英雄王、ダンジョンへ   作:Castella

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やっぱりギルガメッシュの口調難しいです……


町娘いじめ/ウサギの憧憬

 

ベルと別れたギルガメッシュは初日の案内に散々酷評した商店街に来ていた。

幸い、金なら暫く困らないほどにある。少しくらい無駄遣いしたところでとがめる者もいない。

 

 

「………不味いな、やはり」

 

 

まあ、だからといってこの王が遠慮なんて言葉を知っているわけが無く。

初日と同じように酷評しまくっていた。

店主と離れたところで言っているだけマシなのかもしれないが。

 

それはそうと、ギルガメッシュはやはりこの街が気に食わなかった。

神が跋扈しているのもそうだが、やはり腑抜けていると感じるものが多い。

中にはベルのように面白いものを持っているやつもいるものの、ギルガメッシュから見れば大半は凡愚に過ぎなかった。

 

 

(所詮は神などが統べる街、奴らに〝英雄〟以外をみる目があるとは思えんしな)

 

 

神々とは、身勝手だ。

自らが英雄を見出し、自分勝手に試練を与えてくる。

勿論、本人の許可など取るはずもなく。

ギルガメッシュが知っている中で、代表的なのはヘラクレスだろうか。

女神ヘラの嫉妬により狂わされ、妻子を自分の手で殺めたところから物語が加速するのだから酷いものだ。

 

 

 

閑話休題。

 

 

 

ベルには物見遊山と言ったものの、実のところこの数日で主要な場所は見尽くしていた。

歓楽街、ダイダロス通り、商店街。

大体の場所は行っている。

 

あとは───

 

 

(よもや、バベルとはな)

 

 

神がいる都市で、神に近づこうとして罰された者たちの塔の名前を冠するとは、皮肉なのか何なのか。

とはいえ行っていない主要な場所はもはやバベルのみ。

よって、ギルガメッシュはバベルへと足を進める。

 

だが、その足は早くも止まることとなる。

後ろからの衝突によって。

 

 

「きゃ!?」

 

 

可愛らしい声が聞こえてくる。

イメージで言えばカワイイ系の声で、偏見で言えば数多くの男を魅了しまくっているような声だ。

しかしそんなことはギルガメッシュは気にしない。

自分の背中に有象無象の中の一つがぶつかってきた、その少しの怒りだけがギルガメッシュに生まれた感情だった。

 

 

「いたた……ご、ごめんなさい」

 

 

「………なに?」

 

 

だが、振り返ったギルガメッシュが抱いたのは怒りではなく疑問だった。

もちろん、謝ってきたからではない。

その〝少女〟そのものにだ。

 

薄鈍色の髪に瞳をした、可愛らしい少女だ。

側から見れば、ただの少女に過ぎないのだろう。

しかしギルガメッシュの〝眼〟にはわかった。

この少女の正体は────

 

 

「………貴様、なんのつもりだ?」

 

 

「え……えっと、怒らせちゃいましたかね?」

 

 

「違うわ、戯け」

 

 

少女の言葉をにべにもなく両断し、少し不機嫌になったギルガメッシュは続ける。

 

 

「なんだ?その姿は。貴様らなりのお遊戯とやらか?」

 

 

「え………」

 

 

その向けられた言葉に呆然とする少女。

意味がわからないといった様子で、困惑しているようだ。

それとも〝図星〟というやつなのか。

普通ならただ困惑していると思っただけと思うが、ギルガメッシュはどうやら違ったようだ。

 

 

「……ふん、まあいい」

 

 

「えっ?え〜?」

 

 

一方的に言ってきて一方的に会話を打ち切ったギルガメッシュに困惑しながらその少女は話しかける。

なかなかのスルースキルだ。

それはともかく、少女は困惑を振り払いながらギルガメッシュに対して聞いてくる。

 

 

「あの、すみません……この辺りで黒猫を見ませんでしたか?」

 

 

「黒猫?」

 

 

その疑問に、話を聞いてくれると判断したのか少女は続ける。

まあギルガメッシュはそこまで興味を抱いていないが。

 

 

「はい、そうなんです……さっきお店に来た女の子が探していたらしくて。それで──」

 

 

「何を寝ぼけたことを言っている……それだけではあるまい」

 

 

ギルガメッシュが言った言葉に図星を突かれたように少し固まる少女。

そしてほんの少ししてから微笑を浮かべ、悪戯っぽくギルガメッシュに向かって言った。

 

 

「えっと、バレちゃいました?」

 

 

それを聞いたギルガメッシュはただ一つ、当然であるかのように言う。

 

 

「王たる我(オレ)の前で、秘め事など出来ようはずもなかろう」

 

 

それを聞いた少女は少し驚いたように固まり、それから言った。

 

 

「あなたは……王様なんですか?」

 

 

「それすらわからんとは、やはり貴様らは凡愚だな」

 

 

余計なひと言を添えながらも、その言葉を肯定と見做した少女はあることを言おうと思った。

しかし、ギルガメッシュは「まあいい」と言いながら、もう興味がなくなったのかバベルに向かい歩き出す。

しかし、この少女がとった行動は少し変わっていた。

 

 

「すみませんでした、王様」

 

 

まるで王に仕える臣下のような声色で言った。

その一言は、ギルガメッシュの足を止めた

 

 

「──なに?」

 

 

「さっきは失礼なこと言ってしまって、ごめんなさい」

 

 

さらに続けて少女は言った。

 

 

「確かに、別の理由があったことも本当です」

 

 

「でも、私、あの子の猫を見つけてあげたいんです」

 

 

「だけどきっと、一人じゃ見つけられないと思うんです」

 

 

「だから、手伝って欲しいんです」

 

 

 

「お願いします、王様」

 

 

 

頭を下げて、懇願した。

沈黙と往来を歩く人々の声だけが、その場を支配した。

それを聞いたギルガメッシュの表情は、頭を下げている少女には見えなかったが、その答えはすぐにわかった。

 

 

「─────フフ、フハハハハハ!!」

 

 

「え??」

 

 

「貴様らが我(オレ)に頭を下げるとは!!これは夢か!?」

 

 

心底愉快そうに、まるで劇でも見ているかのように王は笑う。

自らが嫌悪するその存在のありうべからざる姿を見て。

 

 

「この世界に於いては我(オレ)を知らぬとはいえ、あやつらと同類である貴様が頭を下げる?これほど愉快なことがあるはずもない!」

 

 

「王宮であれば、『王腹筋大激痛』とでも書かせていただろうよ!」と、そう言って今にも笑い転げそうになっていた。

そしてしばらく笑った後、少女を見つめてこう言った。

 

 

「良いぞ───貴様の道化のような様に免じて、その童の探し物に手を貸してやるわ」

 

 

「ほんとですか!?」

 

 

「ありがとうございます〜!王様〜!」と言って飛びついてきた少女を、ギルガメッシュが「ええい!貴様!ひっつくことを許可した覚えはないぞ!」と言いながら振り払おうとしながら、「まあまあいいじゃないですか〜!」と言われながら町娘に手を引かれて探し物を探しに行った。

 

 

────────────────

 

 

一方その頃、ギルガメッシュが地上で町娘と探し物をしている時にベルは何をしているのかというと。

 

 

「ほぁあああああああああああああああああああ!?」

 

 

全速力で逃げていた。

 

走る、走る、走る。

止まったら終わりと言わんばかりに、ベルは全力疾走を続ける。

その速度はベル自身が出せる限界を突き詰めたものであり、同時に生命の危機から来る命懸けの逃走であった。

さて、ベルが何故そこまで必死に走っているのかというと。

 

 

『ヴヴォオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!』

 

 

ある怪物から逃げているからだ。

咆哮を上げながら迫る巨躯は、目を血走らせベルに命を潰そうと必死であった。

その怪物の名は、ミノタウロス。

本来なら迷宮〝15階層〟以下で出現するモンスターであり、とても5階層に出現するレベルではない。

 

だが、それはイレギュラーとしてここにいる。

 

 

『ヴゥムゥンッ!!』

 

 

「でえっ!?」

 

 

ミノタウロスの蹄、その攻撃がベルの背を捉えかける。

直接当たりこそしなかったものの、その攻撃はベルの足場も巻き込み爆ぜる。

その衝撃で足を取られ、ゴロゴロと床を転がる。

 

 

『フーッ!フーッ!』

 

 

「うわわわわわわわっ………!?」

 

 

みっともなく後退りながら、少しでも生きようと足掻く。

しかし、その微かな抵抗さえもよ許さないと言うように少年は行き止まりに着いてしまう。

 

 

(ああ、死んでしまった………)

 

 

そう、諦めが脳に飛来する。

最後の走馬灯として出てきたのは、3人の姿。

 

 

(神様、ごめんなさい………多分僕はここまでです……)

 

 

(王様、どうか神様と仲良くして、守ってあげてください………)

 

 

(それから、おじいちゃん………ごめん、早く行っちゃうかも)

 

 

それから、終わりの時を待っていたベルだったが。

 

 

 

しかし次の瞬間、怪物の体に一閃が走る。

 

 

 

「え?」

『ヴぉ?』

 

 

ミノタウロスとベルの声が重なる。

その一閃は止まらず、ベルの目の前であれだけ脅威だったミノタウロスが細切れにされていく。

真っ赤な血が吹き出し、ベルはそれを被ってしまった。

 

 

「……大丈夫ですか?」

 

 

それが、剣姫と兎の出会いだった。

 

 

 

 




ちなみにこのシ──町娘は仕事をサボる口実やギルガメッシュに興味があったからぶつかってきました。
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