鬼滅の刃異伝〜鋼の心、血の楽園〜 もしも明治時代に最強の「鳴柱」が存在し、無惨を懐柔して人間を家畜に変える「管理社会」を築いていたら 作:斉宮 柴野
「はい!今日は私、九条千草と……」
「俺、神保弥太郎でお送りします。……すぴー」
「あんた寝すぎじゃない?ラジオの収録中よ?」
「うん。千草の身体が柔らかいから。この弾力、最高……」
「もう、仕方ないわねぇ♡はい、ここで明治コソコソ噂話。今の産屋敷の当主は顕正さんというらしいですが、珍しくお酒大好きらしいです。歴代当主の中でも、トップクラスの酒豪だとか」
「……へえ。いいお酒があれば、少しは目が覚めるかな……」
「あんたは寝てなさい!それでは本編、スタートです!」
ズッ……ズッ……。
静寂な夜明けの藤襲山に、土を掘り返す音が響く。ここは地獄の試験会場……だった場所。七日間の生存試験を終え、朝日が差し込む中、生き残った数名の候補生たちが、フラフラと下山していく。彼らは皆、心身ともに疲れ果て、泥と血にまみれている。
そんな中、私だけがせっせと土いじりをしていた。
「よいしょ、よいしょ。ここをもう少し固めて……」
スコップ(持参)で土を叩く。目の前には、私が麓から持ってきた、立派な藤の木が十本。それを、元あった場所に、丁寧に植え直しているのだ。
「……ふぅ。これで元通りですね。いや、来た時よりも美しくなったわ」
額の汗を拭う。完璧だ。私の造園技術はプロ顔負けだ。
「鬼たちに悪いしね!私の結界のせいで活動範囲が狭まったでしょうから、ちゃんと『お返し』してあげないと。これぞ『飛ぶ鳥跡を濁さず』。天才の嗜みです」
決して、不法投棄の証拠隠滅ではない。自然への還元だ。
(まあ、本音を言えば……。またここに来た時に、『私の藤』が育っていたら便利だからだけど)
ここは鬼の巣窟。またいつか、任務や食材調達で来るかもしれない。その時に、自分専用の安全地帯があれば、どれだけ心強いことか。これは未来への投資なのだ。
「さあ、完了!下山しましょうか!」
スコップを放り投げ(ドスッと木に刺さる)、身支度を整える。着物は汚れていない。優雅に過ごしていたからだ。
「おーい、千草!弥太郎くん!置いていくわよー!」
後ろを振り返る。
すると。山の上から、奇妙な二人組が降りてきた。
「はぁ、はぁ……。重い……。マジで重い……」
千草が、青い顔をして歩いてくる。彼女の背中には、弥太郎くんがおぶさっている。弥太郎くんは、千草の首に腕を回し、完全に脱力して寝ている。コアラのようだ。あるいは、取り憑いた生霊のようだ。
「ちょっと弥太郎、起きなさいよ。自分で歩いてよ。私の足腰が限界よ」
千草が文句を言う。でも、その手はしっかりと彼のお尻を支えている。満更でもなさそうだ。
「……スー……」
弥太郎くんは答えない。代わりに、千草のうなじに顔を埋め、深く息を吸い込んでいる。
「きゃっ!くすぐったい!息を吹きかけないでよ!」
千草ちゃんが身をよじる。
「あら千草。仲が良いわね。新婚旅行の帰りかしら?」
「違いますよぉ!降ろそうとしたんですよ?でも……」
千草が泣きそうな顔をする。
「勝手に降ろすと、無言で飛びついてくるんです……。一度地面に置いたら、凄い速さで背中に『着地』してきて……。まるで背後霊ですよ。しかも、絶妙に急所を外して、柔らかいところに着地するんです。達人の技ですよ、これ」
「やっぱり変態ね」
睡眠欲と接触欲求が融合した、新しいタイプの変態だ。私の周りには、まともな人間がいない。
「まあいいわ。筋力トレーニングだと思って頑張りなさい。さっくん(鱗滝左近次)の待つ麓まで、競争よ!」
駆け出す。千草が「待ってくださいよぉ!」と叫びながら追いかけてくる。平和だ。これから結果発表だというのに、私たちは遠足気分だ。
◆
選別の広場。藤の花が咲き乱れる入り口に、案内役の童子たちが待っていた。白髪と黒髪の、おかっぱ頭の子供たち。相変わらず無表情で、市松人形のように佇んでいる。
「おめでとうございます」
黒髪の子が、淡々と言う。
「よくぞ……生き残られました……」
白髪の子が続く。彼らの視線は、私と千草ちゃん(とおんぶされた弥太郎くん)に向けられている。他の候補生たちはボロボロなのに、私たちだけピクニック帰りのように元気だからだ。不審がっているのだろうか。
「あら、ありがとう。楽しかったわよ、キャンプみたいで」
「ねえボクぅ」
千草が、弥太郎くんを背負ったまま、童子(男の子の方、黒髪)にすり寄る。懲りない女だ。
「疲れちゃったから、癒やしてくれない?お姉さんといいこと……」
「(無表情で)……隊服の寸法を測ります」
童子が即答する。スルースキルが高い。慣れているのか、それとも感情がないのか。
「ちぇっ。つれないわねえ。子供のくせに」
千草が口を尖らせる。
「こら千草。子供をからかわないの。教育に悪いでしょう」
彼女を諌める。そして、童子たちの前にしゃがみ込む。
「……はい、これ」
懐から、包みを取り出す。油紙に包まれた、黄金色の直方体。
「……これは?」
童子たちが首をかしげる。
「加須底羅よ。南蛮渡来の甘味。疲れた時には甘いものに限るわ。内緒で食べなさい。お館様には秘密よ」
二人の手に、一切れずつ握らせる。ほんのり温かい。私の体温だ。
童子たちが、加須底羅を見つめる。そして、恐る恐る匂いを嗅ぐ。甘い卵と砂糖の香りが、彼らの鼻腔をくすぐる。
「……(ポッ)」
彼らの頬が、ほんのりと赤く染まる。可愛い。人形のようだった表情に、人間らしい温度が宿った瞬間だ。
「あら、顔が赤くなった。喜ばれたわね!やっぱり子供は甘いものが好きなのね」
(賄賂じゃないわよ?純粋な慈愛よ?将来、私が何かやらかした時に、ちょっとだけ目を瞑ってもらうための先行投資よ?)
◆
「では、玉鋼をお選びください」
案内役の童子が、無表情で促す。目の前の祭壇には、大小様々な形の石が並べられている。どれも同じに見えるが、プロの目からすれば天と地ほどの差があるのだ。主に、味に。
「失礼するわね」
一番手前の石を手に取る。そして、躊躇なく口元へ運ぶ。
レロリ。
「ん……これは鉄分が薄いわね。味がスカスカだわ。まるで、三回出汁を取った後の鰹節みたい」
石を戻す。次だ。
レロ……。
「うーん、これは泥臭い。不純物が多いわね。雑味があって、喉越しが悪そうだわ」
次。
レロリ、ジュルッ。
「……お?」
私の舌が反応する。この石、美味い。舌に乗せた瞬間、濃厚な鉄の味が広がる。血の味に近い、生命力溢れるミネラルの響き。雑味がなく、キリッとした後味。これは、良い刀になる。あるいは、良い酒の肴になる。
「うん、これは雑味がなくて濃厚な味わい。最高級のレバーみたいだわ。よし、この石にします!一番美味しそう!」
その石を高く掲げる。勝った。一番美味しい石を確保した。
「…………」
童子たちが、ジトッとした目で見ている。
(……食べるつもりなのか……?刀を作る素材なのに……。この人、鍛冶屋じゃなくて料理人に渡すつもりなんじゃないか……?)
彼らの心の声が聞こえるようだ。失礼な。食べませんよ。いや、ちょっと齧ってみたい気もするけれど、さっくん(鱗滝左近次)に怒られるから我慢するわよ。
「えーと、私は……」
隣で、千草が悩んでいる。彼女はまだ、背中に弥太郎くんを背負ったままだ。重くないのだろうか。愛の力か、それともただの馬鹿力か。
「どれにしようかなぁ。色も大事だけど、やっぱり……手触りとか、形よねぇ」
千草ちゃんが、物色する。そして、一つの石に手を伸ばす。
「これにします♡」
彼女が選んだのは、奇妙に細長く、そして先端が丸く膨らんだ形の石だった。なんというか、非常に……アレだ。自然の造形物とは思えないほど、意味深な形をしている。
「なんか形が……卑猥で素敵♡握り心地も最高ですぅ。太さといい、反り具合といい……私の手に馴染みますぅ♡」
千草ちゃんが、その石を愛おしそうに撫で回す。頬ずりをする。
(最低な選び方だ……)
この子、ブレない。刀の素材を選ぶ神聖な儀式で、何を想像しているのか。その石で刀を打ったら、どんな刀ができるというのか。刀身がピンク色になったり、斬るたびに喘ぎ声が聞こえたりする妖刀が生まれそうだ。
「……スー……」
千草の背中で、弥太郎くんが寝息を立てている。
「……あちらの方は?」
童子が、困ったように弥太郎くんを見る。彼は起きる気配がない。完全に夢の中だ。夢の中で、見えない刀で鬼を斬っている最中かもしれない。
「寝てるので、残ったやつでいいです。どうせ彼は、何を使っても強そうだし。そこら辺の石ころでも、彼が振れば名刀になるわよ」
童子は「そうですか……」と諦め、残った石の中で一番小さく、地味なものを弥太郎くんの分として記録した。
こうして、私たちの玉鋼選びは終わった。美味しい石。卑猥な石。そして、余り物の石。三者三様の素材が、どんな刀に生まれ変わるのか。不安しかない。
◆
「では、皆様に『鎹鴉』を支給いたします」
童子が手を叩く。空から、バサバサという羽音が聞こえてくる。連絡用のカラスだ。鬼殺隊の隊士一人一人に割り当てられ、任務の伝達や戦況の報告を行う、賢い鳥たちだ。
「カァーッ!」
一羽のカラスが、私の肩に止まる。重い。ドスッ、という音がした。普通のカラスではない。明らかに太っている。羽毛がツヤツヤしていて、お腹がぽっこりと出ている。栄養過多だ。生活習慣病が心配になるレベルだ。
「カァーッ!ここの虫は脂が乗ってないな!焼き加減も足りない!もっと美味いものはないのか!俺様の舌を満足させる餌を出せ!」
カラスが喋った。第一声が、文句だった。
「……あら?」
私はカラスを見る。カラスも私を見る。ふてぶてしい目つきだ。
「なんか、恰幅のいい食通……毒舌な料理評論家みたいなやつが来たわね。気が合いそうだわ」
こいつ、分かる。私と同じ匂いがする。食への執着と、不味いものを許せない傲慢さ。
「いいわよ。私が美味しいものを食べさせてあげる。その代わり、しっかり働きなさいよ?働かざる者食うべからずよ」
「フン!味次第だな!まずは極上の牛肉を用意しろ!話はそれからだ!」
「生意気ね。焼き鳥にするわよ」
私とカラスの間で、奇妙な友情(?)が芽生える。
一方。
「ヘイ彼女ォ!俺と夜の空を飛んでみない?漆黒の翼で包んであげるよ☆」
千草の肩に止まったカラスは、やたらと声が良い。低音で、甘く囁くような声だ。羽の整え方も、なんだかキザだ。オールバックにしているように見える。
「あら、色男……吉原の接客係みたいな口説き文句♡いいわね、貴方。オスの色気があるわ。鳥類にしておくのは惜しいわね」
千草が、カラスの嘴を指で撫でる。
「カァッ!君のような美しい女性についてもらえるなんて、俺は幸せ者だ。君の白い肌、月明かりの下で見たらもっと綺麗だろうな……」
「やだ、上手いんだから♡後でゆっくりお話しましょうね♡」
(鳥に欲情するな……)
この女、種族の壁を軽々と超えていく。そのうち、カラスと駆け落ちとかしそうで怖い。
そして。
「……Zzz……」
「……Zzz……」
弥太郎くんの頭の上に、カラスが止まっている。いや、寝ている。弥太郎くんの頭を巣だと思っているのか、腹を見せて仰向けに寝転がっている。
「……弥太郎の鴉、弥太郎の頭の上で一緒に寝てるわね。分身制度?それとも飼い主に似るの?」
全く動かない。死んでいるのかと思うくらい爆睡している。鼻提灯まで出ている。
「おい、起きろ。任務はどうするんだ」
私がカラスをつつく。
「……ムニャ……。……あと五分……。……カァ……」
だめだこりゃ。
食いしん坊のカラス。女好きのカラス。そして、眠り鴉。
「……本当に、類は友を呼ぶのね」
無惨様の言葉が脳裏をよぎる。私たちが選んだのか、それともカラスたちが私たちを選んだのか。どちらにせよ、前途多難であることは間違いない。
「さあ、帰りましょう!美味しいご飯と、温かいお布団と、そして愛しのさっくんが待っているわ!」
カラスが「肉!肉!」と叫ぶ。千草が「温泉!混浴!」と叫ぶ。弥太郎くんが「……布団……」と呟く。
欲望まみれの一行は、賑やかに山を下りていく。藤襲山での選別は終わった。しかし、本当の戦い(とカオスな日常)は、これから始まるのだ。
◆
太陽が昇る。七日間の長きに渡る戦い(という名の私のピクニック)が終わり、藤襲山の朝は清々しい空気に満ちている。生き残った候補生たちは、泥と血に塗れ、互いの肩を支え合いながら下山していく。
「んーーっ!空気が美味い!シャバの空気は格別ね!」
着物の袖が翻り、藤の花の残り香がふわりと漂う。体調は万全。肌艶も良好。お土産の玉鋼も確保した。これ以上ない完璧な仕事ぶりだ。
「さて、愛しのさっくん(鱗滝左近次)のところに帰りますか!きっと、首を長くして待っているはずだわ。『颯、無事だったか!』なんて涙目で抱きついてくるに違いないわ。そして、美味しいご飯を作って待っててくれるはず……。猪鍋かな?それとも川魚の塩焼きかな?ああ、想像しただけで涎が出てくるわ」
妄想を膨らませる。さっくんのエプロン姿(想像)が脳裏に浮かび、私の足取りを軽くする。早く帰ろう。そして、二人きりの甘い時間を過ごそう。私の武勇伝を語りながら、膝枕で耳かきをしてもらうのだ。これぞ、勝利者の特権。
意気揚々と山道を歩き出す。鼻歌交じりで。
ザッ、ザッ、ザッ。
私の足音。
ズルッ、ズルッ、ドスッ。
背後の足音。
「ん?」
立ち止まる。背後の足音も止まる。
歩き出す。
ザッ、ザッ。
背後も歩き出す。
ズルッ、ズルッ。
「…………」
振り返る。
そこには、満面の笑みを浮かべた千草と、その背中で熟睡している弥太郎くんがいた。彼らは私にピッタリと張り付くように、影のように追従している。
「……なんでついてくるの、二人とも」
眉間に皺を寄せて問う。
「解散よ?試験は終わったの。それぞれの育手の元へ帰りなさい。千草ちゃんは栄螺さんのところへ。弥太郎くんは……どこか知らないけど、自分の師匠のところへ」
「嫌ですぅ~!」
千草が即答する。拒否の言葉なのに、なぜか嬉しそうだ。声が弾んでいる。
「は?嫌って何よ。帰り道が分からないの?迷子なら鎹鴉に聞きなさいよ」
「違いますよ、お姉様。道なんてどうでもいいんです。私の行く道は、お姉様の後ろにあるんですから!」
千草が熱弁を振るう。その瞳は、獲物を狙う肉食獣のようにギラギラと輝いている。昨夜、私のおっぱいを揉んだ時と同じ目だ。
「私、お姉様のおっぱいに惚れました!あの弾力、あの形、そしてあの包容力!絹ごし豆腐のような滑らかさと、水風船のような重量感!あれは国宝です!いや、世界遺産です!」
彼女は力説する。顔を赤らめ、荒い鼻息を吐きながら。
「忘れられないんです……。あの感触が、指先に焼き付いて離れないんです。一晩中、夢に見ました。だから決めました。毎日揉ませてください!いや、揉みます!揉ませてくれるまで、地の果てまでついて行きます!」
「警察呼ぶわよ!!」
公権力に突き出したい気分だ。変態だ。真正の変態だ。
「……千草のおっぱいは……いい……」
千草の背中で、弥太郎くんが寝言のように呟く。
「……枕に最適だ……。程よい硬さと……安心感……。だから……千草の行くところに、俺も行く……。千草……眠い……」
彼は千草の首筋に顔を埋め、すーすーと寝息を立てる。彼は彼で、千草を「歩く高級寝具」としか認識していないようだ。
「…………」
何この連鎖。私がさっくんを愛し、千草が私の胸を愛し、弥太郎くんが千草の胸を愛する。地獄の数珠繋ぎだ。欲望のトライアングルだ。
「ついてくるな!変態ども!私はさっくんと二人きりの甘い生活に戻るの!邪魔しないでちょうだい!」
手を振って追い払う仕草をする。シッシッ。
「えー、いいじゃないですかぁ」
千草は全く堪えていない。むしろ、距離を詰めてくる。
「三人寄れば文殊の知恵って言うじゃないですか。仲間は多い方が楽しいですよ?」
「使い方が違うわ!それに、貴女たちが集まっても、ロクな知恵が出ないでしょうが!煩悩しか生まれないわよ!」
「じゃあ、四人寄れば酒池肉林ですよ?お姉様の旦那様も交えて、毎晩宴を開きましょうよ。乱れましょうよ。私が舞いを踊りますから、お姉様は脱いでください」
「意味が分からない!なんで私が脱ぐのよ!そして酒池肉林の意味を履き違えてるわ!」
私のツッコミが追いつかない。この娘の思考回路は、常人の理解を超えている。
「……お姉さんの家……」
弥太郎くんが、薄目を開けて問う。
「……布団は……ある……?ふかふかの……。天日干しした……太陽の匂いのするやつ……」
「あるけど貸さないわよ!私の布団よ!さっくんと一緒に寝るための神聖な寝床よ!貴方みたいなヨダレ垂らし小僧には貸しません!」
拒絶する。断固として。
「あるんだ……♡」
千草が目を輝かせる。
「決定!お邪魔しまーす!長期滞在でお願いしまーす!」
「はぁ!?」
千草が、地面を蹴る。軽薄で、しかし疾風のような速さだ。
「さあ弥太郎、行くわよ!新しい愛の巣へ!」
「……うん……。……おやすみ……」
ダッ!!
千草は、弥太郎くんを背負ったまま、猛然とダッシュする。私を追い越していく。
「あ、こら待て!先に行くな!私の(さっくんの)家よ!?勝手に目的地にするんじゃないわよ!」
あいつら、本気だ。本気で私の家に転がり込む気だ。
「待てーっ!!」
だが、千草は速い。
「あはははは!鬼ごっこですね!捕まえてごらんなさーい!捕まえたら、私のおっぱい揉んでもいいですよぉ!」
「いらんわ!!自分のを揉むわ!!」
「じゃあ、私が揉ませていただきまーす!」
「却下だ!!」
山道に、私たちの罵声と嬌声が響き渡る。カラスたちが驚いて飛び立つ。
(……もう、最悪!!私の新婚生活が!静かな愛の育みタイムが!変態たちの宴会場になっちゃう!)
さっくんの顔が浮かぶ。彼が、玄関先で変態二人組に遭遇し、白目を剥いて倒れる姿が、ありありと想像できる。
こうして。葛城颯の静かな新婚(?)生活は、終わりを告げた。食欲の私。色欲の千草。睡眠欲の弥太郎。三大欲求を背負った三人の問題児剣士が、鱗滝左近次の家へと雪崩れ込む。
彼らを受け入れる鱗滝左近次の胃痛の日々が、ここから本格的に幕を開けることになる。鬼を斬る前に、ストレスで胃に穴が空かないことを祈るばかりだ。
「さっくーん!逃げてー!変態が来るわよー!」
ここまで読んでくださり、本当にありがとうございます!
今回で颯チーム(?)の三人と三羽が正式に出揃いました。
颯の新婚生活を破壊する最強の問題児コンビですが、
作者としては書いてて一番楽しい回でした。笑
・千草の暴走が好き
・弥太郎の寝ながら最強感が良い
・颯のツッコミが癒やし
・カラスのキャラが濃い
などなど、もし気に入った部分があれば、
ぜひ感想でお聞かせください。