暇つぶしに書いたアホアホ二次創作です。

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聞こえますか?二対の上腕二頭筋と大胸筋鎖骨部が奏でるメロディーが!

 

「さあ、いかがですか、ヨシヒデ。ミニマリズムとは、こういう概念なのです。」

 

 ギシギシと金属が軋む音が聞こえる。

 

「本質のために、不必要なものを思い切って削ぎ落とすのですよ。 」

 

 全身に負荷が掛かり、骨が筋肉の収縮によって圧迫されていく。

 

「そなたもご存知の通り、人はあまりにも多くの装飾を身にまとっていますからね。純粋性を損なうのです。 」

 

「おとうさん…。 」

「もうみたくない…! 」

 

 ボロボロと涙をこぼすヨシヒデを一瞥し、カリストは話を続ける。

 

「ヨシヒデ、それは現象にばかり目を向けるからです。肉体への負荷による苦痛は刹那ですが、私たちが残す形は永遠なのですから。 」

 

「もう一度復習しましょう。この腹筋の簡潔な直線は原初の構造主義です。 」

 

「私はそなたを、この先すべての芸術を共にする大切な子方へ育てます。

ですからヨシヒデも、私のすべての授業にきちんとついてきてください。 」

 

「肉体の美しい原型を世に晒すには、服を引きちぎり、筋肉を躍動させねばなりませんが…それでは構図があまりに安定しすぎるのです。 」

 

「さあ、理解できましたね?それでは…」

 

「共に美しい体を作り出しましょう!まずはプランクからですよ、ヨシヒデ!」

 

 そう、かつて身体派のマエストロであったカリストは、今や筋トレ狂いの狂人と化していた。

 

「嗚呼、いい調子ですよディビア!抑圧されていた筋肉が解放されていくようです!」

 

 その狂いっぷりは、自身の筋肉に名前をつけるレベルである。

 

 ギシギシと音を立て、懸垂をし続けながら話すカリストを目の前に、ヨシヒデは完全にパニックを起こしていた。

 当然だろう。今まで自分を育ててくれた義理の父の一人が、何故か上半身を露出した状態で筋トレをする風景を見せつけてくるのだ。

 

 何一つ理解できないままヨシヒデが泣き喚いていると、何処からか足音が聞こえる。余裕がありながらもキビキビとしたその音は、どんどんとこちらに近づき…そして、やがて彼らの前に姿を現した。

 

「……何をしているんだ、カリスト?」

「おや、リアンですか。貴方も一緒にどうです?」

「いや、俺は……」

 

 リアンの言葉を遮るように、ビープ音が鳴り響く。端末機を取り出すとそこにはこんな文書が表示されていた。

 

『上半身の服を全て脱ぎ、五セット分の筋トレをすること。』

 

後に、良秀はこう語る。

「指令を見て嫌そうな顔をすることは偶にあったが…あそこまで目が死んでたのは、あの時だけだったな。」

 

「ゼェ……ハァ………」

「おとうさん、大丈夫…?」

 

 筋トレが5セット分終わる頃には、リアンは立つことすらできなくなっていた。バカみたいな強さと見た目の若々しさのせいで忘れがちだが、リアンはそこそこオッサンである。

 

「…娘。今の筋トレ、結構効いたぞ。全身が、すごくズキズキするんだ…。」

 

 そう言葉を残して、リアンが力尽きる。それと同時に、無数の足音がこちらに近づき、二人の親方が姿を現した。

 

「こんな所までアタシを呼びつけやがって。一体の…用……。」

 

苛立ち混じりの声が途中で途切れる。

 

「………理解できないな。」

 

沈黙を破ったのは、心底ドン引きした声色のシオミだった。何なら表情からも感情が漏れている。

 

「……ヨシヒデ、こっちに来い。」

 

 ヴァレンチーナが静かにヨシヒデを呼ぶ。言葉に従ってヴァレンチーナの方へ向かったヨシヒデと視線を合わせて、ヴァレンチーナは言った。

 

「いいか?今度から、こういう奴らを見かけたらすぐに逃げろ。危ないからな。」

「わ、わかりました…。」

 

只々困惑することしか出来ないヨシヒデをよそに、事態はさらに混沌を深めていく。

 

「ヴァレンチーナまで来たのですか!貴女もどうです?筋トレをしませんか?」

 

 最早バケモノを見る目になったシオミとヴァレンチーナの様子を気にせず、カリストが声をかける。

 

「前々から考えていたのです!貴女のその猫科の猛獣を彷彿とさせるようなしなやかな筋肉を一目見てみたいと!さあ、早速服を脱いで、その体の美しさを─」

 

「殺す。」

 

 銃剣と刀を抜き放ったヴァレンチーナが、一直線にカリストへ向かって行く。

 

二人残された母娘は、ただその光景を眺めることしか出来なかった。





眺 め る こ と し か 出 来 な い

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