助けて!ケモナーが好きそうな獣人(ゾナウ族)に転生したけどなんにも覚えてないよぉ!   作:ハチリ

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回収できると良い感じの露骨な伏線あります
そのうち四英傑とか姫とか勇者とかメインキャラとは絡ませる予定ではあります


唐突な匂わせやめてくれる?

馬宿から出てすぐ。

 

「……あっ」

 

手袋をはめ忘れていたのを思い出した。蒸れるからちょっと外しておこう、と外して、すっかりつけるのをまた忘れてしまっていた。慌ててはめ直す。

手袋は革製なので、長時間つけているとすごい蒸れるし、人のいないところではちまちま外していたんだけど……まぁ馬宿の主人には気づかれなかったしいいか。

 

ところで、ようやくレムがどこに行こうとしているのかわかった。始まりの台地だ。

今はパラセールがなくても、外界と行き来できるように整備された道があり、なんなら時の神殿は寂れていない外見のまま、参拝客で賑わっている。外観自体、定期的に人の手が入ってるんだろうなって感じがした。

 

ぽつぽつと人通りがある時の神殿に向かうのかと思えば、レムはそこを素通りした。

 

「時の神殿じゃないんだ」

「……」

 

無言で、別の方向を彼が指差す。そっちに何があるんだ。

そもそも、レムが始まりの台地に訪れたかった理由もわからない。ここが通過点なのか、この付近に目的地があるのかも知らない。ブレワイだと、要所なんてさっきの時の神殿か、あとは試練の祠か、回生の祠ぐらいしかなかったんじゃないか?文明が滅びてるっていうのもあるけど、100年前だとしても、ちょっとした集落ぐらいしかなかったはず。

 

森に入ると、流石にそろそろ魔物とたまに遭遇し始める。魔物の拠点というほど大きな規模ではないけど、数匹のボコブリンとか、たまにモリブリンとかがいたり。レムは忍ぶ素振りもなく、真っ向から挑んで壊滅させていった。お強い。せいぜい赤とか青の魔物で、プレイヤーが操作するリンク基準でいうなら雑魚敵だ。でも一般人からしたら脅威に違いない。

情け容赦のない攻撃の前に、魔物たちはなすすべもなく倒れ伏していった。魔物が斃れた瞬間素材になる謎原理を詳しく知りたい。あ、肝ゲット。ちょっと動いてて気持ち悪いが、これも薬の材料になるからポーチに突っ込んでおく。

 

ざくざくと地面を踏みしめる。木がたくさんあって、ひたすらずっと、おなじような風景が続いている。

彼は言葉を喋らないので、「しりとりしよ」とか「あの雲りんごに似てるよね」とか言っても、こちらを見てくるだけだ。時折、声のような機械音が返ってくることもあるけど、何を言っているのかはよくわからない。

 

それに、足を止めるつもりは基本ないようだった。

 

「ちょっと疲れた、一旦休憩して良い?」

「……」

 

私が有無を言わせずその場に座り込むと、レムも渋々といった風でか、歩みを止めた。

 

「いや疲れたのよ。むしろ、今日ずっと歩きっぱなしじゃん。ちょっとくらい休ませてほしい。私の体力を考えて」

 

そう告げると、私を見ていた非難がましいような視線(気のせいかも)を向けるのをやめ、レムは木にもたれかかった。ずっと立ちっぱなしだが大丈夫なのか。ゴーレムには座るも立つも大して消費エネルギーが変わらないのかな。

 

「……寝て良い?」

 

魔物がいるような場所なのはわかってる。でも彼はたぶん私のことを守ってくれるという、よくわからない確信があった。こんな曖昧な勘に頼るべきじゃないんだけど、それでも信頼して眠りたくなってしまうぐらいには、心を許していた。

 

彼は一つ頷いた。昨日は他に人がいる場所だったから、あまり寝付けなかった。そういう事情もあって、少し横になると、たとえ屋外で地面の上だとしても、すぐに意識がぼんやりしてきた。

 

 

 

 

 

 

私は、草原に立っていた。白くて、家というよりは広い建物。金持ちの屋敷……?とみるには、質素だ。完全に石造りの建物は、あまりハイラルで見かけたことがないんだっけ。

 

私の隣に、誰かが立っていた。デカいな。

 

「リゼル」

 

私の名前を、彼が呼ぶ。あれ、なんか似てない?ゾナウ族?耳が長いし、顔立ちもそれっぽいような気がする。

 

「私は、このハイラルを守っていきたいと思う。けれどそれには、たくさんの人の力が必要だ。もちろん君の力も」

 

そんなこと言われても、私大したことなんてできないって。

 

「私になにかあったときは、君のことを頼りにしているよ。そんなことが起きないのが一番だけれど」

 

そうだね。

 

 

 

 

 

 

 

温かい陽気に包まれてるみたいな、心地の良い夢だった。

 

なんだったのかは知らん。なんか、私と、誰かが話してたけど。ゾナウ族っぽかったな。変な夢見たな。でも夢っていつも現実と違って筋は通ってないわけだし、私以外絶滅しちゃったゾナウ族が出てきたりとかするかぁ。

 

相変わらず、なんでこんな種族になったのかもよくわからないけど、なんか。

なんだかなぁ。なんか、もやもやするような。

 

考えてもわかんないから仕方ないんだが。

 

 

結構長く寝ていたらしく、ちょっと日が傾いている。今日どこで夜を明かすか考えていなかった私は焦った。

始まりの空島に脅威と呼べるのは、兵隊ゴーレムぐらい。ブロックゴーレムは、あれは縄張りに侵入しなきゃいいだけだよな。でもここは地上なので、魔物がそこかしこに湧くし、純粋に人間にも気をつけなきゃいけない。人の敵は人ってよく言うから。

間違いなく森で野宿というのはまずい。でもこの日の傾き具合からすると、時の神殿にまで戻るまでに、絶対夜になってしまう。

 

今のところ遭遇したことはないけど、スタル系の魔物とか、急に地面から這い出してくるの心臓に悪いだろ。

 

「もうすぐ夜になるけど、今晩はどうするの?」

「……」

「ちょっと」

「……」

 

わざとか?無視されてる。

時の森に立ち並ぶ木々が、少しずつ、地面に落とす影を長くしていた。光がだんだんと赤さを帯び始めそうで、黄昏ともいえるような時間帯。

私のいうことを全然聞きそうにないのは初めてだった。とにかく、そろそろ戻りたいと思う頃に、小規模な池にたどり着いた。池というにも、水たまりと表現したほうが近しいような深さだ。

 

「ゴーゴーガエルいるけどこれが見たかったの?」

 

何匹かのカエルが、季節に関係なくぴょこぴょこ飛んでいる。ハイラルには季節というのがあまり存在しなさそうで、寒い場所と暖かい場所が別れているだけだった気もする。

 

「カエル池だったっけ、ここ」

 

ブレワイではゴーゴーガエルが湧いていた池だが、序盤に通りすがって以降、まったく寄り付いた覚えがない。イワロック?始まりの台地のやつはもう少し離れたところにいたはず。

 

何の変哲もなさそうな、自然の池のまわりには、ところどころ古びた石の建造物の跡らしいものがあった。ずいぶん苔むしており、柱や基礎のようなものの一部分だけが取り残されている。壁や床さえ残っていないので、かなり昔のものだと思う。大災害で滅びたわけじゃないんだから、かなり古いのかな。

 

レムは、それをパンパンと叩いた。

 

「それがなにか?なんかあるの」

「……」

 

彼はこちらを見つめている。石、石造りの建造物は空島にもよくあった!じゃあこれってそうなのか?空島って……そうだよ。ゾナウ族が暮らしてたんだから。え、じゃあゾナウ族に転生したせいで空島が初期スポーンだったのか。普通にハイリア人で地上に初期スポーンが良かったんだけど。

 

「もしかしてゾナウ文明関連?」

 

彼はゾナウ文明のゴーレムだ。どう考えても外見がそう。だから、恋しいのかな?自分を作った人たちの痕跡が。

しかし納得行かないというふうに、彼は首を振るだけである。何が不満なんだ。

喋れないから伝えられることはそう多くないけど、彼は感情表現がこれでもかとわかりやすいので、どんな気分なのか知り得ることは十分可能だった。

 

「……それより、夜になるじゃん。どうにかしなきゃ」

 

夜に出歩くつもりはあまりない。暗いし魔物出るし。ただこのままでは野宿確定しそうで、それは嫌だ、せめて屋根がついてるところで寝たい。

 

でもゲームよりマップはずっと広大で――そりゃ当然だけど、軽く回れるような距離じゃなかった。この始まりの台地も何日もかけなければまわりきれないくらい広い。このまま夜を明かすのはあまりにも心もとなかったので、せめて洞窟とか、雨風しのげる場所を探したい。

 

だけど始まりの台地にそんな場所あったっけ、道中にはなかったような気がする。

洞窟……洞窟……

 

「あ、回生の祠!」

 

あの場所が100年前から洞窟だったなら、入れるかもしれない。そこまで遠い場所にはないはずだから、どうにかたどり着けないかな。

 

しかし、始まりの台地の真ん中あたりぐらいにあったことは覚えており、現在地点はマップで見ると始まりの台地の左上くらい。だとしたら、どっちに向かって行けばいいんだろう。待て、ここで土地勘ゼロが発動している。

 

でも高台の方に向かって進めば、少なくとも近づけるはず。

 

そんな感じでとりあえず、今日の宿を探すべく回生の祠の洞窟に向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

日が沈み切ると、場はほとんど暗闇に包まれる。人工的な明かりがなにもない世界は想像以上に暗い。

 

心配していたが、なんとか回生の祠らしい場所の前にはたどり着けた。でも祠のある洞窟は人の手が入っているふうに見えて、付近に焚き火跡やら、最近人が訪れた痕跡が見て取れた。

 

祠そのものは古代のシーカー族が作ったものだけど、最近になって調査がまたなされているのだろうか。でも1万年の間放って置かれたのに今更?

あ、厄災復活の兆しが云々って予言はもうなされてるのかな。

 

洞窟の中には松明が焚かれている。明るいけど臭いもすごいな。何かの油みたいなにおいだ、定番だと松ヤニとかか。中世だろうし。

松明のおかげでかなりの段差があることはわかったので、慎重に降りて、深部へと進んでいく。

なんとなく見覚えのある地形だ。あ、この奥がリンクの目覚めた場所――

 

「誰だ?」

「えっ、あっ、あの……怪しいものじゃ……」

 

先客がいる。ウッソ。

かなり体格が良さそうなおじさん、というかおじいさん?暗がりに炎の松明で明かりがともされているので、あまり顔は見えないが、デカいしいかつい。

 

「ちょっと一晩の宿をほしくて、いやその、ダメだったら出ていきますんでっ」

 

慌てて言い訳する。人が中にいるとは思わなかったんだ。松明燃やされている時点で気づくべきだった。

 

「……別に取って食ったりせん。怪しいがワシに害をなすようには感じられんしな」

「えっと、明日朝には出ていくので、夜だけここにいてもいいですか?」

「構わん。そもそもここはワシのものでもないしな」

 

回生リンクが寝かされていた寝台のまわりに、いくつか荷物が置いてある。私は隅の方に武器を立てかける。レムにもそう促した。

焚き火に照らされて、おじいさんの顔が、見えた。

 

「……えっ!?」

「何だ、急に大きな声を出して」

 

ハイラル王やんけ!と叫ばなかったのは、あまりにも驚きすぎていたからだ。ハイラル王じゃん!なんでこんなとこにいるの!?しかも護衛とかいないように見えるが。理由がわからなさすぎる。

 

「あ、いや、えと……ちょっと虫が」

 

咄嗟に誤魔化すも多分怪しさ満点なのには変わりない。レムは壁にもたれかかるいつものスタイルだった。せめて座ればいいのに。

……もういいか。ふたりとも顔も体も隠してるんだから怪しいのには変わんないし。

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