ある可能性のお話 〜名も無き少女に祝福を〜 作:wasirunoguchi
今回は早川家のお話です。
刺客襲撃から翌日、アキのマンションにて
デンジ「ふぁ〜…。おはよ〜っす。」
アキ「おはよう。まだ眠そうだな。」
デンジ「あの人形野郎とやりあったからな…。寝ても寝たんねーよ。」
サンタクロースとの戦いから翌日。大きな欠伸をしながらデンジがキッチンで料理をするアキに挨拶する。
アキ「パワーはまだ寝てるのか?なんかドタバタしてたみたいだが。」
デンジ「ああ…。闇の悪魔が怖えーっつって一緒に寝たけど、あのバカ、寝ぼけながら噛みついて血ぃ吸ってきやがった。お返しに噛み付いてやったけど起きやしねえ…。」
アキ「…そうか、何とも無いなら良い。」
アキはデンジから部屋の騒動の顛末を聞くと料理に戻る。デンジもリビングのテレビを点けると、ニュースで昨日の戦いが報道されていた。
アキ「………デンジ。」
デンジ「あぁ~?」
アキ「闇の悪魔…、ヤバかったな…。」
デンジ「ああ。」
アキ「…でもお前や七篠さん、レゼさんは立ち向かって戦ってたな。…俺は恐怖で動けなかった。」
デンジ「そうだな。」
料理の音に混ざるアキの独白に、デンジはテーブルに頬杖をついてテレビを見たまま短く返事をする。
アキ「俺は今回何も出来なかった。闇の悪魔から訳の分からない力を貰ったがそれだけだ。どう使うのかも分からない。…お前や七篠さんともすっかり立場が逆転しちまった。」
デンジ「俺だって何も出来てねぇぞ。人形野郎に1回殺されて、地獄でレゼに庇われて、闇の悪魔にキレて殴りに行っただけだ。人形野郎はぶっ殺したけどよ。そんだけだ。」
アキ「そうか…。…なぁ、デンジ。」
デンジ「あんだよ。」
アキ「弱いな…、俺達。」
デンジ「……そうだな。」
そこで2人の会話は止まる。2人とも料理やテレビを見ているが、心ここに非ずの状態だった。それを現実に引き戻す様に玄関のチャイムが鳴る。
ピンポーン
アキ「…っ。デンジ、出てくれるか?」
デンジ「ったく。誰だよ、こんな朝っぱらから。」
ピンポーン
デンジが玄関へ向かう最中にもう1度チャイムが鳴る。デンジはドカドカと不機嫌そうに足音を鳴らし、勢いよく玄関を開ける。
「きゃ!」
デンジ「誰だぁ〜!?勧誘ならお断り……ってレゼ!?」
レゼ「…えへへ…。来ちゃった。」
玄関の先に居たのは手に買物袋を持ったレゼだった。服装は公安の制服ではなく、初めてデンジと出会った服。予期せぬ出会いにデンジが軽くフリーズする。
アキ「……デンジ?誰か来たのか?」
レゼ「レゼで〜す。お邪魔しま~す!」
デンジ「って、あ、おい、レゼ!」
フリーズするデンジの横をすり抜けてレゼが室内に入っていく。やましいことなど無いデンジだったが、何故か慌ててレゼの後を追う。
デンジがリビングに入ると、レゼがアキに向かって話しかけている所だった。
レゼ「早川さん、おはようございます。えっと…、朝早くからすみません。朝ご飯、作ってましたか…?」
アキ「おはようございます。朝からどうし……って、あぁ、なるほど。……少し待ってて下さい。」
挨拶し、少し気落ちしたレゼにアキがどうしたと訪ねるが、手にした買物袋を見て目的を察する。レゼに少し待っているように伝え、ほぼ終わりかけていた料理を皿に移しラップをしてから冷蔵庫に入れ、後片付けをする。
デンジ「なんだよ、アキ。なんで出来た料理仕舞っちまうんだ?」
アキ「馬鹿か、お前は。ハァ、………今作っていたのは昼飯ってことにしろ。朝飯はこれから作る。」
デンジの場を察していない言葉に、アキは溜息をつく。そしてレゼに向かって小さく頷いた。
アキ「レゼさんがな。」
デンジ「あ?レゼが?」
レゼ「う、うん!昨日デン…皆頑張ってたし、疲れてるかな〜って思って!……ダ、ダメかな?」
事態を察したアキがレゼにパスを送り、レゼが慌てて理由を話す。無意識ながら最後に顔を下に少し向け、上目遣いで確認するその仕草はスパイとして磨かれた技が光っていた。
デンジ「うぇ!?…いや、なんつーか……レゼは疲れてねーのかよ。頑張ったってんならお前も同じだろ?」
レゼ「!……ううん、大丈夫。さっきよりも元気になった!アキさん、キッチンお借りします!」
レゼが満面の笑顔でキッチンに立つ。買物袋から食材を取り出し、準備を進めていく。
デンジ「急に元気になりやがって。……俺も手伝うかな。」
アキ「逆に邪魔になるんじゃないか?」
デンジ「うるせぇ。お前は座ってテレビでも見てろ。」
アキ「はいはい、分かったよ。」
先程とは逆にレゼと共にキッチンに立つデンジとリビングでテレビを見るアキ。キッチンではデンジとレゼの会話が聞こえてくる。
途中、手伝っていたデンジが何かやらかしたのか、レゼの「それ砂糖だよ!デンジ君!」と言う声が聞こえたが、アキは何もせずに微笑みながらテレビを見ていた。
パワー「なんじゃ…うるさいのう…?」
料理が出来上がる直前、寝ぼけ眼でパワーが部屋から起きてきた。昨日寝る時は闇の悪魔を怖がりデンジと一緒に寝ていたが、寝たら元通りとなっていた。
キッチンのレゼには気付かず、リビングに座りアキと一緒にテレビを見る。
パワー「…ニュースつまらん…。アキ、飯はまだか…。」
アキ「お前な…。今デンジ達が作ってるから待ってろ。」
パワーがテーブルに突っ伏してアキに朝食をねだる。それを軽くあしらうアキ。
丁度その時、デンジがキッチンから食事を持ってきた。
デンジ「ほらよ、ってパワーいたのか。おめ〜寝ぼけて人の血を吸うんじゃねぇよ。」
そう言いながらテーブルに置かれたのはサラダ、ベーコンとソーセージ、オムレツにトーストという洋食のワンプレートだった。
パワー「……いいじゃろ、別に〜。減るもんでもなし。小さい男じゃ。」
レゼ「吸われたら減るんだよ。おら、そっちつめろ。レゼが来る。」
パワー「あぁ~ん?レゼ〜?」
料理で手が塞がっているデンジはパワーに動く様、足で促した。レゼという単語に反応しつつパワーは場所を移動する。
デンジがアキとパワーの前にプレートを置くと、続けてエプロン姿のレゼが両手にプレートを持って来た。
レゼ「お待たせ〜。」
パワー「げ、爆弾女じゃ。食ったら爆発するとかないじゃろうな…。」
レゼ「…吸血女も起きたの?嫌なら食べなくていいよ。貴女の為に作った訳じゃないから。」
パワーの言葉に、笑顔から一瞬で氷点下の表情になったレゼはそのままデンジと自分の場所にプレートを置く。場所は時計回りにデンジ、レゼ、アキ、パワーとなった。
デンジ「何でも良いから食おうぜ〜。いただきま~す。」
アキ「そうだな。レゼさん、いただきます。」
レゼ「あ!デンジ君!オムレツにケチャップかけるね!」
氷点下の表情から笑顔になったレゼは食べようとしたデンジに待ったをかけた。ケチャップを手に取り、デンジのオムレツに大きなハートマークを描く。
レゼ「よし、完成。」
デンジ「おめ~、恥ずかしいからそういうのやめろよ…。」
アキ「うん、美味い。あまりこうした朝食にはしないから新鮮だな。」
パワー「ふん。このくらいワシでも作れるわ。もちろん野菜などと言う毒は入れんがな!ほれ、アキにくれてやる。」
レゼが加わった朝食は、途中にレゼとパワーのデンジの取り合いはあったものの無事終わる。
デンジ「ふぃ〜。レゼ、ごちさん。美味かったぜ。」
レゼ「!あ、ありがとう、デンジ君!」
アキ「じゃあ片付けは俺がやるか。。パワー、皿持ってきてくれ。」
パワー「めんどくさいの〜、まったく。ワシの度量に感謝せぇよ。」
パワーがキッチンに皿を持っていき、アキが洗い物をする。テレビはついたままでアキが洗い物をする音だけが部屋に響いている。
そんな中、レゼが口を開く。
レゼ「あ、そういえばデンジ君は明日以降、何か用事はあるの?」
デンジ「んあ?いや、何もねぇよ。しばらくは休みだぜ?」
レゼ「じゃあ、どこかに………で、ででで、出掛けない…?」
少年をデートに誘う少女の顔にはこれまで生きてきた工作員としての表情等は微塵もなく、真っ赤にした顔は年相応のものにしか見えなかった。
デンジ「おう、俺は良いぜ。」
レゼ「いいの!?」
あっけらかんと誘いに乗るデンジに、レゼはつい聞き返してしまった。その表情は満面の笑みである。
レゼ「えっと、えっと、じゃあ」
デンジ「じゃあ後はアキとパワーだな。お〜い、なんかレゼがどっか行きてーみたいなんだけどどうだ?」
レゼ「え゛?」
デンジの発言に笑顔のまま固まるレゼ。丁度アキが片付けを終えてリビングに戻る。
デンジとレゼの会話が聞こえていたアキの表情は若干ゲンナリとしている。
アキ「……悪い、デンジ。よく聞こえなかった。誰と誰が出掛けるって?」
デンジ「んだよ。レゼがどっか行きてーみてーだから、お前等の予定はどうだって聞いてんだろ。」
アキは笑顔のまま固まっているレゼの表情をチラリと見て、憐れみの表情を浮かべる。デンジに「バカか、お前は!」と叫びたくなったが、こうもわかり易いレゼの想いを無碍にしたくはなかった。
アキ「……ハァ。悪いが俺はパスだ。明日から数日北海道に帰る。飯は作っておくからチンして食え。」
デンジ「え〜北海道!?ズリぃ!俺も行きてぇ!」
パワー「ワシも行きてぇ!」
アキ「……ハァ。墓参り行くだけだぞ。レゼさんと出掛けるんだろ?」
デンジ「いや、そうだけどよ………あ、なら4人で行かねーか!?そうなりゃアキは墓参りに行ける、俺とパワーとレゼはどっかに行けるじゃねぇか。」
アキはデンジが自分の墓参りに食いついてくるとは思わず、頭を抱える。コイツはこんなに察しの悪いヤツだったかと。妙な所は鋭いのに。
アキ「…家を空けてる間、ニャーコはどうすんだ?」
まだ負けじとアキはニャーコの世話について話す。流石にニャーコを連れて、とはいけない。
しかしこの時のデンジは何故か頭が回った。
デンジ「大家のバァちゃんか先生かナナシにでも預けようぜ。あの人達なら預かってくれんだろ。」
パワー「む…、まぁアヤツらならニャーコも安心じゃろう。なー、ニャーコ?」
ニャーコ「な〜」
アキ「……ハァ、分かったよ。」
アキは万策尽きたと言わんばかりに了承する。後で公安に連絡して了解を取らなければならないが。
デンジ「よっしゃ〜!!レゼ、聞いてたかよ!北海道だ!ホッカイドー!!」
レゼ「…え?なに、デンジ君!?ホッカイドー!?う、うん、ホッカイドーでも良いよ!?」
パワー「ホッカイドー如きで浮かれおって。ホッカイドー如き何回も行ったわ。あれじゃろ、ホッカイドーじゃろ?」
はしゃぐデンジに状況を掴めていないレゼ。相変わらず見栄を張るパワーを見て、アキはまぁ良いかと許可を取りに公安へ連絡しにいったのだった。
束の間の平穏、旅行の予定ーーーー
原作とは違えど道筋は似るーーーー
はたして旅行はどの様な道筋となるのかーーーー
北海道旅行前の早川家の朝食でした。
直ぐに旅行に行かず申し訳ありません。
ここいらでデンレゼ成分を補充致しました。
早川家の旅行はアキ関係で大事な部分と思いますので、オリジナル要素も入れつつ、大事に描きたいと思います。
次回もよろしくお願い致します。