ハイ今回はね、漸く『隣の君と』が関係無い世界観ですね。
とは言え、実はこれある種のオマージュなんすよね。
というのも実はとあるビターな劇場見たらメンタル苦しくなっちゃってぇ……
本当はね、良くないんですよそういうの。
きっかけ動画(あくまでも元動画ではない姿勢)の作者様の目指した意図とかニュアンスからするとしんどくなること自体間違ってるし、そこになんか上乗りするような…況して内容を否定するかのように三次めいた内容で話を書くなんてね、創作者として最悪だと私は考えている。
言ってしまえばしんどくなった自分に救いを求めた結果の自己満足なんです。
だからね、これはリスペクトどころか、きっかけ動画の作者様にまるで喧嘩を売るような…そういう意味でディスペクトだと私は思うのです。
勿論ある程度舞台背景は独自に調整してあるのでまぁそういう物語だと思って読み流して頂けますと幸いかなぁと…
※あと、その動画は完全に関係ないので話題に出すのはお控えなすってくだいませ。
「本当にっ……ありがとうございました…!」
病院の正門で、見送りに立ち会ってくれた主治医の先生に2人で抱きつくと、何度目かもわからない感謝を述べる。
暖かく、優しく送り出してくれた彼女の言葉を以て、ようやく姉妹は病院を後にし、帰路についた……
〜『ただいまとおかえり』〜
去年の冬…葵は難病に倒れた。
治療は困難、成功しなければ先は短い…
主治医から齎された事実に、茜は膝をつき、止め処無く泣き伏した。
葵もどこか、長くないと悟ったようなことを言っていたが、自分や友人は努めて明るく、笑って彼女の見舞いに毎日出向いた。
茜や友達に囲まれて、自分はここまで幸せでいられた。
だからいなくなってもどうか悲しまないでほしい。
そう諭す葵の姿に心を痛めて、それでもなお彼女を元気づけようと振る舞った日々、茜からすれば、彼女も自分と同じくらいに精神が消耗しているのは見て取れた。
しかし……状況は徐々に変わっていた。
あんなことを言いながらも諦めたくない葵、望薄な中でもきっと大丈夫だと頑なに信じ続けた茜や友人達…彼女達の想いと、それを汲み、自身の腕や技術に心血を注いだ医師達の想いとが繋がり、奇跡を紡いだのだろう。
何ヶ月持つかも分からないと言われた彼女の手術は3ヶ月、4ヶ月と進み…半年も経つ頃、遂に完治の報が成された。
彼女の身体的な回復を待ち、今日2人は家を目指していた。
話したいこと、やりたいこと、数え切れないほどにあるが、それでも今は我慢しようと、言葉少ない帰り道。
口を開けば、外なのに全てが決壊してしまうから…
バスを降り、葵の手を牽きながら歩き進めると、やがて見えてきた。
茜にとって長らく独りだった、葵にとっては懐かしい…我が家。
茜が勿体ぶるように慎重な所作で鍵を解き、ドアを開ける。
おずおずと玄関に入り、そのすべてを愛しく見渡した葵は漸く口を開く。
「ただいま、お姉ちゃん。」
その言葉に、力を込めて張り詰めていた目元を緩ませ、一気に視界が滲む。
「おかえり、葵!!」
ぎゅっとその身体を抱き締める。
「もう離さへん、ウチのそばから居なくなったらアカンで!」
溜めに溜めた想いを解放するように、ボロボロと落ちる涙を払いもせず、最愛の妹に回す腕に力を込めると、彼女も涙交じりに笑いながら優しく頭を撫でる。
「うん、ありがとう……先に手洗っちゃお、病気にならないように、ね?」
せやな…彼女なりに気遣ったのであろうユーモアに、笑顔を見せながら2人は洗面所に向かった…
そうしてリビングに向かうが、茜は失念していた。
「あっ!これ…!」
それを気付いたのは他ならぬ葵の反応だ。
時は遅く、茜は蒼白する。
彼女がしげしげと見つめるのはコルクボード…面会の度に撮った、病室での日々が狭しと飾られているではないか。
その下には額に収まった特別な一枚ーー友人全員が揃って来られた時に撮った集合写真……
こんなモノを飾る状況など当の本人が見たら何を思うか…すぐに茜は葵に抱き着いた。
「ゴメン!ゴメンな葵!信じとらんかったワケやない!でも不安で、寂しくて…!!こんなんあったらイヤよな、すぐ片付けて…」
そこまで言いかけた時、彼女が優しく…それでいて固く腕を回して茜を包み込んだ。
「良いの…嬉しいよ、いつでも想ってくれていたんだって…」
額を突き合わせながら言う彼女の声は震えていた。
「この写真全部、このまま置いといて欲しいな。あんな事があっても…私、帰って…これたよっ…て、さ……」
葵…茜は彼女に幾度ともわからない抱擁を返す。
繊細な彼女だ…先短いと気丈に振る舞っても、きっと自分と同じく毎晩泣き腫らしたことだろう。
年端もいかない16歳が、そんな覚悟を決められる筈が無いのだから…
「葵、無理せんでええねん。ツラかったんも、喜びで押し流せばええ。」
「お姉ちゃん…」
いつもの陽気さを鎮め、優しく、茜は諭す。
唇を噛む葵の瞳がやがて揺らぎ、咄嗟に下げた顔を肩に埋めた。
「お姉ちゃん!怖かった、苦しかった…寂しかったよぉ…!嬉しいよ、こうして、帰ってこれて…良かったぁ…!」
啜り上げる音は、やがて大きな声へと変わる。
その頭を抱き寄せ、同じく涙を流しながら茜は葵という『存在』をその身体で感じた。
付き合わせた胸越しに感じる、強く訴えかける主張…
風前の灯火なんかじゃない、今までとこれからを繋ぐように根付く、確かな鼓動。
アンタは今、ここにおる。
その確固たる証明だ。
「ありがとなぁ葵!帰ってきてくれてぇ…!」
それ以上はお互い、言葉にはならなかった。
ただただ、涙交じりに不明瞭な言葉で、しかし目の前に愛おしい存在がいる事実を、改めて噛み締めた…
※
目を覚ませば、もはや見慣れた天井…以上に見慣れた、愛しい天井。
夢なんかじゃない現実。
今日からまた学校が始まる。
学年は変わったけど、人知れず入院中の勉強範囲は齧っていたから大丈夫だろう。
姉にあんな物分かり良いようなことを言った割に、思えば執着が溢れていたものだと1人笑う。
でも、そのお陰でここまでこれたんだろうけどね…
さて、物思いに耽るのも終わりだ。
私が戻ったからには、しっかりと日常に戻らなくては…ならばやるべきはまず…
「お姉ちゃん、そろそろ起き…」
「おはよー、葵!」
えぇ!?その光景に驚愕する。
いつも自分に布団を剥がされ、グダグダとゴネていた姉は、その声を聞くより前に目を開け、誇らしげに立ち上がったではないか。
その姿に目を丸くすると、茜はイタズラっぽく笑いながら得意げに言う。
「あんなぁ〜葵チャン。ウチどんだけひとりで毎朝起きとった思てんねん。半年やぞ半年!流石に慣れるわ〜」
ぽかんとしていた葵だが、やがて彼女の姿にくすくすと笑う。
「ふふ、怪我の功名だね。」
「アホ、代償デカすぎるし対価がショボすぎるわ。」
テキパキと2人で準備を進めながら、葵はふと思う。
「そう言えばさお姉ちゃん。ひとりで起きられるくらい立派になったならさ、成績の方はどう?」
・・・
ピタリと制服に着替える茜の手が止まる。
「・・・まぁ、アレや葵、アンタ今日はもみくちゃやから覚悟しとき。」
「もぅ、お姉ちゃんはぁ…」
露骨に話を変える姿に、呆れながらも愛おしい日常を抱き締めるように微笑みを浮かべた。
※
手を繋ぎながら学校へ向かうと、やがて茜が手を振る。
視線の先では、いつも面会に来てくれた友人達…
葵は無理をしない程度に走る。
茜は彼女を気遣って支えるように寄り添う。
「ただいま!」
「おかえり!」
感極まって飛び付く葵を、異口同音に取り囲む。
皆が涙交じりに抱き合う姿、もうひとつのただいまとおかえり…
そして…
「うわわ、お姉ちゃん!?」
「ホンマに、おかえり、葵ぃ!!」
背中から葵を抱きすくめた茜は今一度、人目も憚らず大声を上げて涙を流した。
彼女たちの幸せは、これからもずっと、沢山待ち続けている……
〜『ただいまとおかえり』〜 E N D