突発的アイデアから書き始めたこの小説がこうまで読まれることになるとは……読めなかった、このリハクの目をもってしても!
その日の夜───
ウォーズマンは悩んでいた。
というのも、昼にアイシャ・ベルカと名乗った女性から「夜」に「歓楽街」に来るように言われたからである。
道を歩いていたら突然話しかけられ、夜の歓楽街に誘われた。
そんな明らさまな状況、普通なら断るものであるが……
ウォーズマンはあまりにも心優しく、素直だった。
なにより、あの声をかけられた時の目には何やらある種の強い決心の様なものがあったように感じられたからである。
さて、行くのは別に問題はないのである。
しかし、問題はコスチュームだった。
『クロエ・ボルコフ』の姿で向かえばベルに顔向けできないような気がする。かといって『ウォーズマン』の姿で向かえば、もし怪物祭の時に助けたあの冒険者達に出くわした際に言い訳が出来ない。さらにこの世界で目を覚ましたあの日も、周りからの視線がかなり多かった。
ヘスティアに「もし万が一君のことが他の神々に知られたらぜっっったいに暇つぶしに利用されるからあまり素性を明らかにしないように!約束だよ!?」
とかなり真剣な顔で言い聞かされたのを思い出し、彼はさらに頭を抱えた。
ふと顔を上げてみると、そこには少し埃をかぶったボロ布が置いてあった。
「これだ!」
彼はガバッと立ち上がり、そのボロ布を手に取った。
そして少し時が経ち、歓楽街前。
見つけたボロ布をローブのように被り、昼間に言われた通り歓楽街前まで訪れたウォーズマン。
すると、彼が到着した時にはもう例の女性が壁に寄りかかりながら待っていた。
「アイシャ・ベルカだな」
「ん?いきなりなんの用…あんた、もしかして昼間の」
「あぁ、そうだ」
「はっ、何だい。そんなボロ布被ってちゃあいい男が台無しじゃないか。まぁ良いか。そんじゃ、ちょっくらあたしに付き合って貰うよ。ついてきな」
そう話終えると、二人は歓楽街へと歩いていった。
***
歓楽街──
そこは人間の欲望と暗闇がぐちゃぐちゃに溶け込み、混ざる魔窟。
煌びやかな顔の裏には甘く抜け出せぬ罠が至る所に仕掛けられている。
ウォーズマンはその街の様子に現代のネオン街のような、どこか時代錯誤のような印象を受けた。
近世のような建築物に現代のような目の痛くなるほど眩しい照明の数々。
……彼は半ば下を向くように歩き始めた。
「どうだい、中々いい所だろ?」
「…………あぁ」
「なんだ、こういうの慣れてないのかい?結構ウブなんだねぇ」
カラカラと笑いながらこちらをからかってくる目の前の彼女に、何も言い返せなかった。
すると、向こうから数人の褐色の女性達が歩いて来た。
「あれ、アイシャだ!やっほー!」
「あんた達かい、今日も元気してるかい?」
「もちろん!ところで…後ろの雄は客?」
(雄…!?)
「ま、そんなとこさね」
「えー!?いいなー!見たところめっちゃ上玉っぽいし……羨ましいー!」
「ははっ、ありがとね。それじゃあ」
「うんっ、ばいばーい!」
そう言いながら、知り合いらしき彼女達は歩いていった。
「…………」
「…なんだい、別にあんたを客として食うつもりなんかじゃないよ。本当は味見くらいはしたいもんだがねぇ」
「……そうか(不安だ……)」
本音らしき小声をサラッと流し、ウォーズマンはただひたすらついて行くことにした。
「着いたよ、ここさ」
そう言って彼女が指を指したのは、見上げる程大きい日本風の建築物……所謂遊郭のような建物だった。
中に入り、暫し歩いていると……やがて1つの部屋の前に辿り着いた。
「ここさ。おーい春姫ー!ちょっと入るよー!」
そう言いながら、ノックもせずに彼女は入っていった。
ウォーズマンが戸惑っていると、中から腕だけを出して手招きしてきたので恐る恐る入ってみることにした。
すると、そこに居たのは。
赤い着物を纏い、美しい金の髪に翠の目、そしてその髪と同じ色をした狐のような耳と尻尾をした少女だった。
今まで回路がバグるほどの煌びやかさを見てきただけに、彼は一瞬面食らった。
「ほら、春姫。自己紹介しな」
「───初めまして、サンジョウノ・春姫と申します。……本日はわたしの体を存分に「何考えてんだいこのエロ狐」コンッ!?」
……何か不味いものを言いかけていた気がするが、気にしないことにした。
「それで、オレを何のために連れてきたんだ?」
「いやなに、春姫の丁度いい話し相手にでも、と思ってね。……こいつ、する前にいつも気絶するから客からの指名が来ないのなんの…あと英雄譚が好きらしいからね、あんたみたいな男のことだし、何かあるんだろう?」
「そうだな……」
突然そう言われても、思い当たるものが…いや、あった。
「それじゃあ、こんな話はどうだ?」
オレに友情パワーを教えてくれた、あの男のことが。
「──それで好敵手が来るのを待ち続けたんですか!?」
「あぁ、どれだけ雨に打たれようとも、約束の期限が近づこうとも『やつは必ず来る』って言って待ち続けていたらしくてな」
「……その好敵手とやらも中々に良い奴じゃないか、愛する人に夜通しでついていてあげるだなんてさ」
「……そういう奴なんだ、あいつは…」
キン肉マンとテリーマンとあの対決、結婚式当日のキン肉ハウスでのガチンコのスパーリング、フェニックスとの闘い……そして正義超人たちとの友情。
忘れもしないあの闘い達を思い出しながらウォーズマンは嬉しそうに語り続けた。
そして夜も更け───
「春姫?……寝ちまったか」
狐人の少女はアイシャの膝の上ですぅすぅと寝息をたて始めた。
「────さて、本当の目的を話してもらおうか」
「……気づいてたのかい」
「当然だ」
「そうか…聞くだけ無駄だろうけど…いつからだい?」
「昼、お前が声をかけてきた時から何か裏があると睨んでいた。案の定、そうだったようだな」
「こりゃ、敵わないねぇ。……いいよ、教えてあげるよ。
そうして彼女から語られた内容は、驚くべきものであった。
この狐人の少女が持つ能力、それは冒険者のレベルを1つ上げるというもの。
レベル至上主義の考えが根底にあるこのオラリオ…いや地上で、その能力はまさにジョーカー、手にすれば地の底から天上にまで至ることも可能だという。
それをこの歓楽街を支配するファミリアの主神『イシュタル』は、それを使いオラリオ最大派閥の1つ、同じ美の女神である『フレイヤ』を地に堕とす為とある方法を使いその能力を完全に手に入れようとしているらしい。
その方法とは───
「その殺生石とやらに、命を引き換えに能力を込める…だと?」
「あぁ、そういうことさ」
巫山戯るな、そうウォーズマンは激怒した。
まだ『ウォーズマン』ではなくただの『ニコライ・ボルコフ』であった時、亡きパーパの夢を果せる。そう言われ入ったSKGBは、己を西側諸国の為のロボ超人兵士としての育成所だった。共に励まし合い、生き残ったもう一人、カマーンダスの変貌……
無意識に、拳が怒りで震えた。
「お前は何も思わないのか?」
「そんな訳ないだろう!一度だけ、殺生石を壊したことがあったさ。……だがその後は、フリュネとかいうデカブツにまるでボロ布のようにされた挙句、主神様の魅了で……あぁ、もう嫌になるよ。本当に」
アイシャは今までの態度とは打って変わって、まるで恐怖に怯えるように震え始めた。
「……そんな時さ、あんたを見つけたのは」
彼女はそう、ポツポツと語り始めた。
「あたしは
「…あの時か」
「……こういうのを、極東だと藁にもすがる思いって言うらしいね。つまり、あたしはあんたに縋ったのさ。この子を助けて欲しいってね…」
そう言うと、彼女は膝の上で眠る春姫の頭を撫でた。
「……この子は、ヘマして親に売られて、その途中で山賊に奪われてここに売り飛ばされたらしいんだよ。友人とも離れ離れらしくてね……それで最期まで利用されて終わりだなんて、余りにも可哀想じゃないか……この子は言っちゃ悪いがポンコツで初心で……でもあたしが人一倍目をかけてきた子なんだよ」
そう言うと、彼女はこちらを決心の籠った目で見つめた。
「後生さ、頼む。この子を助けるにはまだ何もかも足りない、でもいつか必ずこの子を助け出す方法が見つかるかも知れない…!その日まで──!」
「了解だ、だがオレだけじゃない、アンタと一緒にだ」
「!!……あぁそうだね。それじゃあ、同盟成立だね」
そう言い、アイシャは右手を差し出し、両者は固く握手をした。
「誓おう───アマゾネスの誇りにかけて」
「あぁ───正義超人、ウォーズマンの名にかけて」
な、何とか書ききった……
そういえば本編とは関係ない(重要)ですが
if話も書いてみたいと思っているので
感想に好きな超人書いてください!