どけ!!俺は出久のお兄ちゃんだぞ!! 作:俺もお兄ちゃんだぞ!!
何故かほぼ4.4倍になってる件について。
こういう日常系は脳死で書けるので多分戦闘よりもこういうやつの方が向いてるんでしょうね。
正直キャラ設定と短編、感想や評価などでやる気は普通に出てきてますが、先に短編書かないと更新する度に読者様がややこしくなりかねないので短編書きます。
ストックも何もないので1日で書き上げてるから誤字も多いかもしれない。
日曜日辺りまでは毎日投稿で頑張りたいけど、それ以降は前向きに考えてる本編の話とちゃんと向き合って1度書いてみようかな。
ただ供給のために短編を週1くらいで投稿するかもしれない……し、しないかもしれない。
例の事件、蒼穹魔境と名付けられた事件から少し経った。
蒼穹魔境というのは結局んとこ、青空の元で起きた事件から付けられたようだ。俺の領域と似た名前なのは少し何らかの関係を感じる。
流石にこの世界の技術を持ってしてもたったの1日や1週間で新宿ほどの規模を建て直せるものではない。
人には体力というものがある以上、ゆっくりとやっていくしかないだろう。
俺に出来るのはこれから先の未来に繋がるように行動していくだけ。それまではいつも通り過ごすだけだ。
いくら“最強”になっても俺自身が変わっては意味が無い。俺が自分自身で出した答えをこれからも抱き続けて、“誰か”と歩んで行かなくちゃならない。
そうしなければ俺という存在が壊れることを、俺自身も薄々感じている。
先生と戦って、あの人のことがなんとなく理解したんだ。
昔の俺ならきっと出久だけが居ればよかったが、今の俺が独りになってしまえば、俺はきっと先生のように――
「転間くーん!」
「あぶなっ!?」
人が考え事してると、突っ込んできたねじれを咄嗟に受け止める。
「怪我したらどうするんだよ」
「転間くんなら受け止めてくれるもん」
「分からないだろ、弟の写真が落ちてたら俺はそっちを優先的に拾うぞ」
「絶対そんなこと起きないよ!?」
馬鹿野郎!
もしかしたら出久のストーカー的なアレがいるかもしれないだろ!!
――は? 出久のストーカーとか許せると思ってんのか。領域に入れてでも捕まえるぞ。
「転間くん、大丈夫だから戻ってきて〜」
「……そうか? いやもしもがあるかも」
「むしろ私は転間くんが自分を心配するべきだと思う」
「俺のストーカーなんているわけないだろ」
「えー……」
困ったように眉を下げるねじれにおかしなことを言うようなやつだなと俺は思った。
そもそも出久のようなめちゃくちゃ可愛くて天使で、その上ヒーロー精神が溢れる最高の存在にストーカーが居るのは納得出来るが、俺にストーカーがいるはずもない。この世界はおかしい。なぜ出久がもっと評価されないのか。
俺なんかよりよっぽど良いだろうに。
いやまあ、俺も好意は持たれてるみたいだけど。
「うん……まあいいか。私が守るよ、転間くん。大丈夫っ!」
「お、おう……むしろお前が自分を心配すべきでは?」
「そう?」
「お前可愛いんだからそういうやつが居てもおかしくないだろ」
「えへへ」
「いや照れてる場合じゃなくって」
真面目な話をしてるのだが、ねじれは何故か頬を掻くだけだ。
すると俺の前に躍り出てきたので、ぶつからないように止まると彼女は俺の右手を包み込むように両手で覆ってくる。
「その時は転間くんが守ってくれるでしょ?」
「……まあ」
否定はしない。
今の俺なら1秒も掛からずに駆けつけられる。
それに自分の存在が周りを危険に侵す可能性も考えてないわけではないからだ。
周りを人質にしようと考える輩もいてもおかしくはない。
俺がどれだけ強くたって、周りはそうではないから。
「だからね、私が転間くんを守って、転間くんが私を守れば解決だと思うんだ」
「それもう自力で解決しないか?」
「いーのっ! 守られてばかりじゃ嫌だもん。確かに私は転間くんより弱いけど、それでも守りたい気持ちはあるから。それとも、転間くんは私が相手だと嫌……? やっぱりヴィオラちゃんじゃないと無理だと思うの……?」
ねじれが落ち込むように俯きがちに見つめてくる。
正直俺なら誰に狙われてようとも自分の身は余裕で守れるが……それはきっと、間違っているか。
なんでそこに、ヴィオラが出てくるかはともかく。
「頼りにしてるよ、だからそんな顔をするな」
開いている左手で彼女の頭を撫でると、少しして暗さが嘘のように明るい笑顔を向けてきた。
ねじれはこういう風に笑ってる方が魅力的だ。
「任せて! 身の回りも頑張る!」
さりげなく手を繋いだ状態になって隣に並んで肩を合わせてくる。
そういう言動は男性にすると誤解するので良くないと思う。
前世がある俺だからこそ誤解しないが。
「待て、お前もヴィオラみたいな思考をするな。俺のプライベートが消滅する」
「何かしてるの?」
「弟の観察」
「……転間くんの方がストーカーだった」
「ストーカーじゃない、お兄ちゃんだ」
「私でもね、たまに転間くんのこと分からなくなるよ」
「褒められたら照れるな」
「相変わらず転間くんの羞恥心もよく分からない!」
確かに俺自身もあんまり分からないな。
よくよく考えたら前世でも特に照れることはなかったし……せいぜいこうやって異性と触れ合ってる時にハラスメントにならないかどうか焦ってたくらいだろうか。
現代社会は何かとそういうのに厳しい。ちょっとしたことで大問題になってしまえばどうなるか……!!
「俺としてはねじれもよく分からないけどな」
「私? 私は……転間くんと……」
「俺と?」
「て、転間くんと話してる時!」
「それはそれで話せなくないか!?」
「い、いや今のは違くて……!」
「違わなかったら流石に驚く」
「だ、だよね」
「まぁなんでもいいか。お互い全部わかる方が怖いだろ」
「確かに……それはそうかも。でも転間くんのことはもっと知りたいとも思う」
「弟以外空っぽだから問題ないぞ」
「それはそれで問題だと思うよ!?」
それでも割と事実なんだが。
ただこんなくだらな――くはないが、会話をしてるとふと笑いが溢れる。
ねじれは不思議そうに覗き込んできた。
急に笑ったからだろう。
「転間くん?」
「いや……」
学生にしては俺は忙しくなってきただろう。
本来なら学校を辞めるべきだし、辞めてヒーロー活動に尽力した方が社会のためになるのも理解している。
でも、だからこそ思うこともあって。
「ねじれと過ごす時間は心地が良いと思ってな、こんな時間がもっと続けばいいと思ったんだ」
「――ふぇっ!?」
ふと足が止まり、引っ張りかけたので慌てて止まる。
振り向くと、驚いた様子のねじれが居る。
「そ、それって、どういう……」
「? 言葉通りでしかないだろ。お前と過ごすのが嫌なら俺は受け入れないし普通に走って逃げてる」
「っ……わ、かったから、あの……心臓に悪いこと言わないで……」
「……治すか?」
「そ、そこは大丈夫! うん! 嬉しいだけ!!」
「そうか? それならいいけど」
そう言って俺の手を引っ張っていくねじれに俺は足を動かす。
後ろから見ると顔がやけに赤い気もするが、本人が大丈夫なら問題ないか。
多分今の俺なら風邪でも治せるけど。ただこの力ばかり使うのは良くないな、人間としてやめてしまいそう。
しかし、俺は思ったことをそのまま告げただけなんだけどなぁ……何か間違えただろうか。
どう思う、俺のイマジナリー出久。
『僕も分からないかなぁ……』
うん、天使。
イマジナリーとはいえこの完成度、パーフェクト過ぎる。流石俺。
「……転間くんは本当にズルいと思うの」
「何がだよ」
「分からないなら分からなくていいの! もう、全然勝てる気がしないもん」
「そりゃ“最強”だからな」
「そういう意味じゃないんだけど……じゃ、じゃあ……!」
「ん?」
ふと手が引っ張られたかと思えば、柔らかな感触と温もりが増す。
冬特有の寒さの影響だろうか。やけに暖かく感じるが、抱きついてきたのだと理解する。
「ど、どう?」
「明鏡止水」
「どういうこと!?」
いや、普通に抱いてはならないそうな感情が出てきそうだったから。
信頼してる相手に変な感情なんてねじれも抱かれたくないだろう。俺の理性は強いぞ。
「オールマイトに憎しみを送ってた」
「え、えぇ〜……転間くん、オールマイト嫌いすぎじゃない?」
「俺より最強みたいに思われてるのが気に食わないからな」
嘘では無い。1番の理由は出久を奪ってきてるからだが。
「変わらないなぁ」
「ま、俺が俺であることは変わらないって言ったろ。誰が変わろうと俺だけは俺のままだ」
「うん……そうだね。私、転間くんのそういうところす――」
急に言葉が途切れ、どうしたかと聞こうとすると顔が真っ赤になっている。
“す”で止まってることを考えたら、何が言いたいのか分かりそうだ。
前後の言葉を考えると、俺に関連することだろう。
そういうところがどういうところかは分からないが、俺の性格のことか?
そうなれば自ずと答えが見えなくもないような。いや早とちりかもしれない。行間を読めば、別の答えの可能性の方が――
「す、すき焼き食べたいかも!」
「脈略無さすぎだろ……」
どうしよう、やっぱり俺ねじれを理解出来ないかもしれない。
まぁ下手に突っ込まない方がいいか。
そんな“もしも”が当たってたとして、正直どう返せばいいか分からない。
ヴィオラにもそうだが、俺は自分が誰かと付き合う未来は考えたことがないからだ。仮に好意を他に持たれていたならその誰かを不幸にしてしまう。
大して何も知らない他人ならどうでもいいが、ねじれたちのように深く関わってしまった相手にはそうなって欲しくない。俺に出来ることならなんだってするつもりではあるが、誰かを選ぶことは誰かを切り捨てること。
今の俺にはきっと、それが出来ない。
だからこそ、もしそうなった時は俺はどう返事をすればいいか分からなくなるだろう。
藪をつついて蛇を出すのは避けた方がいい。
「だ、だって寒いし……」
「まぁ確かに、まだまだ冬だしな。そこまで食いたいなら今日は時間あるし、お前のところに入れてくれるなら作るが」
「ほんと!? じゃあ今日私の部屋に泊まってって!」
「そこまでは」
「だって夜遅いと襲われちゃうよ。転間くんなら、絶対!! 今話題だし! ヴィランにとってはチャンスにしか見えないし!」
「何だその自信。別に返り討ちにするだけなんだが」
「でもほら、夜に騒ぎ起こしちゃうと周りに迷惑掛けちゃうし」
「俺が今更そんなミスするとでも?」
「私が罪悪感を感じるよ」
「……分かった」
さすがにそれは言われると弱い。
だが事実、俺が他人に対して同じことをして、無事に勝って捕縛したとしてヴィランに襲われたという事実に罪悪感は感じてしまうだろう。
なんだろう、こう……自分が強くなりすぎた影響か人の心が分からないロボットみたいになってきてないか、俺。
いや元からでは?
何自己完結してるんだろう。
「やったっ!」
「ねじれ、お前そんなに……」
「えっ、な、なにっ?」
じっと見つめると、ねじれの顔がまた赤くなって、しばらく見ていたからか視線を彷徨わせていた。
そうか、そうだったのか。
「――そんなにすき焼き食べたかったんだな」
「……あーうん……タノシミ」
なんか間違えたような気がした。
挽回はもう不可能だなこれ。うん、諦めよう。
「うん……分かってたけどね。転間くんだもんね」
「どういうことだお前」
「べっつにー?」
「喧嘩なら買うぞ」
「喧嘩よりもこうやって触れ合いたいなぁ」
そう言って腕を抱きしめてきたかと思えば柔らかい感触が布越しに伝わる。
「お前さらっとそういうこと言うよな」
「え、転間くんには言われたくない」
やっぱり喧嘩売られてる?
「ねえ、そこで立ち止まって夫婦漫才いつまでしてんの」
「ふう……ッ!?」
「なんだ甲矢か」
話しかけられたのに反応すると、甲矢がこっちに来ていた。
確かになんかやけに視線を感じる気はするな。別に夫婦漫才してたわけでもないのだが。
「私で悪かったわね」
「いや別にそういうつもりじゃ」
「わーってるわよ。まったく朝からお熱いことで」
「寒いだろ」
「その意味は違うと思うよ……」
「で、何の話してたのよ?」
「ねじれのとこに泊まってすき焼きする話」
「ふーん……え?」
信じられないものを見たかのような目を向けてくる。
何だこの失礼なやつ。俺が料理出来ないとでも思っているのか?
――正解だが???
コピーくらいしかまともに出来ないぞ。まぁ得意料理が一つだけあったりするんだけど、それだけはきっと世界一位だろう。
お兄ちゃんだからな。
しかし向けられた視線は俺じゃない気がする。
ねじれは顔を背けてるのでよく分からない。
「そう、ついにねじれはそこまで……うう、私感動だわ」
「有弓! 流れで、流れでなっただけで!」
「いいのよ、むしろ襲ってしまえば――」
なんか甲矢が急に泣き出して怖い。てか襲うってなんだよ。物騒だなおい。
「しっ、しないよ!? そういうのはちゃんと段取りというか……っ!」
「あら純情」
「変なこと言ってないで行くぞ、遅刻しても俺は責任を取らんぞ」
「はいはいっと」
全く結局時間はギリギリになりそうだ。
少し早く進むか……。
腕から感じる感触は考えないようにした。
というわけで学校終わって買い物タイム。
ひとりで行ってもよかったが、泊まるなら何かと入用になるだろう。
お泊まりシリーズは持ってきてるので、基本は食料や調味料、飲み物だけでいい。
ちなみに流石に雄英の服は目立つ他、これでも既にプロヒーローになってしまったし蒼穹魔境の影響で話題になってる俺はいつでも顔を隠せるように灰色のパーカーを着ている。下は普通に併せたズボン。
対してねじれは、白……というよりは肌色の服*1の上にモコモコした緑色のガーディアンを着ているらしく、下は黒タイツに白のロングスカートといった服装で髪を結んでいるのかポニーテールになっている。
俺が触れてたら寒さは無効化出来るとはいえ、常に出来るわけじゃないからな。寒さ対策は大切だ。夜は冷える。
「転間くん、その……大丈夫? お母さんとか、出久くんとか」
「母には言ってるから大丈夫だ。出久は……なんか今日は泊まりらしくてな。入試も近いし訓練に集中したいらしい。お兄ちゃん寂しくて泣きそう」
考えただけで辛い。
なのに涙は出ない。おいこの体どうなってんだ。
母さんや出久が滝のような涙を流す代わりに俺の涙腺持っていかれた?
おのれ神様。いや神が原因かは知らないが。
前世は泣いてる暇なんてなかったが、この世界に来てから泣いたことがない。
「よしよーし。今日は私がずっと傍にいるから大丈夫だよー転間くん。今日と言わずこれからも……」
そう言ってなんでか頭を撫でられる。
慰めるためなのだろうが……なんだろう、この違和感……ハッ!
「逆だ」
「んっ……えへへぇ」
手を掴んでねじれの頭を撫で返すと、しっくりきた。
やはり同年代には撫でられるより撫でる方が性に合っている。
年下にもか。
これはまさか、生まれながらにお兄ちゃんだった……ってことか……!
「あらあら……」
「まだ若いカップルねー」
「初々しくて若返るわ」
「尊い……」
「はっ、あれはもしかしてオリジン様とネジレちゃん様……!? ご尊顔を拝める機会が訪れるとは、ありがたき幸せ……!」
なんか変な声が聞こえたような気がしたが、聞かなかったことにしよう。
耳が良すぎるあまり全て聴きとってしまったが、あらぬ誤解を生んだようだ。
が、別に訂正する必要はないので放っておこう。
こういう場ならしても無意味だろう。
「……って、ちがーう!!」
「何だよ急に」
「いつの間にか逆転してる! というか転間くん撫でるの上手すぎるから撫でられるとこうなっちゃう……!」
「ま、お兄ちゃんだからな」
「万能な言葉にしてない?」
「してる」
「してるんだ……」
俺の存在を表すのに適した言葉がむしろ他にあるだろうか?
いやない。100%ない。
なぜなら俺はお兄ちゃんだ。
出久の。
「こういうのは家でしよ?」
「流れでやっただけでするつもりはないが」
「しよ?」
「これ返事しないとダメなやつだ……わかったって。それより買い物だ」
「うんっ!」
なんだかやけに機嫌が良い。
やはりそんなにすき焼きが……!
それとも俺と過ごすのが楽しみなのだろうか。
その辺は分からないが、後者であればまあ嬉しくはある。楽しくないと思われるよりはな。
「といってもすき焼きって家庭に寄るもんなぁ……」
「転間くんはこれ! とかあるの?」
「うどん」
「それ〆だよね!?」
「じゃあねじれは?」
「……お豆腐?」
「そこは肉じゃないのか」
「お肉はカロリーがね。豆腐は美味しいもん」
「確かにな。でもお前軽いんだから全然問題ないと思うが」
「女の子には色々あるの。でもありがとっ、太ってるって言われるよりは全然嬉しい」
「見た目は確かに大事だとは思うが、仮に太ったところでお前はお前なんだから変わらないだろ」
「転間くん……やっぱズルいよ、反則。レッドカード」
「なんで???」
そもそも反則ってなんだよ。しかも一発退場かよ。せめてイエローにしてくれ。
顔背けられたから聞き出すことは無理そうだ。
「でもやっぱり私は転間くん“には”綺麗だと思われたいな」
「既に綺麗だろ」
「っ、も、もぉ〜っ!」
「いたい」
痛くは無いがポコポコ叩いてくる。
おかしい、俺は正直に答えてるだけなのに。
いや、確かに昔の俺なら他人にこんなことは言わなかったか。基本出久が全てだったしな。
うーん、この辺りは色んなやつと関わってきたから軟化してるようだ。悪いことじゃないからいいか。
少なくとも自分の周りくらいは、ちゃんと褒めたりしておこう。
まぁ1番は出久だけどな。
ただ出久は可愛いの方なので1番綺麗というのはベクトルが違う。その点で言えばねじれは綺麗かもな。
「と、えーすき焼きの具材は定番でいいか。肉、白菜、ネギ、シラタキ、焼き豆腐、エノキ、エリンギ辺りか?」
「そ……そうだね。うん、それでイイトオモウ……」
「……大丈夫か?」
「だ、大丈夫! ほら早く買お!」
「おい引っ張るな。周りに迷惑でしょうが」
「急に保護者目線に……!」
にしたってやけに視線を集めるな。
まさか俺のことがバレた?
いやいや服装も変えてるんだしそんなわけ。
「やっぱりねじれの容姿か……流石容姿端麗」
「こっ、これ以上追撃しないでっ!?」
「え、何の話?」
何の話?
事実だろ、お前実質ミスコン1位みたいなもんなんだから。派手さに負けてただけで。
「そ、それに見た目なら転間くんも負けてないから」
「そうか?」
「う、うん……すごく、その、かっこいい……よ?」
「そうか、ありがとう」
「絶対お世辞だと思ってる……!」
「正解」
俺は先生と違うので別に自分の容姿がイケメンとは思っていない。
普通程度だ。
それはともかく、ちゃんと歩みは進めてるので時間的に無くなりそうなお肉から。
まだ結構残っている。値段はぶっちゃけ気にしないので良さそうなの選んどけば間違いはないだろう。
目利きはめちゃくちゃ出来るってわけではないが、魚関連なら得意にはなったな。
シリウスさんと料理することがあったし。
「むぅ……転間くんは私だけを見て」
「いや材料見なきゃダメだろ」
「そうだけど!」
急に何言ってんだこいつ、と顔に思いっきり出しながらカゴに入れ、豆腐はすぐ使うので店のためにも賞味期限が古いヤツ。
あとは野菜も鮮度を見つつ、ねじれと話し合いながら良さげなやつを入れてキノコ類も確保。
ある程度は調味料あるらしいので、必要そうなものだけ追加で入れて、すき焼きの分は確保した。
「ジュースとかお菓子も買っちゃう?」
「まあいいんじゃないか、たまには」
「じゃあ買おっ」
ねじれも頑張ってるし、自分に対する褒美は大事だ。あと俺も個性の関係上甘いものが欲しい。
どんなのがいいかなーとポニテを揺らしながら探してるねじれを見守りつつ、やはり視線が気になる。
と言っても騒ぎになってないなら俺という存在がバレた訳じゃないか。
こうやって考えるとオールマイトの形態変化は便利だな、擬態出来る。俺はせいぜい髪型を変えたりとかしか出来ないし。
とりあえず視線は体で遮っとこう。邪なものは感じないが、ねじれが気にするかもしれない。
「あ……」
「ん?」
「ううん、やっぱりチョコがいいかな?」
「そうだな、いいと思うぞ」
「じゃあコレ!」
先の妙な反応が気になったが、気のせいだったのだろうか。
特に変わりはないので気にせずいると、俺の腕を掴んで引っ張ってくる。
「次は飲料のところに行こっ」
「引っ張る必要なくない?」
ついて行きはするが、肩と肩が触れ合う距離感で腕を抱いてくる。
やっぱりこいつ距離感バグってんなとは思ったが、考えないようにした。
考えると疲れそうだ。
周りの微笑ましげな視線だけは、やけに記憶に残った。
ちなみに会計は俺が持った。
だってこういう時じゃないと使い道ないし。
既に何回か訪れてるので特に緊張することもなくねじれに上げてもらうと、荷物を下ろしつつ流石に他人の家を荒らす訳にはいかないので待機。
いくら彼女が許可してもあまりよろしいとは言えないからな。風邪の時は勝手に借りさせてもらったが、今は彼女は健康体だ。
鍋を用意してぱぱっとすき焼きを作る。
火力を上げるのはできないから時間は掛かるけどな。
下手なことしたら不味くなるだけ、出来ないなりにコピーした方が安牌だ。
「転間くんって意外と料理出来るよね」
「いやネットの真似てるだけで大したもんじゃないだろ? まぁ料理出来ない俺でも一つだけ作れるものがあるが」
「聞いてもいいの?」
「カツ丼」
「カツ丼? なんでなんで? もっとこう、オムライスとかそういった定番なものかと思った!」
「決まってるだろ――弟の好物だ」
「……あー」
なんか妙に納得したような反応をされた。
なんだその反応。何か悪いか。
さては信じてないな?
「カツ丼だけなら世界一レベルだぞ、今度食わせてやろうか」
「うん、じゃあその時はまたこうやって二人でしようね」
「そうだな、流石に複数用意するのは面倒だ」
「やった」
二人分くらいならまだしも三人四人となると時間はかかる。
しかしなんか妙に誘導されたような気もしなくもないのだが……まぁいいか。
という訳で何事もなくすき焼きの完成。
卵に付けるか付けないかは個人によるものなのでおまかせ。
冷めないうちに食べた方がいいので、お皿に取り分けて、卵を付けていざ実食。
「ん〜美味しい!」
「どーも。普通のすき焼きでしかないけどな」
不味くもなければ別にそこまで美味しい訳でもない。
多少ねじれの好みの味付けに変えた程度だ。
プロでもなんでもないので別にいいけど。前世でも料理なんて全然してないし今世でも基本カツ丼以外は作らないから上達はしない。
せいぜいバレンタインのお返しのチョコレートを作るくらいだろう。
「ううん、転間が作ってくれたことに意味があるから。私にとってはすごく――食べてきた中で1番美味しいと思うな!」
それはもう、本当に幸せそうに笑うねじれは今日見てきた中でも1番の満面な笑みだ。
その笑顔を見れただけで、手間をかけてやった価値は十分あるだろう。
「ねじれが満足なら作った甲斐もあるよ」
「えへへ、今度は何か私が作るね」
「楽しみにしとく」
「うん、胃袋掴んじゃう!」
「そういうモザイクが必要なグロテスクなのはちょっと」
「物理的じゃないから!?」
茶化しつつも、ご飯の時間を楽しんだ。
一人で食べると何も言葉を発することなく黙々と食べるだけだが、ねじれと食べると彼女は何かと喋ったり不思議そうにするので会話には困らなかった。
特に俺とねじれの仲だ、今更会話に困るはずもなく。
こういうのも悪くはない。言わないけど。
ご飯を食べ終わったら皿洗いは自分がやると言ってきたので、俺は彼女の手伝いをする程度にした。
料理したとはいえ皿洗いを見てるだけってのもな。
それから多少休憩し、聞いておかなければならないことを聞く。
「それで風呂はどうする? 正直、客として来てる俺からすれば先に入るのは忍びない。それに女性は時間掛かるだろうから遅くなる方がアレだろ」
そう、これだ。
男性の俺とは違って女性は色々と時間かかるだろう。何をするかまでは俺は分からないものの、ねじれほど髪が長いと時間もかかるだろうし夜遅くになるのは宜しくない。ないとは思うが、お風呂で寝落ちとか危ないしな。
今回は俺がいるからそうなったとしても助け出せるが。
「あ〜そうだね。先に入った方がいいかな」
「その方がいいかもな」
「だよね。あっ、それとも……一緒に入る?」
まるで今思いついたような反応をしたのち、何処か上目遣い気味に述べてくるねじれに、俺は思わず――
「いたっ!?」
デコピンした。
額を両手で押さえるねじれだが、もちろんちゃんと加減もしてるので正確には大したダメージはないだろう。
「入らない。早く行け」
「むぅ、はーい」
流石に冗談だというのは分かってるため、マジレスするとそのまま彼女は去っていく。
何故今無駄な話を挟んだんだ……全く。
「少しは警戒しろよ」
しかし今の、もし本気にしたらどうするつもりだったのだろうか?
こういうところは無防備なやつなんだよな。多分俺ならそんな事しないって思ってるんだろうけど、それでもどうかとは思う。
といっても、今の言葉はもう届いてないだろうけど。
「……ちょっと残念」
殆ど終わったあとに戻ってきたねじれと入れ替わるように風呂に入り、ぱぱっと出てきた。
風呂自体は前世でも毎日入ってたし仕事の疲れが多少は吹き飛ぶような錯覚があったので実は結構好きだったりする。
他人の家の風呂で長居するつもりはないのですぐに出てきたが、ここでは変装をする必要がないので普通に寝巻きだ。
ねじれも寝巻きみたいで、流石に冬だから長いズボン。ただ服装はピンク色らしい。
用意してくれたクッションに座りながら対面にはねじれ――ではなく、何故か人の隣をキープして寄りかかってくる状態だった。
「転間くんいい匂い」
「おい嗅ぐな。というか自分の家のだろ」
「えへへ、そうだった。一緒の匂いだね」
発言がちょっと不味い気もしたが、同じ風呂でシャンプーもなども同じはずだが、そうとは思えないのは何故だろうか。
ここまで近いと普通に匂いが鼻孔を擽る。
気にしすぎないようにしよう。
男女二人っきりでその辺は考えない方がいい。
それよりこういう時って学生らしく勉強するべきなのか何かしらのゲームで遊ぶべきなのかいつも分からないが、勝手にさせてもらおうと俺は仕事をする。
うん、長年の職業病すぎる。仕事から解放されても結局年齢的にもう仕事をする年齢になってきてるせいか、余計に。
「それは?」
「こっちはサポートアイテムの設計図。そっちは蒼穹魔境の状況をまとめたやつ。他にはエドワードの情報をまとめたやつ。あとは純粋に報告書とか、これは知り合いのアメリカのヒーローに向けて書いてる手紙」
今は髪を下ろしてるため、覗き込んでくるねじれの髪が顔に当たる。
そっと掬うように退かしつつ、カバンから出した資料について説明した。
「……アメリカ?」
「そう、近々行く予定」
「えっ!?」
ねじれが酷く驚いていた。
そういえば言ってなかった記憶がある。
別にメールを飛ばせばいい話なんだけど、一応ちゃんと紙でもやっといて損はないだろう。
スターのことだからあっさり受け入れてくれると思うけど。
「じゃ、じゃあ、しばらく会えなくなったり……」
「日帰りだぞ」
ねじれがだんだんと不安そうに腕を掴んできたので、誤解されないようにちゃんと告げる。
「……へ?」
「日帰りだぞ」
「えっと……アメリカに行くのに?」
「そう」
「日帰り?」
「うん」
「……アメリカだよ? 飛行機でも10時間くらいはかかるよ?」
「そうだな、でも俺だし」
「そっか……うん転間くんだもんね」
納得したようで、ねじれは人の腕を胸元で抱いたまままるで安心したように俺の肩にねじれは頭を置く。
――いや、そうされると作業出来ないんだけど。左手でやるか……。
「よかった、しばらく会えなくなるんじゃないかなって思ったから」
「出久に会えないとか俺が耐えられないからな。それにお前らを放っておく訳にもいかないだろ、誰かが見なくちゃやらかす」
「そこは大丈夫じゃないかなぁ……だいたいは転間くんでしょ」
「人を問題児みたいに言わないでくれるか?」
「……」
「待て、なぜ無言になる」
確かに俺もやらかすことはあるかもしれないが、クラスメイト連中もバカをするだろうに。
「でもね、転間くんに会えないと私は寂しいから。そういうわけじゃなくてよかった」
「ねじれ……」
「転間くんはデビューしちゃって、でも私はまだ仮免で。遠いところに行っちゃったなぁ……って最近思うことがあるんだ。置いていかれてばかりで、ふとした時に居なくなっちゃうんじゃないかって」
「……心配せずとも何処かに行ったりはしないぞ?」
「うん、わかってる。でもほら、来年にはもう別の道を行ってるかもしれない。ただでさえ転間くんは忙しくなってきてるもん。会う機会も減っていくんじゃないかなって」
将来のことは俺にも分からないが、確かに雄英には居るが雄英に居ない日も出てくるだろう。
「私がヴィオラちゃんみたいに強くなれたなら、今同じくらい強くなってたなら……ついていけたのかな」
ねじれの顔に影が射し込むのが分かった。
彼女なりに俺が“最強”になってしまったことに思うところがあるのだろう。
俺に追いつこうとしていたのは理解していた。なのに俺が引き離してしまったからだろう。
「それは……そうかもな」
「うん……」
「でも、お前はヴィオラじゃない。ねじれだって去年に比べれば遥かに強くなってる。でも俺だって何十年も掛けてようやく今の強さがあるんだ、それはヴィオラも同じ。そう簡単に並ばれたら俺とヴィオラの立つ瀬がないだろ」
そう、結局ねじれは2年でしかない。
でも俺は個性を扱えるのに12年の年月を掛けてようやくここまで辿り着き、到達点まで来た。
ヴィオラも最初から強かったわけじゃなく、何十年も掛けて強くなっただろう。
俺と彼女は独学みたいな所があるからそれほどかかったとも言えるが。
「それに……」
「……?」
「前も言ったろ、俺は拒まない。お前が俺の近くに居たいと思うなら居ればいい。俺を嫌いにならない限りな。それに……行きたいと願うなら連れて行ってやる。だからそんな顔をするな、お前には似合ってない」
「転間くん……っ」
ふと衝撃が走り、片手を後ろに着くとねじれが抱きついてきている。
若干押し倒され気味の体勢になってしまったが、背中に手を回されるのが分かった。
解放された右手で慰めるように頭を撫でると、ビクついたあとにねじれは脱力するように全身を俺に預けてくる。
「ちょっと弱気になっちゃってた。うん、そうだよね。そのためにも充電っ!」
「俺は充電器じゃないんだが……まあそれで元気になるなら好きなだけしてくれ」
「好きなことしていいの?」
「そうは言ってない。バカ言うな」
「えへへ」
「全く……元気出たか?」
「うん!」
先と打って変わって笑顔になるねじれは、やっぱり彼女には笑顔が似合っていると思える。
こいつの笑顔は嫌いじゃない。むしろ守りたいとすら思うのは、やはり相当毒されてきてるんだろうなと思う。
人間強度が下がる。
「でも、もっとこうして欲しいな」
「もうちょっとだけな」
作業は出来そうにないなと諦めることにした。
甘えるように人の胸板に顔を擦り付けて来る彼女の頭をぽんぽんと撫でる。
「転間くんの温もりはやっぱり安心出来るね」
「それは溢れまくってるお兄ちゃんパワーの影響だろうな」
「そうかも……。この匂いも……好き」
「ずっと思ってたが……お前さては匂いフェチだな」
「転間くん以外のは全然好きじゃないもん」
「なんだそれ、どういうやつだ」
「転間くんフェチ……? えっちっ!」
「すごい理不尽を味わった」
何もしてないのに変態扱いされてしまった。
正直それを言うのは俺の方なんじゃないかと思ったのだが。
「お前はお前で無防備過ぎると思うぞ」
「転間くんにだけだよ? だからいつでもいいからね?」
「……何を???」
俺にだけ無防備ってのもどうかと思うが、後者の全容が読めない。
一体どういう意味で言ってるんだ?
「んー何でも受け入れるって話! 私、転間くんになら何されてもいいもん。あっ、でも冷たくはしないでね」
「さりげなく要求してきたなお前……。冷たくなんて今更しないっての。なんだ、お前も何かあったら言えよ」
「じゃあ今日一緒のベッドで寝よ?」
「いいぞ、というわけないだろ」
「えーっ、そこは言うところじゃない?」
「言わない。間違い起きたら大変だろ」
「間違い? 間違い探しでもするの?」
「……何でもない」
わざとかわざとじゃないのか。
誤解を生む言動をする時があるのはどうなんだ。
無自覚なんだろうな、この辺り。
「そうだ、転間くんチョコレート食べよ? ほら、あーん」
「自分で食えるんだけど……いいか」
「どう?」
「チョコレート」
「チョコレートだからね。私にも食べさせてっ」
「これ意味がある?」
「私には意味あるから」
「そうか……まぁ別にいいけど」
自分で食べた方が早い気もしたが、動く気はなさそうなので彼女なりに甘えたかったのだろうか。
仕方ないので大人しく従うことにした。
短編
-
ねじれと過ごすだけの話
-
ヴィオラとミミズ人間観に行った話
-
うみちゃんとの再開
-
真綿に未来に関して話した話
-
環とミリオと会話する話
-
イレ先とマイク先生とお出かけ(デート)
-
前世お兄ちゃん
-
学校での日常
-
なんかその他書いて欲しいやつ
-
本編も
-
どれかじゃねぇ。全部書くんだよ