──噴上裕也は逃がさない──   作:よくメガネを無くす海月のーれん

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後日談、あるいは次回予告


迷い猫を探し出せ その5

「ありがとうございます! ありがとうございます!」

 

「いや良い。三日も経ってりゃダメかと思ったが…タフな猫だぜ」

 

 噴上自体はボロボロのままだが、風雷ちゃんは汚れや多少の擦り傷がほとんどで大きな怪我もしていなかったのが幸いだった。

 

 初の依頼をこなす事が出来たという安心感は一入であり、池崎が居なければ今すぐにでもブッ倒れるところの噴上がこうして立っていられるのは偏に男の意地(プライド)故である。

 

「こんなにボロボロで…大丈夫なんですか!?」

 

「あァ。ちとスタ…猫に絡んでいた鳥野郎が居てな。ソイツを追い払うのに苦労しただけだ。風雷ちゃんにはびた一文触れさせてねぇ。」

 

「それが…」

 

「あぁ。怪我させちまったからよォ…動物病院に連れてってやらねぇと…な?」

 

 噴上は自身が着ていた制服でもって『パワー・オブ・ラヴ』のスタンド使いである鳥公を捕まえていた。

 

 鳥公は頭から勢いよく落下したものの辛うじて息をしていた。よって『ハイウェイ・スター』で養分を吸収しながらギリギリの状態で捕獲していたのだ。これが人であればSPW財団に伝える、もしくはとっ捕まえて引き渡すなりするが…相手は動物。正直なところ扱いに困っていた。放置すれば人に危害を加える可能性もある。それにコイツのスタンドは放っておけば被害が大きくなると睨んでいた。羽に触れたものにパワーを与えるスタンド…しかも生物にのみ有効! 幼児や女性方が不意に触れたり、踏んだりすればそれだけで命の危険になり得る。

 

 故に治療も合わせてSPW財団に任せてしまおうという魂胆だった。気絶しているのか大人しくこのまま運んでしまえば無事解決だろう。

 

「あァそう。依頼料のことだ。けっこー苦労したんだぜ? 服もボロボロだしよォ…」

 

「もちろんです! 兎に角、その鳥の為にも早く戻りましょう! 噴上さんも血が…」

 

 暑苦しい男が心配そうに肩に手を伸ばす。いつもの噴上ならその手を払いのけていたところだが…存外に悪い気はしなかった。それは依頼達成できたからというのもあるだろう。

 

(初めての依頼、不安じゃなかったと言やぁ嘘になる。ホッとしている…ってのが正直なところだ)

 

 あれだけ準備をしたというのに、初めて依頼失敗しましたとなれば目も当てられない。その点、簡単そうに思えた猫探しの依頼がまさかスタンド使いとの戦闘になるとは思いもしなかったが…。

 

 それでも、それでもだ。

 

(噴上探偵事務所…良いスタートを切れたぜ─ッ!)

 

 確かな自信になっていた。自分は、『ハイウェイ・スター』は出来るのだという確かな実績が出来たのだ。

 

 これを皮切りに行方不明の調査や探偵業として名を馳せて行けば…!

 

(ミケランジェロの彫刻以上の美貌に、シャーロック・ホームズを上回る天才的な頭脳が備わっちまうなァ─ッ!)

 

 言葉を選ばず言うのであれば調子に乗っていた。背後に現れた『ハイウェイ・スター』もしきりに腕を組んでいる。

 

 噴上裕也の探偵業は開始早々にスタンド使いと戦うことになったという奇妙な始まりであった。それは決して偶然によるものではない。

 

 スタンド使いはスタンド使いと惹かれあう。

 

 彼がスタンド使いである以上、きっとこれからの探偵業も奇妙な出来事が起こるだろう。

 

***

 

 これは後日談だが、あの後池崎からは猫探しには見合わない大金が振り込まれていた。怪我や制服の修繕も含めた代金だそうで、諸々の経費を差し引いてもおつりがくるものであった。

 

 また、SPW財団へと持ち込んだ鳥公だが、スタンドが有用なこともあり、動物のスタンド使いは知性が向上しているのもあってかSPW財団に飼われることになった。安全な環境と美味しい餌を用意すれば大人しく従ってくれるらしい。

 

 会いに行ってみれば羽を飛ばされたため、随分と嫌われたものだが…それでも払われた臨時収入を考えれば気にならなかった。

 

 欲しいものはアレコレあるものの、ここは一つ大きな買い物をしようと噴上裕也は電機屋にてとあるものを購入し、事務所に設置した。

 

 パソコンである。

 

 噴上裕也はこのPCに金の匂いを嗅ぎつけた。これを持っているのと持っていないのとではきっと大きな違いとなって表れてくる。

 

 早速、諸々の設定を終えたパソコンにて探偵業に仕えそうな情報や噂を検索してみれば…知らず知らずのうちに頬が吊り上がる程だった。値千金の買い物をしたと言ってもいい。

 

 そんな中、あるサイトが目に付いた。それは心霊現象が起こるホラースポットを共有する掲示板で、文面からして必死さが伝わるものだった。必死過ぎて誰からも相手にされなくなっているのが可愛そうであるが…。

 

 その書き込みはとある廃病院について聞きまわっているようだった。

 

「旧桃世病院…?」

 

 噴上裕也の鼻にツンと刺すような刺激臭がした。

 

***

 

 

 その噂はT県T市の廃れた病院から始まった。

 

 曰く『亡くなった人に出会う事が出来る』

 

 曰く『行方不明の人が見つかった』

 

 曰く『死者が生き返る場所』

 

 その噂は小さく、しかし確実に広がっていた。

 幼子を失った若い母親、妻を亡くした中年の男、友達と会いたい一心の小学生も居た。

 

 そのどれもが、行方が分からなくなっている。

 

 入口付近で逃げた者は言う。

 

 踏み入ってしまえばそこはもう死者の楽園。鳴りやまぬラップ音、侵入者を襲うポルターガイスト…

 

 そして

 

 亡くなったはずの人達がこちらに来いと追いかけ、捕まればそのまま病院に閉じ込められるのだと。あとはもう死者の仲間入り…生きながらに死んでいる。

 

 T県T市、旧桃世病院跡地。壊れた廃病院は生者を静かに待っている。

 

 次回「──噴上裕也は逃がさない── 悪魔は踊る」




 一先ずここまで…!

次章「悪魔は踊る」は反応良かったら書きます。
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