僕のヒーローアカデミア 空拳ヒーロー エアーマン 作:ダレ狐
I・アイランド センター街のカフェ
このエリアは一般の観光客が訪れる場所で、皆、明日から始まるI・エキスポの一般公開に備え、泊まりがけで訪れていた。
その中で、雄英高校一年A組の女子メンバーも、買い物の休憩がてらカフェで談笑していた。
「すごい〜! ここ、エキスポ会場じゃないのに、この盛り上がり!」
「だね〜。ショッピングモールも、私たちのところより個性に合わせた商品が多いよね」
「ケロ、明日の一般公開が楽しみね」
「そうね。これだけ人がいるなら、商売したら儲けられそうなのに」
「お前くらいだよ。ここに来て金儲けを考える客は……」
芦戸、葉隠、蛙吹がI・アイランドの賑わいに素直な感想を口にする一方で、交野は元・経営科志望だった名残か、ビジネスのことを考えていた。その様子に、鷹野は少し引いていた。
「でも、交野さんがホテルまで手配してくれて助かったよ!」
「流石に公園で“あの光景”を見た後だったしね」
あの光景とは、数日前の出来事だった。
八百万が父親からI・エキスポの招待券を二枚もらったものの、女子グループでじゃんけんをした結果、芦戸、葉隠、蛙吹の三人は負けてしまった。
落ち込んでいたところを、帰宅途中だった交野と鷹野が見かけ、「団体なら部屋を確保できる」と交野が提案し、皆が賛成して現在に至る。
「大部屋なら、一人当たりの負担も少なく済みますからね……あら? あれは」
交野が店内のモニターへ視線を向ける。
皆もそちらを見ると――
『さて、途中参加の四人の学生が挑戦します! まずは緑谷選手! ヴィランアタックチャレンジ、スタート!!』
『緑谷!?』
「何してるんだ、アイツ?」
「ケロ、よく見たら他のみんなもいるわ」
画面の端には、ストレッチをする砕条、飯田、轟。
選手控えブースには爆豪と切島。
観客席には残りの女子メンバーが映っていた。
「これは皆の貴重なデータが取れそうね」
開始の合図と同時に、緑谷の全身へ緑色の電流が迸り、一気に加速してステージを縦横無尽に駆け抜ける。
「ワン・フォー・オール フルカウル!!」
以前の救助訓練よりも、明らかに個性を安定して扱えていた。
『緑谷選手ゴール! タイムは何と16秒! 現在一位の爆豪選手とは一秒差です!!』
「緑谷、すごいじゃん!」
「あの爆豪君に一秒差だよ!」
「驚きだわ、緑谷ちゃん」
「けど、動きにはまだ無駄な減速があるな……」
「流石、鷹野さん。観察眼はお手の物ね」
「茶化すなよ」
「ケロ、どういうことかしら?」
「恐らく、次の彼の動きで分かるでしょう」
『続いての挑戦者は砕条選手! ヴィランアタックチャレンジ、スタート!』
砕条は全身へ空気を纏い、一気に加速した。
「衝突・陸式――空衣武叢!」
緑谷と同じように飛び出したように見えた。
しかし、新たなサポートアイテムであるフックショットを駆使し、方向転換の際にも減速を抑えることで、緑谷以上のスピードを維持したままコースを駆け抜けていく。
『出ました! 砕条選手! タイムは何と15秒! 爆豪選手と並び、暫定同率一位です!!』
「鷹野さんと交野さんの予想通りだね! でも何で? 個性の速さは同じくらいに見えたけど?」
「緑谷さんと砕条さんの決定的な違いは、減速する回数ですね」
「減速の回数?」
「緑谷はヴィランロボットを攻撃するたびに、一度勢いを殺してから再加速している」
「それに対して砕条さんは、初速の勢いをできるだけ殺さず、フックショットで方向転換や間合いを詰めています。その分、減速が少なく済んでいるんです」
「なるほど。自転車で例えるなら、緑谷ちゃんはブレーキを何度も使いながら走ってる状態。砕条ちゃんはブレーキを使わず、身体の傾きやペダルの踏み加減だけで曲がっている感じね」
「なるほど! それならスピード差が出るのも分かるわ」
「梅雨ちゃん、ありがとう」
『続いては飯田選手! ヴィランアタックチャレンジ、スタート!』
「レシプロバースト!」
飯田は圧倒的な加速で飛び出し、瞬く間にコースの半分を駆け抜ける。
「レシプロバースト……エクステンド!!」
最後の崖を駆け上がる瞬間、さらに加速し、そのままゴール。
『これは凄い!! タイムは9.5秒!! 驚異的な記録です! 暫定一位!!』
「やっぱり、この手のスピード勝負じゃ飯田には勝てないな〜」
「ええ。個性だけじゃなく、あの速度に耐えられる身体を鍛えているのも大きいわ。恐らく他の三人では、あのスピードには耐えられないでしょうね」
先ほどまでの緑谷や砕条も十分速かった。
しかし、飯田はそのさらに上を行くスピードだった。
『続いては轟選手! ヴィランアタックチャレンジ、スタート!』
「……」
轟は無言で地面に手をつける。
瞬間、体育祭で見せた巨大な氷壁がコース全体を飲み込んだ。
『凄まじい個性です!! タイムは12秒! 暫定二位です!!』
「流石、轟君! 凄すぎるよ!」
「ケロ……カエルの私は冬眠しそうで恐ろしいわ」
「こうして見ると、やっぱり体育祭ベスト16メンバーは伊達じゃないな」
「そうね。芦戸さんや麗日さんもよく戦ったわ」
「いや〜私は親切にしてもらっただけだよ。麗日の方が凄かったって」
買い物を楽しんでいたはずが、いつの間にか皆で試合内容を分析し始める。
そんなところも、彼女たちらしい光景だった。
数分後――プレオープンパーティ会場・1Fロビー
砕条視点
「うーん、皆、遅いぞ」
「まだかな〜。女子のドレス姿〜」
「特にメリッサさんのが楽しみだよな〜、峰田!!」
「……」
「おいおい、パーティが始まる前からテンション低すぎるのもどうかと思うぞ」
あの後、爆豪が乱闘になりかけたこと以外は無事に終えた俺達は、夜から始まるプレオープンパーティに参加するため、一度解散して着替えることになった。
飯田は集合時間になってもなかなか来ないメンバーに文句を言い、峰田と上鳴はメリッサさんの厚意でパーティの参加チケットをもらい、テンションが上がっている。
焦凍は……元々、この手のパーティに興味がないみたいだな。
「俺からしたら、砕条が興味あるのが意外だな」
「普段食えない豪華な飯を食えるだけでも楽しいじゃねぇーか?
それに、あの“二人”ほどじゃないにしても、綺麗に着飾った女性を見られるのは眼福だぜ?」
「分かってるじゃねぇーか! 砕条! だよな〜。綺麗なお姉様方との出会いがあるかもしれないしな!!!」
「お前は胸派か〜? 尻派か〜? どっちなんだ?」
「急にグイグイ来るな〜。正直、どっちも捨て難いんだよな」
「確かにな〜。俺もこれって決められねぇーんだよな」
「なら、この峰田様がお前らの性癖を暴いてやるぜ〜」
「やめないか、峰田君! TPOを弁えなさい! 砕条君も、あまり二人を増長させないでくれ」
「悪い悪い。そんじゃ、パーティの後でグループで感想でも言い合うか」
『了解!!』
「こら! 三人とも!!」
確かにセクハラ発言はヒーローとして良くないが、どんな人が良かったとか、感想を言い合うのは悪くないんじゃないかな?
メリハリがついていれば、俺は良いと思うが……。
「凄いな、砕条は?」
「どこが? ただの雑談に褒められる要素あった?」
「何というか、砕条はUSJ以降に知り合って、クラスに合流したのは先月なのに……俺よりもみんなの輪の中に入れて……凄いなと思ってな」
「単純に慣れの問題だと思うぜ?
まぁ〜、俺と焦凍の違いは、自分から行動してるかどうかの差だろうな」
「行動か……」
「夏休みが始まったんだし、林間合宿で色々話していけば良いだろ?」
「そうだな」
「ごめん、遅れた!」
入口に緑谷が到着し、早速、飯田に注意されている。
やれやれと思いながら近づいた。
「遅いぞ、緑谷君!」
「まぁまぁ、まだ全員じゃないし、後にしようぜ」
「後は女子かな?」
「ごめん〜、遅れて。ドレス着るのに時間が掛かった!」
すると入口には、ドレスを着た麗日が現れ、その後に八百万と、恥ずかしそうな顔をした耳郎が登場した。
「その、麗日さん///とても///似合ってます!!」
「デク君!/// そんなお世辞言わんでもええんよ!!」
「めっちゃ分かりやすく喜んでるな」
これは……あれだ。ブラックコーヒーが甘くなるアレだな。
「ウチ、こういう衣装は……」
「何言ってんだ、馬子にも衣装で似合ってるぞ!」
「女、スパイみたいだ!」
「フン!」
余計なことを言った二人は、耳郎のイヤホンジャックで制裁を受けていた。
「焦凍、コミュニケーションも大事だが、一番は余計なことを言わないのが理想だ」
「なるほどな」
「三人の衣装は、まさか八百万の個性で?」
「違います! 私の贔屓にしているお店から、お二人に合う衣装をお借りしたのです。私としては、そのまま購入した方が良いと言ったのですが」
「勘弁してよ、ヤオモモ〜! あんな高いの、レンタルでもビビってるんだから」
「私も心臓が持たない!」
「でも、三人とも似合ってるよ。なぁ、焦凍?」
「そうだな。制服やコスチュームとは違った印象で驚いたが、似合ってると思うぞ」
「あら、嬉しいですわ」
「真顔で言われると……照れるな」
「皆、そんなお世辞言わんでも」
おぉ、流石クラスの中でダントツのイケメンが言うと効果が絶大だな……。
『……!!!(血涙)』
そこの二人は無言で悔しそうに血涙を流していた。
言いたいことは分かるが……。
「成程な……そう言えば俺のタキシード、背丈が俺と焦凍で同じだから借りたけど……今更だけど大丈夫なのか?」
あの二人のドレスの事情を聞くと、俺も不安になってきた。
「それは親父が俺に用意した物だから気にするな」
なるほど。俺のはエンデヴァーが用意したものだから、着たくないのね……。
遠慮はしないが、いくらなんでも可哀想だろ。
「あれ、デク君達、まだこんな所にいたの? パーティ始まってるわよ」
『真打ち登場!』
エレベーターからメリッサさんが登場した。
昼間の眼鏡姿とは違い、コンタクトに変えていて、青いドレスがよく似合っていた。
二人じゃないが、思わず見入ってしまった。
年齢が一つしか違わないはずなのに、こうも大人びて見えるのか?
『警報、発令。セキュリティレベルMAX!』
これからパーティに行こうとしたところ、突然、警戒アラートが発生した。
アナウンスによれば、爆弾が持ち込まれたため、エレベーターや機器の使用がロックされており、俺達のスマホも電波が繋がらない状態になっていた。
緑谷の提案で、パーティ会場にオールマイトが来ているはずだから、耳郎と緑谷が偵察に向かった。
その後は……。
『I・アイランドがヴィランに占拠された!?』
緑谷の報告を、俺達は階段の踊り場で聞いていた。
ヒーロー達はパーティ会場だけでなく、町にいる人達も人質に取られ、身動きができない状態にされているらしい。
飯田と八百万は、ヒーローが来るまで待機することを提案したが、メリッサさんの話では、ここは個性使用者の監獄『タルタロス』と同等のセキュリティで、しかも外部から入るのは困難な状況らしい。
応援に駆けつけるには、かなり時間が掛かるとのことだった。
「助けに行こうよ!」
緑谷の発言を受け、麗日、耳郎、焦凍が救援に向かうことに賛成した。
もちろん――
「俺も乗った!」
「よっしゃ! 俺達も助けに行こうぜ!」
「分かったよ! オイラもやってやるよ!」
上鳴も峰田も勢いで賛成したが、委員長組はコントロールルームの解放を目的とし、極力戦闘は避ける方向で納得した。
そのまま80階の植物園まで上ったところで、上層階からエレベーターが降りてきた。
俺達は茂みに隠れ、ヴィランが俺達を探している様子に息を潜めていたが……。
「おい、そこにいるのは分かってるんだぞ、ガキ共!」
俺達のことだと思い、静かに様子を見ながら、俺と焦凍はいつでも個性を出せるよう臨戦態勢を取っていた。
だが――
「あぁ〜、テメェーこそ、何だ?」
「おい、爆豪! そんな言い方するな。俺に任せろ」
何故か堂々と通路を歩く爆豪と切島に、俺達は声を殺しながらも驚いていた。
「すみません。パーティ会場を探したのですが、迷ってしまって……」
「(小声)どうしたら80階で迷子になるんだよ!?」
峰田の意見はもっともだが、そんな呑気なことを言っていられなくなった。
「適当なことを言うなよ、ガキ共!」
水掻きを持つ異形型の男が二人に攻撃を仕掛けようとしたところに、焦凍が氷壁を作って盾にした。
しかし、何故か氷が抉れていた。
さらに水掻きのヴィランは二人に追撃を仕掛けようとしたが――
「参式・空気砲!!」
俺が先に空気砲でヴィラン達を牽制し、距離を取らせた。
その隙に俺と焦凍は二人の元へ駆けつけ、氷壁でヴィランの前に壁を作った。
「氷? もしかして轟か!?」
「何でテメェーらがここにいるんだ!」
「放送聞いてないのか? ヴィランのこいつらに、このタワーが占拠されてるんだ!」
「皆は先に上に行ってくれ! ここは俺達が相手をする!」
そして、小太りの男が紫色の巨漢に姿を変え、爆豪を殴りつけようとしていた。
「時間を掛けるな。捻り潰す」
「やってみろよ! デカブツが!!」
爆豪は巨漢のパンチを避け、至近距離で爆破させた。
だが、巨漢の男は爆豪の爆破が効いていないのか、そのまま殴るモーションに入っていた。
見た目からしても、増強型の個性によるパンチは、生身の人間が受けたらシャレにならない。
「爆豪、危ねぇー!」
だが、切島が爆豪を押しのけ、個性で硬化して攻撃をガードした。
しかし、防ぎきれず、そのまま吹き飛ばされた。
「切島!!」
「防人・壱陣――手盾!」
俺は吹き飛ばされる切島を受け止めるため、掌に薄い空気圧の膜を作って待ち構えた。
「お!? 砕条!?」
「くっ!」
吹き飛んできた切島を受け止めたが、衝撃を殺しきれず、空気圧の膜が割れる音がした。
俺はそのまま軽く尻もちをついて倒れた。
これは体育祭のビデオで見た、B組の円場の空気の壁を参考に考えた技だけど……円場のものと比べると強度が弱く、安定性もないため、まだ未完成だ。
それでも、とりあえず切島を受け止めることはできた。
今は良しとしよう。
「悪い、砕条! 助かったぜ!」
「尻もちついて起こされてたら、カッコつかないけどな」
切島に手を取ってもらい、立ち上がった。
「チッ、ゾロゾロと出やがって」
「切島、あいつの攻撃を受けた感じ、どうだ?」
「俺の硬化みてぇーに硬いぜ」
「爆豪の爆破でも大して効いてないからな」
「エアプの分際で俺の爆破を評価しとるんじゃねぇ!!」
「余所見とは余裕だな!」
水掻きの男が爆豪に攻撃を仕掛けてきたが、焦凍が氷壁を張って防いだ。
しかし、その氷壁もまた、抉り取られたようになっていた。
「ぼーっとするな! アイツの個性も厄介だぞ!」
「うるせぇー! 俺に指図するな!!」
だが、こいつらの相手に時間をかけるわけにはいかない。
上にも多くのヴィランがいるんだ。
ここに長くいれば、それだけ他のヴィランの相手もしないといけなくなる。
俺達の個性は消耗戦になると不利だ。
何とかして短期決戦に持ち込まないとダメ……。
消耗戦?
「もしかしたら……切島!」
「おぉ、何だよ砕条!?」
「ちょっと、お前に負担が掛かるが、上手くいけばヴィラン二人を捕まえられる策がある」
「よし、やろうぜ!!」
「まず、作戦を聞かねぇーのかよ?」
「何か秘策があるんだろ? なら、ダチの言葉を俺は信じるだけだ!」
「……カッケェーな、切島。よし、行くぞ!!」
本当は爆豪や焦凍にも伝えたい。
だが、距離があるし、下手に話し込むとヴィランに警戒される。
なら、一か八かで掛けるしかない。
「切島、俺が敵に向けてお前を吹き飛ばす。敵に当たりそうになったら、この前の訓練で教えたショルダータックルをしろ。外れたら、何とかして方向転換してくれ」
「方向転換?」
「後は、アイツが気づくはず……」
「分かった! 思いっきり頼むぜ!」
切島が硬化したタイミングで、俺は肆式・空爆拳の構えを取った。
「行くぜ! 切島!!」
「決めるぜ!!」
ドォォーン!
空爆拳の空気圧で、切島を異形型の大男に向けて弾き飛ばした。
「ふっ、当たるかよ!」
だが、大男は横に避けた。
その先には爆豪がいた。
「てめぇー、何処に飛ばしてるんだ!!」
「爆豪、打ち返せ! そうすればダブルプレーだ!!」
「頼むぜ、爆豪!!」
「はぁ!? 何がダブルプレー……そういうことかよ!」
爆豪は俺達の言葉とヴィラン二人の位置関係から、俺が何を仕掛けるのか理解し、爆破を使う体勢に入った。
「気張れよ、切島!」
「頼むぜ! 爆豪!!」
「エクスプロージョン・カタパルトー!!!」
切島は爆豪に当たる前に硬化を解き、身体を丸めて足を爆豪の方へ向けた。
爆豪はその足に向けて爆破を起こし、切島を先ほどの大男が避けた方向へ飛ばした。
「こいつ、オレの避ける方に……だが甘いわ!」
大男は足を踏ん張って勢いを殺し、切島との衝突を避けた。
けど、足を止めた。
「切島、決めるぜ!」
「待ってたぜ、その言葉!」
俺は大男の正面に立ち、伍式・突空閃の構えを取った。
そして、この位置なら大男の後ろには水掻き男もいる。
「まさか、アイツらの狙いは!?」
「伍式・突空閃!!」
俺は突空閃で加速して飛び込み、その先にいる切島へ拳をぶつける。
ゼロ距離の空気圧によって、切島は大男の前へ一気に間合いを詰めた。
「行くぜ! 砕条と爆豪が作ったチャンスだ!」
「
大男にぶつかる瞬間、切島はショルダータックルの体勢になった。
俺と爆豪による加速と、切島の硬化を合わせた激突に、大男も吹き飛ばされ、水掻き男のところまで飛ばされていった。
「なぁ!?」
「焦凍! 氷壁を頼むぜ!」
「そういうことかよ!」
ぶつかった二人が焦凍の方へ飛び込んできたところを、焦凍がまとめて凍らせ、身動きを封じた。
「切島、大丈夫か?」
「あぁ、何とかな! よく思いついたな」
「この前の演習試験の後から考えてたんだよ。どんな方法ならセメントス先生を倒せたかって」
「砕条! お前……漢だよ!!」
「けっ、俺を利用するとはな……」
「だが、おかげですぐにヴィランを拘束できた。ナイス判断だ、砕条。そして、爆豪もよく対応できたな」
「当たり前だぁ! 奴らの配置関係とダブルプレーって聞けばな」
「流石、爆豪だぜ〜。お前もすげぇーよ!」
切島は俺と爆豪の肩を掴んで身を寄せ、円陣を組むみたいな形になった。
何となく流れで、俺は焦凍の肩を掴んで引き寄せた。
「はぁ!? 何しとるんじゃ? 何で俺が半分野郎と……」
「切島、知らねぇーか? チームの勝利でよくやるやつだよ。ハイタッチとか円陣組んだりするだろ?」
「まぁ、円陣は試合前にするものだが、おおかた爆豪がしないからこんな形にしたんだろ? 焦凍もこういうの慣れてないし」
正直、爆豪とやるのは俺も嫌だが、まだ切島や焦凍が間に立つなら耐えられる。
「しょうもないことしてるんじゃねぇーよ!」
「でも、チームプレイで勝てたんだ。喜ぼうぜ、爆豪! 砕条! 轟!」
爆豪も嫌そうにはしているが、この作戦の要だった切島に言われ、渋々とした顔で轟の肩へ腕を伸ばした。
ただし、腕を轟の肩から数センチ浮かせて寄せるという、狡いことをしていた。
「良いんじゃねぇーか? MVPの切島が言うんだ」
「そっか、チームプレイか……良いものだな」
「よっしゃ! 俺達の大勝利だ!!!」
とにかく、俺達はすぐにヴィランを倒すことができた。
そのまま、上の階にいる緑谷達のところへ駆け出した。