自認女神系ラスボス幼馴染雷門マネージャーTSアフロディ概念 作:sesamer
アフロディって素の性格はかなり献身的だと思うんですよね。2のカオス戦で相手を突破する為に率先して攻撃を受けたり、そのカオスのリーダー達を恨む事なく3ではスカウトしたり、GOで木戸川清州のチーム内の不破を何とかしようとしたりと、カリスマ溢れる外見や振る舞いに反して本質は他者を支えるのが好きなのかもしれません。
そんなイメージが爆発して出来た小説です。
私、木野秋は雷門中学校サッカー部のマネージャーをしています。サッカー部マネージャーと言えばサッカー用具の準備や片付け、ユニフォームの洗濯など色んな仕事があって忙しいイメージがありますが、この雷門中サッカー部では全くそんな事はありません。
というのも…
「あっ、円堂くん」
「木野!グラウンドはどうだった?」
「ごめんね。今日も借りられなくて… 皆の様子は?」
「…相変わらず」
雷門サッカー部は弱小で、使えるグラウンドも無ければ、練習する部員も居ないのです。これではマネージャーの仕事も全くありません。
唯一サッカーに対する熱意が溢れる我が部のキャプテン、円堂守君は私の質問にガックリと肩を落として答えましたが、すぐさま顔を上げて熱く語ります。
「でもアイツらもサッカーが好きでウチに入部したはずなんだ!グラウンドさえ確保できればアイツらだって…」
横から見てるだけの私が呆れるくらいなのに、毎日彼らに練習しようと呼びかける彼にはもはや尊敬の念すら覚えます。
「じゃあ今日も鉄塔で練習を?」
「ああ!アフロディもきっと来るだろうしさ!」
「僕のことを呼んだかい?」
…サッカーに対する熱意があるのは円堂君だけじゃありませんでした。私に続く2人目の雷門中サッカー部のマネージャーであり、円堂君の幼馴染のサッカー友達である亜風炉照美さんが会話に混ざります。
「おう!アフロディ!今日も特訓に付き合ってくれるよな?」
「もちろん。今の君の実力なら1人で特訓するより僕とする方が良いだろうからね」
「サンキュー!木野も練習見ていくか?」
「うん!お邪魔してもいいかなアフロディさん?」
「もちろん構わないさ」
亜風炉照美さんは自分のことを苗字で呼ばれるのを嫌がり、皆にはフルネームで呼ぶかアフロディというニックネームで呼ぶように言ってます。まだ一年生の子達は苗字で呼んだりしますが……
「よし!じゃあ鉄塔へ行くか!」
私達が住む稲妻町には町のシンボルとして大きな鉄塔があります。鉄塔の下にはちょっとした広場もあって、円堂君達はいつもそこで特訓をしているようです。今日、私は初めて特訓の様子を見たんですが…
「ハァッ!」
「ぐっ!まだまだぁ!」
バシュン!バシュン!とサッカーボールから放たれるにしては鋭すぎる音を聞いて私は衝撃を受けました。というのも、今まで私はアフロディさんがサッカーをやる姿を見た事がなかったのです。
普段は私と一緒にマネージャーとして動いていたので、まさかアフロディさんがこんなにサッカーが上手だとは思いませんでした。シュートの威力だけ見てもウチのストライカーである染岡君をも凌いでいるように見えます。
そしてそれ以上に衝撃的だったのはその脅威的な威力のシュートを止める円堂君の姿でした。
確かに普段から円堂君は欠かさずサッカーの練習をしていて、部内での練習でも彼がゴールを許す光景はあまり見たことはありませんでしたが、今の彼らはサッカーの全国大会であるフットボールフロンティア出場校として見ても遜色のないものでした。
私は1時間ほど彼らのボールのやり取りを見続け、そして特訓を切り上げるのを見て夢中で話しかけました。
「…凄い。凄いよ円堂君!アフロディさん!こんなに2人がサッカーが上手だったなんて知らなかった!」
「今日は木野さんが見てくれてたから普段より力が入ってたかもしれないね」
「確かに、いつもよりシュートのキレが良かった気がするな!」
そうやって話をしてると次に思い浮かんだのは疑問でした。アフロディさんはこんなに強いのになんでサッカー部の部員ではなくマネージャーなんだろう?とそんな疑問を抱えながら、私は円堂君がかつて語った夢を思い出して言います。
「2人が居ればフットボールフロンティア優勝だってできるよ!」
そんな私の言葉にアフロディさんは何故か寂しそうに笑います。
「そこまで言ってもらえるなんて光栄だね。…でもね」
「アフロディはフットボールフロンティアには出場できないんだ」
「えっ!?」
続く円堂君の言葉に先程のプレイを上回る衝撃を受けます。あまりのショックにどうしてとも声に出せない私に対してアフロディさんが説明します。
「フットボールフロンティアの出場資格は15歳以下の男子だ。ほら、僕は女子だから」
アフロディさんは自分のスカートを摘みながら言います。そう言えばそうでした。フットボールフロンティアは男子サッカー部の大会であり、女子は参加できません。
でもこんなに強い選手が性別の壁で大会に出れないなんて勿体ないと思いながら、私はアフロディさんが何故サッカー部の部員ではなくマネージャーしているのかについても見当がつきました。
「じゃあひょっとしてアフロディさんがマネージャーなのも、フットボールフロンティアに出られないから…?」
「…まぁね。選手として大会には出られなくても、マネージャーとして皆を応援する事ならできるから」
「俺はアフロディが部員でも、そんなこと気にしないのに」
「僕が気にするのさ」
私の言葉で明らかに沈んだ様子のアフロディさんをなんとか元気付けようと、どんな言葉を掛けようかと考えていると、円堂君が私が内心では思っても口には出さなかったことを言いました。
「アフロディが男だったら良かったのにな!」
「…それについては同意するけども、女の子に掛ける言葉としては最低だよ……」
「円堂君……」
「わ、悪ぃ……」
しょんぼりと謝る円堂君に対して、アフロディさんは苦笑します。
「ま、いいさ。円堂君のデリカシーの無さは元から分かっていたことだしね。存分にお母様に怒られると良い」
「うわっ!母さんには言わないでくれよ!?」
元気そうに円堂君をからかうアフロディさんを見て私はほっとしましたが、続けていつもの調子を取り戻したアフロディさんが反応に困ることを言います。
「それに、もしも僕ほどの美の化身が男性だったら、おそらく道を踏み外す人が沢山いただろうからね!」
「確かにアフロディさんは凄い美人さんだけども……」
アフロディさんは美人で運動神経抜群で勉強もできる正に才色兼備という言葉がお似合いの理想的な女性なのですが、それらに比例するかのように凄まじい自信家でもあり、端的に言えばナルシストな面を親しい人に見せる事があります。
(それに冗談なのか本気なのか分からないけど、自分を女神様だと言う事があるからなぁ…その美貌から否定しにくいのがかえって厄介だわ……)
「僕はしばらくここの眺めを観ておきたいから、2人はお先に帰っても良いよ」
アフロディさんは鉄塔に残り、私は円堂君と帰ることになりました。一緒に帰らないのかと円堂君に聞いても、今回みたいにアフロディさんが残ったり円堂君が居残って特訓を続けようとしたりで、むしろ一緒に帰る機会の方が少ないらしいのです。なんでも家の方向が逆だから一緒に帰ってもすぐ別れるのだとか。
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(僕が男の子だったら、か。そう考えたことは今日で何度目なんだろうか)
鉄塔を登ってそこから稲妻町の景色を一望しながら僕は考える。フットボールフロンティアに出れない以上、僕が円堂君の夢を叶える為にできることはマネージャーとして彼らを応援することのはずだ。
だが今の僕の姿はどうだろう。雷門がフットボールフロンティアに出場する為には実力は当然として、それ以前に足りないものは沢山ある。それは部員の数、練習場所、部員のモチベーションなど数え切れない。
その事は十分に分かってるはずなのに、今の僕は円堂君を鍛えるという名目で彼の特訓に毎日付きっきりだ。僕がいるお陰で円堂君の実力は飛躍的に高まっているのは事実だが、それは僕が円堂君に甘えてることの副産物に過ぎない。
「そうだ。僕は円堂君とやるサッカーが楽しくて、その環境に甘えている。円堂君のためにやるべき事はこんなことじゃないのにな……」
恐らくこんな悩みを円堂君に打ち明けても笑われるだけだろう。サッカーが楽しいならそれでいいじゃないか、フットボールフロンティアの事は後で皆で考えればいい、と彼は太陽のように笑って許してくれるに違いない。
だけどそれでは、彼らと一緒にサッカーが出来なければ彼らを支える事も出来ない僕は一体何の為に居るのだろうか。
「…明日こそはしっかりしよう。まずはグラウンドを使えるように他の部にちゃんと掛け合おう。グラウンドで練習する円堂君達を見れば新入部員も出てくるかもしれない」
そう誓った僕は鉄塔から降りて帰ろうとするが、その時広場の入り口で円堂君が不良に絡まれているのを発見する。僕は急いで鉄塔から飛び降りて円堂君達の下へと向かう。
円堂君は不良達に蹴飛ばされ、彼らに足蹴にされていた。幸いにも円堂君はガード出来ているし、普段僕のシュートを受け止めている彼が素人のキックで怪我する事はないだろう。僕は不良の2人に呼びかける。
「何をしているのかな」
「アフロディさん!」
飛び込んでくる木野さんを庇いつつ、不良の2人を見据える。不良達のうち、背の高い方は僕の姿を見ると不機嫌そうに罵る。
「あん?てめぇもこの男の女か?羨ましい御身分だなぁ!おい!」
「何かこちらに不手際があったのなら謝るから、帰してくれないか?」
「へっ。女に庇ってもらって情けねぇな!」
不良達は僕の説得にも耳を貸さない様子で円堂君を蹴り付ける。このままでは話は平行線になるかと思われた。
僕はため息を吐きつつ、右手を掲げて指を鳴らす。
「仕方ないか。ヘブンズタイム」
不良の2人が動かなくなったのを確認し、僕は木野さんと円堂君に呼びかける。
「2人とも大丈夫かい?彼らは僕が止めたから、今のうちに行くよ」
「え?止めた?」
「悪いアフロディ、助かった。…ていうかお前、その技サッカー以外の場面でも使えるんだな」
「まあね。この技の原理にサッカーは関係無いし」
「…技?」
僕達は不良達を置いて3人で帰りつつ、円堂君は困惑した様子の木野さんに説明する。
「木野は知らねぇのか?必殺技のこと」
「必殺技!?」
「サッカーが上手いプレイヤーは自然と自分だけの必殺技が使えるようになるんだ。アフロディの場合は時を止めたりな」
「時を止める!?!?!?」
「大袈裟に言わないでくれよ円堂君。僕がやってるのは精々他人の意識を奪ってるだけに過ぎないよ」
「全然大袈裟じゃないよ!?意味が分からないよ!?」
「これからフットボールフロンティア優勝を目指すなら色んな技を見るだろうから、木野さんも慣れるさ」
「まあアフロディは俺が知ってる中で1番サッカーが上手いからな!多分こんな技は早々見られないぞ!」
「なんで円堂君が誇らしげなのさ。…やれやれ、僕はこっちの道だから。またね」
まるで我が事のように褒めてくれる円堂君に照れつつ、僕は2人と別れて自分の家へと帰る。明日こそはマネージャーとして頑張ろうと、そう僕は心に誓ったのだったが、その時は僕らに非情な現実を突きつけられるとは思ってもいなかった。
「帝国学園と練習試合して負けたらサッカー部は廃部だって!?」
「ああ。だから練習試合まで残されたこの1週間で、あと4人部員を集めて皆で特訓して帝国学園に勝つ!」
翌日、円堂君は校長室に呼ばれ、そこで雷門中が帝国学園からサッカーの練習試合を申し込まれた旨の説明を受けたらしい。ついでに、理事長の娘である雷門夏美さんの一言で帝国に負けたら廃部が決定したのだとか。
「そんなの勝てるわけないっッスよ〜」
「相手は40年間無敗の最強チームやんすよ?」
「へっ、あまりにも現実的じゃねぇな」
「この部室もあと1週間でお別れか……」
諦めムードが漂う皆を円堂君が必死に説得しているのを横目に、僕は木野さんと気になる事を話し合う。
「…どうして帝国学園はウチと練習試合なんてするんだろうね」
「確実に勝てるチームと試合して調子付ける為?それにしても雷門は弱小すぎて勝って当然扱いされそうだし……まさか、アフロディさんの実力を警戒してとか……!?」
「でも僕は公式戦はおろか練習試合にも出た事はないよ。僕の実力を知ってるのは円堂君と木野さんくらいだと思うんだけど……」
僕はあまり他人と関わるのが得意じゃないし、友達は円堂君だけで満足してるから、円堂君以外の人とサッカーした事も数える程しかないはず。そう考えていると木野さんが何か思い付いたようで別の話を始める。
「そう言えば、今日転校してきた豪炎寺修也君、あの豪炎寺君なんじゃないかな?」
「あの?」
「ほら、サッカー名門の木戸川清州中学校のエースストライカー!」
「あ〜、僕も噂で聞いた事あるよ。確か帝国学園との決勝戦では欠場したんだったかな」
「豪炎寺修也君も木戸川清州中からの転校って言ってたし間違いないかも!彼がサッカー部に入部してくれたら……!」
「なるほど、そういう事か」
帝国が雷門に練習試合を申し込んだ理由。それは何らかの事情で欠場し帝国とは戦わなかった豪炎寺君の実力を知る為だとしたら納得がいく。それと同時に僕達が踏み台として利用されてるみたいでイラッと来るが。
だとすると、豪炎寺君の入部は僕達にとっては必須条件となる。帝国の目的が豪炎寺君ならば、彼の実力を披露すればそれで彼らは目的を達成して満足してくれるだろうからだ。逆に、豪炎寺君が居なければそのまま雷門は帝国に負けるだけだろう。
円堂君なら帝国のシュートも止めてくれるだろうけど、帝国のキーパーを突破できる攻撃力がウチにはない。そういう意味でも帝国に勝つ為には豪炎寺君は必須だ。
「それなら、僕が豪炎寺君のことを勧誘してくるよ」
「私も手伝おうか?」
「大丈夫さ。あと円堂君にもこの事は内緒にね。彼が豪炎寺君の事を知れば、練習どころじゃなくなるかもしれないからね」
「あはは……」
円堂君のことだ。豪炎寺君の事を知ればきっと向こうが引いちゃうくらいの熱量で勧誘するだろう。自己紹介した時の印象では豪炎寺君はクールな感じだったから円堂君の熱量には多分ついていけないと思う。
…それに、全国クラスのエースストライカーを僕が勧誘したとなれば、円堂君は凄く喜んでくれるだろう。昨日はグラウンドの確保を頑張ろうと誓ったが、それはそれこれはこれだ。
「おーい!2人とも何の話してるんだー?」
「いや、これからの練習場所はどうしようかなって。円堂君そっちは纏まった?」
部員の皆と話をつけてきたらしい円堂君が話に加わる。僕は豪炎寺君の事は誤魔化しながら皆の様子を尋ねる。
「……まずは!チームメンバーを集める事になった!」
円堂君も同様に話を誤魔化すが、直情的な彼は誤魔化し方が下手だった。
「…あんまり纏まってなさそう……」
「この分じゃ、勧誘活動は円堂君1人に任せる事になるね」
円堂君が本気で取り組む様子を見れば、きっと他の皆もやる気にはなってくれるんだろうけど……
「大丈夫だ!俺に任せとけ!」
「じゃあ木野さんはグラウンドの交渉をお願い。練習試合を控えた身ならグラウンドも貸して貰えるはずだ」
「うん、任せて!」
「アフロディ!」
それぞれのやるべきことを確認してさて行動にと思った所で円堂君に呼び止められる。
「なんだい円堂君」
「ほら!練習試合なら女子の出場制限は無いだろ?お前も練習試合に出てくれ!俺達2人が揃えば、きっと帝国学園にだって勝てる!!」
それは僕にとってはこの上ないほどの極上の誘い文句だった。確かに彼の言う通り、円堂君が守って僕が攻めれば例え誰が相手だろうと負けるはずがない。僕達は帝国を倒して勝利の甘美に酔いしれることだろう。
でもそれで勝ったとしても雷門の為にはならない。フットボールフロンティアに出れない僕が雷門の皆と一緒に戦っても、それは仮初のチームに過ぎない。雷門に必要なのは僕ではなく豪炎寺君だ。
…それに、僕が本当の力を見せれば、きっと雷門の皆は僕のことを畏怖してしまうだろう。今まで他人とサッカーしてこなかったのも、それは僕のプレイが他人を遠ざけることを僕自身が恐れているからだ。
(でも円堂君だけは違う。彼は僕がどれだけ強くても大好きなサッカーから逃げる事は絶対無い。そんな円堂君は僕にとっての希望の光だ。だからこそ、僕は円堂君の力になってあげたい)
彼の真っ直ぐな目を見て、そして僕は少し目を逸らして言った。
「…そうだね。じゃあ、これから円堂君と僕で勧誘活動をして、もしもストライカーの枠が足りなくなったら、僕も試合に出るよ」
「サンキュー!よし、じゃあ行くぞ!アフロディ!」
意気揚々と出発しようと背を向けた円堂君に声を掛ける。
「あ、僕はストライカーに当てがあるから1人でやっとくね」
「えぇ!?一緒にやらないのか!?」
「だって君はどうせ特に部員候補の当ても無いから、今から学校を回って見かけた人に片っ端から声掛けるつもりだろう?そんな恥ずかしい真似、僕ができるわけないよ」
恥ずかしい以前に僕は人見知りだから、不特定多数の人相手に勧誘活動とかできる気がしないし。
「…そりゃないぜ……」
肩を落とした円堂君を置いて僕は豪炎寺君を探す為に歩き出した。
(それにしても、豪炎寺君は何故このタイミングで雷門中に転校なんかしたんだろうか?ウチは木戸川のような強豪とは程遠いし彼の望むような学校には思えない。それに、全国大会の決勝戦で欠場した理由も気になる)
もしかしたら、とそこで僕に一抹の不安が過った。
(もしかしたら、今の豪炎寺君は本人もしくは家庭の事情でサッカーが出来ない、したくない状態にあったりして……?)
ヘブンズタイムの仕組みは一応独自設定として考えています。ベクトル的にはアレオリの催眠術設定に近いです。