気が付いたら私はハズビンホテルのアラスターになっていました。しかし地獄にいるというわけではありません。
私がいるのは「僕のヒーローアカデミア」という漫画の世界でしょう。なにせ平和の象徴オールマイトが日本にいますからね。
なぜアラスターの容姿と能力を得てヒロアカ世界にいるのかは分かりませんが1つだけ確かなことがあります。それは私こそが最強のヴィランになるべきだということです。本物の彼も最強の罪人ですからね。
その野望を達成するにはオールマイトやAFOなどの邪魔者を排除する必要があります。しかしアラスターはアダムにボロ負けする程度の実力なので彼らを倒せるか怪しい。
であるならば上手く取引しOFAの絶大なパワーを手中に収めれば良い話です。そうなれば負けることは無いでしょう。
そんなOFAの譲渡条件は継承者が後継者に個性を譲りたいと思考しながら遺伝子の一部を摂取させるというもの。そして魂を縛る取引を結んでも思考までは縛れません。エンジェル・ダストが良い例ですね。
つまりオールマイトや緑谷出久のような強い心の持ち主からOFAを奪うのは不可能に近い。今のところは取引で継承者の行動を縛り傀儡にするのが理想ですかね。
それはともかくとして最強のヴィランになるには強さも重要ですが知名度や影響力も必要不可欠です。そんなわけでラジオ放送を始めることにしました。余談ですが機材は木端ヴィランから奪った金で買い揃えました。
『皆様! お待たせしました! それでは、ラジオの時間です!!』
いつものように魔法で放送局の電波をジャックし放送を始めます。内容はニュースや音楽など多岐に渡りますがリスナーが最も盛り上がるのは
「なんだテメェは?」
山奥にある廃ビル内の一室に筋骨隆々の男性がいます。ちなみに彼の居場所は使い魔と魔法を用いて特定しました。本当に便利な能力ですね。
『これは失礼、私はラジオデーモンと申します』
「……つまり俺を殺しにきたってことか」
認めたくありませんが現代人のラジオ離れは深刻です。SNSの普及により二番煎じのテレビすら傾き始めていますからね。なので沢山の人たちに聞いてもらえるような刺激的なコーナーが必要になりました。
というわけで大物ヴィランを殺戮する様子を放送することにしました。つまり本物のアラスターみたいなことをしているわけです。おかげでリスナーの数は爆増しています。
重犯罪とは無縁だった前世とは大違いですね。おそらく身体に引っ張られて精神が変化したのでしょう。まあ些細な事ですよ。
『今回は血狂いマスキュラーを処刑しようと思います。彼がどんな悲鳴を上げるか楽しみですねぇ!』
「やってみろよぉ!」
そう言ってマスキュラーは筋繊維を増幅し殴りかかってきました。一方の私は影に潜むことで彼の攻撃を回避します。
『彼は過去にウォーターホース夫妻を殺害した罪で全国指名手配をされています。それを成した個性は筋肉増強、その名の通り筋繊維を増幅し身体に纏う攻防一体の力です。まさしくパンプアップ&デストロイ!』
影から浮かび上がった私は触手でマスキュラーを拘束しようとします。しかし彼は自慢の筋肉で触手を引きちぎってしまいました。やはり純粋なパワータイプと戦うのは骨が折れますね。ですが勝てない相手ではありません。
「噂のラジオデーモン様の実力はこんなもんかぁ!?」
『ニャハハハ! それではお見せしましょうかッ!』
私は口角を上げて自慢の角を伸ばし緑色の魔力を滾らせました。そして大量の使い魔を召喚し相手に差し向けます。彼らが足止めしている隙に私は背中から生やした触手を使い人間パチンコの要領で相手へと飛び掛かりました。
「グッ!」
『ウォーターホース夫妻には感謝しなければなりませんねぇ。彼らが付けた傷のおかげで仕事が早く済みそうだ』
筋肉の鎧を正面から突破するのは難しいので狙うは防御の薄い頭部でしょう。そこは人間の身体の中でも特に筋肉が少ない箇所ですからね。
ですので私は加速した一撃でマスキュラーの右目を潰しました。彼はウォーターホースとの戦いで左目を欠損しているので完全に失明したわけです。これで仕事が大変やりやすくなります。
『なにか言い残すことはありますか?』
「まだ戦いは終わっちゃいねぇよぉ!」
『見事な闘志ですッ!』
失明している相手を殺すのはジャンバラヤを作るくらい簡単なことでした。もしも左目が欠損していない状態で戦っていたら少しだけ苦戦していたかもしれませんね。あれほどの実力者に2度も同じ手が通用するとは思えませんし。
それはともかくとしてコーヒーブレイクしてから放送を再開するとしましょう。
『お次は恒例のお悩み相談の時間です! 皆様が悩み苦しむ様を聞くとワクワクしますねぇ!』
リスナーからのお便りはSNSと魔法を活用し収集しています。1930年代以降の技術は使いたくないのですが使わないと円滑な放送が出来ないので仕方ありません。
「まずはラジオネーム、オールマ伊藤さんからのお便りです。私は無個性であることに悩んでいます。どうすれば胸を張って生きていけるでしょうか? とのことです。では、お答えしましょう。 それは笑顔でいることです! 世の中、笑っている人間が最も強いですからね。現にオールマイトも常に笑っているでしょう? もしも笑いたくないのなら個性を奪い与える個性を持つ男に頼りなさい。尤も彼はヴィランなので碌な要求はされないでしょうがね!」
さりげなくAFOを牽制しつつ回答を終えました。その後も似たようなお悩みをジョークも交えて捌いていきます。
「名残惜しいですが終わりの時間が近づいてきました。ヒーローと警察の皆様は私を見つけることに執着しているようですね。無駄な努力、頑張ってくーださい! それではリスナーの皆様、ごきげんよう! お相手はラジオデーモンでした! ニャハハハハ!」
私は不気味に笑いながら放送を終了しました。
アダムは人類最初の男だからチンコマスター、AFOは顔金玉だからキンタマスター。なんとか本編に捻じ込みたかったのですがアラスターは下ネタが嫌いなので後書きに捻じ込みました。