アルミンの再会シーンの順番を整理しました。
同期たちとはこの回で再会し、ヒストリアとはまだ会っていません。
よろしくお願いします。
壁上に撤退していると、屋根の上に人だかりができていた。
ガス管を叩くと、残量にはまだ少し余裕がある。
「サク、ついて行くぞ」
「今は俺らのリーダーだからな」
「うんうん、一人で行くなんて許さないからね?」
全部バレてる…。
一度助けただけなのに?いや、むしろ助けられた気がするけど…。
すごく信用されてる。
単騎で向かうつもりだったが、この三人は許してくれそうにない。
仲間を巻き込んでしまうことに一抹の申し訳なさを感じるが、曲げられないものがある。
「一緒に来て力を貸して」
「「「了解!」」」
———
「ごめんミカサ…エレンは僕の身代りに…」
屋根に着地すると同時に耳に入ってくる現実。
立ちくらみを起こし、膝から崩れ落ちそうになる。
胃液が込み上げ、吐き気を催すが、堪えないといけない。
座っている時間は一秒もない。
「サクにお前らも生きてたのか!心配させやがって」
「サクは死なないって言ったじゃない」
「アニの言う通りでした。ジャンはサクを舐めすぎです!」
ジャン、アニ、サシャにはかなり心配された。
負傷していると思われたのか、体をペタペタと触られる。
目にブレードを持ち体当たりしたせいで、返り血で汚れている。
今の自分は酷い匂いを放つ兵器みたいなものだから、触れない方がいいよ?
集まってきた同期に現状を聞くと、壁上に登るためのガスが足りず、頓挫していたらしい。
ガスを補給するには、巨人が群がっている拠点の奪還をしないといけないが、八方塞がりだ。
「…」
ミカサちゃんと目が合う。
感情を失った目からは昔のリアを彷彿とさせる。
背後にはアルミンが立っている。
生きていたことに胸を撫で下ろす。
「本部に群がる巨人を排除すればガスの補給ができ壁を登れる」
肩の荷が下りた気がした。
自分は他人の命を背負う選択ができる人間ではない。
3人の命を預かるのは、荷が重過ぎた。
「私は…強い———戦わなければ、勝てない…」
大切な人を失った今でも、強くあろうとする姿。
自分は、リアが殉死したと聞いて心折れずにいられるだろうか。
例え虚勢だとしても、同期も自分もミカサちゃんの言動に心を揺さぶられる。
胸の奥に熱いものが広がる。
「サク行きます!ざーこ、ざーこ!巨人の首も斬れない落ちこぼれ以下だ、みんなぁぁぉ」
…なんかオスガキみたいな煽りになったな。
誰も助からないと思っていたが思いの外効いたみたいでよかった。
ミーナとアニとジャンが血相を変えて追ってきた。
取り敢えず効いたみたいでよかったよ…。
ミカサちゃん、そして自分に続き、奮起させるような罵倒を吐く面々。
「サクは強いね」
「嘆いてる暇なんて1秒もない。終わったら一緒に謝ろう。
でも、まだアルミンには助けられる人がいる」
「僕は無力の、なり底ない兵士だから…なにも…」
「自分の友達は無力なんかじゃない。
なんたって、仲間のピンチに風穴開けるチームのブレイン、賢者アルミンだからね?」
「なにそれ」
アルミンが涙を流しながら笑った。
もう大丈夫だと確信して、速度を上げる。
———
解けない問題があると、躓いて先に進めないタイプ。
例え先の問題が解けても、知らないままテストを終えるバカだった。
「今だッ!!!巨人が少しでもあそこに集中しているスキに本部に突っ込め!」
途中、ガスが尽きて離脱したミカサちゃんを助けるために動いたアルミン。
その二人の補佐に回ったコニーは、ここにはいない。
今の指揮をとっているのはジャン。
本部を目指すためガスのない人を身代わりにする。
それは大勢の命を助けるための重要な選択。
頭では理解しているが心が拒絶してしまう。
本当に生きづらい性格をしている。
だけど、リアの横で笑いたいなら、この程度の困難くらい越えられなくてどうする。
「ジャン、自分は残るね」
「何言ってんだ!お前ここで死ぬ気か!クリスタはどうするんだ、会えなくなるぞ!?泣かせる気か!?」
「会うだけなら簡単だよ…
でもね、恋してる子には胸を張り会いたい」
スピ中にとって現状から逃げ帰るのは簡単なことだろう。
でも、それじゃダメなんだ。
リアが好きだと言ってくれた笑顔を忘れたら、合わす顔を他に持ってない。
日常に戻りたい。
これ以上、手のひらから溢したら戻れなくなる。
また手を繋ぎ、トロスト区でデートをしたい。
他愛もない会話をして、好きな子の隣でちゃんと笑いたい。
逃げない理由はそれで十分だ。
「エレンを超える馬鹿野郎だな。
サクは眩し過ぎて見てられねぇ、先に行ってるから必ず追いかけてこい」
ジャンに頭をぐしゃぐしゃと撫でられる。
お兄ちゃん…同い年だけどお兄ちゃん!?
ジャンの背中が後ろを飛ぶ同期にとっては大きく逞しく見えるだろう、リーダーシップのある人、正しい選択をできる人だから多くの人が慕いついて行く。
…ナック君、ミリウス君、ミーナちゃん?なぜ残っているんだい?
「リーダーが残るんだから残るだろ」
「後ろ姿がジャンと比べか細過ぎてな?放っておけないんだよ」
「血が滾るね。サク、昨日までの私じゃないからね!」
頼りないリーダーを慕う同期、グッとくるものがあり涙が出そうになる。
戦闘狂が混じっていなかったら声を出し泣いてたかもしれない。
「なぁんでぇだよぉぉぉ。ジャンについて行ってよぉぉ」
「泣くのは助けた後でしょ?サク班二度目の戦闘の開始!」
「「了解」」
ミーナちゃんがリーダーみたいになってない?
「サクが視界を奪ったら私たちが安全に仕留める!
ブレード使い切っちゃいな!」
「えっ!いいの?」
喰われた人の死体が転がっている、吐き気を堪え眼下に広がる巨人の群れを見下ろす。
ブレードを再び逆手に持ち二度の突撃を繰り返し二体の巨人の視界を奪うと、ナック君とミリウス君が素早くうなじを斬ってくれた。
鞘に残されたブレードは既にない、アシストのしようがない。
「サク動いちゃえ」
ミーナちゃんの悪戯っぽい笑顔を見て意図を察した。
巨人の体にアンカーの抜き差しを繰り返し縦横無尽に動き回る、トリガーにブレードがないだけで動きの幅が広がる。
立体機動の極地に足を踏み入れてる気がする、危ない領域だ帰れなくなっちゃうよ!!!。
巨人にとっては蚊のような存在、夜寝ようとしたらずっと周りを飛ばれているような感覚、捕まえようとするほどドツボにハマり抜け出せなくなる。
ガスをワザと多く吹かせ自分に集中させる、ミーナちゃんの気配を悟らせないために。
…こんな、戦い方で本当にいいのか?
「私たちって意外と相性いいかもね」
私たちって仮称サク班のみんなだよね?
リアを裏切ることになる!
これ以上はダメっ。絶対に揺るがない。折れない。変わらない。
遥か昔。
恋心は一人の女の子によって奪われた。
返してくれないし、一生戻らないっ!。
「サクはガス使い切ったから私が拠点まで運んで行く」
…リーダー?男性は男性、女性は女性でよくない?
「ミ…」
「女子よりも軽いのが悪い」
訓令兵時代、ガスが切れ教官に何度も運んでもらった。
リアは嫉妬してくれなかったから今回も大丈夫だろう。
———
拠点に着くと同時に拳銃を渡された。
アルミンの作戦らしい、やはり突破口を見つけるチームのブレインで見る目に狂いはなかった。
ゴンドラに乗せられたが作戦はあまり聞いてない、選ばれた精鋭の七名に運命は託された。
…ほんとうにモブっぽくなってきたな。
徐々に近付く巨人の顔、発砲の合図があるまで撃ってはならない。
拳銃を持っているだけで動悸と手汗が半端じゃない、天井に隠れる人たちはもっと重いものを背負っている。
屋根裏には命を託した仲間がいる、斬るのを任せられる精鋭になりたかったな。
…そもそもブレード持ってねぇや。
「撃てぇぇぇ!」
引き金を引くと一斉に発射され、銃弾の嵐が巨人を襲う。
続々にうなじが斬られ巨人が討伐されていく中、サシャだけが失敗に終わる。
ブレードも持たないまま駆け付けそうになったが、アニが瞬きする間に倒してしまった。
…アニと呼び捨てにするのが恐れ多い、一生師匠と呼ばせて?
リアと出会ってなかったら、きゅんきゅんしてたな。
ガスの補給を終えると立体機動装置で飛べることより、ミーナちゃんにお姫様抱っこされずにすむことの方が嬉しかった。
第一、浮気になるし。
血に汚れ少し臭うから申し訳なかったりもした。
拠点を後にする時だった、同期たちが一心に何かを見ている。
視線の先にいるのは他の巨人とは違う、整った顔立ちのイケメン巨人。
腕がなく歯だけで巨人と戦っている。
巨人と戦う巨人が出現したらもうお手上げ。
…もう無理ぃ、何にもわかんない。
何が起きてるんだ!意味がわからない!
難題に苦戦をしているとミカサちゃんが巨人の元に駆け付けた。
うなじの部分から人影が現れる、ぱさっと靡く茶髪、慣れ親しんだ友の姿。
ミカサちゃんに続きエレンの元に駆け付ける、他の同期は異常な光景に息を呑んでいる。
令和、多様性の時代を生きてた人間を舐めるな!
巨人になれる友達ってだけだろ。
巨人でも化け物でも何でもいい、友達が生きているのなら。
ミカサがエレンに抱き付く感動シーンの横で大泣きする青年がいた。