The Blank Card   作:カナヤン

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そして現実へ…

 

あの夜が終わって、全員が病院で治療を受けた。

波紋の回復力は確かに凄いけど、みんなそれ以上に満身創痍だったのだ。

 

アヴドゥルさんとイギーはSPW財団特製の義足をつける予定だ。……車椅子や杖で元気に動いている。

 

ポルナレフも頭を打ったから精密検査をしたが、全く問題ないらしい。超人かな?

 

ジョースターさんも先輩も刺されたり殴られたりで結構な深傷だ。何で平然と歩いているんですかね?

 

一番の重傷は花京院くんだ。一度はお腹に穴が開いたんだから。特に念入りに検査している。……臓器に後遺症が残るかもしれないそうだ。

 

「生きてるだけで儲けものですよ」

 

花京院くんは、そう言って笑っていたけれども。

あの時――散らばった()()のほとんどを取り零さなかったのは、自分でも信じられない。

もう一度同じことができるとはとても思えない。二度とあってたまるかってやつだけど。

ハイエロファントで傷の縫合ができてなければ、……考えたくもない。

 

私がDIOとの戦いでしたことを話すと、かなり強めに叱られた。無茶するなって? ……鏡を見なよ。無茶や無理をしなかった人はいる?

私が一番軽傷だと思うよ。

――首にDIOの指痕がまだばっちり残ってるんだよねえ。

包帯の上から指でなでる。

帰るまでに消えてくれるかな?

 

 

 

***

 

ジョースターさんやポルナレフは帰国の準備をしている。

ジョースターさん、先輩、花京院くん、そして私の4人はもちろん日本へ。

ポルナレフは故郷フランスへ。

ジョースターさんによると、ホリィさんの容態は劇的に良くなったそうだ。DIOからの影響が消えたからだ。もう心配いらない。でも、きっと早く顔を見て安心したいんだろう。

 

大人たちは手続き諸々のために動いているけど、私は取り敢えずすることがない。

空条先輩と花京院くんも同じくだ。

花京院くんの病室でアスワンからカイロまでのあれこれを先輩と3人で話した。

DIOの館での別行動中のこともね。本ッ当にいろいろあった……。

こんな旅は、もう二度とないだろう。……ないよね?

兎にも角にも、やっと帰れる。帰れるんだけど……、

 

深くため息をついた。

 

「どうしました?」

「帰るのが怖い。帰ったら正座で3時間は説教だよ。あと進級できるかな〜って。ハハ、アハハ」

「それは僕もなんですけどね」

「平和な悩みで結構なことじゃねーか」

「先輩だって進学はどうするんですか?」

「俺は元々、アメリカの大学を目指す予定だったからな。そう変わりはねえ」

 

……嘘だろ。家族への説明とか言い訳とかもなし、進学問題もノーダメージ。

 

「憎い。涼しい顔してる先輩が憎い」

「八つ当たりはやめろ」

「僕たち進級できるか微妙なとこだからね、気持ちはわかるよ」

「……花京院くん、一緒に逃げよう」

「選択が極端過ぎますよ」

「だってさ〜、考えれば考えるほどトホホだよ、もう。帰ったら絶対怒られるしさ」

「否定はしませんが……」

「なんかこう、いい感じの言い訳ないかな……」

「……一緒に考えましょうか」

 

 

 

***

 

「どうしてもフランスに帰るのか? ポルナレフ。

もう身内はいないんじゃろう? よかったらわしの家のあるニューヨークに来ないか?」

 

パリ行きの搭乗案内のアナウンスが流れる中、ジョースターさんがポルナレフに言った。

 

「ジョースターさん…身内はいなくても、フランスは俺の祖国なんです。…故郷には思い出がある。

どこへ行っても必ず帰ってしまうとこなんです。

何かあったら呼んでください…世界中どこでもすっとんで駆けつけますよ」

「寂しくなるな」

 

うん…寂しいな。ポルナレフは旅のムードメーカーだった。あんな過酷な旅なのに、みんなの気持ちを明るくさせてくれた。

思い返すと、私たちみんな、結構笑っていた。

 

「辛いことがたくさんあったが…でも楽しかったよ。

みんながいたからこの旅は楽しかった」

「そうだな……。楽しかった…心からそう思う…」

 

……やだな、涙が出そうだ。

うん、本当に楽しかった、私も。

 

「ポルナレフ、日本にも遊びに来てよ。どこ行っても大体トイレもキレイだから!」

「晶、オメーは恋でもしてちょっとは女らしくなった方がいいんじゃねーか?」

「そうだね〜、今度は三股とかしない人と付き合うよ」

「ブッ! 何だって別れ際にンな爆弾ぶっこんでくるんだオメーはよッ!」

「どうしてそんな事になるんだ、日本の高校生はどうなってる?」

「クラスの子に告白されて付き合ったら一週間で三股が発覚したんだよ。まだデートすらしてなかったのに。

『隕石がぶつかるくらいの確率でバレないと思ってた』だって」

「クソ野郎じゃあないですか」

「告白されてちょっと嬉しくてOKしたらこれだよ」

「嬉しいモンか? それ」

「は? 普通はちょっとは嬉しいもんですよ! よほど相手がヤバくなければ……いや、旅の間に麻痺してたけど、先輩は鬼モテの人でしたね……。そうだ、そういえば花京院くんもカサノヴァ村の住人だった」

「何で僕まで……その呼び方はやめてもらえるかい?」

 

アヴドゥルさんが吹き出した。

 

「まったく、お前たちは最後まで賑やかだな……ふふ、またエジプトにも来てくれ。いつでも歓迎しよう」

「ポルナレフ、搭乗遅れちゃうよ」

「誰のせいだよ! それじゃあな‼︎ しみったれたじいさん! 長生きしろよ! そしてそのケチな孫よ!俺のこと忘れるなよ。アヴドゥル、世話になったな。イギー、オメーは最後まで可愛くねえな…ガムばっかり食うなよ。花京院、晶、勉強も頑張れよ!」

「また会おうッ! わしのことが嫌いじゃあなけりゃあな!…マヌケ面ァ!」

「忘れたくてもそんなキャラクターしてねえぜ…てめーはよ。元気でな……」

「お前ほど手のかかるやつはそうはいないぞ。…また会おう、友よ」

「アウゥウ」

「言われなくてもってやつだな、ポルナレフ……またな」

「……うん、頑張るよ……ありがとう、ポルナレフ」

「……あばよ」

 

次に会えるのはいつかもわからない。ただ、無言で顔を見つめた。

名残りは尽きないが、そろそろ時間だ。ポルナレフは手を振ると背中を向けた。

 

「わしらも行くぞ」

「ああ」

 

それぞれの帰る場所へと歩き出す。

 

だけど――

どこにいても、どんなに時間が経っても、きっと忘れない。みんなのこと、この旅のこと。

果てしなく長いような、このたった50日間を。

 

だから今は、しばしのお別れ。……また会う日までの。

 

私たちを乗せた飛行機は、青の中へ飛び立った。

 

 




第三部、完ッ!

アニメ放送からも何年もたち、大好きだった作品にもう出会えなくなったりもして。
生還IFはいくつあってもいい。何番煎じでもいい。
足りないなら書いてみればいいじゃないかで書き始めました。

お気に入り登録、評価、感想、とても励みになりました。
拙い物語にお付き合いいただき、ありがとうございました。
この後は、小話集をいくつか投稿予定です。そちらも楽しんでもらえると嬉しいです。
四部については、少々お時間をいただきます。なんとなく形になりそうではあるので、お待ちくださいませ。
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