「私と契約して魔法少女になりなさい」   作:NARです。

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お久しぶりです、NARです。
前回から3週間ぶりの投稿ですね。待ってくださっていた方々、遅くなってしまい申し訳ございません。
それでもこの二次小説を読んでくださっている方々にはとても感謝していますし、嬉しい気持ちでいっぱいです。皆さんの感想、評価、お気に入り登録はもちろんのこと、誤字指摘についてもありがとうございます。

それでは本編へどうぞ!

前回のあらすじ!
杏子「お前が全ての元凶なんだろ!!」
マキマ「は?何言ってんの君?(#^ω^)」
杏子「ぎゃふん!?」

今回はこの続きです。


支配の悪魔

〈マキマ〉

 

謎の赤服の魔法少女を暴力でねじ伏せ、さあ尋問を始めてみよう!となったタイミングで、無粋な横槍を入れられた。

 

地鳴りのような音が近づき、巨大な不定形の肉塊が津波のごとく殺到して校門を破壊すると、そのまま見滝原中学校をその身で完全に包み込んだ。

 

『『『『『___ッ!!!』』』』』

 

ぐちゃぐちゃと気持ちの悪い水音に混じって、魔女の鳴き声が暗い肉壁の内側に反響する。まるで幾つもの声が重なっているような不協和音を奏でているが、実際に複数の声を無数にある口から同時に発しているのだろう。

顔のパーツや体のパーツが全身の至る所へバラバラに散りばめられたその魔女の姿は、私の記憶の中にいるとある()()と酷似していた。

 

___【永遠の悪魔】

 

それは、【永遠】という概念を司る悪魔であり、そいつがその権能を付与(?)したものは無限の性質を与えられる。

分かりやすいように例えると、何度扉を潜っても同じ風景の部屋がずっと続くようになったり、時間を「刻む」という概念が上書きされてずっと同じ時間に囚われるようになったりなど、とにかくあらゆるものの終端が取り払われたエンドレス状態になるというわけだ。

そして、【永遠の悪魔】は実質不死身と言っても過言ではない。なぜならば、【永遠の悪魔】は弱点である心臓を潰されない限り、無限に再生し続けることができるからだ。

 

さて、なんで今関係の無いそんな激ヤバ悪魔の話をしているのかって思う人がいるかもしれないけれど、実は全く無関係という訳でもないと私は考えている。

私はこれまで職場の同僚や子供たちからポンコツなどと散々に言われてきたけれど、そんな私でも伊達に長くウィッチハンターをやってはいない。これまで出会って来た人間や魔法少女、そして魔女を注意深く観察してきた私は、ある結論をこの世界に見出していた。

 

この世界は、転生者である私が前世に愛読していた漫画『チェンソーマン』とは全く異なる異世界だ。しかし、何らかの理由によってこの世界には『チェンソーマン』世界の概念が影響している可能性があると私は考えている。

というのも、私がこれまで出会って来た人間や魔女には『チェンソーマン』に登場していたキャラクターとあまりにそっくりな人達が何人もいるのだ。例えば蛇の魔人である沢渡ちゃん。彼女は漫画『チェンソーマン』の作中では敵キャラとして登場した()()だった。また、姫野ちゃんも作中に登場したキャラクターで、幽霊の悪魔と契約を結んだデビルハンターだ。

こんな風に、漫画の中に出てきたキャラクターとそっくりな人達と私は沢山出会ってきた。ただし、誰もが漫画『チェンソーマン』での設定と全く同じという訳ではなく、元人間でありながら悪魔と同じ名前を持っていたり、年齢や経歴にも違いがあったりと全ての要素が完全に一致しているという人物は一人もいなかった。

じゃあ私の持っている『チェンソーマン』の原作知識が全く役に立たないのかと聞かれたら、それはNOと言える。

 

すくなくとも、これまで生きてきた中で私の原作知識が役に立たなかったという日は一日だって無かったから。

 

(___来る!)

 

魔女__仮称【永遠の魔女】の身体から魔力の起こりを察知した直後、無数の手の集合体のような肉塊が伸びて私たちに襲い掛かって来た!

私はすぐに赤服の魔法少女を抱え込み、全力で防御を固めた。

次の瞬間、背中に強い衝撃が走った!それは私の身体の中を貫き、肺の中の空気と一緒に外へと突き抜けていった。

一瞬だけ意識が飛びかけるけど、私は腕の中に抱いた魔法少女を意地で守り続け、そして窓ガラスを突き破って校舎の中に転がり込んだ。

 

「げぼっ、ごほっ!!」

 

腕の中に抱いていた魔法少女を開放し、喉を逆流してきた血を溜らず吐き出した。なんか色々な物と混ざって粘り気とか匂いとか最悪なことになっている。これは内臓がやられちゃってるなぁ。やっぱり私は力が強くても防御力は紙装甲過ぎるね。いや、『チェンソーマン』のバトルシーンからして悪魔は防御力より生命力に全振りしてるみたいな感じだから、私が特別弱いってわけじゃないな!うん!

 

「ア、アンタ……なんで、あたしを守って……?」

 

独りで誰に対してでもなく言い訳をしていると、身を起こした魔法少女が眉を顰めてそう尋ねてきた。

 

「なんでって?そんなの決まってるでしょ。君には色々と聞きたいことがあるんだから、こんなところで死んでもらっちゃ困るからだよ。」

 

私はそう答えると口元の血を拭い、立ち上がる。破裂した内臓の諸々は既に『契約』の効果で完治した。

 

「さてと、殺すんじゃなくて態々屋内に押し込んだってことは、そういうことだよね。」

 

ぐるりと回りを見渡す。すると案の定、見滝原中学校の中は果ての見えない広大な空間が広がっていた。すべての教室がガラス張りになっているせいで、デンジ君たちがホテル8階に閉じ込められていた時みたいな閉塞感は無いけれど、気の遠くなるほどに無限に広がる空間というのもなかなかに怖いと感じるね。

まあそんなことよりも、これで確定した。あの魔女の固有魔法は『永遠の具現化』だ。つまり、【永遠の悪魔】とほぼ同じ力を持っている。私たちは魔女の胃の中に放り込まれた状態であり、正攻法で魔女を倒す手段は私たちの手元には存在しない。

 

じゃあ私たちは魔女に負けて死ぬしかないのかって?いいや、そんなことは無い。

 

「【暴君の領地(タイランツテリトリー)】……現時点において、ここは私の掌握する空間であり、ここにある物はすべて私の所有物である。」

 

私のオリジナル技【暴君の領地(タイランツテリトリー)】は、さっき宣言した通りに自身に暗示をかけ、『支配』の力を無理矢理空間に作用させる技だ。『支配』の力は「自身より程度が低いと認識した者を操る能力」だけど、私はその効果を”物”や”空間”にまで引き延ばすことに成功した。だって支配できるものなんて、なにも人に限った話じゃないんだからね。私は自分の能力に対して解釈を広げた結果、このオリジナル技を習得するに至ったわけだ。

まあ、習得に至った経緯は先生との訓練で「これはガチで死ぬ!」ってなるまで追い詰められた末の習得って感じだから、あんまりいい思い出という訳でもないんだね~……。

 

さて、空間の掌握は無事に成功したけれど、かなり限定的な効果に狭まってしまった。本当ならこの校舎全体を掌握して魔女から奪い返したかったんだけど、さすがに「永遠」と続く空間を自分の物にするっていうのはイメージが付かなかった。この校舎は未だ魔女の能力の支配下にあり、【暴君の領地(タイランツテリトリー)】の効果が発揮できるのは私を基点にした約3m範囲内だけ。つまり自分にバフを盛ることしかできないってわけだ。

 

(ま、それができれば十分だよね。デンジ君が見せてくれた”攻略法”に倣うなら、これだけで十分に条件を満たしているんだから。)

 

つまり、正攻法でダメなら、ごり押しで攻略すればいいだけの話ってことだ!

 

「お~い!こっちは準備万端だよ~!襲ってくるなら早くしなよ~!さもないと~____

 

 

___君の胃袋突き破っちゃうよッー!!」

 

その宣言と共に、私はぎゅっと固く握りしめた拳をピカピカに磨かれた校舎の床に落とした。

 

その瞬間、ドゴンッ!!と床に大きなクレーターが出来上がり、パリンッとガラスの割れるような音が響いた。もしやと思い拳をどけてみると、クレーターの罅から辺りに充満していた魔女の魔力が吸い込まれて行っている。いや、これは外に流れ出しているのかな?

 

(なーるほど、この校舎全体が魔女の結界に作り替えられているってわけか。つまり、校舎を破壊すれば結界が崩れて外に出られるってわけね。さすがに永遠の悪魔のほどの厄介さは無いってことか。)

 

そんな風に魔女の性質について考えていると、私が作った結界の罅があっという間に修復された。そこから脱出されると思って、急いで直したのかな?

 

「慌てなくても大丈夫だよ。私はここから逃げないから。」

 

次の瞬間、学校の天井から伸びてきた肉塊に向けて、カウンターの裏拳をぶつけた。私の拳が当たった肉塊は水風船のように弾け、教室を覆うガラスの壁に大きな赤い花が咲いた。

 

「お姉さんと、気が済むまで殴り合おっか♪」

 

両手を合わせてポキリと指を鳴らし、こちらを覗いているだろう魔女へと微笑みかけた。

 

 

 

 

 

 

 

<佐倉杏子>

 

「お姉さんと、気が済むまで殴り合おうか♪」

 

そう言って人好きのする笑みを浮かべたマキマだったが、その体から発せられる威圧感はさっきまでよりも数倍強くなっていた。まるで「笑顔」という名の武器を手にした怪物がそこに立っているかのようだった。

『アレに近づいちゃダメだ』『関わるのも絶対にダメだ』そんな警告があたしの頭の中で五月蠅く響いている。だけど、それよりも強い困惑があたしの頭の中を埋め尽くしていた。

 

(なんで、魔女とマキマが戦っているんだ?)

 

あたしがキュゥべえから聞いた情報は、マキマは複数体の魔女を同時に操る力を持っていること。そして、マキマはその力を使って日本全国に根を張り巡らせいて、さらにマキマ自身は明らかに普通の人間ではないということ。

こんな継ぎ接ぎの情報だけでマキマの正体やら目的やらを特定しようなんて、名探偵ぐらいにしかできない芸当だろうけど、吐き気のするような不気味な魔力を纏うマキマを見たら、どうしても人間の味方だとは考えられなかった。だから、マキマは魔女を操って何か良からぬことを企んでいるんじゃないかと勝手に思いこんでいた。

 

(だけど……そうだ。それはあたしが勝手に思い込んでいただけだ。本当は全部違くて、見滝原の街をめちゃくちゃにしたのはマキマじゃないんじゃないか?)

 

もしそうだとしたら、あたしは自分の勝手な妄想で暴走して、そして返り討ちにされただけのバカじゃないか。

 

ふと、あたしの前に立っているマキマの背中を静かに見上げる。

もう、あたしにはマキマのことがよくわからなくなってきていた。確かに恐ろしい奴ではあるけど、さっきは血を吐くような傷を負いながらもあたしを身を挺して守ってくれたし、今もあたしを背に庇って魔女と対峙している。

……分かっている。マキマは、あたしからキュゥべえのことについて情報を抜き取るためにあたしを守り、生かしているんだって。

 

だけど、なんでか知らないけど、あたしに向けられたマキマの背中が、とても真面目で優しかった親父の背中と重なって見えた気がした。

 

(……何を考えてんだ、あたしは。たった一回助けられただけなのに。それも、あたしを生かして情報を聞き出すために必要なことだったってだけなのに。)

 

マキマは魔女から他人を庇えるくらいのお人好しな奴なのか、街を魔女の力でめちゃくちゃにするような悪い奴なのか。

あたしの推測は間違いだったのか、それとも正解だったのか。

”今”のあたしじゃ、いくら考えても答えは見つけられなさそうだ。

 

(ハハ……もしかしたら、あたしは既にマキマの『支配』の力とやらに身も心も操られてしまっているのかもしれないな。あたしが、教会の信者たちに親父の話を聞くように洗脳したみたいに…………。)

 

久しぶりに思い出してしまったせいか、過去の思い出が蓋をした記憶の中から噴水のように湧き出てきた。一つ一つの思い出が脳裏をよぎる度に、心臓がキュッと締め付けられる。

それが苦しくて、どうしようもなく嫌で、頭を振って全部振り落とそうとした時だった。

 

ドッパアァァァァアンッ!!!!

 

鼓膜が破裂しそうなほどの轟音が、すぐ近くで響いた。

 

思わずハッとなって顔を上げると、そこには全身を赤く染めたマキマが立っていた。ギュッと固めた拳を振りぬいた態勢で立つマキマ。その視線の先には、爆弾で吹き飛ばされたかのように肉を大きく抉られた魔女の姿があった。

 

(一体、いつの間に魔女があそこに!?いや、この魔力の流れる感じ……まさか、魔女はこの学校の中みたいな景色の結界そのものなのか!?)

 

そんな、自分自身を結界として人間を閉じ込める魔女なんて聞いたことが無い。だけど、マキマがその魔女に一撃を入れたのを見るに、マキマはこの魔女とその結界の性質に気づいていたのか?それとも、初めから知っていたのか?

 

(ああ、クソッ!あたしにはアンタが何にも分かんねーよ!)

 

混乱してきた頭を抱え、あたしはマキマの背中を睨んだ。

 

その次の瞬間、マキマの姿が掻き消えた。

 

「へ?」

 

___「一体どこに行ったんだ?」

そんな疑問の声は、連続した破裂音によって遮られた。

 

ドパパパパパパパンッ!!!

 

「うわっ!?」

 

耳元で水を全力で叩いたみたいな大きな音が響き、反射的に両手で耳を覆った。その間にも心臓の跳ねるような破裂音は続き、恐る恐る目を開いて周囲を見渡した。

 

そして、目に飛び込んできた光景に、あたしは思わず絶句した。

 

学校の校舎内の風景は見る影もなくなり、僅かに残された床の断片やガラス片を張り付けたような赤いピンク色の肉の壁があたしたちを取り囲んでいた。

だけど、まるで本当に内臓の中みたいな空間は、次々と弾ける鮮烈な赤色に浸食され、恐怖で震えていた。

獲物であるあたしたちを自分の狩場に放り込み、圧倒的有利な立場であったはずの魔女。だけど肉の壁に浮かび上がるいくつもの目や口は、全てが恐怖で震えあがり、口々に悲鳴を漏らしていた。

 

絶望をまき散らす魔女。そんな存在を心の底から恐れさせているのは、この場でただ一人。

 

瞬間移動のような速さで位置を変え、金剛石のように固く握りしめた拳を肉の壁に叩き込み、砲弾が直撃したみたいな破壊音と共に肉の壁を吹き飛ばす。

そんな破壊の嵐を生み出しているのは、赤い髪を靡かせ、螺旋状の奇妙な瞳を瞬かせる、魔女を支配する力を持った謎の女_マキマ。

 

そいつは今、最初に対峙した時の冷酷そうなイメージとは似ても似つかないような絶叫を上げ、拳を振り回していた。

 

「あっはははははっはははは!!!!」

 

狭い空間に反響するのは、腹を抱えて笑っているみたいな大爆笑だった。マキマはその顔を喜色に歪め、拳を肉の壁に何度も叩きつけていた。

 

(な、なんで笑ってんだ、コイツ!?)

 

それはもうゾッとした。この状況でなんでこいつは笑っていて、なんで笑いながら拳を振り回しているんだって。

そんでもって、なんでそんなめちゃくちゃな攻撃が魔女に通じているんだよ!?魔女が涙目になりながら必死にマキマに反撃してるけど、その反撃すらカウンターで返されて、魔女はもう壁と同化したサンドバックと化していた。

 

「あっははははは!!きんもちいぃぃいい!!めちゃくちゃ鉄臭いけど水遊びしてるみたぁぁあい!!」

「や、ヤバい。完全にイカれてやがる……。」

「ん?なにドン引きしてるのかな、君は?私は至って真面目にこの魔女の攻略法を実践している最中だよ?」

「いやどこがだよ!?」

「どうやら君は知らないみたいだね。魔女が真に恐れるのは勇気のあるヤツでも強いヤツでもない。頭のネジがぶっ飛んでいるヤツだよ!!ちなみにこれは私の先生の受け売りだけど!」

「いや知らねーよ!?」

 

「そりゃそうだ!!」と笑いながら、マキマはまた魔女を殴るのを再開した。その姿は一見ふざけているように見えるけれど、魔法少女であるあたしの目をもってしても目で追うのがやっとってくらいの速さで魔女を攻撃し続けている。そんな狂気的に笑いながら肉を抉ってくるマキマを恐れたのか、魔女の攻撃が段々と目に見えて弱くなり、マキマから距離を取ろうと逃げ腰になっている。それはつまり、マジでマキマの攻略と言い張るイカれた戦法が魔女に対して効果的だったことを示す何よりの証拠だった。

 

徐々にあたし達から距離を離して行く魔女。結界内に漂う瘴気や魔力の気配も薄れていっているし、もしかしたら魔女はこのまま逃げるつもりなのかもしれない。

だけど、マキマは魔女を逃がすつもりがないのか、離れていく魔女をマキマは拳を振り上げて追いかけた。

 

「え?あれ!?まさかもう逃げちゃうの!?まだ永久機関完成してないしノーベル賞も取ってないのに!?」

「アンタはさっきから何を言ってんだ!?」

 

あたしと殺し合っていた時の不穏さはどこに行ったんだ?魔女を追いかけながら奇声を上げるマキマに、まるでさっきとは()()かのような印象を受けた。これがマキマの素の表情なのか?

 

まあそれはさておき、この様子ならこの戦いはマキマが勝って終わりそうだ。徐々に輪郭の薄くなっていく結界の景色を眺めながら、あたしはマキマの勝ちを確信した。

 

その時、ふと違和感を感じた。

 

魔女は確かにマキマから逃げ出そうとしているけれど、逃げ出すまでの判断があまりに早い。確かにマキマの放っている濃密な魔力の気配や繰り出される暴力の嵐を叩きつけられたら、誰であろうと逃げ出したくなると思う。だから、普通は臆病な性質の魔女がマキマから逃げ出そうとするのも理解できる。

だけど、マキマが異様な気配を放っているのは、他の逃げ帰っていった魔女と同じように、戦う前に真っ先に気づけたはずだ。その上でこの魔女は、狩場でもあり弱点でもある自身の身体で作った結界内にマキマとあたしを押しこみ、360度全方位からの猛攻を仕掛けた。

そこから察せられるのは、魔女はマキマという脅威を目の前にしても足を止められなかった理由があるということ。

 

(進んだ先に強敵がいると分かっていても引き返せない状況…………例えば、コイツ(魔女)()()()()に攻撃されて逃げてきた、とか?——ッ!)

 

その時、すぐ後ろで濃い魔力の気配が渦巻いているのを感じ取った。振り返ると、そこには鋭い爪の生えたいくつもの手が重なり合い、大きなドリルのような何かが形作られていた。それはギリギリと弦を引き絞られた弓みたいに力を溜めていて、その矢先はマキマの無防備な背中へ___

 

「マキマァ!!後ろだぁ!!」

 

魔女の狙いが分かった瞬間、あたしは叫んでいた。さっきまで敵として戦っていたはずの、化け物と罵ったあいつに危険を知らせるために。

 

その瞬間、あたしの警告の声と同じタイミングで限界まで力を溜めた魔女の攻撃が放たれた。それは突風であたしを弾き飛ばしながらマキマへとものすごいスピードで襲い掛かる。

だが、あたしの呼びかけに気づいたマキマは既に振り返っていて、魔女の不意打ちを狙った攻撃に合わせるように拳を大きく振りかぶっていた。

 

そうして、マキマの渾身のカウンターが魔女の奇襲を打ち破り、魔女の無駄な抵抗は失敗に終わった___

 

 

___そうなるはずだった。

 

 

 

 

マキマが拳を振りかぶり、魔女の奇襲に合わせて拳を突き出した。

 

だけど、カウンターの拳が最高速度に達する前に、マキマが目を大きく見開き、時間が止まったようにピタリと動きを止めた。

 

それが大きな隙となり、そして、____

 

 

 

 

グシャアッ!!!

 

 

 

 

マキマは、腰から上を丸ごと消し飛ばされた。

 

 

 

 

 

 

__

_____

__________

 

<マキマ>

 

みんなと結んだ『契約』、その繋がり。悪魔である私には、それが手に取るように感じられる。

 

それは時間を追うごとに、ぷつり、ぷつりと切れていく。

 

ある程度は受け入れた。魔女を相手に戦う以上、死は常にみんなの背中に付き纏うから。

 

ある程度は我慢した。そうしてみんなが死んでいったのは、私の力が及ばなかったせいだと分かっていたから。

 

ある程度は容認した。『この世界から魔女を無くす』その目標のためなら、みんなの犠牲は仕方のないモノだと思ったし、ちょっと()が減った程度じゃ目標への道筋に問題は無かったから。

 

 

だけど、あの子との『契約』が切れた瞬間、頭の中が真っ白になった。

そして、現実を否定するように、子供が駄々をこねるように、頭の中でいくつもの「嫌だ」が木霊した。

 

その時だけ、私は何も考えられなくなった。魔女の奇襲にカウンターを当てないと自分が死んじゃうことなんて、すっぽりと抜け落ちていた。

 

止まってしまった拳。その代わりのように、私の口からあの子の名前がするりと零れ落ちた。

 

「姫野ちゃ__」

 

 

グシャアッ!!!

 

 

私の意識は、そのまま、後悔と共に、闇の中に、沈んで、逝った。

 

 

__________

_____

__

 

 

 

 

少し離れた所に、ドシャッとマキマの身体が落ちた。いや、身体と言っても、そこにあったのは赤黒い断面を晒した下半身だけだった。こっちを向いて崩れ落ちたマキマの腹から、倒れた衝撃でデロリと内臓が零れ出た。

 

「うっ、おえっ……。」

 

口の中に酸っぱい味が広がり、咄嗟に手で口を押えて喉をせり上がってきたモノをなんとか飲み込んだ。これでも下手を打って魔女に殺された魔法少女は見たことがあるが、こんなにも惨い死にざまを見るのは初めてだった。

 

そうして生理的な苦痛に苛まれていると、ふと視界に影が差した。頭上を見上げれば、無数の醜悪な笑みを浮かべた魔女の顔があたしを取り囲んでいた。

 

(クソがッ、魔女風情が、あたしを笑ってんじゃねぇ!)

 

あたしは槍を杖代わりに立ち上がると、ゲラゲラと喧しく笑う魔女に槍の穂先を向ける。

あの超強かったマキマを倒せたからか、ビビり散らかしていた魔女は一転してクソガキみたいに調子に乗っているらしい。いつも通りなら、その隙を突いて倒すなり逃げ出すなりするところだけど、マキマとの戦いでそれなりにボロボロになってしまったあたしには、このデカい魔女から逃げることはできそうにない。

 

「ちくしょうっ、こんな所で、死ねるかよ!」

 

あたしは槍を構え、襲い掛かって来た肉の塊を貫く。案外スルリと通った刃はそのまま肉塊を両断した。だが、切り裂かれた肉塊はそのままあたしの槍を包み込むようにして肉を融合し、得物をガッチリと固定されてしまった。

「しまった」と思った時には遅く、前に引っ張られてつんのめった先には、さっきマキマを消し飛ばしたあの肉の触手が今まさに放たれようとしていた。

 

(あ、死んだ。)

 

シンプルにそう思った。逆にそれ以外が考えられなかった。視界がスローモーションをかけられたみたいにゆっくりになって、ナイフみたいに鋭く尖った先っぽがじわじわと迫ってくる。

 

___どうにもならない。

 

___詰み。

 

___あたしは、ここで終わる。

 

そんな諦めの感情に吞まれ、見えていた世界は黒い影に覆われた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「まったく、世話の焼ける()だね。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

死を前にして心の奥底に縮こまっていた意識が浮かび上がる。

ボンヤリとした意識の中で、聞き覚えのある声が耳に届いた。

 

(…………?この、声は……?)

 

いつの間にか閉じていた重い瞼を開いて、声の主を探す。

そして、そこに立っている人影を見つけた。だけど、目の前の光景があまりにあり得なさ過ぎて理解が遅れ、3回くらい瞬きをしてやっとその人物が誰なのかを理解した。

 

だけど、やっぱりありえねぇ。そいつは、アンタは、()()()()()()()()()()()()はずだ。

 

(なのに、なんで生きてるんだよ!?___マキマ!?)

 

そこにいたのは、魔女に上半身を消し飛ばされたはずの女__魔女を操る女、マキマだった。

だけど、あり得ない。マキマは死んだ。間違いなく死んだ。あたしはその光景を瞬きせずにちゃんと見たんだ。

 

(それなのに、一体どうなってやがる!?)

 

記憶の中の事実と目の前の現実が噛み合わず、あたしはその場で呆然としてしまう。

だけど、マキマの生存に驚いていたのはあたしだけじゃなかった。魔女はマキマを見つけると悲鳴とも怒号ともとれるような絶叫を上げてマキマに四方八方から襲い掛かった。

それに対してマキマは拳を構えるのかと思ったが、なぜかマキマは表情一つ変えずに魔女の攻撃を静かに見つめていた。

そして____

 

 

「これは命令です。今すぐに自害しなさい。」

 

 

マキマの心の奥深くに透き通るような声が、結界内に落ちた。

 

今、マキマは何かをした。だけど、何をしたのかまるで分らなかった。ただ、マキマをもう一度殺そうとしていた魔女がピタリと動きを止め、次の瞬間にはボロボロと形が崩れていくのを見て、何が起こったのかだけを悟った。

 

カランッと、這いつくばったあたしの目の前に何かが落ちた。

それは、魔女の卵であるグリーフシードだった。それが何か強い力に握り潰されたみたいにぺしゃんこになっていた。

 

「まさか、魔女が、自分でグリーフシードを?」

 

粉々にされたグリーフシードはそのまま、こびり付いていた血や肉片と一緒に魔力の残滓となって空気中に溶けていった。

 

魔女の結界が崩れ、眩しい光があたしの目を焼いた。

咄嗟に目を庇いながら顔を上げると、崩落した学校の校舎の入り口と、そこから見える見滝原の街、あと少しで沈んでしまいそうな夕日が見えた。

だけど、すぐそこにいたはずのマキマの姿が見えない。

 

(どこに行ったんだ?)

 

起き上がった周りを見渡すと、マキマは学校のさらに奥へと歩いていこうとしていた。慌てて追いかけようとして立ち上がりかけた瞬間、突然強い眩暈があたしを襲った。

 

(なん、だ、これ……体に、力が……。)

 

再びうつ伏せに倒れたあたしは、闇の中に消えていくマキマの背中を見つめ______

 

 

そこから先の記憶はぱったりと途絶えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<第三者視点>

 

「ふぅん、やっぱりソウルジェムを引き離すと、魔法少女の肉体は機能を停止するんだね。」

 

照明の消えた学校の階段をのんびりと昇りながら、マキマは手の中にある真紅の宝石を弄んでいた。

それは佐倉杏子の胸元にあった彼女のソウルジェム。今、ソウルジェムの持ち主である杏子は、マキマにソウルジェムを取られて引き離されてしまったことで、肉体は生命活動を止めてしまっていた。

 

「人間の魂を物質化させるなんて、すごい技術だね。欲しいとは思わないけど、興味はそそられるね。」

 

マキマはそう言って小さく微笑むと、ハッとした様子で顔を上げた。

 

「そう言えば、ソウルジェムを離されて動かなくなった身体って、脈も呼吸も止まるんだっけ。長時間放置しておくと腐敗したりするのかな?一応、脈と呼吸だけはさせておこうか。」

 

マキマはそう呟くと、人差し指を虚空に振るった。マキマにしか見えない『支配の鎖』が床や壁を素通りしていき、1階で倒れている杏子へと繫がった。すると、完全に停止していた彼女の心臓が再びドクンと鼓動を刻み、肺が機械的なリズムで呼吸を再開した。しかし当然ながら、魂の無い杏子の瞳は変わらず虚ろなままだった。

 

「気づけて良かった。まだ聞きたいことは残ってるし、先に死なれちゃ困るもんね。それに、”あの子”が目を覚ました時に彼女が死んでいたら、きっと泣いちゃうかもしれないしね。」

 

マキマはそのままブツブツと独り言を呟くと、杏子のソウルジェムを懐にしまい、見えてきた扉を開け放った。

外に出た場所は、見滝原中学校の屋上だった。普段なら生徒たちがお昼ご飯を食べに集まったり、日向ぼっこをしたりするのに利用されるそこは、地の果てに沈みかけている夕日によってかろうじて視界が保たれているような、そんな不気味な暗がりの中に沈んでいた。

その中央へと歩み出たマキマ。彼女は屋上から一望できる見滝原の街を、その螺旋状の()()()()瞳で眺めた。

 

「改めて、すごいことになってるね。まるで()()()()()()()の景色を眺めているみたい。すっかりこっちの生活に慣れちゃってたからかな。まさに大惨事って感じがするね。」

 

マキマはまた、自分しかいない状態で独り言を呟いた。だが、人間達の悲鳴が木霊し焼け落ちていく街をボーっと眺める目とは違い、呟かれる言葉には確かな温もりがあった。

 

___まるで、すぐ隣に仲の良い妹がいるかのように。

 

「さて、そろそろお片付けしないとね。」

 

マキマは切り替えるように手を叩いてそう言うと、懐から一つの”鉄の塊”を取り出した。

否、それは黒光りする一丁の拳銃だった。日常から大きく浮き出たソレを使い慣れた道具のように握り、そのまま銃口を天に掲げた。

 

 

その瞬間、天から巨大な何かが現れた。

 

 

それは上空から降りてきた大きな弾帯のカーテンに包まれながら、マキマの頭上にゆっくりと降下してくる。

そして、あまりにも重圧で物騒なカーテンを広げ、一体の魔女がその全貌を顕わにした。

 

 

ソレは、歴史上で最も多くの軍人を殺害した最恐の魔女。

 

 

 

【銃の魔女】

 

 

 

「______。」

 

降臨した銃の魔女は尋常ではない瘴気と魔力を解放し、見滝原の街を睥睨している。そんな銃の魔女の出現を確認したマキマもまた同じように見滝原の街を見下ろし、手にした銃で街の方へと狙いを定めた。

 

「能力発動。周囲およそ2000メートル範囲内の全ての魔女の頭部を狙撃。」

 

マキマの口から、命令(死刑宣告)が下された。

 

銃の魔女が動き、全身から生えた銃の銃口を見滝原の街へと向ける。

狙う先は言わずもがな、先程マキマに指示された目標。

 

 

 

見滝原の街に、死の宣告が鳴り響いた。

 

 

 

ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドッ!!!!!!!!!!!!!

マキマを恐れて逃げ出した魔女達の頭部に大きな風穴が空いた。

ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドッ!!!!!!!!!!!!!

「能力発動。周囲およそ5000メートル範囲内の全ての魔女の頭部を狙撃。」

ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドッ!!!!!!!!!!!!!

結界内にいた蛇の魔女の頭部が弾け飛んだ。

ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド百々ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドッ!!!!!!!!!!!!!

「能力発動。周囲およそ10000メートル範囲内の全ての魔女の胸部を狙撃。」

ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド

ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

街で人間達を襲っていた魔女達の胸が消し飛んだ。

ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド

ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド

ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド

ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドド

ドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドッ!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!

 

 

………………。

 

……………………。

 

…………………………。

 

 

銃声が止んだ。

 

悲鳴が止んだ。

 

喧騒も、混乱も全てが止んだ。

 

見滝原の街を荒らしていた全ての魔女が姿を消し、あれほど騒がしかった魔女の狂躁は、夜の闇に響いた銃声によって一瞬にして掻き消された。

全てが終わったのを確認し、マキマは満足そうに頷くと、街の方に向けていた拳銃を懐にしまい込んだ。それと連動するかのように、仕事を終えた銃の魔女も藍色の空の中に溶けて消えた。

 

「お片付けは終わったね。あとは生存者の捜索とか、街の復興作業とか、上の人達への報告とか、公安対魔特異課としてやらないといけないことはまだまだ残ってるけど…………。」

 

マキマはそこまで言うと、目を閉じて日の沈んだ空を仰いだ。それから少しして、口元に作り物じみた笑みを浮かべて頷いた。

 

「まだ起きる気配は無いし、今は休ませてあげよっか。

 

 

___おやすみなさい、私の可愛い”妹”。後のことは、あなたの頼れるお姉ちゃんに任せなさい。」

 

 

マキマはこの場にいない誰かに向けてそう告げると、踵を返して校舎の中へと戻ろうとした。

 

 

 

 

 

 

 

「ちょっと待ってよ、マキマ先生。」

 

 

 

 

 

しかし、この場を去ろうとした彼女の足は何者かによって呼び止められた。

背中越しに名を呼ばれたマキマはゆっくりと後ろを振り返った。するとそこには、見慣れたはずの顔で見慣れない格好をした生徒がいた。

 

短い青い髪に、清い意志を宿した水色の瞳。

僅かに赤い染みの残る白いマントの下には、剣士を模したようなデザインの衣装が覗いて見え、一振りのレイピアを腰に差していた。

 

突如として現れたその者は魔法少女だった。それも、杏子のように止まり街からやって来た見知らぬ子供ではなく___

 

「君は、美樹さやかちゃん?」

「こんばんは、先生。」

 

美樹さやか。鹿目まどかのクラスメイトにして親友でもあるただの人間の少女だった子供。

しかし先述した通り、彼女は既に魔法少女となってしまっていた。

 

「さやかちゃん、こんな時間に、こんなところで何を__」

「先生…………先生には、謝らないといけないことがあるし、色々と聞きたいこともあった。だけど…………ううん、やっぱりまどろっこしいのは性に合わないや。」

 

さやかはそう言って緩く頭を振ると、マキマへ向かって歩み寄っていく。

そして、一歩一歩を重く踏みしめながら距離を間合いを詰めた彼女は、腰のレイピアを抜いてマキマの首筋に突き付けた。

 

「単刀直入に聞くけど、____

 

 

____アンタ、一体()

 

 

さやかから突き付けられた想定外の言葉。それを耳にしたマキマは大きく目を見開き、そして興味深そうに笑みを浮かべた。

 

「へぇ……思ったより鋭いんだね。」

「あたしが鋭いっていうか、アンタこそ真面目に騙そうっている気があるの?普段のマキマ先生と比べたら、一目瞭然だよ。」

「……そっか。よく見てるんだね、あの子のこと。それくらいの観察眼があるなら、もっと賢明な判断ができたと思うんだけど。」

「…………誰とも知らないアンタに言われる筋合いは無いよ。」

 

さやかは苦虫を噛み潰したように顔を顰め、レイピアを持つ手に力が入った。

その様子を静かに見下ろしていたマキマは、スッと両手を上に上げた。

 

「分かった。君には全部バレてそうだし、情報共有も含めてじっくり話そうか。ついて来て。」

「どこに行くつもり?」

「当然、特異課と合流しに行くのだよ。」

「アンタ、特異課の人だったの?なんでマキマ先生に変装してるの?」

「変装なんかしてないよ。」

「は?何言って……って、ちょっと待ってよ!」

 

振り返ることもせずに先を行くマキマを追いかけるため、さやかはレイピアを腰に差して彼女の後を追った。

 

 

 

こうして、見滝原の街を襲った大規模魔女災害は、多くの犠牲を出しながらも幕を閉じた。

 

しかし、事態はまだ何も解決していない。

今まで闇の奥底で眠っていた秘密が表に現れ、この希望と絶望が乱雑に入り混じった世界に更なる混沌が広がっていくこととなる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

見滝原市から遠く離れた、別の街にあるセーフハウス。

そこに据え付けられたテレビには、火の海と化した見滝原の街の一部が映像と共に報道されていた。

そのテレビの前に一人の男が静かに立っていた。右手には使い古されたスキットルが握られており、微かに酒の臭いが漏れ出ている。

そんな男の背後にスーツを着た若い男性が現れた。

 

「総員、準備が整いました。いつでも出発できます。」

「よし。すぐに出るぞ。」

「はっ!」

 

男性は男に対して敬礼すると、その場から立ち去った。それでも男は一度も振り返ることはなく、スキットルを持ち上げてその中身を口にした。

 

「……ふぅ。さて、あの馬鹿にお灸を据えに行くか。」

 

男はポツリとそう呟くと、セーフハウスを後にしたのだった。




ここまで読んでくださり、ありがとうございました。
め、めっちゃ書きました。「3週間ぶりに投稿する量じゃないだろ!」ってくらい書いた気がします。
書いてる途中で2話分に分けた方が良いかな…って思ったりもしたんですが、まとめた方が良い気がしたので纏めました。
さて、退場してしまったキャラはいますが、ようやく登場する新キャラも一気に出てくる予定です。伏線の貼り方とかまだまだ未熟ですし、割と行き当たりばったりな書き方してますが、読んでくれている皆さんの期待に応えられるようなストーリーにしたいと思います。

とりあえず、書きたかった部分に入れたって感じですね。また投稿は空くかもしれませんが、今後ともよろしくお願いいたします。

<最後に一言>
銃の悪魔の初登場シーンを参考にしたけど、文字だけであの蹂躙を表現って難しいなぁ。やっぱり漫画はすごいなぁ(二言目)。

オリ主マキマがオリジナル技を使うのってアリ?

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