テンプルナイトの最後   作:dwwyakata@2024

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4、最後

葬式が行われる。

 

自警組織ガーディアンに入ったばかりのミライは、敬礼をして棺桶を見送る。

 

既にセンターは解体され。

 

大魔王ルシファーは人間世界への侵攻を諦め。

 

裏で糸を引いていた四文字の神は英雄アレフに打倒された。

 

その過程でザインが倒れたそうだが。

 

ミライには関係がない。

 

ミライは敬礼しながら、涙を堪えるのに必死だった。

 

棺桶の中にいるのは、リンネ隊長。急死だった。事件性はなく、自室で眠るように死んでいた。死因は脳卒中で。見つけた時には既に命の火は消えていた。

 

自警組織ガーディアンの初期から隊長を務め、必死に悪魔から人々を守った、影の英雄。

 

様々な苦難の中、それでも人々を避難誘導し。

 

今では体が変異してしまった人々も各セクターで受け入れ、人類の復興作業が行われているが。

 

その過程で起きた様々なもめ事にも最前線で対応し。

 

そして命をすり減らしていった「不屈の騎士」。

 

最後のテンプルナイトこと、リンネ隊長。

 

リンネ隊長は、魔王アバドンにまるごと食われてしまったバルハラでミライを助けてくれた人だった。

 

そして、大人になってからは、ミライの上官だった。

 

この人にだったらついていける。

 

そうミライは思った。

 

だけれども、無理に無理を重ねた人生だったからだろう。

 

死んだ時は四十少しだったと聞いているが。

 

それでも、老人のように老けてしまっていた。

 

それなのに、プラズマ剣の技術も、魔術についても。生半可なガーディアンの隊員では勝てない程のものだったが。

 

棺桶を焼いて、遺骨を拾って。

 

そして墓に収める。

 

辺りは緑の沃野。

 

センターが言っていた、外は一面の荒野だというのは大嘘だ。既に核汚染の影響はどんどん減ってきていて。

 

勿論ゼロになったわけではないが、それでもこうして緑が戻り始めている。

 

その一角には、センターによるメシアの創造の過程で使い捨てにされた人々の墓がある。

 

テンプルナイトだった戦士達の墓も。

 

多くのテンプルナイトはエリート扱いで、特権意識を鼻に掛けるような輩も多かったそうだが。

 

リンネ隊長のように、立派な人もいた。

 

立派な人からセンターに殺された。そうリンネ隊長は言っていた。そう思うと、やりきれなかった。

 

葬儀を取り仕切ったのは、今や人々の長をしているアレフである。

 

アレフは結局作られた存在であることを今は明かしている。それに、好きだった人を失ったからなのかも知れない。

 

最後まで結婚するつもりはないらしい。

 

血統による権力継承の愚を犯さないためとアレフは言っているようだが。

 

同じように作られた存在だったベスという人の事を、忘れられないのかもしれなかった。

 

アレフは老けている様子もない。

 

葬儀が終わると、解散する。

 

これで、テンプルナイトは終わった。

 

元テンプルナイトだった人はまだ数人生きているが。

 

それも、自分がテンプルナイトだったことを口にすることもない。

 

ミライも、そういって自慢している人は見たことがない。

 

なんだかんだで、今でもテンプルナイトはイメージが悪いから、かも知れない。リンネ隊長の活躍は誰でも知っているが。

 

それでも、決して拭いきれないほど。

 

テンプルナイトの歴史は、センターによる弾圧の歴史と、深く噛んでいるのだった。

 

セクターに戻る。

 

まだ雑魚悪魔は出るので、どうしても仕事はある。

 

ミライはそれなりに素質があるらしく、特に魔術についてはリンネ隊長が自分以上だと褒めてくれていた。

 

でも、人間の常識の範囲内だ。

 

ガーディアンには、人間に友好的な悪魔も参加しているから、その力の凄まじさは見て良く知っている。

 

そういう意味では、驕ることはないという意味で。

 

良い環境にいるのかも知れない。

 

新しく隊長に就任した、クーフーリンに指示を受ける。

 

ケルトの英雄戦士であるこの人は、誰からも慕われていた。

 

「ミライ隊員。 新規に作られている第六エリアで、ガイア教徒がもめ事を起こしているようだ。 暴動に発展する前に、仲裁に向かって欲しい」

 

「分かりました。 すぐに」

 

「頼んだぞ」

 

数名のガーディアンとともに向かう。

 

同僚がぼやいた。

 

「せっかく悪い奴が全部アレフ様に倒されたっていうのに、まだもめ事なんか起こそうとしやがって」

 

「人間が人間である以上仕方があるまい。 ともかく、大事になる前に片付けるぞ」

 

「ミライ隊員は、最悪の場合魔術で相手の動きを止めてくれ。 肉弾戦は俺たちで対応する」

 

「わかりました!」

 

ターミナルを用いて、現地に。

 

現地では、既に喧嘩が始まっていた。

 

眠りの魔術を用いて、まとめて全員眠らせる。ガイア教徒は悪魔召喚プログラムを使おうとしていたようだし、下手をすると血を見るところだった。

 

ガイア教は別に信仰してかまわない。

 

だが、他人にそれを強要してはいけないし、迷惑を掛けても行けない。

 

これだけのことなのに、どうしても守れない人がいる。

 

テンプルナイトは終わっても。

 

まだ、私のような仕事をする人間は必要だ。

 

暴れていた者達を拘束すると、私はそう思う。

 

尋問は別のガーディアン隊員の仕事だ。

 

ただ、それでも。

 

力仕事だし。命がけの仕事でもあるし。

 

しかしながら、引き継がれた意思による、やりがいのある仕事でもあるのだった。

 

 

 

(終)







リンネの意思は受け継がれました。

決してこの後の世界は楽ではないでしょうが。

それでもその意思は確かに脈付いているのです。




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