同情するならチャクラくれ   作:あしたま

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023. 特訓

  

本来であれば家庭訪問した日から早速特訓を始めたかったのだが、中忍試験を受ける為には八件の任務を達成している事が最低条件である。その為には一週間以上かかるような長期任務は極力避けることが肝心だ。

 

そこで俺はシビ先生に倣って猫探しから始まり失踪人や犯人の探索といった班の能力を存分に発揮できる任務を中心に行う事にした。そして結果として僅か二週間で既に七件の任務を達成し、今は目安である八件目の任務中だ。

 

依頼内容は最近になって里の南側を中心に活動しているらしい盗賊の捕縛だ。単独犯のようだが、その犯行からして抜け忍の可能性もあるらしい。しかし犯行内容は民間の個人から食料や金品の強奪する程度で大した凶悪性もない為、ランクDの任務に設定されている。

 

俺達は被害者の所へ行き、そこで感知できた匂いを元に森の中を追尾しているところだ。任務中は基本的に俺は口出しをせずに同行するだけとしている。また班のリーダー役に関しては任務内容を加味して、それぞれに任せるようにしている。今回はキバがリーダー役だ。

 

「この先は犯人の匂いだらけだぜ。正面の方向に一人が移動してるけど、こりゃ速度からして忍だな。ヒナタ頼む!」

「任せてキバ君……白眼!」

 

任せたおかげか全てを言わなくてもお互いに意思疎通できる様になってきている。三人とも能力が高いのは分かっていたが、それぞれに考えて行動するようにして正解だったようだ。

 

「見つけた。敵は情報通り一人みたい」

「さすがヒナタだぜ。シノは敵の周りを念の為に調べてみてくれ」

「了解した」

 

それと意外だったのはキバは人を使うのが上手いという事だ。まだガキ大将という感じではあるものの責任を自覚すれば独断専行をする事もなく仲間に気を使えている。

 

「……これは少々、厄介な相手かもしれない」

「シノもそう思うか?赤丸は匂いで相手の強さがある程度分かるんだけどよ、どうやら俺達より強いらしいぜ」

「私達がこのまま行って大丈夫なの?」

 

相手との力量を見極めるには経験が物を言うのだが、既にその特殊技能をもって見極められているようだ。そしてキバ達の言う通り敵の力量は個々で比べると全く歯が立ちそうもない。例えスリーマンセルで挑んだとしても難しいだろう。

 

「……これは悔しいけど無理しない程度に追跡して、アジトを突き止めたら退却だな」

「そうもいかないみたい!気付かれたよ!」

 

三人が初めて意見を求めて俺の方を向いた。敵はおそらく木の葉でいうとそれなりに経験を積んだ中忍レベルと言ったところだろう。

 

「お前達三人でやれる所までやってみろ。危なくなったら助けてやる」

 

キバの判断は正しかったが少し時間をかけ過ぎだ。戦闘は避けられないが安全に格上の敵と戦える機会なんて滅多にない。敵には三人の練習相手となってもらおう。

 

「ヨシ、いつも通りに行こうぜ!」

「が、頑張ろう!」

「背後は任せておけ」

 

いつも通りにヒナタ、キバ、シノの順に隊列を組んで向かって行った。俺は気配を消して少し離れた側面から見守る事にする。

 

「追手が来たかと思えばガキ三人かよ」

「俺らをなめてたら怪我するぜ!」

「ほう威勢が良いな。かかって来いよガキぃ!」

 

その言葉をきっかけに先ずはヒナタが敵に肉薄する。思い切りが良くなってきているが、まだまだ足運びが拙い。そのせいか敵に接近しきれない。

 

「白い眼にその構え……日向を相手に誰が近付くかよ」

 

日向は有名になりすぎた為か迂闊に近寄らせてくれる忍は少なくなっている。八卦空掌が使えれば中距離の攻撃が可能だが今のヒナタでは距離を取られてはどうしようもない。しかしヒナタが敵の注意を引きつけている間にキバが牙通牙で攻撃を仕掛けた。

 

「防がれたか……」

「でも両手が塞がれば!」

 

キバの攻撃は避けられ、さらに追撃していたヒナタの攻撃も防がれる。するとそこにシノが蟲で遠距離攻撃を仕掛けようとしていた。コンビネーションとしては悪くない、だが……

 

「なるほど、貴様達が囮で奴が本命か。だが遅い!」

 

敵の言う通りまだまだ三人の攻撃はあまりに遅い。敵は二人の攻撃を捌いてから火遁で蟲を焼き払ってしまった。そして一気にシノへと接近されてしまう。中忍レベルの敵では体術の苦手なシノは手も足も出ない。

 

「弱い、弱すぎる。所詮蟲使いなどこの程度よ」

 

敵は止めを刺すことなく離脱しようとしていた。最初から殺意がなかったから手を出さなかったのだが逃がして任務失敗とするつもりも無い。

 

「驕りすぎだぞ抜け忍」

 

そう言って敵の目の前に飛び降り足止めをする。俺の隠遁にここまで接近されるまで気付かないようではまだまだ甘い。その上偉そうに捨て台詞まで吐くとは。

 

「グレーのベストに二本のラインが記された腕章……貴様っ木の葉の死神か!」

「ほんと有名になっちゃったな」

「クソっついてねえ!」

 

逃げ出そうとするがクナイを当て投げして死角から攻撃をする事で足止めをし、すぐに詰め寄る。

 

「眠ってろ」

 

そう言って鳩尾を思い切り殴って気絶させた。後で尋問してアジトを聞き出して奪われた金品を再奪取しなければならない。殺してしまってはその目的を果たせない。

 

「さて任務完了だ。帰ったら反省会だな」

 

 

 

盗賊を里に引き渡すと滝隠れの抜け忍ということが分かった。尋問には協力的との事ですぐに金品も被害者の元へ返される事だろう。そして任務が終わった次の日、俺達は大きな荷物を抱えて朝早くから里の南にある温泉地にやってきた。

 

「これで目安としていた八件の任務が終了した。喜んで良いぞ、これからは修行漬けの毎日だ」

 

修行と聞いて三人とも力強く頷いた。よほど抜け忍にやられたのが悔しかったのだろう。

 

「それぞれ自分の課題はなんだと思う?」

「俺はバリエーションの少なさだな。牙通牙以外の術が少なすぎる」

「俺は体術だ。何故なら蟲の操作中は特に身動きが取れないからだ」

「わ、私は攻撃範囲かな?」

 

三人とも今までの事を考えながらか、一生懸命答えてくれる。素直な良い子達だ。だけど……

 

「全員ハズレだ。お前達はそれ以前に基礎があまりにも足りない。特に体力!今のままでは長時間の戦闘は行えない。その為には体力だけじゃなくてチャクラコントロールについても修行する必要があるぞ」

 

自分の必殺技を持ちたいという気持ちは痛いほど分かる。欠点を無くしたいというのも。だけど今の体力では修行の効率も悪い。おかしな話かもしれないが、修行の為に修行する必要があった。

 

「よって!これから三ヶ月は体力作りを中心にチャクラコントロールについても行う。まずは体力作りからだ」

 

露骨に嫌そうな顔をするキバは放っておいて説明する事にした。ただ俺は無意味に走らせる気はない。

 

「まず持久力といっても大きく分けて二通りある。まずは持久走のように体全体の筋肉を使った運動を長く続けるために必要な全身持久力。腕立て伏せや腹筋のように、体の一部の筋肉を使った運動を長く続けるための筋持久力の二つだ」

 

この世界ではまだ前時代的なトレーニング、つまりは過度なトレーニングを故障するリスクと引き換えに根性で乗り切るといった修行方法が主流だ。そんな中で俺は猟犬に効率的な修行を導入し成果を出す事が出来た。特に若い内から無理をさせても仕方がない為、その経験を三人にも実践するつもりだ。

 

「ちなみに全身持久力を鍛える方法にも二通りある。今からやるのはインターバルトレーニングだ」

 

おそらく聞いた事がないであろうトレーニングに三人が戸惑っている。その隙にコン平は小さく分裂して三人の首元に纏わりついた。

 

「三人にはコン平を乗せたまま全力でダッシュしてもらう。まずは赤い布を巻き付けたあの木まで走ってみろ……スタート!」

 

目標の木までは約300mだ。三人はもちろん難なく走りきるが、コン平は尻尾をペシペシと振った。それを見て今度は走って行ったのとは反対側にある木に黄色の布を巻く。

 

「ヨシ、次はもう少し距離を伸ばすぞ。ここまでダッシュだ……スタート!」

 

次も難なく走りきるが、今度はコン平がコクコクと頷いている。流石は卵とはいえ忍だ、約400mが適正らしい。コン平には実は脈拍を測ってもらっていたのだ。インターバルトレーニングをするにあたって適正な負荷は毎分180拍程度なのだ。そして少しするとキバに乗ったコン平が鳴いた。

 

「今から俺は合図を出さない。コン平が鳴いた奴から走るんだ!」

「よくわかんねえけど了解だぜ!」

 

そう言ってまずキバが走り出し、次いでヒナタ、シノの順で走り出す。休憩する時間も心拍数で決めていて、120拍になった者から走らせるようにコン平に教えている。最初は余裕そうな三人だったが、二十本を越えたあたりから疲れが見え始めた。

 

「っヨフネ先生……これいつまでやるんだよ」

「俺が良いと言うまでだ、ほら合図出てるぞ!走れ!」

「クソーー!」

 

そうしていると最初に座り込んでしまったのはヒナタだった。

 

「ヒナタ!お前の忍道はなんだ?!」

「ハァハァ……まっすぐ、まっすぐ自分の言葉は曲げない事です!」

「強くなると俺に言っただろう!もう曲げんのか?!お前はその程度か?!」

「違います!まだ走れます!」

「なら座ってないで立て!そして走れ!」

「ハイ!!」

 

「シノ!お前は出来る奴だと思ってたのに残念だ。期待外れもいい所だな。こんな事も出来ないのか?!」

「俺は……まだやれる。何故なら」

「ならウダウダ言ってないで走れや!」

 

「もう限界だ……」

「キバ!限界を自分で作ってどうする!限界は俺が決めてやるからまだ走れ!」

「そ、そんな事言ったってよ……」

「なんだナルトにこの修行をさせた時はお前よりも頑張ってたぞ!ナルトに負けて良いのか?負け犬とでも呼ばれたいのか?そんなんじゃ一緒猟犬に入るなんて無理だ!」

「……俺は、俺はナルトには負けねえ!」

 

そうして発破をかけ続けるがやがては全員が倒れ込んでしまった。

 

「これが“今”のお前達の限界だ。半年もすれば驚くほど体力が付くから安心しろ。だがまだ気は抜くなよ、次はさっき言った筋持久力を鍛えるために筋トレをするぞ」

 

これほど人というのは絶望出来るのかと思える表情を三人は見せるが構ってはやれない。

 

「最初の頃は脚はパンパンだろうから上半身の筋トレを中心にやる。まずは懸垂を百回だ」

 

三人が走っている間、俺は発破をかけつつも懸垂用の台を作っていたのだ。

 

「ホラさっさとやれよ」

「「「……はい」」」

 

ガイの様に千回や一万回なんてのは普通の人では続けられない。でもそうやって故障覚悟で自分を追い込めるような奴じゃないと八門遁甲なんてマスターできないのかもしれないが。

 

「次は腹筋だ。腹筋といっても普通にするだけじゃないぞ。腹筋はな縦と斜めの筋肉で出来ているんだ。普通の腹筋を百回、その後に斜めに腹筋をするんだ。上体を起こしてから左右に振るんじゃないぞ。最初から斜めに上体を起こすんだ!」

 

斜め上体起こしも左右各百回やらせる。中学生くらいの子にやらせるのは前世の感覚でいえばオーバーワークな気もするが、意図せずともチャクラで身体強化がなされているこの世界の忍としては大した事はない。

 

「よし最後だ。まずはこのダンベルを持て」

 

そう言って俺は2キロのダンベルを二つずつ渡した。

 

「それを持ってまずはアキレス腱を伸ばすように右足を前にして足を開け。腕は身体に引っ付けないようにして、肘を九十度になるように状態を維持しろ。そしてその状態でゆっくりと左足が前になるように身体を回転させるんだ」

 

地味にキツイが身体の軸を安定させる事とスムーズな体重移動、腰の回転を意識付ける事が目的だ。それを百往復させる。

 

「今の筋トレを残り二セットやれ」

 

これを続ける事で上半身の使い方も改善されると俺は思っている。継続は力なり。三人が筋トレを終わらせた所で一時間の昼食休憩とした。

 

そして午後はまずチャクラコントロールの修行だ。修行の内容はまず手を使わずに木登りをさせる事にした。チャクラによる吸着はこれから戦っていくにあたって必須技能だ。これは何も移動に限った話ではなく、それぞれで応用法を考えれば武器とする事も出来ると考えている。それにこの先、術を覚えていく上で必要な量に応じてチャクラを練るという技術は重要となってくる。

 

注意すべきはやはりオーバーワークだ。経絡系にダメージが残らない程度に訓練させなければならない。ナルトやサスケといった例外は別にしても経絡系のダメージは治りにくいのだ。

 

そんな心配とは裏腹にヒナタは柔拳、キバは四脚の術といったチャクラコントロールの技術が必要な術を覚えているせいか、一日目にして木登りはマスターした。シノは蟲に体内のチャクラを与えているせいか苦労しているようだ。

 

定期的に三人の状態を確認しつつこれ以上は無理だと判断した所で少し休憩した後、今度はハンドシグナルや状況判断などについての座学を行う。猟犬に入れる以上は避ける事が出来ない必須技能だ。

 

座学の次はまた持久力アップのトレーニングをする。今度はインターバル方式ではなく純粋な持久走だ。とはいってもまたコン平に頼んで心拍数を測ってもらいながらなのだが。大体120から150拍程度の負荷をかけながら自分のペースで距離を重視するのではなく長時間走らせる事が重要だ。

 

その後にクールダウンをさせ、ストレッチを入念に行わせる。明日からはストレッチ、インターバル、筋トレ、昼食、チャクラコントロール、座学、持久走、ストレッチといったローテーションで主義を行うつもりだ。

 

ただ誤算だったのは夜にヘトヘトとなって温泉に浸かったシノだ。すぐ湯当たりしてしまうのか、蟲のコントロールが甘くなるのか体内から蟲が溢れ出て湯が黒くなってしまってしまうのだ。これでは何のために風呂に入っているのか分からない。

 

そうして二週間が経つ頃には全員が水面に立っての組手が出来るようになった為、残りの期間はチャクラコントロールの修行から体術の修行に変更する事にした。

 

「お前達の体術の欠点だけど、まずヒナタは足運びが致命的にダメだ。攻撃する事に躊躇していないか?」

「……はい」

「お前は優しい性格だからなすぐに治すことは難しいかもしれない。だがなお前が護りたいのは敵か?それとも仲間か?」

「もちろん仲間です」

「前衛というのは敵の足止めが一番のメインだ。倒す力ではなく、味方や自分の信念を護るためにその力使わないでどうする。必ずしもお前が止めを刺す必要はない。味方へ攻撃させない。その事を意識してみろ」

「はい」

 

「次はキバ、お前は馬鹿だ」

「は?」

「スピードに自信があるせいか手数で攻めることばかりで周りが見えていない。正面からいくら早い攻撃をしても、眼が良い相手なら勝てないぞ。敵が何を狙っているのか、地理は活かせないのかそういう事を考えてもっと頭を使った攻撃を心掛けろ」

「はい!」

 

「最後にシノ、お前は今まで蟲に頼りすぎたな。頭も良いんだこれから体術を一から叩き込んでやる」

「分かった」

「一番体術が駄目なのはお前だぞ」

「……分かっている」

「センスが無いかもしれない」

「それも覚悟の上だ」

「やるんだな?」

「はい」

 

こうしてチャクラコントロールよりも全身に疲労が来る体術に変更した事で修行はよりハードなものになった。しかし三カ月が経つ頃には体力がついてきて倒れこむ事も無くなり、その成果は体術にも現れている。こうしてベースがある程度できた段階で修行合宿は終わりを迎えた。

 

 

 

里に戻った俺達は山賊の討伐などの比較的簡単な戦闘任務をこなしながら連携の確認を行っていた。もちろん体力作りは継続しているが、そろそろ新しい忍術についても取り組んでも良い頃だろう。

 

「今日からお前達の技を考えて行く」

「ひゃっほーい!俺はどんな技にするすか?」

 

戦闘スタイルについてはずっと考えていたので候補はいくつかあるが、まずは其々の性質変化を把握しなければより最適な選択は出来なかった。キバは必殺技を覚えられるのかとワクワクしているが、まずは説明からだ。

 

「チャクラの性質変化は火水土雷風の五つに分けられていて、これを“五大性質変化”と呼ぶ。ほとんどの忍がそのどれかの性質に当てはまるチャクラを持っているんだが、一人一つというわけではなくて上忍クラスの忍なら二つ以上持っているのが普通だな。ちなみに俺は雷と風だ」

 

三人とも性質変化については知っているようで素直に頷いていた。やはりナルトが特別に馬鹿なのかもしれない。

 

「それで自分のチャクラがどの性質に属するかは、この感応紙にチャクラを流し込んでその変化によって知ることが出来る。まずは三人ともやってみろ」

 

三人に感応紙を渡し試させるとシノの紙は燃え、キバの紙はボロボロに崩れた。そしてヒナタの紙は皺が寄り燃えた。

 

「全員バラバラだな。紙が燃えれば火、崩れたら土、皺が寄れば雷の性質変化だ。これを踏まえた上で其々の技や術を考えるぞ」

 

ヒナタは日向家に多い火ではないかと当たりをつけていたが、まさか俺と同じで最初から得意な性質を二つ持っているとは思わなかった。雷は火よりも接近戦と相性も良いので幸いかもしれない。

 

シノは蟲と火の相性があまり良くないように思う。少し時間がかかるが他にも適性があるか調べてみる必要があるな。キバも意外な事に土の性質なのだが、俺がかつて考えていたロマン溢れる術を使えるようになるかもしれない。

 

「全員に言える事だが今をベースに考えるぞ。ヒナタはまず体術の向上が第一目的だ。その上で八卦空掌を習得して中距離攻撃出来るようになって貰おうと思っている。性質変化はその後だ」

「はい、分かりました。先生を信頼してるんでそれで大丈夫です」

 

嬉しい事を言ってくれる。体術では点穴が見える事を利用して、擬似八門遁甲を覚えさせようと思っている。チャクラを急激に使用するので長時間の戦闘には耐えられないかもしれないが切り札とはなるはずだ。それに戦闘中に繊細なチャクラコントロールが必要な身体強化についてもヒナタなら可能かもしれない。

 

「次にシノの火遁だが一般的に蟲との相性が良いとは言えない。シビさんから油女家で把握している蟲の一覧を今度見せてもらってから考えよう。ただ俺は火遁や蟲については教えられない……そこでまずは幻術を覚えてみないか?」

「なんで幻術なんです?」

「まず第一に他の二人には適性があまりなさそうという事、班にバランスを持たせるには誰かが習得した方が良い。第二にお前の体術を向上できるかもしれないからだ」

「なぜ幻術を覚える事で体術が向上するのです?」

「いいか、まず幻術とは相手の五感にチャクラを乗せた刺激を送る事で作用する。一般的にはその刺激が強いほど強力な幻術にかける事が出来るとされているが、弱い幻術でも要は使い方の問題なんだ。お前の場合は蟲の羽音にチャクラを乗せてみたらどうだ?蟲が大量に近づけばどうせ音がするわけだし大したデメリットはない」

「しかしそれでどんな幻術をかけると言うんです。幻術の理論から言えば大した術は使えない」

「そうだが例えばお前が敵を蹴るとする、その時に実際の攻撃よりもほんの少し遅いビジョンを見せたらどうなる?」

「なるほど、そうする事で敵の裏をかくのか」

「そうだ、戦闘中にかなり考えながら使わないといけないが、頭の良いお前なら出来るはずだ」

「了解した。異存はない」

 

使い方はかなり難しいかもしれないが、攻撃の速度を自由に操る事が出来ればかなり強くなる。幻術にかけるのは一秒以下で良いのだ、気付いて解く時間もない。完成すればかなり厄介だろう。

 

「最後にキバ、お前の戦闘スタイルにぴったりの土遁に心当たりがある」

「流石は先生!」

「ただ俺は土遁が使えないから術を直接教えてやれない」

「どうするんすか?」

「とりあえずは性質変化の修行を中心にやるぞ。その間に誰か先生を見つけておいてやる」

「了解だぜ!」

 

原作では見せ場の少なかった八班だが着実に実力をつけ始めていた。

 

 

 

 

 

「ヒナタ様お帰りなさいませ。合宿はどうでした?」

「コウさんの言っていた先生の二つ名の意味がよく分かりました」

「ああ“効率的ドS”ですね」

「コン!」

「ココココココン平さん!?」

「ああ訓練で乗せたままでした……っていけない!」

「「この金平糖を差し上げますので、何卒ご容赦下さい!」」

「……コン!」

    





ちなみに今回のトレーニング理論は日体大出身でとある競技の日本代表にも選ばれた高校時代の顧問に実践させられていた事です。ここまでハードではないですけど……
間違ってたら私も被害者です。顧問に文句言ってやるw

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