夢現世界の災凶姫~Disastress in the Parasomnias~   作:サッドライプ

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 新章開始でだーくふぁんたじー再開。
 人物紹介で予告したとおり、過去プリナちゃんの死体蹴り案件も新規のが出て来るのでお待ちあれ()




星を隠すもの《セプシス》Ⅰ

 

 俺達冒険者―――抗魔士(イムニティ)は、黒髪の普通の人とは色々違う能力が備わってる。夢能(デルシオ)っていう超能力はもちろん、ただ走ったり物を持ち上げたりするフィジカルも圧倒的な差がある。身体の頑丈さだって、普通の人みたいに風邪を引いて休んだなんて話聞いたこともない。

 別に自慢とかじゃなくて何が言いたいかって―――毎日の気温がだんだん下がって冬が近づいてるのに全然気付かなかった。まあゲームの冒険者ってそれ用の衣装が用意されてない限り、溶岩地帯だろうが雪山だろうが砂漠だろうがいつもの服装で元気に駆け回る生き物だし。

 

 暑さ寒さへの耐性が段違いでエアコンなくても一年中快適なのは明らかなメリットだけど、季節感なくなるって思うとほんのちょっとさびしいところはあるよね。プリナちゃんが水属性の能力できれいに洗って乾かしてくれるから、俺はほぼ毎日愛用の白黒服だし、お姫様も変わらないお姫様ドレスで涼しい顔してる。エルザは家の中で薄いワンピース一枚で元気にぱたぱた駆け回ってるけど、外ではケモ耳しっぽを隠すために分厚いシスター服(帽子と首輪付き)。普通の人が真夏にあんな厚着してたら熱中症待ったなしな恰好との温度差がやばい。プリナちゃんも外での『隠蔽』ヴェール装備は普通なら夏がキツそう。

 

 そんな俺達三人の季節感覚ゼロな冒険者服装事情―――まあ、防御力とか付与アビリティとかも含めて選んでる装備だからそんなコロコロ着替えないし―――はおいといて、上着を押さえて風から身を守りながらぶるぶる震える通行人を見ると寒さが本格化してるんだなーってのは分かる。ただそんな寒さ苦手な人には嫌な季節なのに、街のふいんきはどっかそわそわと浮き上がってるように感じてた。

 年末を過ぎて迎える、いわゆるニューイヤーフェスティバルってやつにみんな意識が行ってるみたい。もちつきとか初もうでとかはないだろうけど、正月に浮かれてお祭りするのはこっちでも一緒なんだなあ。俺もちょっと前に、プリナちゃんといっしょにケーキ食べる約束してるし。あとおせちじゃないけど、エルザも『たっくさんおいしいもの作りますから期待しててください!』って花マル笑顔で意気込んでるんで、俺も今からすごい楽しみ。

 

 この世界の年号でちょうど1000年、いつだったか古本屋のばーさんにもらった本に書かれてたらしい『英雄様』が蘇るって予言されてる年になるとかで、盛大にイベントをやる店とかもたくさんあるっぽい。異世界に来て最初の年越しがアニバーサリーってなんかすごい偶然。

 そういえば俺はまだ生まれてなかったけど、西暦が2000年になる時もなんか予言ってあったらしいよね。たしか恐怖の大王が現れて全てのコンピュータをバグらせるんだっけ?聞くからにヤバそうだけど、たぶん光の巨人か五色のチームがなんとかしたんだろ。

 

 そんな記念イベントを楽しみに待ち望むこの街の人々だけど、元日本人の俺としちゃその前にも外せないイベントが当然あるわけで。

 

 

 

「『めりーくりすます』ですよ、あなた様!サンタプリナがいい子のところにやって来ました!」

「わ~~~いっっ!!可愛い、めちゃくちゃ可愛いサンタさん!!」

「ふふふっ♡」

 

 

 

 真っ赤な毛皮の生地に、裾がふわふわの真っ白な綿になってるケープとミニスカートと帽子。目立つ赤に目が行って一瞬わからないけど、その下におなかがちょっと見える丈の短い白シャツとふとももに一本ずつ走るガーターベルトがさりげなく“せくしぃ”。上はケープを留める緑色の鈴付きリボン、下はミニスカに巻かれたこげ茶色の太いベルトと、足を覆う同カラーのスノーブーツがいい感じに白いプリナちゃんの肌と髪を引き立たせてぐっど。そのきれいな白と虹の髪も、ぽんぽん付き帽子を被るのに合わせて太い三つ編みに結ってくれていて、いつものふわふわロングヘアと違う可愛さを振り撒いてる。

 

 もう感動ものって言うしかないよね。だってこの世界にサンタの文化なんてないんだから、このサンタプリナちゃんは正真正銘世界で一人ここにしかいない限定衣装なわけで。何より全然知らないサンタさんの恰好を、俺だけの為にそれでもコスプレしてくれたプリナちゃんの愛情が嬉し過ぎて困る困らない!

 

 ちなみに、衣装はちょっと前に行ったエロショップ―――もとい『デュクレイ魔道具店』のパリドゥムさんに提携先の服屋を紹介してもらって特注しました。クオリティ高いし今度はセーラー服とかお願いしよっかな。

 でも今はとにかくこの聖夜の奇跡なサンタプリナと全力でいちゃつかないと。

 

「プレゼントはありますかっ」

「もちろん。まずは少し目をつぶっててくださいねー」

「……なんだろ?」

 

――――ちゅっ。

 

「ふぁっ!?」

「続きは料理の後で、ね?」

「は、はいっ」

 

 キスした唇に人差し指を立てながら、いたずらっぽくウィンク。もちろん俺の妄想シチュを叶えてプリナちゃんがちょくちょくやってくれる仕草の一つだけど、何度見ても可愛いが過ぎる……。

 

 それはそうと食卓には鳥の丸焼きとか、たくさん並んだビスケットの上にそれぞれチーズとかフルーツとか色々載ってるのとか、クリスマスっぽい料理が並んでる。来週新年会やるっていうのに、その7日前にもクリスマスしたいっていう俺のワガママに対応してくれたエルザにも感謝しかない。

 

「わぅ~♡」

 

 相変わらず撫でてわしゃわしゃするだけで幸せそうに満足してくれる可愛いわんこだけど。ちなみにエルザも、サンタ服と一緒に特注した新しいシスター服が今日おひろめ。被っても耳が苦しくないよう三角の袋が帽子のてっぺんに作られてるのと、しっぽがごまかしやすいようスカートがふわっと広がるタイプになっててしかもふりふりの飾りが腰から下にかなり多めにあしらわれてる。相変わらず首輪常時装着なのもあってコスプレシスター感は増したけど、耳やしっぽを外で隠すのに少しでもきゅーくつじゃない方がいいと思って。

 サンタ服と新シスター服が二人へのクリスマスプレゼント、ということにしたけど、どう見てもコスプレ衣装でしかない服を送られたのに大喜びしてくれる女の子達は本当に優しいと思う。

 

「どうしようプリナちゃん、俺わるい子かもしれない」

「?」

 

 特にプリナちゃんのサンタ服は、俺が見たいと思ったからっていう私利私欲100%だ。……あと『かみなり』でダンジョン一つ吹っ飛ばしたのとか、向こうから突っかけてきた奴だけど事故でケガさせたのとか、モンスター化して暴れてた奴だったとはいえ人を殺したのとか、考えてみると処罰食らうことはなかったけど悪っぽいことはちょこちょこやってる。

 

「あなた様は、いい子ですよ?」

 

 でも、プリナちゃんは。いつものふわりとした優しい笑顔であったかい言葉をくれた。

 

 

「今年一年間、そしてこれから先もずっと永遠に。誰よりもあなた様を見ている私が断言します。

 あなた様はいい子です。私を愛してくれる、幸せにしてくれる。そんなあなた様がわるい子だなんてあり得ませんから」

「プリナちゃん……」

 

 俺の膝からどかされたエルザも後ろで全力でぶんぶん首を縦に振ってくれてるけど、すぐに視界が赤一色に覆われて見えなくなった。

 抱きしめてくれてる。あたたかくて優しい感触なのは、きっと服の生地のおかげだけじゃないんだろう。

 

 

 それから、料理を『あーん』しあったり、三人でパーティーゲームやったり。すごく幸せなクリスマスを過ごすことができた。

 

 

 

 その、次の日。

 

 プリナちゃんが『行きたい場所がある』って言いだした。場所は、あの遺跡があった湖。

 

「二日後の日付。あの湖で私の妹が息を引き取った日です」

「!それって……」

 

 

「弔(とむら)いたいのです。たとえ骸(むくろ)も墓標も、痕跡すら残っていなかったとしても」

 

 

 もちろん、断る理由なんてなかった。

 

 

 





 まずはほのぼの。落差が出る方が、ね(外道)

>恐怖の大王が現れて全てのコンピュータをバグらせる
 混ざってる混ざってる。ノストラダムスと2000年問題が。ある意味そりゃ恐怖だけども。

>光の巨人か五色のチームがなんとかした
 実は1999年放送の光の巨人が本当にそんな話だったという。恐怖の破滅招来体にバグらされて、地球の為に人類が滅びるしかないとか言い出した量子コンピュータ……。今思うと意識して話書いてたのかなあ。

>耳やしっぽを外で隠すのに少しでもきゅーくつじゃない方がいいと思って
 そーゆーとこだぞミュートくん。謎形状のシスター帽と、清貧とは明らかに別コンセプトのデザインなシスター服を発注された服屋さんは困惑しただろうけど。

>サンタ服は、俺が見たいと思ったから
 プリナちゃんにとってはそこが一番嬉しいポイントなんだぞミュートくん。普通の女の子にはドン引き案件だけどプリナちゃんにとってだけクリティカルないつもの奇行。

>「これから先もずっと永遠に。誰よりもあなた様を見ている」
 かっこガチの重い表現。何一つ大袈裟じゃなく文字通りの意味で言っている。

>「妹が息を引き取った日」
 『英雄様』が眠りについたのが1月1日として、その4日前の日付で亡くなっているプリナちゃんの妹。……うん、まあ。そういうこと。

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