の複製腕が左右同時に展開されると逃げ場がなく、あえなく拘束される。

 

「くそ〜、また捕まったぜ……複製腕は拘束に強いな」

 

「けど、左右同時や大量同時になると、通常時よりも複製腕の強度が落ちるんだ」

 

「そうなのか? 見た目じゃ分からねぇな」

 

「それは個性を出す側の感覚だからな。特に左右の端の方は、本体から遠くなるとモロに弱くなる」

 

「くそ〜、逃げる側も個性アリにすれば良かった!」

 

「あはは、それは残念だな」

 

――回想終了

 

「衝突・参式 空気砲!!」

 

空気の弾を右側の端へ撃ち込むと、周囲のセメントは大きく崩れた。

 

「! 私のセメントの強度が弱い所をピンポイントに?」

 

「飛脚・壱足!」

 

崩れた箇所に壱足を使って一気に突破し、セメントの攻撃をかいくぐる。そのままゴールへ向かって走り出した。

 

「私のセメントの強度が脆くなっている所を狙うのは良かったが、そのまま逃がすほど私は甘くないよ!」

 

背後を抜けたはずだったが、セメントス先生はすかさずセメントで俺の前方を塞いできた。

加速が止められない。フックショットを側面の壁へ打ち込み、無理やり軌道をずらして回避する。

壁に張り付く形で、セメントス先生を見下ろす形になった。

 

「くそ……厄介な個性だな……あんな遠距離……?」

 

セメントス先生の周囲を見ると、俺を捉えようとしたセメント壁が目に入る。急に現れたと思ったが……。

 

イメージ図

先生_______俺__-|

 

こんな感じで、小さなセメントブロックが俺の進行方向に出現し、急激に大きくなっていた。

もしかして――セメントス先生のセメントは、焦凍の氷結同様に自身を起点としてしか発動できない?

遠距離から突然変化させることはできない……。

なら、左右への揺さぶりには弱い……あとは――

 

「敵の目の前で考え事は危険ですよ!」

 

「!?」

 

思考していた数秒の間に、セメント壁が再び迫ってきた。

張り付いたビルの上階へ向けてフックショットを撃ち込み、上へ回避した。

ビルの屋上へ撃ち込んだフックの壁が崩れ、バランスを崩して俺は落下し始めた。

 

「!? くそ!」

 

「いけない! このままでは!」

 

セメントが俺を拘束――というより先生は救出しようとして、俺を包むように囲い始めたが……

 

 

 

 

モニタールーム 同時刻 緑谷視点

 

「砕条君!」

 

ビルの屋上に移動しようとした時、フックを撃ち込んだ場所が崩れ、砕条君は真っ逆さまに落下していた。

咄嗟のことで個性を使うタイミングが遅れていた。

セメントス先生が砕条君を救おうと、セメントで包もうとしていた。

 

試験は失格になるけど、このまま怪我をするよりは――

 

ドカァーン!!

 

 

「え!?」

 

「これは一体?」

 

僕たちが心配した矢先、モニター先ではとんでもないことが起きていた。

落下中の砕条君の周囲に気流が集まり、大きな空気の球体になってセメントス先生のセメントを弾いていた。

 

その光景に麗日さんとリカバリーガールは言葉を失っていた。

でも僕は一度だけ見たことがあった。

 

ネットで拡散された動画で。

保須事件の日、砕条君はビル火災の救出時に親子を助ける時、この技を発動していた。

 

ビルの落下と衝突を、あの空気の球体で守っていた。

本人も火事場の馬鹿力でどうしてなったか分からないって言っていたけど……

 

まさか、この土壇場で発動するなんて……

 

「凄い……一体どうなるんだろう……」

 

バランスを取り戻した砕条君は、即座にセメントス先生に向かって加速した。

 

先生も砕条君の状態に驚いて対応が遅れたが、すぐにドーム状の壁を作って迎撃態勢をとった。

 

だが砕条君は、セメントス先生ではなく倒れている切島君たちに近づいた。

 

『え?』

 

 

モニタールームの僕たち、そしておそらくセメントス先生も驚いていたと思う。

 

(先生、悪い……試験で失格になっていても、目の前のこいつらを見捨てることはできない……)

 

(試験だからって割り切ったら……俺はヒーローって名乗れない……)

 

(こいつら背負ってゴールに行く)

 

※()はモニター越しでの会話として使用します。

 

砕条君は砂藤君を両肩に乗せ、切島君を左腕で抱えるようにして持ち上げた。

そして右手で砂藤君の腰袋から、先生拘束用のカフスを取り出した。

 

「え? 砕条君は何で切島君たちを……デク君、もしかして」

 

「多分……砕条君はあくまでも、切島君たちと一緒にゴールを目指すつもりなんだ」

 

「それって……」

 

「普通に考えたら不利だね」

 

「今、切島君たちを助けても合格するわけじゃない。

ただでさえ相性の悪いセメントス先生相手に、要救助者を抱えるなんて……」

 

「でも砕条君は、それを分かった上でやってると思う」

 

「この試験を“本番”だと思って臨んでいるんだ」

 

僕たちには、砕条君の言葉は聞こえない。

でも分かる。

USJの時から見てきたから。

保須の時も、唯一ヒーロー殺しの思想を真っ向から否定した彼だから。

だから、この行動を取ったんだと思う。

 

 

(なるほど……君はあくまで彼らを救出するんですね

その心掛けは素晴らしいですが、現場では時に非常な判断が必要です。

何より自分の身を守れなければ、救助者が“3人”になるのですから)

 

セメントス先生の猛攻で、瞬時に砕条君を囲むセメントが迫る。

だが――

 

砕条君を覆う空気圧の球体が、攻撃を防ぐ障壁になっていた。

 

「なぁ!?」

 

「凄い! あのセメントス先生の攻撃を防いでるよ!」

 

「砕条君のあの技……完全に防御壁として機能してる!」

 

(セメントス先生……時間がないんで、俺の全力の空気砲を撃つので……防御に徹してくださいよ)

 

(私の防御壁を打ち破ると? ……面白い。やってみなさい)

 

砕条君は右手に持つカフスを空気圧で包み込み、ボールのようにして手から離す。

そして右足で思い切り蹴り飛ばした。

 

(喰らえ! タイガーシュート!!)

 

バコォォォォーン!!

 

凄まじい音とともに空気圧の球体が飛ぶ。

セメントス先生は何重にもセメントの障壁を展開し、最後には自身を囲うドームを重ねた。

障壁は砕かれ、ドームにぶつかる。

だが、さすが先生だ。

攻撃は先生の元には届かなかった。

 

しかし――

 

(やりますね、砕条君……)

 

(お先です……)

 

(君の勝ちだよ)

 

砕条君は切島君たちを抱え、セメントの障壁をジャンプ台にして越え、駆け抜けていた。

映像越しでも分かる。

蹴った瞬間にはもう走り出していて、

先生が視界を遮る防御壁を出した瞬間を狙って飛び移り、走り抜けていた。

 

先生が障壁を解除した時には、既に攻撃圏外だった。

 

「もしかして砕条君……最初から?」

 

「うん、そうだと思う」

 

「セメントス先生の攻略は“視界を塞ぐこと”だから……」

 

「多分、ヒーロー殺し戦の経験で考えたんだと思う」

 

ステインが轟君の氷の障壁に対して、同じことを言っていたから。

 

「へぇ〜あの子、考えなしに行動するタイプだと思ってたけど」

 

「そんなことないと思います」

 

「砕条君は荒い行動もありますけど……」

 

「いつも、他人に寄り添える人なので」

 

だから――

君はヒーローなんだよ、砕条君。

 

『砕条、演習試験クリア!』

 

この試験の難易度の高さに驚く僕だけど、

砕条君の奮闘のお陰で勇気づけられたよ。

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