主人公の個性奪っちゃったみたいだから返すね 作:しおんの書棚
その結果、筆者の能力不足を除いても、後付けした関係で色々な不備や無理矢理感が出てしまっていますし、それらに対する貴重なご意見も感想で寄せられています。
ですが、それらをすべて解消しようとすれば、書き足すどころか、最初から書き直しになりますので、現実的には対応できません。
また、それを行なってしまうと、折角いただいた感想が、改変要求などを含む感想のガイドライン違反になってしまいます。
多くの方々は、その辺りを理解してくださっていたり、不備をある程度許容していただいたうえで、後の展開に関わる可能性すら考慮して、楽しんでいただいている状況だと判断しております。
ご希望に添えないことを大変心苦しく思いますが、大きな心と温かい目で見守っていただき、今後とも豆腐メンタルの筆者と拙い本作の応援をよろしくお願いします。
2026/2/4 しおんの書棚
Side 八木
緑谷少女と別れた私は、すぐにナイトアイを追った。彼女の話から、ナイトアイが個性を使用したのではないかと思ったからだ。
外部の者が、この屋外訓練場から雄英高校を出るには、決まったルートを通らなければならない。ならば、必ず追いつけるはず。
そんな想いで駆け出した私を待っていたのは、背を向け俯きながら立つナイトアイと、会話している様子のグラントリノ。
「おい、ナイトアイ。おめえさんに、何があった?
緑谷の嬢ちゃんと別れてから、なにかおかしいぞ」
「……」
様子のおかしいナイトアイを、グラントリノが気にかけてくれているのか。ということは……。
「見てしまったのかい、ナイトアイ」
「オールマイト……」
ああ、これは確定だ。私の未来を見た時も、こんな反応だったのだから間違いない。そんなナイトアイは、微妙に震えていた。
「その気はなかった。ですが……」
「……見たってのは?」
グラントリノの問いに、ナイトアイの個性について、当たり障りのない程度に答える。
「さすがに、そりゃマズイんじゃねえか?」
「ええ。ですが、そんなことはナイトアイ自身わかっていたはずだ。
とにかく見てしまった以上、そのままにはしておけない。話してくれるね、ナイトアイ」
そういって強引に振り向かせたナイトアイが、顔を上げると……、泣いていたのだった。
Side ナイトアイ
あれだけの重傷を負い、それでも最前線に立つオールマイト。いくら引退を勧めても、聞き入れてはもらえない。
そこで私は不安を解消するために、オールマイトの未来を私の持つ予知の個性で見た。見てしまった。その結果は、未来に待つ無惨な死。
私の個性で見た未来は、途中の経過をどう変えようと、最終的には必ず収束する。つまり見た時点で、確定してしまうのだ。
その後、私はオールマイトの下を去り、オールマイトが納得するようなOFAの後継者候補を探した。
変えられないと思っても、OFAさえ継承して引退してもらえれば。現場から無理矢理引き離すにも、OFAの継承は必須だったのだ。
やっとの想いで見つけたミリオを鍛え、オールマイトに継承を持ちかけた時、オールマイトは自分自身で見つけたいと願った。その時は、そんな都合のいい存在などすぐには見つからないと思い、時間は多少かかるだろうが説得してみせると見送ったのが間違い。
オールマイトは、見つけてしまった。それも、雄英高校の新入生になる予定の中学生だと伺ったのだ。そんな若すぎるヒーローの卵では、すでに鍛えられているミリオには絶対に及ばないと、何度か交渉するもののすべて無駄に終わり。
「これは……」
誰が後継候補かと、テレビ中継で雄英体育祭を見ていたあの日。
「この少女なのか?」
圧倒的なフィジカルで、あらゆる困難を踏破していく少女の名は、緑谷ひびき。今年度の入試主席であり、すでに未来を見据えた新しい思想を持つ才媛。そして、その競技内容で、私は確信した。
「ステージを踏み砕き、跳躍で宙を舞うフィジカル。
高速の攻撃を見切りつつ捌き、瞬時に拘束する技量。
氷を打ち砕き、爆破を押し返し、圧倒するパワー、か」
すでに継承は済んでいたのか。そう確信して、珍しいオールマイトからの呼び出しに応じれば、未だ継承はなく、しかも彼女は無個性だという。
OFAのリスクを知らされた結果、ミリオには継承できず、彼女自身を多少知って納得したのだ。
そして、別れ際。不可能を可能にしてきた彼女の目に、思わず期待してしまった。あの未来には存在しなかった彼女が引き継いだのであれば、未来は変わったのではないかと。
気づけば、私は禁を破り、すでに見ていた。
「まるで濃霧の中のように真っ白でした」
「いつもとは、違ったと?」
オールマイトの言葉に頷く。
いつもであれば、カメラのフィルムのように見える未来。それが、まったく見えない。
「未来が白紙になった、そう思ったのです。
OFAを引き継いだ以上、彼女の側にはオールマイト、貴方がいるはずなのに、それすら見えなかったから」
「だが、それだけでオメエさんが泣くとは思えねえな、ナイトアイ」
ええ、そうでしょうとも。私自身、その程度で泣くなどありえないと思っていました。
「その先で、霧が晴れたのです。そして、今より老けた貴方が笑っていました。彼女と彼女の弟と共に」
ああ、未来は変えられるのだ。過程は、文字通り五里霧中であっても。だから。
「オールマイト、私は彼女に全力で協力します。
貴方にも、死の運命を跳ね除けるために、全力で抗っていただく」
それが、私の個性は絶対ではなく、絶望の未来を書き換えることもできるのだと。
そのための選択肢は、白紙に絵を描くように、いくらでも存在するのだと。
そう気づかせてくれた彼女、緑谷ひびきへできる、私なりの恩返しなのだから。
Side 私
人間は、睡眠中に色々と整理すると聞いたことはない?
例えば、記憶。
その過程で、随分懐かしい記憶を夢に見る。起きたら、思い出せなくなったりするのは、記憶容量の関係で消されたんだと思う。
例えば、経験。
その過程で、技術が身体に馴染む。寝る前は惜しくもできなかったり、ぎこちなかったことが、できるようになったり、洗練されたりする。
じゃあ、今の状況は?
私は寝たはずだ。それなのに、よくわからない場所にいる。
「夢にしては、感覚があまりにも現実的だけど、記憶にはまったくない、か……」
そう口にした瞬間、背後に生まれた気配。即座に一歩前に出て、距離を確保しつつ瞬時に振り向き、臨戦態勢。
「へえ、やるじゃないか」
「え? 私?」
いや、口調も、見た目年齢も違う。服装も、黒のボディスーツに白マントといったヒーローコスチュームっぽいけど、私の好みじゃない。しかも、凄い筋肉質。
一体、誰だろう? とりあえず、普通に名乗って訊ねてみようかな。
「はじめまして、私は緑谷ひびきと申しますが、貴女は?」
「パッと見は似てるけど、結構違うな。まったく俊典にしろ、空彦にしろ、女を見る目がない」
空彦は不明だけど、俊典は八木先生の下の名前だ。
「……違っていたら申し訳ありませんが、もしや志村菜奈さんですか?」
「そうさ、緑谷ひびき。私が、七代目OFA継承者の志村菜奈だ」
おかしい。私は、この人の見た目も話し方もまったく知らないにも関わらず、夢に見る。それだけは、絶対に有り得ない。まさか……。
「もしや此処は、OFAの中、ですか?」
「いいね、頭も切れる。
そうさ。君がOFAを継承したことで、何故か出て来れるようになった。
これまでは、一切干渉できなかったのにね。勿論、私自身、経験にないことだ」
八代目であるオールマイトまでは、無理だったことが、可能になった? お互い無個性だから、それは無関係。他に理由が?
とにかく、考えても答えは出ない問題だから、何故干渉しようと思ったのか尋ねるべきだね。
「私に、何か御用ですか?」
「OFAに関して話があるのと、折角だから試してみたいことが幾つかあってね」
彼女が、OFA七代目継承者である志村菜奈さん本人なのであれば、OFA について話があることは、ある程度予想できた。しかし、なにを試してみたいのか気になるな。
「試してみたいこと、ですか?」
「ああ、それはその時に話すよ。まずは、OFAについてだ」
試みについては、急ぐ話じゃないと今は納得して、志村さんの言葉に頷く。
「私が俊典にOFAを継承した直後、無個性ながら偉丈夫だった俊典は、いきなりOFA100%を発揮しても問題なかった。
しかし、今のOFAは、その時とは比較にならないほど力を増している」
なるほど。程度の差はあっても、元々身体ができていた私と八木先生。しかし、八木先生が引き継いだ直後の100%と、その時から35年以上経過した今の100%では、蓄積された力に大きな差があって、よりコントロールが難しく、肉体強度も必要だって話かな。
「今のOFAを扱い切るには鍛錬不足、未熟なコントロールでは50%程度が限界といったところでしょうか?」
「確かにそういう面がまったく無いとは言わないが、OFAが他人の個性であることが最大のネックだ。今の100%を発揮するには、個性が自分に馴染む必要がある」
「その時間が必要だと?」
「ああ」
もしかして、この対話もそういう側面が現れていたりしないかな。ほら、最初に言ってた睡眠中に馴染むってやつ。ありそうだなぁ、伝えてみようか。
「憶測でしかありませんが、今のOFAを正しく継承するためには、そういった話をしっかり伝える必要があります。その結果、出て来ざるを得なくなったから、干渉できるようになったという“可能性”はありませんか?」
「……無くはない、か?」
似たような顔の二人が、黙して唸るシュールな光景。
「まあ、これについては悩んでも答えはでない。
それでだ、試してみたいことの一つが、これだ」
これ、と言われても、目の前で少し浮いてる志村さんが見えるだけなんだけど。え? まさか、そういうこと?
「志村さんが出て来れたなら、その個性も、OFAと同じように扱える“可能性”がある。だから試してみようってことでしょうか?」
「ああ、ひびきの機動力重視の戦い方は、浮遊の個性と相性がいいはずだ。
技術面で私を上回るひびきが、浮遊を使い熟せれば、三次元を駆使した戦闘が可能になる」
……それは、確かに相性が良さそうだ。
「って、待って下さいよ。まったく……」
「なにかありましたか?」
待たせるような相手は、私以外にいないから、そう聞いてみるしかないよね。
「違うんだ。歴代継承者に、ひびきと相性が良さそうな個性が何人かいてな」
「私に会いたいと?」
そう聞けば、頷く志村さん。
「とはいえ、寝てる今にできることは無いし、最初に話すなら女同士の方がいいって決めておいたんだが」
「他に、女性の継承者は?」
「私だけだな」
ということは、六代続けて男性、七代目で志村さん、八代目で八木先生。そして、私か。あ、ついでに聞いておこうかな。
「ちょっと気になったんですが、その筋肉は、OFA100%による変化でしょうか?」
「いや、私も俊典も、元々こうだったよ」
じゃあ、あの筋肉の張りは、馴染んでいないからこそか。逆にいえば、馴染んだかどうかを判断する材料になるし、最大値も測れる。
それにしても八木先生は、あんなガリガリの身体から、なにをどうしたらムキムキになるんだろうか。
やっぱりこの世界は、不思議な現象が溢れている。だからこそ、私の無茶苦茶な技術擬きが、力を発揮できるんだろうけど。それがモチベーションになってる面は、否定できないけどね。
「とにかく、明日は浮遊の個性を試してみよう。勿論、OFAのコントロール訓練は継続だ。
ああ、このことは、とりあえず秘密にしておいて欲しい。何一つ確証がないのに、できる話じゃないだろう」
「ええ。でも、目の前で浮いたら必要になるのでは?」
「それは、その時だ」
その後、これまでの人生について聞かれ、眠くなるまでは志村さんに付き合い。
「休むときは、しっかり休んでいいんだ」
そう言ってくれた志村さんの言葉に甘えて、私は徐々に眠りに落ちていく。それにしても……。
「
その一言が、妙に頭に残ったけど、私の意識はそこまでだった。
●オリ主
睡眠後、OFAの中で、志村菜奈と邂逅して色々聞けた。
浮遊の個性を試すことになった。
●八木
ナイトアイから個性を使用して得た未来を聞いた。
死の未来を聞いても、諦めてはいなかったが、より一層奮起した。
●グラントリノ
ナイトアイから個性を使用して得た未来を聞いた。
俊典、ジジイより先には、死なせねえぞ。
●ナイトアイ
個性を使用して未来を見た結果、希望を得て、自身の個性の矛盾を知った。
オリ主に継承してくれて心から良かったと思うと共に、絶対的な協力を決めた。
◼️原作乖離・フラグ要素
オリ主 志村菜奈と邂逅。
八木 未来に希望を得た。元々油断はない。
夜目 未来に希望を得た。油断はしない。
GT 初めて知った。死なせねえぞ。