同情するならチャクラくれ   作:あしたま

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007. 隊長

  

茶の国から戻った俺たちは、直接三代目に連絡することになった。帰ってすぐだが嫌とは言えない。

 

「シビよ、ご苦労じゃった。よくあの霧の忍刀七人衆を退けた」

「ありがとうございます。しかしそれについてはヨフネとマイト・ダイ両名の功績が大きいかと」

「ヨフネはまだしもマイト・ダイじゃと?」

「はい、ここからは俺が」

 

ダイさんのことは俺が答えるべきだと思い、一歩前に出て説明する。

 

「あの人は忍術が使えない代わりに体術を極め、八門遁甲を使うことが出来ました。あの場にいた息子であるガイを守るため、死門まで開き忍刀七人衆の内、四名を倒してました」

「なに?八門遁甲じゃと?あれは全盛期の儂でも全ては習得できんかった」

 

やっぱり凄いよ、ダイさん。教授と言われる火影をも凌ぐなんて。

 

「あの人が他の七人衆にも手傷を負わせてくれ、また俺に八門遁甲を教えてくれたおかげでもう一人、雷牙と呼ばれていた男を倒せたんです」

「お主も使えるのか?!」

「とはいっても開門だけですけど」

 

それを聞いたヒルゼン様の眼光が鋭くなる。

 

「……リスクは知っておろうの?」

「はい、全てを開くつもりはありません。というよりも無理そうです。忍術全てを捨てる覚悟で修業すれば別かもしれませんけど」

「誰も全てとは言っておらん!開門だけでもかなりの痛みだったはずじゃ!」

 

みんなのいるところで言わないで欲しい。今度は横からの眼光も鋭くもなってきた。

 

「俺としても無闇矢鱈に使う気はありませんよ。まだ体も出来てないですし、今回は仲間がやられそうになる中、初めて使えたんですから。それにあの人からもキツく言われてますしね」

 

お、少し横からの眼光が減った!

 

「良いじゃろう。だがコハルには言うぞ」

「待っっって下さい!それだけは!八門遁甲使う前に死んじゃう!」

「諦めろ、どうせすぐにバレるんじゃ。早い方が良かろう」

 

嫌だ、家に帰りたくない。確かにあの婆様のことだ。帰ったらすぐにバレるだろう。しょうがないけど……あー帰りたくない。あ、そうだ。

 

「それとダイさんの息子のガイも使えますよ。俺よりもよっぽど、あの術の才能はあります」

「そうか、あやつにも落ち着いたら釘を刺しておくかの」

 

ガイすまん、兄弟弟子なんだから一蓮托生だ。

 

「ところでヨフネよ、敵からの情報は何か手に入れられたか?」

「いえ、死体を探していたら大蛇丸様が来られ、情報収集は任せろと言われたので逃げました」

「あの近くに大蛇丸がおったのか。……まだ報告は入っておらんが、さすればすぐに詳しい情報が得られるだろう」

 

あいつめ、報告してないか。蛇でも使ってサッサと報告しろよ。あと本当に極秘すぎるだろう。火影も知らないなんて。

 

「最後にじゃ、忍刀はどうした?」

「俺が倒した男からは雷刀“牙”を奪いました。他の刀については敵が撤退する際に持って行ったようです」

 

嘘と真実を織り交ぜて話す。他の三丁にしてもこちらで確保しておきたかった。とりあえずは左の腰に差していた雷刀を見せた。

 

「そうか、それはお主が使うと良い。雷遁使いであるし、これも運命だろうて」

「良かった。ありがとうございます」

 

本当に良かった。こいつがどんな能力を持っているのか、詳しく調べたかったのだ。でも体が回復してからだな。

 

「ところで霧隠れの里で最近何か有ったのですか?妙に好戦的になっている気がするのですが。今回の件にしても、むやみに戦線を広げて。元々奴らは渦の国を狙っていたはずです」

「うむ。それは儂らも気にしておるが、あそこは初代水影の時より閉鎖的な里でのう、情報がほとんど入ってこんのじゃ」

 

マダラは次の四代目に関しては操っていたが、今の段階で暗躍しているのだろうか。分かったところで止める方法はないのだが。

 

「しかし、これからは雨隠れに加え、霧の動向にもより一層注視していかねばならん。お前に頼ることも増えるじゃろう。頼むぞ」

「「「はい!」」」

「……はい」

 

ここで酷使宣告来ました。もうちょっと感知タイプの忍を増やして欲しい。労働基準を作りやがれ、馬鹿野郎、この野郎。

 

ーーーバァンッ!

「火影様!」

 

火影室から出て行こうとしたタイミングで、伝令文を持った忍が飛び込んで来た。

 

「なにごとじゃ!騒々しい」

「それが、かねてより不審な動きのあった砂隠れの里ですが、監視班からの連絡によると風影が行方不明らしいのです!」

「なんじゃと!?三代目風影は磁遁を以って歴代最強と謳われる忍じゃぞ」

「はい、ですので国内をくまなく捜索するために人員を割いているようです」

「なるほどそれが原因じゃったか」

「それに石隠れや岩隠れ、それに雨隠れまでもが情報を掴んだようで、現在風の国周辺は大変な事態となっております」

「すぐに上忍会議を行う。招集せよ!」

「はっ!」

 

突然の出来事に俺たちは固まってしまっていた。ただどうやら、今後の主戦場は雨隠れ、砂隠れの里となるだろう。

 

そしてこの隙を逃すような雲隠れや霧隠れではない。当然、木の葉としては東側も警戒しなければならない。少なくとも二つ以上で戦闘を行うことになるだろう。

 

三大国に囲まれ激戦必至の雨隠れには半蔵がおり、大国も手を焼いている。他里とのパイプを強化して和平を図ろうとする三代目としては、彼と上手くやりたいのだろうがそう上手くはいかないだろう。

 

戦争を乗り切るには三代目はあまりに優しい。初めてダンゾウの気持ちが分かったかもしれない。

 

 

 

様々な要因があったにせよ、直接的には風影失踪をきっかけとして、第三次忍界大戦は始まってしまった。

 

おかげさまで俺も大忙しである。あっちで索敵し、こっちでも索敵し、毎日何かを探している。今なら間違い探しなんて余裕だ。

 

そうやって毎日働かされ、殺し殺されしていると時が経つのも早く、いつの間にか開戦から一年半が経とうとしている。

 

戦争による人手不足が深刻化する中、アカデミーの卒業が繰上げられ、臨時に中忍試験も開催された。戦時下においても戦争以外の任務は発生する。それに充てる人材をそれらによりカバーし、戦闘員を増やすつもりなのだろう。

 

トンボやシズネはもちろん、他の同期メンバーも今回の中忍試験に臨み、皆中忍となった。後で聞けば試験内容は筆記試験とサバイバル演習、試験官との戦闘と犠牲者が少なくなるよう設定されていたようだ。

 

その結果、普段よりも甘い判断基準により能力に疑問のある者を含め、多くの下忍が引き上げられ、完全に総力戦の様相を呈してきている。原作を知っていてもまだ不安になるほどに。

 

同期のメンバーも無事に中忍となっており、筆記が心配されたオビトやガイも中忍となれたようだ。合格が分かったとき、二人は暑苦しく泣きながら抱き合っていた。

 

「やっだぞ!どうとうぼぐはバパをごえれだぁ」

「ガイやめろ、その鼻水垂らした顔で俺に寄るな」

 

 

 

そんな中、カカシと俺は上忍となった。十二歳で上忍になっても、隊員が命令に従ってくれるかが心配だ。

 

ちなみに上忍への昇格は、担当上忍をしていた上忍に加え、上忍三名以上の推薦が必要となる。俺の場合は婆様に加え、三代目とホムラの爺様という豪華な顔ぶれだった。カカシも三代目と婆様から推薦されたらしい。驚きだったのがダンゾウも推薦したということだ。こんなに早くから目をつけているとは思わなかった。

 

しかしカカシが上忍になったということは、オビトがマダラに連れて行かれるということである。もちろん助けたいのだが、任務が一緒でなければそうすることも出来ない。

 

いや、自分にそう言い聞かせているだけなのかもしれない。彼を生かしたところで、他のうちはが犠牲となるだけだ。それなら先の読めているオビトで手を打つべきなのだ。

 

俺は流石に全ての人を救えるとは考えていない。しかしより多くの人を救う為にはオビトがマダラとなることが重要なのだ。

 

それが分かっていたからこそ、俺は初めからオビトと必要以上に接触しないようにしてきたのだ。

 

(未来を知っている俺が何とかするしかないんだ。すまん、俺は、お前を……見捨てる。)

 

 

 

 

 

次に俺が配属されたのは、敵に囲まれて標的にされやすい為、感知タイプが最も必要な渦の国となった。それも小隊長としてである。シビ先生は探索班の隊長、シズネは医療忍者として、それぞれ前線に向かうことになったからだ。

 

それで新しい小隊なんだがトンボは良い、残り二人が日向ホヘトと犬塚ツメだったのだ。日向一族からは中忍試験でのことで遠回しに批判されている。しかしホヘトは歳下だし、本人に何かしたわけではない。問題なのはツメだ、試験では黒丸の右眼を潰してしまっている。班構成を告げられた時から気まずくてしょうがない。

 

「今回小隊長に任じられた、うたたねヨフネです。よろしく」

 

下手に出すぎす、丁寧な挨拶を考えたらこれだけになってしまった。

 

「ヨフネ隊長と一緒に組んできた、飛竹トンボです」

「日向分家のホヘトです。ヨフネ隊長、中忍試験の件では一族が迷惑をかけてすみませんでした。ちょっとプライドが高くて」

 

ホヘトは自己紹介の時にこちらが気にしているのを見抜いたのだろう、突然そんなことを言い出した。

 

(自分は関係ないのに代わりに謝れるとか、ホヘトめっちゃ良い子や。こいつとならあの技を試せるかもしれないな)

 

「さて、次はツメさん。よろしくお願いします」

「私にも気を使わなくても構いやしないよ!犬塚ツメだ。よろしく」

「黒丸だ。頼むぞ」

 

ツメさんにしても、これまた事情があるようで、あの後黒丸を診てくれた獣医と結婚して既に子供までいるそうだ。ある意味キューピッドらしい。

 

「お子さんは大丈夫なんですか?」

「もう産まれて一年半たつし、乳離れのいい機会だろうよ。こんな状況じゃ仕方ないさ」

 

そんな訳で若手の班編成となったが、思った以上に上手くいきそうなメンバーとなった。

 

 

 

さて、俺たちの任務地となった渦の国は細長い島国である。中央に北東部には渦の国があり山脈を越えた南西部が渦潮隠れの里となっている。

 

渦隠れの里の中核をなすうずまき一族は高い生命力を持ち、また封印術に長けているため九尾の人柱力となるものが多い。

 

人柱力としても、その封印術にしても他里も欲しがるだろう。俺たちは北東部に駐留し、時折やってくる雲隠れの偵察部隊を追い返す毎日を過ごしていた。

 

 

 

「ヨフネ隊長、忍鳥で伝令が来ました。渦潮隠れの里から封印の書が盗まれた模様。内部の犯行のようで、雲隠れに持ち出すつもりでこちらに向かって来ているようです」

 

幾度か目の雲隠れの偵察を撃退したころ、ホヘトが伝令文を持ってきた。こちらが警戒していることを察しているのか内部を使ってきたようだ。

 

「それで本隊は何と言ってきている?」

「追跡部隊と挟み撃ちして奪還せよ、とのことです」

「これがただ内部の者が雲隠れに寝返るつもりで奪っただけなら、それでも良いけどな。雲隠れが手引きしていると考えるのが普通だろう」

 

今、俺たちがいなくなれば奴らは攻めて来るだろな。逐一報告をあげているのに分かってないのか?

 

「よし!こうなれば人員を割くしか無いだろう。ホヘトは俺と巻物の確保、ツメさんとトンボは二人で監視を続けて欲しい。内部で動きがあったか探るために再度偵察部隊を送ってくる可能性もある。トラップを警戒パターンから攻撃パターンへ変更を」

「ヨフネ君達二人だけで大丈夫?」

「大丈夫だよ、トンボ。二人でやる術の精度も上がってきてるだろ?」

「分かったよ、気をつけてね」

 

実はこの任務についた時からホヘトの白眼を使用させ狙撃の練習していた。定期的に雲隠れの皆さんが的になりにやって来てくれるので、精度が上がってきている。

 

雷刀“牙”を手に入れて気づいたのだが、雷遁の増幅機能があったのである。普通に使っても雷遁を纏わせれば斬れ味が増すので重宝するのだが。

 

それよりも雷刀を銃身にすることで、ずっとやりたかった電磁砲による狙撃が可能となった。電磁砲の射程距離と速度を上げるためには、長い銃身が必要となるため、普通にやると倍以上のチャクラが必要となってしまう。俺のチャクラ量でそれをやるのは不安だったのだ。とはいっても十発も打つとチャクラがほとんど無くなってしまうのだが。

 

ちなみに遮蔽物の多い場所が主戦場の忍にとっては使える場面は限られている。だがホヘトが白眼を使用し照準を合わせることで、木などの遮蔽物を気にせず撃てるようになった。

 

当然弾も特別製だ。今までのように、相手に見られ狙いがばれてしまう可能性がないため、円錐形の銃弾を作ってもらった。装填する際に風遁を纏わせることで貫通力もケタ違いとなった。

 

また弾が超高速のため風などの外乱の影響も受けにくく、素人でも狙撃しやすいとんでも兵器となってしまった。

 

俺達は巻物を持った敵の予想進行ルートに前もってコン平を配置している。ホヘトが一点に集中した時の有効視界距離は約1.5km。そのため2km先にコン平が展開しており、敵の方角を教えてくれるのだ。

 

着弾までは約0.6秒で敵の数は四人。いくら慣れてきたとはいえ確実に当てることができるわけではない。しかし、掠っただけでダメージを与えられるため、一人に二発必要だとして八発で終わる。

 

俺たちは忍の世界には似ても似つかぬ兵器を準備し待つこと一時間、とうとうコン平からの合図が来た。

 

「二時の方向、数は報告通り四、街道を進行中」

「了解」

「合図の後、一秒ごとに発射されるように設定。計八発」

「……捕捉……発射」

 

その瞬間、雷刀が強く発光する。弾の一部が電気抵抗による発熱に耐えられず、蒸発を通り越して一瞬でプラズマ化する。そのため貫通した木は焦げてしまっていた。

 

始まってしまえばホヘトさんから停止の合図があるまで、俺は一秒ごとに弾を発射するだけである。

 

「目標沈黙。任務終了」

「うっし、お疲れさん。上手くいったみたいだな。まさか六発で終わるとは思わなかった」

「エヘヘ、だいぶ慣れてきたみたいです」

「そいつは良かった。これ使いこなせるようになれば、ほとんどの忍を倒せるからな。さて巻物回収に行きますか。監視を二人に押し付けちゃったからね」

「ですね、早く戻ってあげましょう」

 

そう言って雷刀を腰に差す。雷遁を使用した後も発熱しないのもありがたい。おかげで連射が可能だ。やっぱ使えるなと確信しながら巻物を回収し、追跡部隊に渡した。

 

「よ、よくお二人だけで。しかもここは何があったのです?」

「すみません、秘密です」

 

追跡部隊の人が吃りながら聞いてくるのも無理はない。胴体が吹き飛ばされ下半身が消えている者や右半身、頭部と何処かしら消えていたからだ。ってかヘッドショットやったんだね、ホヘト。

 

威力が有りすぎてひどい惨状である。巻物が回収出来て良かった。巻物ごと消し飛んでいたら面倒だった。いやあ回収出来て良かった。回収は出来て良かった。

 

 

 

「……巻物から血がずっと滴り落ちてますけど、読めますよね?」

「本当におたくら、なにやったの」

  





同期のメンバーの中忍昇格のタイミングですが、原作より1年か2年早くなっています。


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