pixivに同じやつをあげてます
僕が原作者です
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其れは、余りにも突然の出来事だった──
私は、ある日から毎日シャーレに通うようになった。
学校がある日は朝と夜に、休みの日はほぼ1日シャーレに入り浸っていることも少なくなかった。
先生と過ごす時間は楽しい。
でもシャーレに通う理由はそれだけでは無かった。
先生と一緒に居ると....私の中の何かが満たされるような感覚がする。
先生を独り占めできる愉悦。
私が先生を独り占めしてる間、先生は私だけしか見る事ができない。
この間だけ先生は、“私だけの先生”になる。
この事実が、何処と無く私を幸せにさせた。
そして、私が先生を感じている時、先生にも私を感じていて欲しかった。
先生に振り向いて欲しい。
先生に私と一緒に居たい、と感じて欲しい。
先生に、杏山カズサという人間を欲して欲しい。
....私は、先生と結ばれたかった。
今までに恋をした経験はなかったから良く分からないけど、多分これがそうなんだと思う。
このまま通い続けたら、いつか私に振り向いてくれるかも。
通っている内にいつの間にか、淡い期待を抱くようになっていた。
....でも。
「....あの....さ、カズサ。最近毎日来てもらっててそれはすごく嬉しいんだけど、シャーレには他の生徒も来るから、少し....来る頻度を減らしてくれないかな」
その期待は、いとも簡単に打ち砕かれた。
...ただ、こうなるのも最初から分かっていたと思う。
きっと私は、そういう生徒みんなの事を考える、貴方の広い心に惹かれたのだと思うから。
そう納得しようとても、心を預けたかった存在が急にどこか遠い所に行ってしまう孤独感に、私は耐えられなかった。
まるで子供の頃、側にいると思っていた両親が、一度目を離した隙に居なくなった時のような
「あ〜....確かに、私毎日来ちゃってるもんね。私、迷惑だったかな。」
それとなく答えようとするが、動揺は隠しきれなかったと思う。
私が居なくなったシャーレには、きっと代わりと言うように別の生徒が来るようになるんだろう。
“側に居て欲しい”
”ずっと私だけを見て欲しい“
“ずっと一緒に居たい”
もう”私だけの先生“では無くなってしまう。
その事実に直面して、本音が喉まで出かかるが、重い女だと思われるのが怖くて、すんでのところで言葉を飲み込む。
ただ、このまま先生と離れたく無い。
“ずっと一緒に居たい”
その思いからか、咄嗟に先生のペンケースから一つ、シャーペンをポケットにねじ込む。
先生に会えない時間を、埋められる物が欲しかった。
私はそれを返せぬまま、シャーレを後にしてしまった。
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.....やってしまった。
机に置かれたシャーペンを前に、私は頭を抱える。
先生のペンケースに入っていた、先生のシャープペンシル。
これまで先生が何回も使ってきたであろうシャープペンシル。
きっと指紋も、手汗も.....
はしたない考えが頭をよぎったところで、一旦冷静になってみる。
もし先生にこれがバレても、きっと先生は怒らないだろう。
でも先生からの印象はきっと良く無い。
......でも、シャーペン一本くらい.....
私は考えるのをやめて、盗ってきたシャーペンを私のポケットの中に躊躇なく押し込んだ。
先生の優しさを盾に、正当化することにした。
あれから、私は毎日先生のシャーペンを持ち歩くようになった。
パーカーのポケットに入れておくといつでも触れるし、先生の使い込まれたシャーペンを持っていると、まるで先生と一緒にいるみたいで、妙に安心する。
部屋にいる時には、先生のペンを眺める時間さえもできた。
先生の私物を”独占“する、というのも案外悪く無い気とも思えた。
数日後。
久しぶりに、シャーレに行こうかと思い立った。
別にシャーレにもう行けない訳でも無いのだから、あれほど悲観する必要もなかったのかもしれない。
シャーレのオフィスに入ろうとすると、とある白髪の女の子が先生と話してるのが聞こえた。
耳を澄まして会話の内容を聞いてみると、今日の学校であった出来事、友達のこと、勉強でわからないことなんかを話していた。
先生は彼女と話しているあいだ、終始、声に笑みを含ませていた。
まるで、私と会う時とは別人のように感じた。
どこの学園の誰なのかも全くわからないけれど
彼女が、“私の代わり”なんだろう。
私よりもずっと可愛いくて、ずっと面白くて、ずっと居たいと思えるような
....じゃあ、私は?
先生のペンで満足しようとしている私は一体なんなの?
本来あそこにいるべきなのは、私なのに
1時間くらい話を盗み聞きした後、私はとめどなく溢れる涙を抑えるのに必死だった。
もうシャーレにいるのが辛くて、逃げるようにその場を後にした。
次の日、改めてシャーレを訪れた。
すると丁度シャーレから、昨日先生と話していた白髪の女の子が出てきた。
もしかして、私のように毎日通っているのだろうか。
彼女は私に『こんにちは』と優しく微笑みながら気さくな挨拶を寄せてきた。
その一言で、彼女は私にはない、何かを持っているような気がした。
私は咄嗟に答えられず、ちゃんと伝わってるか分からない曖昧な声しか出せなかった。
シャーレに入ると、いつも通りの先生がいた。
「...せん、せい」
「...ん、カズサ、久しぶり。」
少し気まずそうに声を掛ける私に、先生はいつも通りの返答をする。
先生は、前と同じように振る舞っていた。
変わったのは、私だけだったらしい。
先生が側に居て欲しいと思うのも、先生を感じて居たいと思うのも、全て私の一方通行の思いだった。
「...先生。さっきまでいた子、もしかして毎日来てるの?」
「あぁ、カズサも会ったの?...うん、カズサが来なくなってからずっと来てるかな。ちゃんと頻度を減らしてって、言ってるんだけどね」
やっぱり。思った通りだ
「ふーん....そう....あの子ってさ、....面白いよね。」
「....うん、そうだね。天然って言うのかな。ちょっと抜けてるとこもあって、退屈はしないかもね」
「....それに、私より可愛いし」
「私と違って、一緒にいると落ち着くもんね」
「私よりも、その人と居た方が楽しいんでしょ?」
「カ、カズサ...?」
「昨日の先生、楽しそうだったね。あんなにデレデレした先生、初めて見たかも」
「....私には、そんな顔しないくせにね」
そういうと、先生は黙り込んでしまった。
と言うより、言葉に悩んでるのだろうか。
「...なーんて、冗談だよ」
なんて笑って誤魔化したけれど、目の奥までしっかり笑えた自信はない。
ぶつけた私の本音を、先生は受け止めきれていない。
この時点で、先生とずっと一緒に居る、というのは無理なんだと思い知らされた。
先生は私の思いに、応えてくれないのだから。
きっと、私じゃなくてあの子なら、先生はもっと別の反応を示したんだろう。
あの子は私よりも、好かれているから。
....このまま、先生は“あの子だけの先生”になってしまうのかな。
....先生は、“私だけの先生”であって欲しい。
“私だけを見ていて欲しい”
“先生にも、ずっと私を感じていてほしい”
そんな願望も、あの子の前では叶わない。
あの子は、私よりずっと優れてるから。
あの子が、シャーレに来るようになったから
あの子が
...................
.....そもそも、あの子はなんなの....?
私がいるはずだった場所を奪って、先生のことを独占するつもりなの?
......そんなの、許せない。
あの子が、
あの子が悪い。
全部、あの子のせい。
自分への悲観的な気持ちが、沸々と腹の奥から湧き上がる憎悪へと変換されていく。
あの子さえいなければ、また先生は私の事を見てくれるかもしれない。
先生を独占するのは、私だけでいい。
.....翌日、昨日と同じ時間にシャーレから出てきたあの子を見つけた。
するとこちらに気づいた彼女は、昨日と同じように声をかけてきた。
「あっ、こんにちは。えっと、昨日もお会いしましたよね?貴方もシャーレに何か御用が...」
「...なんのつもり?」
もっと冷静に話をしようと思って居ただけに、思わず出た第一声に自分でもびっくりする。
「えっ...えっと...?」
「....先生とっ!....どういうつもりなの?」
「....先生........」
そういうと彼女は、しばらく黙り込んだ後、何か気恥ずかしそうに口を開いた。
「実は...その....僭越ながら、先生とお近づきになりたい....なんて思っていまして.....」
「...くはっ....あはははっ.....」
思いもよらぬ発言に、思わず笑いが込み上げてくる。
「....ねえ。先生のことを奪われた私の目の前でさ、よくもそんなヘラヘラとうわ言並べられるよね」
天然キャラ、というものなのだろうか
ここまでノンデリカシーな発言に腹が立ったのは初めてだ。
こいつと先生の関係。
昨日初めて会った時の、なんてことない挨拶。
さっきの、私のことなんて何も考えちゃいない、ふわふわとしたうわ言。
こいつの全てが
全てが、不愉快だ。
「えっ、あ、す、すみません、何か不快にさせてしまったのなら謝ります、ごめんなさいっ!」
「....うるさい」
「..............私から全部奪おうとしておいて、よくものうのうと..........」
「.............私から先生を.........奪うなッ!!!!」
私の中で、プツンと何かが切れた音がした。
.................
『.....うっ....うぅ....っ』
....呻き声が聴こえたとき、意識が正気へと戻った。
足元には、さっきの子が倒れている。
彼女の首には、あの日先生から盗んだシャーペンが刺されていた。
彼女のお腹に向いた私の銃口から、煙が伸びている。
ふとみると、拳、服にまで血がついているのに気がついた。
『...ごっ、ごめんなさい......』
すると、倒れていた子が、今にも消え入りそうな声で何か言っている。
『もうっ、あの人とは関わりませんから....っ』
その瞬間、私がさっきまでやっていたことに察しがついた。
それが途端に恐ろしくなって、逃げるようにその場を立ち去った。
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後日、シャーレ
.....今日は私の誕生日。
私の誕生日になると、生徒たちはプレゼントを持って来てくれる。
『....ん、これ、先生への誕生日プレゼント。』
『今日はあんたの誕生日らしいから。はい、プレゼント』
そんな具合で今年もたくさんの生徒からプレゼントを貰っていると、いつの間にかデスクの一角にはプレゼントの山ができていた。
早く家に帰って開封、と行きたいところだったが、生憎近頃また仕事の量が増えてきていた。
誕生日でもお構いなしに仕事は舞い込んでくる。
「今回は朝帰りになりそうだな〜....」
...みたいなことを嘆きながら仕事を片付けていると、もうすっかり夜も更けていた。
そろそろ仮眠を取ろう。
区切りのいいところで仕事を終え、のそのそと仮眠室へ向かった。
.....どれくらい寝てたのだろうか。
時間を確認すると、午前2時を指していた。
思ったより寝過ぎてしまった。
早く作業に戻ろうとオフィスに戻ると、見覚えのある人物が立っていた。
それはなんと、カズサだった。
「.....カズサ?」
「や、先生....こん、ばんは.....」
「...今2時だよ?な、なんでいるの?」
「いや、えっと....今日誕生日だから、その、プレゼント....渡すの忘れてたなって。」
そういうとカズサは、持っていた紙袋をこちらに手渡してきた。
「...そっか、ありがとう。でもいくらなんでもこんな時間に来なくても....」
「それはそうなんだけど.....とにかく受け取って!中身は....開けてからのお楽しみってことで!」
「うん。家に帰ってから開けるね」
紙袋を受け取ると、カズサは足早にシャーレから帰っていってしまった。
さて、プレゼントの山に加えて....と、山があったデスクの方へ向き直る。
しかし、そこにはなにもなかった。
....プレゼントが跡形もなく消えている。
....まさか私が仮眠をとっている間に、誰かが盗んだとでも言うのだろうか
.....私が眠っている間にシャーレに出入りした人物といえばカズサだが....
まさか、カズサがそんなことするとは到底思えない。
なら一体誰が.....
何より、私の為に用意してくれた生徒たちがあまりにも可哀想だ。
...仕事に戻ろうともそのことばかり考えてしまって、全く手につかなくなってしまった。
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グチャリ、とケーキが潰れる感触がする。
私は先生が寝てる間に持ち帰った、先生へのプレゼントだったものを、ただひたすらに“処分”し続けていた。
先生と『お近づき』になろうとするやつらのプレゼント。
形は違えど、本質はどれも“あの子”と同じだ。
先生に近づこうとする私以外の生徒。女。
プレゼントの中にあるケーキも、よくわからないアクセサリーも、添えられた手紙も、全てぐちゃぐちゃにする。
...他の生徒の気持ちを、ぐちゃぐちゃに踏み躙る。
どういうわけか、それをする度に、何故か安心する私がいる。
先生の誕生日を祝えるのは、私だけでいい。
先生は、私だけを見ていればいい。
先生を独占するのは、私だけでいい。
....私だけでありたい。
先生の時間から、先生のナカまで、全部。
だから、あのプレゼントを渡した。
「先生、しっかり食べてくれるといいな......」
月明かりの下、散乱したプレゼントボックスが白く照らされていた。
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....結局、朝帰りになってしまった。
仕事を終え、机に貰ったプレゼントを並べる。
....とは言っても、無事持って帰ってこれたのはカズサの分だけなんだけど。
カズサからのプレゼントは、とても大きなケーキだった。
あの有名ブランド、『アーリントン・スイーツ』のショートケーキ。
....なんと、ホールの。
まあカズサが私のために選んでくれた物なのだ。余程美味しいんだろう。
1人で食べ切れるかなぁ、なんて思いながら、切り分けたケーキを早速口に運んでみる。
「.....っっっ?!?!!」
あまりの衝撃に、思わずケーキを吐き出してしまった。
口に入れた瞬間に広がる、甘さを掻き消すような鉄臭い味。
いちごの酸味も、生クリームの甘さも全て無かったように強く口の中に残る鉄の味。
まるで血を食べているようなケーキに、全く食指が動かなかった。
とはいえ、生徒が私のためを思って渡してくれたもの。
長い戦いの末、なんとか切り分けた分の半分は食べ切ることができたが、まだまだホールのケーキは残っている。
「もう....流石にギブかも....」
「....というか、鉄臭いケーキってなに...?」
何かケーキの製作過程でとんでもないミスがあったのだろうか?
彼女の気持ちを思うと本当に心苦しかったが、残ったケーキは未来の私がなんとかするだろうということで、残しておくことにした。
そして、次の日。
カズサがシャーレにやってきた。
まあしばらく前、午前2時に会ってはいるのだけど。
「やあ、カズサ。来てくれたんだね。」
「....うん。偶々近くを通ったし、ちょっと寄っておこうかな〜って」
「そっか。来てくれて嬉しいよ。ありがとう」
「........もう、先生、そういうことみんなに言ってるんでしょ...?ほんっとにやめた方がいいからね....?」
そういう彼女の頬は少し赤く染まっている。
うん、普段通りのカズサだ。
「....そういえばさ...」
少し話したところで、彼女が話を切り出してくる。
「前に渡したプレゼント....ちゃんと全部食べてくれた?」
プレゼントというのは、十中八九あのケーキのことだろう。
頭の中にあの苦い思い出が蘇る。
「あ、ああ。もちろん。ケーキだったよね。美味しかったよ。」
「ふーん....それなら...よかったけどさ」
全く食べられていないということがバレてはまずい。
多分、上手く誤魔化すことができたと思う。
そのあとは特にケーキについて聞かれることもなく、少し雑談をしてからカズサは帰っていった。
今日はなんとか仕事を早く終わらせて、1日が終わる前に家に帰ることができた。
自宅に着いた私は、いつものように鍵をカチャリと開けようとして....手を止めた。
.....鍵が開いてる....?
嫌な汗が背筋を伝う。
玄関のドアノブに手を掛けると、なんの抵抗もなくガチャリとドアが開いた。
家の中は真っ暗で、何も見えない。
「だ、誰かいるのか....?」
電気をつけてみるが、誰かいそうな気配はしない。
とりあえず武器になりそうな、玄関に置いてあった傘を強く握りしめながら、ゆっくりと部屋の中を確認する。
恐怖で震える足にも構わず、リビングに視線を向けた瞬間。
「...せーんせ。」
突如、後ろから聞き馴染みのある声が聞こえた。
「か、カズサッ...?!?!!」
咄嗟に後ろを振り返った瞬間、みぞおちに衝撃が走る。
思わず握りしめていた傘を落として、私もその場にうずくまってしまう。
そばにあった私の傘を取り上げたカズサは、私の目の前へ乱暴にケーキの箱を置いた。
「...これ、私があげたケーキだよね?なんで全然食べてないの?」
「あ....いや....」
倒れ込んだ私にしゃがみ込むようにして、彼女は続ける。
「美味しかったって言ってくれてたのにさ....アレ、嘘だったんだ?」
「ち、ちがうんだ、嘘じゃなくて」
「やっぱり、先生は私なんかより他の子の方が好きなんだね。私があげたプレゼントなんかどうでも──」
「そ、それは違うよ!!!」
カズサの言葉に対して、我ながら驚くほど大きい声が出てしまった。
「その...嘘ついたのは...ごめん。でも、カズサの事が嫌いなんてことはあり得ないよ」
「...じゃあ、なんで...」
「...カズサも食べてみたらわかると思うけど...その....」
「.....味の問題?」
「う...うん....」
言葉を濁すと、言葉を濁すと、カズサは何か悟ったような反応をした。
「...結構鉄臭かったかな?」
「ま、まぁそんな感じかな....よく分かったね?」
「うん。知ってるよ。だってこれ作ったの、私だから」
「....え?」
なんと、ブランド物だと思っていたケーキは、カズサの手作りだったようだ
「ふーん............そう....味がダメだったんだ。私みたいに、先生も私のことを感じて欲しかったのになぁっ....!!!」
そう言うと彼女は、側にあったケーキを持っていた傘でぐちゃぐちゃに潰してしまった。
「カズサのことを....感じる....?」
「血液とか唾液とか爪とか....そういう私の身体から作ったものを食べたら、その間はずっと私と先生は一緒だよね?....私、結構頑張って作ったんだよ...?」
「か、カズサ...?」
カズサは涙で濡れた目で、私に訴えかけるようにそう言った。しかし、カズサの言っている意味が上手く理解できない。
ただ恐らく彼女は、自暴自棄になっているように見えた。
落ち着かせなければ――そう思った矢先、
「.....なに、その顔....」
「....そう、ほんとに私のこと嫌いになっちゃったんだ?」
私の表情を『拒絶』と受け取った彼女に、なんとか弁明を試みる。
「ち、ちがうよ、そうじゃなくて」
「違わないでしょ、何も!!!」
激昂した彼女は、傘の先端を私の顔すれすれへ突きつけた。
命の危険を感じた私は、咄嗟に立ち上がって、なんとか彼女を宥めようとする
「ま、待って、一旦冷静に....」
「.....私はっ!!!先生にずっと側に居て欲しかった!!私だけを見ていて欲しかったの!!!」
「.....私だけの先生でいて欲しかった....!!」
「.....でもさぁっ....!!嫌われちゃったらもう、私....!」
「.....どうすればいいのかもう、わかんないよ!!!!」
「か、カズサ.....」
「そもそも私をこんな風にしたのは先生なんだからさぁっ!!先生が責任取ってよ!!」
なんとか宥めようと近づく私の襟元を掴んだカズサは、私を強く突き飛ばす。
カズサの強い力にバランスを失い、大きく体勢を崩してしまう。
部屋に、ゴンッと鈍い音が響いた。
打ちどころが悪かったのか、頭がものすごく痛い。
全身に上手く力が入らず、その場に倒れ込んでしまう。
「....先生っ、大丈夫...?!」
カズサが駆け寄ってくる。
よかった、カズサは正気に戻ってくれたらしい。
何か言おうと思ったが、上手く言葉を発することができない。
それどころか、視界が少しずつボヤけてきて、耳も聞こえづらいような気がする。
....後頭部が熱い。
「先生っ、私っ....早く、救急車を.....」
「お願い、先生、ごめ、な、さい……っ、やだ、せん……っ」
必死に私に語りかけてくるが、段々その声も遠くなっていく。
「カズ......サ.......」
最後の力を振り絞って、最後にカズサに”ごめん“を伝えなければならない。
こうなったのも、全て私が悪いのだから。
「....ごめっ........ん....ね......」
私が、あの日カズサに何も言わなければ
毎日のように来るカズサを、認めてあげられていたら
こうはならなかったのかもしれないのに。
....私は、目の前が真っ暗になった。