短編   作:しきょーかい

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一応レーヴァテイン欲しくてガチャ禁した人です
ポグラニチニクが5人来ました
う、うせやろ……こんな事があっていいんか……?

伝説ですね(真顔)



遠い未来の話

 

 

私には記憶がなかった。

 

かつての自分もまた、記憶がなかった。

熱に浮かされ、時には魘され。それでも記憶の濁流を掻き分けて進み続け、長い旅路の末に彼女(自分)は家を見つけ、憩いの場を手に入れた。

そして私も、エンドフィールドという家を見つけることができた。

 

古い記憶じゃなくて、新しい記憶を。

また始めからだけど、積み重ねていって自分を構築していく道を歩いていく。

それでもたまに……何かを思い出すことがあった。

喜び、怒り、哀しみ、楽しみ。全てがごちゃまぜになって、濁流に飲まれて整理できない時があった。

 

そんな時は、ワルファリンが送ってくれた一本の刀を振るう。

悔しさ、苦痛、憧憬。この朴刀は懐かしさと、3つの感情を与えてきた。

記憶の濁流と比べれば、小川のせせらぎのようなもの。他のものと違って、どれだけ乱暴に扱っても壊れない朴刀を振り、感情を整理し、若干の物足りなさと共に身体に染み付いていた"私"ではない、"誰か"の動きを辿る。

 

———ウィーン……

 

無心で刀を振っていると、扉が開く音がした。

定期検診の日ではない以上、私の部屋に入ってくるような物好きは彼女()しかいない。

 

「どうした、管理人。任務か?」

 

「いや、ちょっと君と話したかっただけ。……泣いているの?」

 

「え?」

 

管理人に向き直り、朴刀を下げていると思いがけない言葉が飛んできた。

泣いている?私が?

手を目元に寄せ、軽く拭ってみた。確かに手は濡れた。涙だ、本当に泣いていたらしい。

 

「何でだ?何も悲しくないのに。」

 

「…鏡で、自分の顔を見てごらん。」

 

管理人の差し出した、よく磨かれた鏡を受け取り、自分の顔を写す。

いつも通りの、自分でも自覚している何処か苛立っているような顔ではなかった。

親に置いて行かれた子どものような、大切なものを失った者のような、寂しさの宿っている顔がそこにある。

 

「大丈夫?」

 

「……あぁ、大丈夫だ。」

 

原因は分かっていた。今も確かに握りしめている、この刀。

かつての自分が持っていたものではない、しかし関わりがあった誰かの物。

私と親しかったであろう、誰かが遺した物。今一度、刀を見た。

 

鈍い真鍮のような色合いで、鋭く研ぎ澄まされている刃。

側面には鮮やかな、炎や血を連想させる波打つ模様で装飾されており、峰には刀身に沿って並んだ6つの筒。

刀ならば鍔がある位置には回転式弾倉を模した物があり、柄の刃側にはトリガーがある。

 

誰がどう見ても普通の武器ではない。持ち主は相当の酔狂者だったのだろうか。

この悲しみの元を知りたい。そう管理人に告げると、迷わず了承してくれた。

 

「記憶を辿る旅で、また新しく自分を知ることができる。私で良ければいくらでも付き合うよ。」

 

「ありがとう。」

 

 

 

———

 

 

 

刀について調べるため、まずはヴィーヴル(イヴォンヌ)のところへ向かった。

 

「はい!これが君たちの言ってた刀ね!早速調べてみるよ!」

 

そして研究室から追い出された。

邪魔になるとはいえ、かなり乱暴だったが……アイスを貰えたので特に言うことはない。

管理人と共に周囲のボーンクラッシャーを討伐したり、オリジムシを捕まえて遊んだりしていると時間はあっという間に過ぎ、研究室へ入ることを許可された。

 

「結果は?」

 

ほんのり甘いアイスを舐めつつ、管理人が問うのを眺めていた。何処からかドラムロールが流れる。

 

「なんの成果も!!得られませんでした!!」

 

「次に行くぞ、管理人。」

 

「あー!ちょっと待って!分かった事はいくつかあるから……はい、纏めた資料!」

 

「初めから渡せ。」

 

「ありがとう、イヴォンヌ。またね。」

 

「管理人も元気でね〜!」

 

イヴォンヌの手から資料と、箱に入った朴刀をひったくり、研究室を出る。

外に出るまでに資料を眺め、細かい文字がびっしり書かれているのを見て、管理人に渡した。

私も次に行くと言ったはいいが、何処に向かうべきかは分からない。

 

「うーん……分かったのは性質と仕組みだけみたいだね。」

 

「熱に強いのは知っている。」

 

「熱に強くて、圧縮機にかけたら圧縮機が壊れるぐらいには丈夫。この弾倉に弾を込めて、推進力を用いる仕組みみたい。」

 

「弾丸か……ワルファリンから貰った中に入っていたような気もするが。」

 

「今すぐ試しに帝江号に戻る?それとももう少しだけ調べてみる?」

 

「……いちいち帝江号に移動するのも面倒だ。行く宛は……あるか?」

 

「そうだね、刀ならチェンに聞いてみるのはどうだろう。」

 

その案に賛成し、チェンのいる中枢エリアへと向かうことにした。

 

 

 

———

 

 

 

「刀?見せて見せて!」

 

刀という単語に反応し、目を輝かせるチェンに刀を見せるため、箱から取り出した瞬間だった。

 

「———え?どこで手に入れたの、それ。ほ、本物?」

 

笑顔が消えて、焦り始めたチェンが声のトーンを下げて言った。

 

「知っているのか!?」

 

「知ってる……っていうか、剣の道を歩む人なら知らない方がおかしいというか……。一応ここから離れよう、こんな所で話す内容じゃないかもしれないし。」

 

チェンに手を引かれるまま、管理人と一緒に丘の上まで移動する。

耳長獣たちが木陰からこちらを見ているだけで、それ以外の視線はない場所。ようやくチェンが足を止めた。

何処からか図鑑を取り出し、ページを捲り始めるチェン。見たことのある剣も、見たことがない剣も勢揃いだ。

 

ペシッ!

 

突然ページを捲る手が止まる。

見開きのページには、箱の中に収まっている朴刀と瓜二つのものが描かれていた。

 

「赤霄の剣がアーツを斬り、竜殺しを意味するなら……その刀、天退星刀は炎と共に在り、いずれ来たる夜明けを意味する武器。使いこなせた者はただ一人、独立傭兵団"親指"のカポIIII(クァルト)のみ!弾丸を発射したときの推進力を活かして持ち手ごと加速し、勢いよく切断する!彼以外が使おうとして、勢いのあまり両腕が千切れたって話もあるんだ!」

 

「「……。」」

 

やけに饒舌なチェンの話についていけず、気まずい空気が流れる。

それに彼女も気付いたのか、コホン、と軽く咳払いしてから続けた。

 

「まぁ……取り敢えず、凄い刀ってこと!」

 

「それは理解したが……。親指ってアレだろ?金払ったら何でもする奴ら。」

 

「うん、あと皆礼儀正しいね。そこがランドブレーカーたちの中でも一際目立つよ。ただ、規律に逆らった時が怖いから気をつけないと。……管理人は特にね!」

 

「え、私?」

 

「エンドフィールドのトップである管理人が、親指の人たちの前に協約転送で現れたとするじゃん?楽しく話をしてた親指の人たちの前に、圧倒的格上の管理人が来ましたっていう状況。その人達、どんな行動を取ると思う?」

 

「物凄く丁寧に挨拶をするとか…?」

 

「互いに下顎を砕き合うのは確実で、仮面を見た人たちは目を抉るんじゃないかな。」

 

「えぇ……何でそんな事すr」

 

「ストップ!」

 

突然青ざめたチェンが管理人の口を防いだ。

そして辺りを見渡し始めたので、合わせて自分も辺りに何者かが潜んでいないか確認する。

しかし、何かあったのか?と首を傾げる耳長獣以外、何者も近付いてはいなかった。

ホッと息を吐いたチェンが静かに言う。

 

「管理人、それが彼らの規律(ルール)なんだよ。それに疑問を呈するのは誰であろうと、たとえ管理人だろうと許されていないから……発言には注意してね。」

 

「むぐ、分かった。」

 

「……ちなみに、もし管理人がそんな事をしたらどうなるんだ?」

 

気になったから質問してみた、答えは端的だった。

 

「戦争。もしもの話も危ないんだから、二人共気をつけてね!」

 

それじゃあ、とチェンと別れ、二人で手に入れた情報を擦り合わせる。

 

「結構、情報が手に入ったな。」

 

「うん。じゃあ、弾丸を見るためにも帝江号に行ってみようか。」

 

 

 

 

———

 

 

 

再び、自室に戻る。

倉庫の中には沢山の贈り物、これから贈るもの、何がなんだか分からないガラクタが詰まっている。

訓練室に移動しつつ、その中からやけに厳重な箱を取り出し、封を解いた。

 

「これだ。」

 

「本当に弾丸だね……そこの部分、何か書かれているよ。」

 

「本当か?」

 

紅い、12発の弾丸。

大きさの割に、非常に重い弾丸を一つ摘み上げ、管理人の指した場所を見た。

確かに文字が書いてある。その周りには、どんな意味があるのか分からない、そもそも意味があるのかすらも分からない、文字とも装飾ともとれる線が幾重にも書かれていた。

幾重にも書かれていたというのは比喩ではなく、まるで線だけが他の世界にあるような形で、本当に重なっている。

 

「雷、横……ペリカに聞いてみるよ。」

 

管理人が端末でやり取りを始めたのをよそに、弾丸を一発だけ弾倉に込めた。

訓練用のアンゲロスが現れるが、拘束が外れるまでに少し時間を要するだろう。

 

……トリガーを引けば発射できる。

緩やかに流れ込む記憶に沿って、地面と垂直になるよう立て、左肩の上に構えた。

早まる心臓の鼓動、峰の筒からは弱々しくも、炎が吹き出し始める。

 

「レーヴァテイン、分かった。その読みは———」

 

徐々に強まっていく炎、凍った記憶が溶けていく。

そうだ、この刀の持ち主は、かつての自分を弟子とした物の名は———

 

「「———雷横(レイホン)」」

 

拘束が解かれたアンゲロスが、一直線に迫ってくる。

刃の届く範囲に入ると同時にトリガーを引き、勢いよく振り下ろした。

勢いに振り回されてはいたが、確かに刀を振った。アンゲロスは粉々に砕け散る。

排出された弾丸、刻まれた装飾のような文字が輝き出して———

 

 

 

———

 

 

 

気がつくと、私と管理人は訓練室らしき場にいた。

らしき、というのは帝江号の訓練室はもっとフラットであり、こんな沢山のトレーニング器具が存在していないからだ。

 

「ここは……。」

 

「分からない。が、あいつがいる。」

 

辺りを見渡しても、いない。

一体何処に……と緊張していた時だった。

 

「うわっ!」

 

「久しぶりやな!元気しとったか?」

 

突然、謎の男に背中を叩かれ、転びかけた。

こちらを知っているかのように話す相手に、管理人が武器を抜こうとして

 

「新顔やな、誰かは知らんけど、俺っちに刃ァ向けんなら覚悟しとき。」

 

飄々と警告された。だがそれだけで、管理人は柄に手をかけた状態で固まってしまった。

放たれる圧倒的強者の圧が、管理人だけに向けられているのを感じる。

管理人の頬を伝って、冷や汗が一滴垂れた。

 

どこからともなく取り出した葉巻の先を切り、口に咥えて火を点ける男の手元には、確かに私が持っていたはずの天退星刀があった。

 

「はぁ……。んで、何用や?俺っちの教えられることは全部教えたで、格好いい技も教えた、お前に扱えるようにもしといた、もう特に用はないと思うんやけど。……?」

 

一度区切り、まじまじと私を見つめる男。猛獣が獲物を見定めるときと同じ視線。

抵抗しようと炎の剣(レーヴァテイン)を抜こうとすれば、鈍色に光る刃が私たちを斬り裂くのは簡単に想像できた。

 

「…ッ、なん、だ。」

 

「———ハッ、そういう事か。コイツがお前ん所にあるっちゅう事は、誰かは知らんけどまだ生きとったんやな。てっきり鉱石病で全員くたばったと思っとったわ。誰が生きとるんや?あん猫は生きてそうやけど、嬢ちゃんは厳しいか?」

 

返事をしようとして、声が詰まる。

ジジッ……

葉巻の先の灰が、音を立てて落ちた。

 

「名乗ってみぃ、俺っちの名は———もう知っとるやろ。親指のカポIIII(クァルト)、東部十剣が一人……レイホン。」

 

「……レーヴァテイン。」

 

名乗ると、レイホンは目を見開き、少し考えるようにして、笑った。

 

「ハハッ、それ(・・)を名前にしたんか!……ええ名前や、きっちり背負わんとあかんで。」

 

「言われなくても、分かってる。」

 

そしてようやく、レイホンの放っていた覇気が消えた。

管理人がへたり込み、私もまた、足から力が抜けて膝をつく。

レイホンは私たちの状態にかかわらず、続けて口を開いた。

 

「二つ質問や。嘘はアカンで、精神が死ねば、肉体も狂って死ぬからな。———鉱石病、治せんのか?」

 

その問いには、確かな重みがあった。

たとえ先程の脅しがなかったとしても、管理人と自分は嘘をつかなかったと言える程には。

 

「「治せない」よ。」

 

「そか、ほんなら次や。……ロドス、まだ残っとるやろ?」

 

「あぁ。」「うん。」

 

答えを聞いたレイホンが、何を思ったのかは分からなかった。

規則的に煙を吸い、吐き出す。

声に宿る感情は殺され、目を合わせることも許されないと感じていたから。

 

「良し、俺っちの存在に意味があったっちゅう事や。久々に目ぇ覚ましたけど、えぇ事聞けたわ。」

 

満足気に微笑んだ……気がする。

気がつくと、レイホンの体が先の方から崩壊し始めた。

私も、管理人も、この場所も、輝く光と文字になって崩れていく。

 

「暇やったらまた来いや、巫術の陣が消えとらんなら、火薬詰めればもっかい使えるで。」

 

管理人の手を取る。

視界が白く染まった。

 

 

 

———

 

 

 

気がつくと、私は帝江号の訓練室にいた。

粉々になったアンゲロスの破片が散らばっており、朴刀は未だに熱を持っている。

 

「……夢じゃ、ないよな。」

 

「多分、ね。」

 

空の薬莢を摘み、もう一度朴刀を、天退星刀を見た。

相も変わらず、刃は鈍く煌めいていた。

 

 





全盛期サルヴァドールさんは
・煙戦争に参戦
・煙戦争の英雄と話せる立場(一級フィクサー)
・将来の特色とゲロを吐き合う

という功績がある……しかし本になりました
老いとは恐ろしいものよ
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