スランプは治ってないので、あの、駄文です…
「さて…そろそろかな…」
建物の上に立ち、町を見下ろす。本来なら注目を集めたり、何をしてるんだと非難されるかもしれないが心配ご無用、ちゃんと忍術を使って気配を消している。
監視カメラにも映像で残らないし、仮に常人が見上げても俺を見つけることはできないだろう。
待っていると、一高の制服を着た男子生徒と、それを後ろから尾行する一科女子三人が見えた。
…あまりにもバレバレな尾行だな。まあ、素人も素人だから仕方ないところもあるんだろうが…
しばらく眺めていると、例の一高男子が路地裏へと消えていく。勿論、探偵気分の女子たちは追うつもりらしい。本当はこのまま行かせて原作通りの展開にしたいが…友人として実際に接した後だと、流石に見過ごせないな。
「おーい、そこのお嬢さんたち。ちょっとそこらでお茶しな~い?」
いや、我ながらどういう声の掛け方なんだよとは思うが、彼女たちをここから離せればそれで解決なのだ。
何せ奴らの根城の情報は既に抑えてあるから、彼女たちの行動は実質的に無意味ということになるわけで…要らぬ危険に身を投げられても困る。
「…っえ!?た、たたた大河さん!?」
「…?この人誰?一高生なのは分かるけど」
「この人は1-Eの篠川大河さん。ほのかの好きな人だよ」
「えっ…!?…へー、そうなんだ~」ニヤニヤ
「な、なによ二人とも…!」
「…あの~、盛り上がってるところ悪いんだけど、お返事は?」
女三人寄ればかしましいとはまさにこのこと。先程まで静かに尾行していたはずの三人がいきなりはしゃぎだした。これは予想外だが、これで尾行の事を忘れてくれれば…
「ってそうだ!ごめんえっと、篠川君!私たち今ちょっと忙しくて!」
「え、暇そうに見えたから声かけたんだけどな」
嘘である。男子生徒の尾行に忙しいのは知っている。だからこそ話しかけ、あわよくば共に活動することで彼女たちの意識を尾行から逸らせればと思っていたのだが…目の前の少女、明智英美は名乗ることすら忘れているほど熱中しているらしい。
しかし、すぐにハッとした表情をしたかと思うと、他二人にこそこそ話始めた。そして俺に向き直り、いい笑顔を向けて来た。
「ね、篠川君!私たちとデートしない?」
「…え、俺が今お誘いしましたよね?」
「君が誘ったのはお茶でしょ?それはつまりどこかでゆっくりって事じゃない?私たちが言ってるのはそうじゃなくて、ちょっと付き合ってほしいことがあるって事!」
「…付き合ってほしいこと?それって何かな?」
「ヒ・ミ・ツ♪」
…完全に展開が読めてしまった。これ、付き合ってほしいことって尾行の事だ。うわ~、困る。
俺は彼女たちの行動は知らない体で近づいたわけなので、ここで「NO」と言うわけにはいかないじゃないか…
「…勿論だとも!いや~、こんな美少女たちとお出かけなんて楽しみだな~」
「大河さん…なんか嫌そうじゃないですか?」
あれ!?確かに間はあったけど『詐術』使ってまで誤魔化したのに、なんでほのかにバレてるんだ…!?
「あれあれ~?ナンパしてきたくせに女の子から誘われると嫌とか…何か裏を感じるなあ~?」
「大河さん、怪しい」
ほのかに引っ張られて雫とエイミィも俺を怪しみだした。おいおい、どうなってんだYO!?
まさか『詐術』に失敗したのだろうか…?と考えていたところ…
「…って、まずい!ほら篠川君こっち!」
「え?ってちょっと待って待って!」
「二人も早く!」
エイミィに唐突に腕を引っ張られてどこかの方向に連れていかれる。他の二人も続いている。
この方角…路地裏の方だな。ということは、エガリテ所属と思われる一高生徒が三人を罠に嵌めるために誘いだすタイミング…
流石にここは流れに任せて付いていくしかない。仮に一高生徒が俺の存在に気づいていた場合、相手が持ち出すのはアンティナイトばかりではないかもしれないからな…
「さ!こっちこっち!」
エイミィに手を引かれて路地裏へと入っていく。なんだからほのかがエイミィを羨まし気に見ていた気がするが気のせいだ。
こうなってはもう成り行きで敵地に入るしかないので、引かれるがままに歩き出し…
そして日陰に足を踏み入れた瞬間─
「シッ!」
エイミィの手から俺の手が、いや俺の姿そのものが掻き消える。彼女たちには見えていないだろうが、俺は三人に降り注いだ大量の銃弾を切り落とす。
動いているのかすら分からない三人。そう、俺は既に高速機動に入っている。
にもかかわらず、尚も降り注ぐ弾丸の雨。つまりこれは、相手も高速機動下で発砲を行っているという事になる。その弾丸─ほとんどが女子三人を狙ったものだったが─も完全に捌き切ったところ、奴らは俺の前に姿を現した。
数は四人。全員が黒ずくめの作業着と黒い帽子を被っていた。
「…『忍者』よ。我らの前に堂々と姿を見せるとは、よほどその幼子たちを気に入っていると見える」
「かつての因縁、ここで晴らさせてもらうぞ」
「貴様が殺した同胞に」
「貴様の死体を手向けてやろう」
「別々の口からペチャクチャ喋りやがって、どうせお前ら同じこと考えてるんだから一人で喋れや!」
俺はそう叫びつつ、目の前の四人組に向って飛び込んで─はいかない。
奴らの得物は銃、少しでも隙を見せればほのか達三人に発砲しかねない。先程は遠距離から放たれた弾丸だったから防げたが、流石に四人と戦いながら、彼女たちへの至近弾を完璧に防げる自信はない。
代わりに剣呑みの要領で隠し持っていた苦無を口から取り出し、構える。
相手は四人とも拳銃持ち。だが先ほど放たれた弾幕は、どう考えても通常の拳銃四丁から放たれたものではないので
だが、奴らも俺の動きの意味を正しく理解している。奴らは同一の意識の元動いているので、俺への煽り以降一言も発していないが、奴らの中で既に作戦会議は終わっているだろう。
…シノビガミにおいて、数は圧倒的な正義だった。なぜなら、ルール上基本的に一ラウンド(一ターンみたいなもの)に一回しか攻撃ができないからだ。
自分は一回しか攻撃できないのに、相手はこちらを複数回叩ける。六回攻撃を食らえば基本負けるシノビガミにおいて、複数を相手どるのはかなりの難易度があった。
だが…この世界はゲームの世界ではない。数を圧倒的な個が制するという事が普通にありうる世界だ。それ故に─
「…やっぱり、そう来るよな」
奴らは様子を伺いつつ散開し、俺を…具体的には、俺とほのか達三人を囲むようにして移動し始めた。
…先ほど、奴らが俺に対して恨み言を言っていた。それは俺がかつて、奴らが30人ほど乗った船を襲撃し、全員を殲滅した─という事件があった。何故俺がその船を襲撃したのか、そういった話はまた今度するが…
ともかく、こいつらにとって俺は圧倒的な個、単独はもちろん四人集まっても勝てるか分からない相手なわけだから…ま、人質を取るような動きは当然だ。
しかし、そう簡単にその狙いを通すわけにはいかないのだ。
「『
『霾天』。霧や土煙を用いて視界を遮る忍法である。俺の制服のズボンの裾からコロンと落ちた煙玉が、意志を持ったかのようにほのか達三人を囲む。反応が遅れた四人組は、すぐさま風を起こして霧を晴らそうとするが…
「─────!」
直後、彼らの耳に咆哮が襲い掛かる。『凶声』、相手を恐怖にすくませることができる忍法。これで四人組の動きが鈍る。
四人組はすぐに立ち直り、再度霧を払おうとする。今度は無事に払う事ができたが…彼らが見渡しても、ほのか達三人が居なくなっていた。
「よう、皆様方」
ほのか達三人を安全なところまで移動させて戻って来た俺の声を聴き、四人組が全く同じ動きで振り返る。さ、ここからが調理の始まりだ──
豆司波復活嬉しい