元神の冒険   作:さすらいの旅人

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豪魔軍師ガルヴァスの最後

「フハハハハハ! 最早貴様は私の敵ではない!」

 

(どうやら少しばかり甘く見過ぎていたな……)

 

 繰り出す拳の連撃(ラッシュ)に、隆誠は今まで異なるように防戦一方となっていた。

 

 ガルヴァスはこれまで倒した六大将軍と違い、急激なパワーアップをした事で凄まじい攻撃を繰り出している。隆誠は完全に雑魚扱いしていた為、急な変貌振りに戸惑って反応に遅れてしまい、まともに攻撃を受けてしまったのだ。

 

 パワーアップとなった要因は彼も気付いての通り、身体に取り込んだ六つの宝玉――『豪魔六芒星の魔宝玉(オーブ)』によるものだった。

 

 その宝玉は今まで超竜将軍ベグロム、魔影将軍ダブルドーラ、氷炎将軍ブレーガン、百獣将軍ザングレイ、不死将軍デスカール、妖魔将軍メネロの六大将軍がそれぞれ装着していた。ガルヴァスが彼等に貸し与えた事で、表の六大軍団長に匹敵する力を手に入れるも、隆誠によって全員一撃で倒されていると言う虚しい結果になっていた。

 

 持ち主達が全て死んでしまい、六つの宝玉は本来の所有者に戻る事となって、ガルヴァスは本来の力を取り戻している。だが、実はそれだけではない。その宝玉には死んだ六大将軍の力も備わっていたのだ。

 

 役目を終えた六大将軍達が死んだ後、宝玉は瞬時に彼等の力を全て取り込む為の細工が施されている。部下を大事にするガルヴァスは捨て駒にする気など毛頭無いのだが、死した場合には自身の糧になってもらおうと考えていた。自身の力と死んだ部下達の力を取り込んだ結果、邪悪な六芒星の魔力が増幅して、予想を遥かに超えた急激なパワーアップをしたと言う訳である。

 

「はぁっ!」

 

「ぐっ!」

 

 かなり力が籠められた一撃だったのか、隆誠は咄嗟に交差したで防ぐも、衝撃まで抑える事が出来ずに吹っ飛んでしまい、そのまま地上へ激突してしまう。

 

「……今のはちょっと効いたな」

 

 背中が地面に激突すればちょっとどころでは済まないが、普段から(イッセー)と組手をやっている他、オーラを身体に纏わせた事で大してダメージは無い。左手に持っているエクスカリバーを未だに手放していないのが、何よりの証拠だった。

 

 だが、今の隆誠はガルヴァスに意識を向いている為、背中のダメージなんて如何でも良かった。

 

「ハァーハハハハハ! 全ての力を手にした今の私は、正に完全無欠! 最早私に敵う者は存在せんのだぁ!」

 

(アイツ、まさか……)

 

 隆誠が横たわっていた身体を起こす為に立ち上がって早々見上げると、宙に浮いているガルヴァスの様子がおかしい事に気付いた。

 

 先程からずっと高笑いを続けており、止めようとする気配を見せていない。パワーアップをして大事な部下を殺された恨みを晴らしながら優越感に浸っている、みたいな様子ではなかった。

 

 異変に気付いた隆誠は凝視をしながら、さり気なくガルヴァスのオーラを探ってみた。

 

「……成程、そう言う事か」

 

 理由が分かった途端、落胆するように嘆息する隆誠。

 

 つい先程まで急激なパワーアップと同時に、今までと桁違いなパワーとスピードを見せていた事で感心していたが、今の彼はもう既に興味を失っている。

 

 その要因となったのが、ガルヴァスの表情と宝玉にあった。

 

 今も見ての通り、隆誠を圧倒してる事で高笑いを続けている。しかも大きく口を開いたままで狂ったように笑っており、更には両眼も異常と言えるほどに血走っている為、それが余計に不気味さが際立っていた。

 

 ガルヴァスがそうなってしまったのは、彼の身体に取り込んでいる六つの宝玉。死んだ六大将軍の力を今も注ぎ続ける事で力を与えている事が、異常な変貌を見せている最大の原因であった。

 

 急激な力の上昇は一種の麻薬であり、それに負けた者は簡単に陥ってしまう。完全無欠と豪語したガルヴァスは、既に正気を失っているのが何よりの証拠と言えよう。力に溺れたと分かったが故に、隆誠は彼を強敵と見なくなっていた訳である。

 

「フハハハハハハッ! 小僧! 貴様に完全無欠となった私から最大の褒美を遣わしてやろう!」

 

 隆誠が決着を付けて終わらせようと結論するも、ガルヴァスは次の行動に移ろうとしていた。

 

 全身から闘気が溢れ出しており、身体に取り込んでいた六つの宝玉が出現して高く掲げた掌に集約する。直後に形状が巨大な槍となり、闘気も全て集束されていく。

 

「ガルヴァス、まさかソレは……!」

 

「ハハハハハハッ! そうだ! この槍には私の視界に映る周囲を吹っ飛ばす魔力が詰まっている! 最早貴様に逃げる術は無い!」

 

 ガルヴァスは正気を失っている所為で、拠点にしていた周囲全てを巻き込んでまで消そうとしていた。本来であれば、そんな血迷った行動はしないのだが、パワーアップと隆誠に対する怒りがそうさせてしまったのだ。

 

 因みに隆誠は知らないが、六大将軍を失った今の彼は完全に後がない状況になっている。担当を任されたバーンが知れば、確実に処罰を下されてしまう。故に何が何でも倒さなければ、失態を払拭出来ない状態であった。

 

「死ぬがいい小僧! これが私の最強奥義――『(ごう)()六芒槍(ろくぼうそう)』だぁ!!」

 

 そう言ってガルヴァスは、天高く掲げていた掌を思いっきり振り下ろすと、闘気を纏った巨大な槍が地上目掛けて向かって行く。

 

「……はぁっ、仕方ない」

 

 対して隆誠は、飛翔術を使って逃走する様子を見せないどころか、敢えてその場に留まっている。左手に持つエクスカリバーを、あと少しで激突する『豪魔六芒槍』へ向けながら。

 

「フハハハハハッ! 観念して死を選んだか! ハァーハハハハハハハハッ!!」

 

 逃げない隆誠を見た事で勝利を確信し、口を思いっきり開け、完全に狂ったかのような高笑いをするガルヴァス。

 

 ガルヴァスが放った豪魔六芒槍と、隆誠が向けているエクスカリバーがあと数秒で激突する瞬間――

 

「この槍を我が物とせよ、『支配の聖剣(エクスカリバー・ルーラー)』」

 

「………………………………………………………………………………は?」

 

 まるで時間が停止したかのように、地上に激突する筈の槍が急に止まってしまった。

 

 あと少しで大爆発が起きる筈だったが、それを覆す予想外な展開となってしまい、高笑いしていた流石のガルヴァスも思考を停止するのは無理もない。

 

「取り敢えず上手くいったか」

 

 豪魔六芒槍の激突を阻止出来て安堵の息を漏らす隆誠。

 

 それが出来たのは、手にしている聖剣エクスカリバーの能力。

 

 発動させたのは『支配の聖剣(エクスカリバー・ルーラー)』。伝説の魔物、上位神滅具(ロンギヌス)の攻撃、魔法、物理法則といった様々な存在を意のままに操ることができると言う、七つある中で最強の能力。

 

 既に知っての通り、隆誠が持っているエクスカリバーはレプリカで5分の1程度の力しか出ない。けれどガルヴァス程度の力であれば、神の能力(ちから)による補助をせずとも、豪魔六芒槍を止める事など造作も無い。

 

 豪魔六芒槍はガルヴァスの暗黒闘気も利用しての技だが、『豪魔六芒星の魔宝玉(オーブ)』が核となっている為、魔法を操れる支配の聖剣(エクスカリバー・ルーラー)の条件に当て嵌まる。それによって宝玉の支配権は隆誠になり、完全に操られている状態であった。

 

「バ、バカな! 私の力が、何故……!?」

 

 力の源である『豪魔六芒星の魔宝玉(オーブ)』を奪われた事で力を失ったガルヴァスは、先程までの高笑いから一変して、途端に狼狽する。

 

「おい! こんなの要らないから返す、ぞ!」

 

 狼狽するガルヴァスの心情を無視するように、隆誠は反撃をやろうとする。エクスカリバーで操っている豪魔六芒槍を跳ね返す要領で、本来の所有者に向けて撃ち返したのだ。

 

「!? や、止めろぉぉぉ! 来るなぁぁぁぁぁぁぁあああ!!!!」

 

 撃ち返した速度に対応出来なかったのか、ガルヴァスは自身が放った豪魔六芒槍に直撃し、そのまま遥か上空へ舞う事となった。

 

 ついでに言っておくと、隆誠が撃ち返す寸前に自身のオーラを注ぎ込んでいて、威力がそれなりに上昇している。

 

 そして遥か上空へ向かったガルヴァスと豪魔六芒槍が米粒のように小さく見えなくなった瞬間、天を覆うほどの大爆発が起きた。

 

「た~まや~、ってか」

 

 凄まじい大爆発が起きているにも関わらず、隆誠はまるで花火を打ち上げたかのように呑気な掛け声を上げていた。

 

 これにより豪魔軍師ガルヴァスは、魔王ハドラーに変わって表舞台に立つ計画を実行する前に、割と呆気無く死亡するのであった。

 

 

 

 

 ――同時刻――

 

 場所はパプニカ王国。

 

 城下町の殆どが壊滅していたが、魔王軍を撃退している勇者ダイ達の活躍もあって今は復興中であった。

 

「ッ! あれは!?」

 

「な、何だありゃぁ!?」

 

 空が突然の光で覆われた事に、国民達と一緒に街の復興を手伝っている少年二人――ダイとポップは驚愕していた。魔王軍の仕業かと思ったのか、二人は緊急事態と言わんばかりに城へ向かう。

 

 再び魔王軍が強襲するかもしれないと勇者ダイ達は迎撃態勢を整えるのだが、全く何も起きない為に不可解な一日を送るのであった。

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