少年は、少し早く来てしまっただけだった。

雨宮ノア、十四歳。
彼はある日、理由も十分に知らされないまま、特務機関ネルフへと呼び出される。
地下深くに広がる基地。
淡々と繰り返される検査。
「仮設四号機」と呼ばれる、黒い未完成のエヴァンゲリオン。

説明は受けた。
だが理解できないことばかりで、ノアはそれ以上考えないことを選ぶ。
考えすぎると、戻れなくなることを、彼は知っていたからだ。

やがて、ネルフにもう一人の少年が現れる。
碇シンジ。
彼こそが、この場所に“本来呼ばれた”存在だった。

ノアは戦わない。
ただ、見る。
選ばれる者と、選ばれなかった自分を、同じ場所から見つめ続ける。

やがて使徒が襲来し、戦いは避けられなくなる。
シンジが立ち止まった瞬間、
「念のため」として用意されていたノアの順番が、静かに回ってくる。

仮設四号機は、異常なまでのシンクロ率で応える。
その理由を、ノアは知らない。
両親がかつてネルフ職員だったこと。
二人が事故で亡くなったとされていること。
そして、その真実が、後に加持リョウジの口から語られることを、彼はまだ知らない。

式波・アスカ・ラングレーとの出会いは、衝突から始まる。
誰よりも互いを理解し、理解されてしまうがゆえに、二人は惹かれ合い、傷つけ合う。

これは英雄の物語ではない。
選ばれなかった者が、それでも戦場に立ってしまう話だ。

先に来てしまった少年が、
「本命ではない自分」と向き合いながら、
それでも誰かの隣に立とうとするまでの、静かで不器用な記録である。
  第一話 先に来てしまった
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