同情するならチャクラくれ   作:あしたま

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第一部
001. 卒業


  

ふとした瞬間、なんで俺はこんな事になっているんだろうと考えるのだが、いまだ答えは出ない。というよりこの先も出る事はないだろう。俺は有り得ない事を現在進行形で体験している。

 

いつも通りに起きてみれば赤ん坊となっており“うたたねヨフネ”と言う名前を付けられていた。転生したのだとと気付くのに時間はそうかからなかった。普通に忍者が存在しているのだ気づかない方がおかしい。

 

転生を果たした世界は忍者というキーワードで真っ先に思い浮かんだ世界、NARUTOの世界だった。こんな死亡フラグが乱立する所に来ることになるなら毎週立ち読みで済ますんじゃなく、その都度単行本買うんだったと後悔している。最終巻まで出たら大人買いしようと考えていたから、もう少し待ってくれたら良かったのに。

 

一応、最終話までは読んでいるが、最終決戦のあたりは話がよく分からなくなったので、何となくしか読んでいない。それに脇役なんて覚えているのかも怪しい。

 

ただ生まれたのが、うちは一族ではないのは助かった。まだ普通にうちは一族がいる事から、まだ原作前という事はは分かっているが、あんな死亡時期がはっきりしている一族で生き残れる自信はない。そこまで俺の神経は太くないんだ。

 

しかしそうは上手くいかないのが俺なんだ。後から分かったが、うたたね一族というのも中々に厄介事に巻き込まれる一族だったのだ。自分も最初はうたたね?なんだ原作にも出てきていない一般モブか、と思っていた。うちの婆様が上役をやっているのを知るまでは。

 

「おお、これがお前の孫か。お前に似とるのに、可愛いではないか。とうとうお前も婆じゃの!」

「誰がブスじゃ!婆じゃ!」

「おい、コハルやめろ。顔岩を掘り直さなきゃならん」

「ええい!ホムラ、止めてくれるな!」

 

火影に上役まで来て、なにやら騒いでいる時に気付かされた。婆様はお団子頭にかんざしを刺し、細い眼は鋭い眼光を放っていた。それは三代目火影・猿飛ヒルゼンの同期にして将来の相談役、うたたねコハル様だったのだ。

 

ダンゾウからは守ってもらえそうだが、確実に厄介ごとには巻き込まれるだろう。ちなみにうたたね一族は、木の葉の里では取り分け名門ってわけではないのだが、婆様の影響である程度知名度のある一族だ。ちなみに秘伝忍術も有している。

 

そんな隠れ里に生まれた者ならば、忍者となるのは宿命。両親は先の第二次忍界大戦で死去してしまっているが、生き残るために当然のように俺は忍になる道を歩もうとしていた。婆様もそれを望んだ、というよりも強制させられた。

 

そんなこんなで、ごく自然にアカデミーに入学したのだが、ここでようやく自分がいつ頃生まれたのかはっきりと把握できた。同級生にあのカカシやガイ、アスマといった主要メンバーがいたのだ。当初はあんな優秀な奴らでも、まだまだ子供だと思ってた俺は正直舐めていた。

 

アカデミーは基礎的な授業も行うが、あくまで目的は各生徒の適正を見るためのものなのだ。絶対的な集団学習ではなく、それぞれの進捗状況に合わせて、どんどんとレベルが上げられていく。数学だって、最終的には高校一年並みの知識が求められる。

 

それでもアカデミーの内容なら十分にこなせるが、あまり気は抜けない。ちなみにカカシは、予備知識無しで全科目で一番高いレベルにいる本当の天才だった。

 

それでもさすがに学業には余裕がある俺は、手裏剣術や体術に打ち込んだ。家に帰っても厳しくも厳しい、婆様との修行を行う。あれ?厳しいしかない。

 

婆様はあの綱手の怪力の師匠とのことで教えを請うにはもってこいなのだが、修行で疲れた孫を背負うのが面倒だとおもいっきり放り投げたり、倒れていたら髪を片手で掴まれ無理やり立たされたりする。それ以来、髪は短く切ってやった。

 

まあ、そんな厳しい修行のおかげか、身体強化の基本であるチャクラコントロールは上手くなっていて、アカデミー在学中に木登りや水面歩行はできるようになっている。

 

その結果分かったのは、どうやら俺には忍としての才能があるらしい。珍しく婆様が褒めた時は思わずオエっと言ってしまい、めっちゃ殴られたが。

 

だが俺は才能があっても、自分がそれほどの高いポテンシャルは秘めていないことを知ってしまった。

 

インターネットでよく見ていたNARUTOのオリ主なら、永久万華鏡写輪眼を覚醒して原作改変だ!うちは滅亡回避だ!と無双するんだろうけど俺にはそんな能力は無い。

 

それに同級生には天才忍者のカカシがいる。いくら第二次忍界大戦中とはいえ通常9歳で卒業のところを僅か5歳で卒業し、大戦が終結した六歳の時には中忍になりやがった。

 

才能よりもその覚悟が凄いよ、ってか怖いよ。父親のサクモさんが英雄とされているからか、早く自分も認められたいのだろう。

 

普通に考えればあの歳で中忍になって、最前線に出るなんて自殺行為としか思えない。忍界大戦の影響で五大国の統治が揺らいだ結果、国境付近では小国を巻き込んでの小競り合いが続いているのだ。

 

俺は二度目の人生、手の届く範囲の人は助けたいが、まずは焦らず死なないように鍛えてから卒業するつもりだ。

 

 

 

 

 

と考えていたら、あっという間にアカデミーへの入学から時が経ち九歳で卒業することになった。

 

で、うちの婆様と三代目が忍者学校の玄関前に迎えに来ていたのだが、他の保護者の方々を引き連れていた。しょうがないのかもしれないが、なんか嫌だ。

 

「ヒルゼンよ、不思議なものじゃな」

「ん?一体なにがじゃ」

「アスマはお前の息子。ヨフネはわしの孫」

「……何が言いたい」

「お前さんがビワコとさっさとくっつかないから、こんなことになるんじゃ。お互いずっと好きじゃったくせに。甲斐性なしめ、アスマが可哀想じゃ」

「ええい!お前は今だにそんな昔のことをぐちぐちと、孫が出来て老けたんじゃないか」

「やかましいわ。そんなことだとアスマまで婚期が遅れるぞ」

 

さらに二人はまた喧嘩をし始めた。しかも婆様怖いよ、預言者ですかあんた。アスマも父親そっくりな道を歩みますよ。

 

「アスマ。大人になっても中身は簡単には変わらないんだな」

「本当に恥ずかしいよ、お互い苦労するな」

 

アスマとはアカデミーで仲良くなった。親同士が知り合いということもあり、ともに遊ぶ、のではなく修行させられてきたのだ。

 

「そろそろ止めるか、みんな動けていないしな」

 

祖父母の人達はまたかと笑っているが、父兄達は顔を引きつらせてオロオロしていた。気分を重くしながら三代目と婆様の元へ向かう。

 

「おい、馬鹿二人いつまでやってる。さっさと見苦しい喧嘩は止めろ。歳とると話だけじゃなくて喧嘩までも長くなんのか?他の親達が動けないだろうが」

「だーれーがー糞婆じゃボケェ!」

 

喧嘩が止まったのは良いけど今度は俺が掴まってしまった。捕まるじゃない、掴まるだ。現にいまアイアンクローで絶賛俺の頭蓋骨がメロディーを奏でてるぅ。

 

「すびばぜん。っでかぞんなこどいっでない。ほんどぐるじぃのゆずじでくらはい。がっ!」

 

120%で謝ったら解放してくれた。

 

「ヨフネにアスマ!班割り発表されてるから遊んでないで行くぞ」

 

スキンヘッドで少し老け顔の少年が駆け寄ってくる。

 

「イビキ。どう見たら遊んでるように見えるんだよ!虐待の真っ最中ですよ。タスケテ!」

「いつも人を待たせるなと言っておろう!さっさと行かんかい!」

「酷い!誰のせいだ!」

 

婆様から解放され今しがた俺に声を掛けてきた、森乃イビキを抜いて俺は逃げ出した。

 

走りついた掲示板では顔の大半を包帯で覆い、目の位置に真新しい額当てをしている男の子と二人の女の子がいた。

 

「遅いぞ、ヨフネ」

「ごめんごめん、トンボ、シズネ、紅。婆様に頭掴まれてた」

 

男の子の方は飛竹トンボという感知タイプの忍びだ。小さいころに病で失明したらしいのだか引き換えに感知能力がズバ抜けたようで、まるで目が見えているかのように振る舞う。

 

二人の女の子の方は説明は要らないだろう。綱手様の一番弟子と未来のアスマの嫁だ。もげろアスマ。

 

元々はガイも同期だったのだが、ほぼ体術のみでカカシの後を追って飛び級していった。さすが珍獣。

 

「で、班編成はもう見た?」

「ちゃんとあんたが来るまで待ってたわよ」

「さすが紅!良い女!」

「ちょっと私はどうなんですか!?」

「黙れペチャパイ」

「あひぃ酷い」

 

いつも通りシズネをイジって落ち着く。いや可愛いんだよ?子供としてなら。むしろ9歳で色気を学びつつある紅が怖い。

 

「漫才はそのくらいにして、早く見ましょう?ドキドキが止まらない」

「トンボは相変わらず強面な風貌に反してビビりだな。なんだギャップ萌え狙ってんのか?あれですか、年上キラーですか?でもさすがにギャップありすぎて逆に引くから止めとけ」

「そこまで、言わなくても……」

 

あれだな思ってた以上にキャラ濃い世代だな。

 

「「「「「お前が言うな!!!」」」」」

 

おっと心の声が漏れてしまったようだ。

 

「おい、ヨフネふざけてないで、いい加減見ようぜ」

 

アスマの一言でようやく、見ることになったが……あまりにもこれは酷くないですか?

 

「アスマ、紅、イビキが一緒か。担当上忍は秋道チョウザさんだな」

 

アスマの班はどうやらバランスの良い攻撃班になったようだ。アスマとチョウザさんの前衛に武器を使うイビキに紅の幻術で支援って所か。

 

「俺、トンボ、シズネ、担当上忍は油女シビさん。って俺らの班はバランス悪くないっすか?!イジメだ!俺こき使われる!」

 

そうなのだ。なんだこれ。感知タイプのトンボ、医療忍者のシズネ、遠距離が得意な油女一族。感知できるとはいえ攻撃タイプの俺は盾役じゃん絶対に。一応支援タイプの班編成なんだろうけどこれは酷い。主に俺が。

 

「あ、オビトとリンはカカシと一緒みたい!しかも担当上忍は黄色い閃光のミナトさんだね」

 

シズネが原作チームを見つけたようだ。考えてみれば下忍2人プラス中忍と担当上忍という、新人が入るには変則的な組み合わせだな。

 

「ま、あいつも色々あったからな」

 

あいつの親父さんは木ノ葉の白い牙と恐れられた天才忍者はたけサクモさんなのだが、任務遂行よりも仲間の命を優先させたため、任務に失敗し里にも大きなダメージを与えてしまったのだ。

 

その結果、助けた仲間にまで中傷され、心も体も疲れ果て自ら命を断ってしまったらしい。この出来事の反動からか、あれほどマイペースだった奴が今ではルールに固執する性格になってしまって、今では他の班員とあまり上手くいってないらしい。

 

「とりあえず、それぞれ集合場所に移動しよ。終わったらみんな団子屋さんに集合ね!」

 

同期の班編成を確認した後、団子大好き紅が提案してくる。あいつの団子で乾杯って訳のわからないノリ誰か止めさせてくんないかな。

 

でも特に断る理由もないので、一応集まることにして、それぞれ担当上忍の元へ移動することになった。

 

 

 

「全員来たな。俺は油女シビ。好きな物は蟲、嫌いなのは無視されること。担当上忍は初めてだ、頼む。では、右から順に自己紹介をしてくれ」

 

集合場所に着いたが、座っている先生に気付かず待っていたのをまだ気にしているのかな?

 

「うたたねヨフネです。好きなのは睡眠、嫌いなのは睡眠の邪魔をするやつ。将来の夢は最高の嫁さんを見つけること!以上」

「あ、えっと飛竹トンボです。好きなのは友達、嫌いなのは感知できないもの。将来の目標は目が見えなくても一流の忍になれるって事を証明することです!」

「シズネです。趣味は綱手様の世話で、好きなモノは静かな日。あと、将来の夢は綱手様の様な医療忍者になりたいです。よろしくお願いします!」

 

俺たちの自己紹介の間も全く表情を変えないよ、この先生。どうも思った以上の真面目さんらしい。あれだシノの性格は遺伝だよ。

 

「始めに言っておく、戦争は終わっていない。何故なら今だに情勢は不安だからだ。よって下忍だからといって、お前らを甘えさせるようなことはないと思え」

 

先生の言葉でトンボとシズネの顔が強張る。

 

「お前らはすでに忍だ。よって、俺はお前らを一人の忍として扱う。ひょっとすると聞いている者もいるかもしれんが、下忍になるためには多くの場合サバイバル演習をして、それに合格する必要がある。……平和ならな。だがこのご時世、残念ながら人手も足りないため、行わない。普段の任務でチームワークを磨くことにする」

 

シズネは綱手様から、トンボも誰かから聞いていたのだろう、すんなり下忍になれると分かって俺たちは笑顔で顔を見合わせた。

 

「その代わり、今から任務を行う」

 

この人まぢか。シズネが悲鳴のような声を上げる。

 

「い、今からですか?」

「そうだ街中での任務だ。忍具は使わん。と言うよりこんな任務では使うな。行くぞ」

 

そう言って、一人歩き出す先生。残された俺たちは顔を見合わせた。

 

「あひぃ、紅に怒られる」

「初任務より、紅の心配なんだね」

 

トンボが呆れたようにシズネに尋ねていた。

 

「まあ、なんだかんだ言ってもやることは変わんないでしょ。それより早く追いかけないと、あの先生かなり影薄いから見つけられなくなるよ」

「ヨフネ君、それ絶対褒めてないよね?」

「多分、隠遁の達人なんだと思いますよ!」

「シズネちゃん、それ遠回しに認めてるよね?それより本当に早くしないと!ほら、さっさと行くぞ」

 

トンボが俺ら二人を急かして、先生を慌てて追いかけた。任務内容は定番の猫探し。小一時間で簡単に片がついたが休む間も無く二匹目の猫探し。結局三匹目の猫を捕まえ、解放されたのは日が沈む直前だった。

 

この国の人達、どんだけ猫逃がしてんだよ。ってかそもそも放し飼いにする動物だろうが。

 

「任務も片付いたし、今日はこれで解散とする。俺たちは索敵、斥候を目的としたチームだ、今後もこういった任務をこなしていく。明日は九時に火影邸前に集合だ。それでは解散」

「はい!」

 

 

 

俺の忍者としての人生が始まった。

  





三代目の息子、アスマですが四十二歳の時の子供らしい。
時代考えるとかなりの高齢出産ですよね。
ちなみにうたたね家はコハルが二十歳の時に息子を、息子は二十二歳の時にヨフネが産まれてます。

同じ歳の三代目とコハルに同じ歳の息子と孫がいるという状況になってます。

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