宮廷の遊撃人   作:らりるれリッター

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第25話 邂逅②

 

 

「この方が黒崎一護さん……!!」

 

 

懺罪宮(せんざいきゅう)にて銀華零と白哉が相対する中、橋の下より1人の死神が飛んできた。

その死神はオレンジ色の髪をして、身の丈ほどの大刀を持っていたことから、銀華零は旅禍(りょか)の1人黒崎一護本人だと断定していた。

 

 

『思いもよらなかった。まさか雷花さんを一撃で……』

 

 

 

銀華零は一護の持つ隊長と何ら遜色ない霊圧よりも、掌底で山吹を一撃で気絶まで持って行ったことに驚愕していた。

その気が無かったとはいえ、【十四番隊・第二将”次鋒”】の地位を任される実力がある山吹を打ち負かすことが考えられなかったからである。

 

 

「大丈夫か?花太郎。悪いな、先に行かせて逆に怖い目に会わせちまって」

 

「いえ、大丈夫です……」

 

 

花太郎の無事を確認した一護は啞然と見つめる朽木ルキアの方へと寄った。

一護を見つめるルキアの顔には複雑な感情が入り乱れて表情として出ていた。それは危険を冒して自身を助けに来てくれたことへの喜び、そして巻き込んでしまったことへの後悔だった。

 

 

「待たせたな、ルキア。助けに来たぜ」

 

「…………」

 

「なんだその顔。助けに来てやったんだから、もうちょっと嬉しそうにしろよ」

 

莫迦(バカ)者、来てはならぬと言ったはずだ。ボロボロではないか……莫迦(バカ)者……!!」

 

 

「……まったくだ」

 

 

一護は立ち尽くす浮竹と銀華零。こちらを見据える白哉。そして目立った傷は負っていないが、気絶して倒れている岩鷲を見てそう呟いた。

 

 

「あとでいくらでも怒鳴られてやるよ。朽木白哉(あいつ)を倒して、全員でここから逃げた後でな」

 

「大層な口を聞くな、小僧……」

 

 

ガキンッ!!

 

 

「……!!」

 

 

その光景を見ていた白哉は斬魄刀を構えて再度始解をしようとしていた。銀華零はそれを察知して再び白哉に斬りかかっていた。

白哉は幾度となく邪魔に入る銀華零に対して、徐々にだが苛立ちを(つの)らせていた。

 

 

「あなたの始解でこの場が荒れるのは良しとは出来ないと、私言いましたよね。そして黒崎一護さん、あなたもいちいち朽木六番隊隊長を挑発をしないでください。話がややこしくなります」

 

 

銀華零は白哉を抑えると同時に無駄に挑発をする一護のことを(たしな)めた。いくら自身が白哉を抑えようとも一護の挑発に乗った白哉が卍解をする選択肢を取れば話が大きく変わってくるためである。

 

 

「あんたどこで俺の名前を」

 

「そんなことは後で教えます。兎角(とかく)、今はお互いに手を引いてください」

 

「……銀華零白、(けい)が斬りかかることを私が予想していなかったと思うか?」

 

「はい?」

 

「”破道の四”『白雷(びゃくらい)』」

 

 

白雷(びゃくらい)』の言葉と同時に指先から光線が放たれ銀華零の左肩を貫通した。

白哉は銀華零が一護の方へ意識を向けている最中に人差し指を銀華零の左肩に向けていたのだ。

 

「くっ……」

 

 

強力な鬼道ではないとは言え、傷を負った銀華零は思わず顔をしかめた。

一方で、銀華零に決定的な隙を作った白哉は一護を始末せんと斬りかかったが、一護には瞬歩で向かってくる白哉の動きが見えており斬撃を受け止めた。

 

 

ガキンッ!!

 

 

「見えてるぜ。朽木白哉」

 

「私の剣を一度止めたくらいで調子に乗るな。小僧」

 

 

ガキンッ!! ガンッ!! ガキンッ!!                     

 

 

幾度の斬撃の応酬の後、白哉は一護の言うように自身の動きがある程度見えていることを確信した様子だった。

 

 

「……成程、どうやら思っていた以上に腕を上げたと見える」

 

 

そしてこのままでは殺すにしても時間がかかりすぎると判断した白哉は銀華零と距離が取れたこともあり、幾度目かの始解のための構えに入った。

 

 

「仕方がない、その力に自惚れる前に見せておいてやろう。千年あがいても埋めようのない。力の差と言うものを」

 

「はぁ……本当にこの人たちは……」

 

 

互いに引こうとせず、戦いを続ける一護と白哉に銀華零は苛立っていた。

その為か辺りの気温が少しだがったように感じられた。しかしそれはまだ銀華零の雰囲気が少し変わったと違和感を感じる程度のものだった。

 

 

「”()れ”―――――」

 

 

スルスルスルスルスル...

 

銀華零の事など気にもせず、一護を討伐せんと始解しようとした白哉だったが、それは包帯のようなものが斬魄刀に巻き付くことで阻止された。そしてその末端は褐色肌の女性に握られていた。

 

 

「貴様は……」

 

「久しぶりじゃのう、白哉坊」

 

「……四楓院(しほういん)夜一(よるいち)か」

 

「誰ですか?」

 

 

夜一の事をまったく知らない花太郎は隣に居た朽木ルキアに聞いていた。しかしルキア自身も四楓院夜一と言う名前は聞いたことがあれども、それ以上の情報は持ち合わせていなかった。

 

 

「分からぬ、だが聞き覚えのある名前だ」

 

「……先代隠密機動総司令官(おんみつきどうそうしれいかん)、及び同第一分隊(だいいちぶんたい)刑軍(けいぐん)統括軍団長(とうかつぐんだんちょう)・四楓院夜一。姿を消して百余年、死んだものとばかり思っていたが……」

 

「…………」

 

「サンキューな、夜一さん。だけど(わり)ぃな。俺はそいつを倒さなくちゃならないんだ」

 

「おぬしがあやつを?……愚か者」

 

 

次の瞬間、夜一は一護に手刀を食らわせた。2人の会話から一護たち旅禍(りょか)を連れて来たのは夜一であることは、雷山からの情報で知っていた銀華零以外の全員がそこで知ることとなったが、それ故に夜一の行動はその場に居た者全員を驚かせた。

 

 

「なにを……がはっ……!!」

 

 

夜一は手刀の中に薬を紛れ込ませており、それを受けた一護はまるで眠るように気絶した。

 

 

「……薬か。穿点(がてん)崩点(ほうてん)か、強力な麻酔系の何かを内蔵に直接叩き込んだな。彼をどうする気だ?夜一」

 

「浮竹……」

 

「何をしようと無駄だ。私がいる限りこの場から逃げることは出来ん」

 

「大層な口を聞くようになったのう、白哉坊。おぬしが鬼事で一度でも儂に勝ったことがあったか?」

 

「ならば、試してみるか?」

 

そこまでです!!

 

 

怒号と共に、白哉と夜一に強大な銀華零の霊圧が降り注いだ。その霊圧はまるで全身を氷漬けにされたかのような冷たく凍えるような霊圧だった。

 

 

「なんじゃこの霊圧は……」

 

「くっ……!!」

 

 

現役の隊長である白哉と元隊長である夜一の2人ですら、銀華零が浴びせる霊圧の前に冷や汗をかき戦慄を覚えていた。それほどまでに2人と銀華零には霊力差があった。

 

 

「いい加減にしてください朽木六番隊隊長……いえ、朽木白哉。私は何度も警告しているはずです。あなたの始解でこの場が荒れることは良しに出来ないと」

「これ以上私の警告を無視するようならば、処罰覚悟であなたを殺しますよ」

 

(けい)が私を殺すだと?……成程、傲りもそこまで来ると―――……」

 

 

その時、朽木白哉は自身が身に纏う死覇装と隊長羽織の一部が斬られていることに気が付いた。

すぐに白哉は銀華零が斬撃を放った結果だと推察したが、驚くべきことに銀華零は利き手側である左肩を負傷していてもなお、動いた様子が一切感じられないほど先程とまったく変わらぬ立ち姿をしていた。

 

 

「言っておきますが、その程度の斬撃などまだまだ私の全力ではありません。もし私のこの言葉がハッタリだと思うのならば、かかって来てもらっても構いませんよ」

「……まあ、相応のご覚悟をしていただくことになりますが」

 

 

そう言う銀華零は酷く冷たい目をしており、明らかな殺気と殺意が漏れ出ていた。

それはその場にいる全員が感じ取れるほどであり、銀華零が十三隊隊長であった頃を知る浮竹も101年前に1度直に話したことがある夜一も普段の姿と言えるその時との雰囲気の変わりように息を飲んでいた。

 

 

「……良いだろう。この場の始末は(けい)に任せる。あとは好きにするがいい」

 

 

自身以上、下手をすれば元柳斎にすら届くやもしれぬ程の霊圧を放つ銀華零とこの場で()り合ったとして、ただでは済まないと判断した白哉はそのリスクを負ってまで一護をこの場で討伐すべきでないとして斬魄刀を鞘に収めた。

そして銀華零がいる方とは反対の方向へ歩いて去って行った。

 

 

「おい、白哉!ったく、ホントに勝手な奴だよ……」

 

「はぁ……」

 

 

緊張の糸が解けたからか、白哉がいなくなると同時に木ルキアは気絶してその場に倒れ込んでしまった。

 

 

「ルキアさん!」

 

 

花太郎は倒れたルキアを心配して駆け寄った。それを尻目に銀華零は殺気と殺意を抑えると同時に、白哉が去り穏健派の浮竹しかいないこの状況を好機と見た。

 

 

「……浮竹十三番隊隊長。私が今から口にすることを内密にお願いできますか?」

 

「あ、ああ……」

 

「四楓院元隊長、ひとまずはその黒崎一護さんを背負ってこの場を去ってください。わたくしたちは今、山本総隊長より朽木ルキアさんの警護を含めたこの場の秩序維持を任されている身、これ以上この場に留まるようならばあなた方を討伐しなければならなくなります」

 

「……”雷神狼(じんろう)”雷山悟が言っておった事とはえらく違うのう」

 

「今は状況が状況と言うだけの話ですよ。先刻、雷山悟と会ったことは知っています。その際に我々は朽木ルキアさんの処刑阻止を前提に動くとお伝えされたはずですが、その言葉は信じてもらえると助かります。朽木ルキアさんだけではありません。黒崎一護さんを始めとした旅禍(りょか)の方々の死も我々としては避けたい事なのです」

 

「……確かに先程の白哉坊との一連の流れを見ておれば察しが付くが、何故この絶好の機会を手放せと言うのか教えてもらえるか」

 

「あなたと2人きりだったならばお伝えしましたが、今の状況ではそれは出来ません。ただ、私たちが動いている理由が大いに関係していて、それが漏れるわけにはいかない、とだけはお答えしておきましょう」

 

「成程……そちらにも事情があるのは分かった。とすれば、この場は儂が退くことで治めようかの」

 

「ええ、お願いします。……ああ、それから1つだけ。黒崎一護さんですが、血気盛んなのは大いに結構ですが、若さ故に無茶をする癖があるようです。もう少し自重を覚えさせることをお勧めしますよ」

 

「分かった。じゃが、それが出来れば苦労はせん」

 

 

夜一はそう言い残すと瞬歩ででその場を去って行った。

 

 

「……今の会話を山本総隊長に報告しますか?浮竹十三番隊隊長」

 

「いや、俺はこの場では何も聞いていない。そうだろ?”写鏡(うつしかがみ)”銀華零白隊長」

 

「よく私の事を知っていましたね。顔を会わせるのはこれが初でしょう?」

 

「狐蝶寺隊長から銀華零隊長と雷山隊長の話はよく聞かされていたのですよ。ここ数日十四番隊をよく見かけますが、今回の案件は十四番隊が動かざるを得ない程なのですか?」

 

「…………」

 

 

浮竹は痣城剣八の一件で【宮廷遊撃部隊】”十四番隊”の存在を知っていた。そして最近では朽木ルキアの処刑阻止の声を上げてもらう形で巻き込んでいることも銀華零は分かっていた。

しかし十四番隊が何故そこまでして動いているのかを話してしまえば、浮竹の責任問題にも関わってしまうため答えに迷っていた。

 

 

「……内密にお願いできますか?それが話す条件です」

 

「ええ、勿論です。しかし今はまずいですね。少しお待ちいただいても?」

 

「構いませんよ。浮竹十三番隊隊長以外に聞かれることの方が問題に成り得るので」

 

「分かりました。おーい、仙太郎!清音!出て来てくれ!」

 

「「お呼びでありますか。隊長!」」

 

 

浮竹のその掛け声で待ってましたと言わんばかりに隠れていた小椿と清音が意気揚々と出てきた。

しかし浮竹はそもそも連れてきた覚えはなかったため、半ば呆れた様子だった。

 

 

「やっぱり付いて来ていたか。いつから居た?」

 

「自分が聞こえたのは『物騒だな。2人とも』とおっしゃっておりましてぇ!」

 

「最初からか。危ないから付いてくるなって言ったろう」

 

「申し訳ありません!自分は隊長を尊敬しております故、こっそりついてこずにはいられませんでした!」

 

「ああ!ズルいぞ小椿!」

 

 

それまで黙っていた清音はそう言って仙太郎を抑えて自身の方が浮竹のことを尊敬していると言い始めた。それに続いて再度仙太郎の方も自身がさらに尊敬しているとある種の言い争いのように発展した。

 

 

「はぁ……まあいい。清音は四番隊に連絡を、それから仙太郎は朽木をもう一度牢へ入れてやってくれ」

 

「「はい!」」

 

 

仙太郎は朽木ルキアを診ていた花太郎を引き離すと優しく抱きかかえた。

 

 

「すまねぇ朽木、俺様と隊長が上に掛け合ってすぐに牢から出してやるからな」

 

「……」

 

 

浮竹は気絶させられ倒れている岩鷲を静かに眺めていた。その目からはどこか懐かしさを感じているような、後悔をしているような雰囲気を感じられた。

 

 

「あの……」

 

「『何故僕らを助けるのか』と?」

 

「はい……」

 

「助けるとも。藍染を殺った犯人が分からない以上、調査も無しに殺せないさ。それに何より、たとえ手段は悪くとも俺の部下を牢から救い出そうとしてくれた。そんな奴らを見殺しになんて出来るものか」

 

「うっ……ここは……?」

 

 

その時、一護の掌底を受け気絶していた山吹が目を覚ました。

 

 

「大丈夫ですか?雷花さん」

 

「な、なんとか……はっ!先程の旅禍(りょか)は!?」

 

「行ってしまいましたよ。四番隊がじきに来ると思うので雷花さんも一度診てもらってください。黒崎一護さんに一撃もらっていましたからね」

 

「恥ずかしながら……それと、ありがとうございます」

 

 

 

 

 

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * *

 

 

 

 

 

「春麗、戻っているか?」

 

 

同時刻、雷山の姿は十四番隊詰所にあった。

急遽『五番隊隊長代理』への就任が決まったため詰所に戻っているはずの狐蝶寺に今の状況を説明するため一度立ち寄っていたのだ。

 

 

「おかえり♪」

 

「おかえりなさいませ、雷山部隊長」

 

 

部屋に入ると狐蝶寺だけではなく浮葉の姿もあった。

その事から雷山は何か理由があって一度ここへ帰還したのだろうと推察した。

 

 

「浮葉も戻っていたか。旅禍(りょか)たちはどうだった?」

 

「茶渡泰虎と言う旅禍(りょか)に遭遇しました。八番隊隊舎付近まで同行しましたが、そこで京楽春水に遭遇したため私が足止めする形で別れました」

「その後、彼は懺罪宮(せんざいきゅう)へ向かったと思われます。その後を追おうと思いましたが、先に藍染惣右介が動きを見せたのでこちらに帰還いたしました」

 

「分かった。ひとまずご苦労だったな」

 

「総隊長のおじいちゃんは何の用事だったの?」

 

「それがだな、この忙しい時に『五番隊隊長代理』を要請して来た」

 

「……雷山くん、よければ代わってあげるよ?」

 

 

狐蝶寺がそう言うには理由があった。110年前、当時の十番隊隊長が殉職した時に『十番隊隊長代理』に選任されたのは椿咲だった。

それがあって狐蝶寺は『隊長代理』についてチャンスがあれば絶対やりたいと意気込みを見せていた。

 

 

「残念だが、それは無理だな。断ろうとも考えたんだが、俺を呼んだことが全てだと言われてしまった。それよりも2人とも椿咲から話は聞いたか?」

 

「藍染くんが死体で見つかったって話でしょ?それなら私は直に見たし、浮葉くんは京楽くんと戦ってるときに報告で聞いたんだって」

 

「そうか。……って、直に見た?」

 

「うん。その時の状況と含めて白ちゃんと話して出た結果を言うよ。まず藍染くんの斬魄刀なんだけど、幻覚を魅せる能力の発動条件が”始解を見せること”なんじゃないかって」

 

「”始解を見せること”?……そうか、だからか」

 

「そう言うこと♪それからもう1つ、藍染くんの斬魄刀の能力が何に作用するかを考えておかないといけないんだって」

 

 

狐蝶寺は銀華零に言われたことを雷山に説明した。

曰く、藍染の斬魄刀の能力が人や物に作用しているのか、人の視神経に作用しているのかであった。

雷山は聞いた限りの情報だと人の目に作用しているのではないかを考えていた。

 

 

「人や物に作用するなら触られたらバレてしまうだろ。何より101年前の説明もつかない。だが人の視神経、或いは脳や感覚に作用するなら101年前のことも死体が藍染本人と断定されることも説明がつく」

 

「成程……となれば、藍染惣右介はかなり厄介とも言える斬魄刀を所持していることになりますね」

 

「ああ、だが何かしろのリスクや見破る方法はあるはずだ。椿咲の『月華(げっか)』にもあるんだ。ないわけがない」

 

「じゃあ、南美ちゃんが戻って来る待ちだね」

 

「……悠長に構えていられればいいんだがな」

 

 

雷山は藍染が死を偽装してまで潜伏を始めたことに一抹の不安を感じていた。

【護廷十三隊】を手玉に取る藍染が何故わざわざ死を偽装する必要があったのか分からなかったためだ。

 

 

「ともかく、俺は隊長代理の方で時間が割かれる。藍染の死体についてはこの後俺が直接確認に行く。2人は椿咲が戻って来るまで留守を頼みたい」

 

「オッケー♪」

 

「かしこまりました」

 

「あっ、一応言っておくがあまり大事にならなければ、何をやるのは自分の判断で構わないからな」

 

 

 

 

 

* * * * * * * * * * * * * * * * * * * *

 

 

 

 

 

「あなたが来られるのは珍しいですね」

 

「仮にも俺の後代だからな。顔くらい見にきてやるのが筋だろう」

 

 

雷山は十四番隊詰所を後にした後、四番隊隊舎敷地内にある総合救護詰所へとやって来ていた。

その目的は藍染の死体を確認することであり、検死を担当した卯ノ花に死因等と聞くことで、幻覚を魅せられている者たちにはどう見えているかを探るためだった。

 

 

「相変わらず変なところで律儀ですね」

 

「変なところでと言うな。それよりも藍染の死因はなんなんだ?」

 

「通達が来ませんでしたか?」

 

「来てないな。その騒動の時はまだ緊急任命される前だからな」

 

「……そうですか。死因は斬魄刀による鎖結及び魄睡の摘出と心部破壊です。現場の状況から鑑みて、他殺を言うほかありませんね」

 

「他殺……という事は例の旅禍(りょか)なのか?」

 

「それはまだ不明です」

 

「そうか、それも後で調べないといけないな」

 

 

雷山は一護たち旅禍(りょか)がこの件に一切関わってないことは知っていたが、それを卯ノ花に話しておらず、迂闊に話すこともできないために口から出まかせを言っていた。

 

そうして会話しているうちに藍染とされる遺体が安置される部屋に着いた。

部屋に置かれるベッドの上には確かに遺体が横たわっていたが、雷山の目には藍染惣右介とは映らなかった。

 

 

「……確かに、藍染だな。(まが)うことなく」

 

「ええ、既に【七番隊隊長】狛村左陣、【九番隊隊長】東仙要両名に確認及び立ち合いをいただきました」

 

「……そうなのか」

 

 

卯ノ花が東仙の名を口にしたことで、雷山は東仙が幻覚が正常に機能しているかを確認するために来たのだと考えていた。

そして自然を装って遺体の顔のあたりを直に触り、遺体が幻覚で作り出されたものではなく、別人の本物の遺体を藍染の遺体に魅せているのだと確信した。

 

 

「……よし、顔も見たことだし俺は隊舎に戻る」

 

「雷山隊長、1つだけよろしいですか?」

 

「なんだ?」

 

「”何かを考えている”」

「私にはそう思えるのですが、違うますか?」

 

「……さすがに鋭いな。だが、()()()()な」

 

「……そうですか。申し訳ありません、このようなところでこんな質問をしてしまって」

 

「気にしないでくれ。それに、これ以上むやみに怪我人が増えることは出来るだけしないつもりだから安心してもらいたい」

 

 

 

 

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