アルデバランの最後ですが、ムウも言っていた通り、あんな雑魚スペクター相手に、仮にも黄金聖闘士が刺し違えた事に納得がいかず。
そう言えばサガ達は金牛宮を通り抜けて来たんだよな?
と思い、だったらこんな事あったんじゃ?と書いた『究極の自己満足』の作品です。
賛否両論あると思いますがアルデバラン推しには賛同して頂けると嬉しいです。

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第1話

 

冥王編・牡牛座アルデバラン

 

 それは金牛宮に、重い気配が流れ込んだ瞬間だった。アルデバランは、すでに理解していた。

 姿を見る前から――いや、その“入れ替わり”の瞬間から。

 昔に感じた黄金の小宇宙が、混ざり歪んだ。しかし完全に堕ちたものではないものが……

 

 だが、しかし、確かに違う。

 

 (……やはり、か)

 

 足音が近づく。

 アルデバランが待ち受ける間の向こうから現れたのは、冥界の装束――スペクターの冥衣を纏った三人だった。

 だが、その奥にあるものを、アルデバランは黄金の牡牛は見誤らない。

 

「……お前らか」

 

 低く、腹の底から響く声。

 

「何を思って、このアルデバランの守護する金牛宮を通り抜けようとしているのかは知らぬ。

 だが――そのスペクターを身に纏っている以上、ただで通れるとは思うまい」

 

 三人--サガ、カミュ、シュラ--は答えない。

 仮面の奥で、ただ静かに小宇宙を燃やす。

 言葉は不要だった。

 

 次の瞬間――

 

 四つの影が、正面から激突した。

 最初に火花を散らしたのは拳だった。

 アルデバランの右拳を、サガの掌が正面から受け止める。

 衝撃で大地が軋み、確かに生えた木々が跳ね上がった。

 

 間髪入れず、左からカミュの蹴り。氷気を帯びた一撃を、アルデバランは脇腹で受ける。

 鈍い音が響くが、巨躯は揺るがない。

 

「ぬぅ……!」

 

 反撃の肘打ち。

 シュラがそれを前腕で弾き、即座に懐へ潜り込む。

 剣を使わぬ打撃――だが、その切れ味は確かだった。

 

 三人が連携する。拳、蹴り、体当たり。

 

 間断なく叩き込まれる攻撃が、アルデバランの全身を襲う。

 

 だが――倒れない。

 

 アルデバランは一歩、また一歩と前に出る。受けて、受けて、受け切った末の――重い一撃。

 

 拳がサガの肩を捉え、握り潰すように肩を掴むと冥衣が軋む。

 

 裏拳がカミュの胸元を掠め、返しの正拳突きが鳩尾にめり込み冷気が散る。

 

 踏み込みからの正拳に、後退したシュラを掴むと全力で地面に叩きつけた。

 

 手傷を負い、呼吸が荒くなるのは、三人の方だった。

 

 持久力、耐久力、そして、揺るがぬ重心。

 

 黄金の牡牛は、正面から崩れない。やがて、誰の目にも明らかになる。

 

 ――押されているのは、三人だ。

 

 アルデバランは、深く息を吸った。

 

「……語るものも無いか。であれば――冥府に送り返してやるのも、元戦友としての情けよ!」

 

 アルデバランの全身の小宇宙が、爆発する。

 

「この黄金の牡牛の姿――目に焼き付けて逝け!!」

 

 グレートホーン!!

 

 正面から放たれた黄金の奔流。

 

 三人の体が、まとめて吹き飛ばされる。

 

 ――だが、膝を着くも倒れない……

 

 仮面の内側で、三つの意識が交錯する。

 

(むぅ……)

(流石だ……アルデバラン……)

(我ら三人掛かりで、ここまで押されるとは)

 

 冥衣に制限され、黄金としての力を出しきれぬとはいえ、この三人の実力は間違いなく黄金聖闘士でもトップクラス。

 その三人を相手にその威容は、疑いようもない。

 

(正に……黄金の牡牛……)

 

 アルデバランが、一歩踏み出す。

 

「そのままでいるならば、このアルデバラン――次こそは、手加減なぞせんぞ!!」

 

(……ここで、やられる訳にはいかぬ)

(すまん、アルデバラン……)

(せめて……全力で応えよう)

 

 四つの小宇宙が、限界まで高まる。

 

 サガが切り込む。

 

「見ろ! 星々をも砕くさまを!!

 ギャラクシアンエクスプロージョン!!!」

 

 カミュが繋ぐ。

 

「零下絶対、万物を止める氷を――オーロラエクスキューション!!」

 

 シュラが決める。

 

「我が身即ち刃! 聖剣の極致を見よ!!エクスカリバー!!」

 

 三つの必殺が放たれた、その瞬間。

 アルデバランは――口元を吊り上げた。

 

 それは闘志に満ちた笑み。

 

「見よ! 大地をも砕く、この一撃を!!グレートホーン!!!」

 

 四つの黄金が、真正面から激突した。

 

 光

 

 衝撃

 

 

 世界が---弾ける---

 

 

 砂煙が晴れた時、そこに立っていたのは――仁王のように踏みとどまる一人の男だった。

 

(……我らの……全力を受けて……)

(まだ……立つ……だと……!?)

 

「く……くはははははは……」

 

 アルデバランが、笑う。

 

「先の戦いでの失策……鍛え直した甲斐が、あったというものよ……」

 

 そう言うと、その巨躯をその場に、どっかりと腰を下ろさせた。

 

「拳で……コスモで……感じたわ!」

 

 視線を上げ、真っ直ぐに三人を見る。

 

「この場に――敵はいない。俺には、仲間に向ける拳は……ない!」

 

(アルデバラン……)

(我らの心を……)

(ありがとう……アルデバラン……)

 

 三人は、仮面の下で涙を流しながら、無言のまま宮を通過していった。

 その気配が完全に消えた後、アルデバランは空を仰ぐ。

 

「……心強い仲間が増えたな。いや――帰ってきた、というところか」

 

 懐から、一輪の花を取り出し、静かに見つめるのだった。

 




短編で投稿したのですが何故か1話と表示されてしまいました。
続きません。これでおしまいです。

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