Exist of If Dream[Limited] 作:一般通過みゅーたいぱー
千石さんがルームを抜けてすぐ、同じ場所が光った。
「おはようございます!...あれ、ユノさんちゃんは...?」
「ん~...今日は休むって言って抜けて行っちゃった~...」
「そ、そうですか...あ、昨日の...」
「カナタだ。よろしく」
軽く手をあげて応答すると、軽めの会釈で返された。
たぶん金髪ツインテ...もとい仲町さんはたぶん人と話すのが苦手なんだろう。
話題作りがてら、気になっていたことを聞いてみた。
「そういえば、この集まりはバンドなんだよな?ベースとドラム担当はいないのか?」
「ユノちゃんがベースとドラムやってくれるんだ~」
「えっと、ユノさんちゃんはマニピュレーター...って言って...簡単に言うと望んだ音を出せる役のことで」
「なるほど...」
てっきり顔が二つ、腕が四本ある仮想の鬼神かと思ったらそうではないらしい。
AIだったり呪術界最強だったり忙しい人だな。
と、目の前が一瞬きらめいて、青髪の団子ヘアー二頭身マスコットマネージャーが現れた。
属性過多すぎるだろ。
「みんな揃ってる?」
「都子ちゃんとユノちゃんがいません!」
「藤さんは原稿。千石さんは体調不良ってさっき来たわね。それと...君は昨日の」
「カナタ...
「月ノ筈君ね。よろしく」
二頭身の腕をつまんで握手する。
「早速だけど。月ノ筈君は、何か楽器できるの?」
藪から棒に聞かれた問いに、一応ベースと答えると、さっき摘まんだ腕がグッジョブのサインに代わった。
「いや何がグーなんすか」
「たまには生音も聞きたいなぁって思うことあるじゃない?千石さんの音もそれはそれでいいんだけどね~」
「なんかそういうこと言ってるとあたしじゃなくていいんだとか言いそうですけど」
「ユノちゃんはユノちゃん!いないとダメ!!」
「声でっか」
確かに、このバンドにはああいうタイプが居ないとまとまらないだろう。
真面目であるがゆえに空回りすることも多々あるしな。
「あのあの、カナタさんのベース、ちょっとだけ聞きたいんですけど...」
「...聞けたもんじゃないと思うぞ」
手を前に突き出すと、ベースが出現する。
「...かっこいい...」
「まだ弾いてねえんだけど」
チューニングの必要はない。最適化されているはずだから。
「なに聞きたい?」
「なんでも弾けるの?」
「JからK、メジャーからマイナー、レーベル所属からインディーズまで」
「要は何でもってことね。だったら――」
「ありえない。ありえない...」
ありえるわけがない。
あのカナタがあたしの知ってる奏多であるはずがない。
奏多は目の前で死んだのだ。
暴走したトラックからあたしを庇って、撥ね飛ばされて、そのまま足が轢かれてた気もする。
すぐに救急車を呼んで、直ぐに救急車が来て応急処置してた、けど。
「ユノが無事でよかったよ」
なんて言うから、何も言えなくなって。
そのまま病院まで行って、病院で死んだ。
病院のベッドで顔に布が掛けられて。
そのベッドの横で泣きじゃくった気がするし、逆に真顔だった気もする。
どうやって家に帰ってきたかも覚えてないし、どうして今音楽を続けてるかもわからない。
あれはちょうど。
Supremacyが解散して、すぐだったかな。