TSメス堕ち俺っ娘スライムと作る宇宙最強ハーレム 作:最条真
前回までのあらすじ:悪そうな大男に彼女を攫われた月野くん、ブチギレ。
剣の軌道に合わせて虹が舞う。大男――ダリウスが握る両手剣は、『シルバーバレット』とは一線を画する特級装備。剣圧、というものを僕は初めて感じだ。強者が刀剣を握った時に露出する迫力。目を逸らせば死ぬ、そういう直感。
右、左、真後ろ、斜め右、上。斬撃は常に置かれている。虹色に輝く不可思議な剣は、常に僕の手をいなしていく。僕の強みは手数だ。複数展開可能な触手を駆使して“数”で相手を攻め立てる。
地を這い、背後を狙い、左右から挟み込み、上から叩き潰す――
対する相手の強みは明確で、数をねじ伏せる“個の強さ”だった。
「《雷轟》」
短い詠唱と共に、大剣の刀身が爆発的な光を放つ。
回転斬りの要領で空間めがけて剣を振るうと、極彩色の虹を孕んだ雷光が、暴風のように全方位へと迸った。
空間を埋め尽くしていた触手たちが、ただ閃光に飲み込まれていく。
圧倒的な高熱と物理的な衝撃。
多角的に迫っていたはずの五つの刃が、一瞬にして炭化し、崩れ落ちた。
「――《蘇れ》」
通常の再生速度では間に合わないと判断――当たり。《スキル》の効果によって通常の倍近い速度で再生した触手たちは、大男、ダリウスが僕の間合いに入ってくるのを防いだ。
“近づかせてはいけない”。直感的に思う。間合いに入られたら――それだけで死ぬ。
想像以上にこの男――
「もういっちょ、《雷轟》」
――強い!!
男が思いっきり大剣を前方に――僕のいる方角めがけて、振るう。
《雷轟》――それは大剣に蓄積されたエネルギーを極彩色の雷霆へと変換し、暴風のように撒き散らす面制圧のスキル。放電と言える可愛げはない。振るわれた剣の軌道――そこに光が軌跡を残したかと思うと、裂け、中から怪獣の叫び声とも思えるほどの爆音を轟かせ、破壊をもたらす。
――要は、剣の軌道上に存在する空間に雷撃を発生させるスキル。
刃の軌跡から連鎖的に爆ぜる熱波が、周囲の酸素を焼き尽くしながら壁となって押し寄せてくる。
「くそあちぃ……!」
近づけさせないために展開した触手の防壁が、またしても紙切れのように消し飛ばされていく。
「まだまだいくぜぇ?」
「クソが……!」
余裕綽々。そう言わんばかりの笑みを浮かべた男は、軽々大剣を振るい、雷撃を生み出していく。
雷と熱に圧されていく。
まさかとは思うが――これは――。
「ハハッ、こんなもんかァ!?」
――読み合い以前の問題だ!
ギリ、と奥歯を噛みしめる。
本能が相手の力量を認めていた。
「《四ツ星》――!」
《星戦》の影響下にある僕(三ツ星相当)が防戦一方という時点で察せられる。僕より高次元――次のステージに至った敵。……正面戦闘で僕が勝つのは、不可能に等しい。おまけに非番の僕はシルバーバレットも持っちゃいない。あるのは身一つ。スキル枠は三つ。
僕の勝利条件は――決まっている。
結姫乃を無事に連れて帰る。
結姫乃を無事に――!
《雷轟》――来るのは分かっていた。
防御に使う触手は二つ。残りの四つはすべて、僕の右腕に纏わせる。
「《溜めろ》」
触手が右腕に螺旋を描きながら幾重にも巻き付き、極限まで圧縮されていく。ギチ……ギチギチッ……! と、巨大な鋼のバネが限界まで軋むような不吉な音が響いた。
黒い繊維が弾け飛ぶ寸前まで引き絞られ、莫大な運動エネルギーと殺意を強引に内部へと封じ込めて脈打つ。
防ぎぎれない閃光と熱波――覚悟の上だ。
この熱を返す。この拳で。
「《
それから、僕は右腕に溜め込んだ全エネルギーを限界突破で解き放った。音速を超えた圧倒的なソニックブームが、周囲の空気を爆発的に押し裂く。放たれた強烈な風圧の壁は、容赦なく迫りくる極彩色の熱波そのものを捻じ伏せ、そのまま真っ二つに引き裂いて押し返した。
風に押されるように僕は前に出る。
駆けていた。
一発殴ると決めていた。
――全身全霊にかけて。
熱にひるんだその隙に、肉薄して見せた僕はただの拳に全てを込める。
「《
星戦のすべてを凝縮したこの一撃だけは、唯一奴に届きうる。
そう、全てはインパクトの瞬間に分かっていた。拳と体の間に、剣を割り込まれた。
分厚い鋼鉄の壁に、装甲車を激突させたような壮絶な衝撃だった。
拳を覆う黒が限界を告げるように軋み、刀身から迸る極彩色の雷電が腕を伝って全身を痺れさせる。だが、僕の殺意は、力ずくだ。
「ふっ……ははははははッ!?」
防御姿勢のまま、ダリウスの巨体が砲弾のように弾き飛ばされる。二メートルに迫る質量がヘリポートのコンクリートを無惨に削り飛ばし、粉塵を巻き上げながら十数メートル先まで吹き飛んだ。
「おいおいおいおい、思い切りがいいね」
とても、僕の目算が上手くいったとは言えない。吹き飛ぶ最中、男は空中で身を捻ると、巨大な魔剣を眼下のコンクリートへ深々と突き立てた。
――ギャリィィィッ! と強烈に鼓膜を劈く摩擦音と火花を散らし、分厚い床を何メートルも引き裂きながら、強引に後退の勢いを殺してみせたのだった。
全く、微塵も、致命傷ではない様子だった。
《超新星》を見舞ったはずの剣の刀身には、蜘蛛の巣のような深い亀裂が走っている。
しかし砕けない。むしろ再生している。
亀裂の奥から虹色の光が脈打ち、血を送り出す心臓のように鼓動し、そう、滞りなく血液が運ばれ――剣の再生が始まっている。
「報告通り、流石に強いな。……二ヶ月で《三ツ星》に至っただけはある」
興味深そうに剣の亀裂を眺めながら、男は呟く。犬歯を剥き出しに、滾る暴力を押し付けていた男の面影はそこにはない。何か、スイッチが切り替わったようだった。
そちらから攻めてこないなら好都合で、僕にはまだ《極点》が残されている。
「【極点α】:――」
「良い度胸だが推奨できない」
男は大きな手のひらをこちらに向けて言う。
「別に俺は、お前が戦闘のスケールを広げるのに付き合ってやってもいい。だが、これ以上の規模で破壊力を高め合うってんなら、そこのお姫様は死ぬね」
そう言って、ダリウスは自分の右側に、縄で柵に縛られている結姫乃を指さした。
皮肉気に笑い、
「それとも、戦いのためなら彼女の命なんてどうでもいい? それはそれで俺好みだけどさ」
「…………」
「良い子だ」
嗤っていた。
確かに許容できない。
彼女の命が喪われるという事態は、絶対に。
吹っ飛ばす目算だった。少なくとも簡単には帰ってこれないところまで。
想像以上に奴の巨体は持ちこたえた。
「俺も遊んでばっかりだと怒られるしな。ま、最初からこう要求することもできたんだが、星の機嫌を損ねるのはどうにも、よくねぇと思っていたんだが……」
ダリウスは僕を見て目を細めた。
「果たし合いでケリを付けようとしたら、どうにも俺の技量に疑問が残る。正々堂々勝負だなんて、俺の柄じゃないや」
「何を言って……」
「所詮、借り物の力って訳だわな」
吐き捨てるように言う。その表情は、何かが出来ると期待していて、結局何もできやしないと悟った中年のそれだった。
「大人しく、一太刀受けて死んでくれるか?」
ひどく億劫そうに、太い首をゴキリと鳴らした。先程までのギラギラとした闘争心は完全に鳴りを潜め、ただ淡々と業務をこなすだけの冷めた目になっている。
軋むような重い音を立てて、コンクリートから魔剣が引き抜かれた。自己修復を終え、再び不吉な虹光を脈打たせる巨大な刀身を、ダリウスは一切の気負いもなく無造作に構えた。
戦っちゃダメな相手だっている――。
誰かにそう言われていた気がした。
「僕の命はどうなってもいい。その代わり、結姫乃を開放しろ」
「へぇ、やっぱり」
男は笑った。
「自分の命より他人の命。――なるほどね、よく分かったよ。
もちろん、構わない。そこのお姫様の生死は仕事に関係ないし。“星に誓って”もいい。お前が死んでくれるなら、お姫様は無事に解放すると約束する」
……まさか、そいつの言い分を信用した、なんてことはない。所詮口約束、僕が死んだ後で幾らでも反故にできる。直感は信用できるといっているが、ダメだ。僕の根拠のない直感に、自分の命はまだしも、彼女の命なんて賭けられない。
だから、そう。
僕がダリウスに向かって歩む。
両手を挙げて、無抵抗を示したように。
そう、視線を僕に向けろ。僕だけに向けろ。
僕に集中して、それ以外見るな。
やっぱり僕は、お前に勝たなきゃダメなんだ――!
《溜めろ》――自分の身体自身に。星塊を。
凝縮する。スキルの拡大解釈。触手を溜めて――放つのと同様に。
傍から見ればそれは、萎んだようにも見えるだろう。無抵抗を意味するように、小さく、縮む。
《溜めろ》――無詠唱。出力は半減。悟られない。
こいつは許せないことをした。僕の命は勝手にすればいい。それは構わない。
問題は僕の大切な彼女に手を出したことだ。
《溜めろ》――唯一と言ってもいいほどの、僕の逆鱗だ。
大切な宝物だ。大切な、大切な。――世界で一番大切な。
目にもの見せてやる。
「――《
「そういう奴だと思ってたよ」
男は笑って、それから、一振り。
血が舞った。
自分の血を見るのは、久しぶりの事だった。
――――――――――――☆――――――――――――
月明かりが差していた。何者かに呼ばれた気がして、彼女は静かに目を覚ます。
血が見えた。たった今。恋人が、何物にも代えがたい月野初が、確かに、斬られていた。
身体が暑い。地獄の空気を浴びてるようだ。
灼熱。痛痒。自分の中の冷たい芯が、丸ごと、焦げていくのが分かる。
――私が。私が、私が、……私のせいで。
燃え滾るほどの激情が、魂の悔恨が、失意の感情が。
夜空の星々を輝かせ、結姫乃に機会を与えていた。
――私は、どうなっても構わない。
――だけど、彼だけは。
――月野初だけは。
ダメなの。絶対にこの世から失われちゃいけない。
彼が好きなの。だから私は。
「――これから先の白紙の未来を、私の全てで描いて見せる」
――――――――――――☆――――――――――――
目が覚めるほどの冷気が、ダリウスを襲った。
本能に突き動かされるがままに正体の方向に目をやれば、明白で、拘束を破壊した白雪結姫乃が、月光を携えて立っていた。脚光を浴びていた。男には自信があった。めっぽう、ツキには見放されている、という確信が。そもそも損な役回り。貧乏くじを引くのは、いつだって自分だ。
「死んだら恨むぞ畜生……!」
“依頼主”の顔を頭に思い浮かべながら、ただの剣を携える。
――ダリウスの《星戦》は、既に終了している。
自分を一時的に、“次のステージ”に連れて行ってくれる規格外の力も今はない。
今は、ただの一介の傭兵、人呼んで『その場凌ぎ』のダリウス――!
「――《
吹雪の中から声が聞こえた。
冬の頂点を思わせるほど、冷たく、底冷えする声だった。
――ありえない。
氷によって拘束されていく四肢を眺めながら、ダリウスは一人ごちる。
「月が見えてるのが、良くなかったかな」
それにしてもあり得ないことだが。
“アレ”が一個人を贔屓するなんて、全く、自分はツイてない。
抵抗できなくもないが――十分、依頼は達成しただろうと判断して、男は瞠目した。
「殺しはしないわ。あなたには、喋ってもらわないといけないことがたくさんあるもの」
そりゃそうだろうね、と男は薄ら笑いをした。
それにしても、まったく、星の贔屓もひどいものだ!
?の王者さんによる横槍。妾の月野が!!はやくどうにかしろ!!(ガチギレ)
星の皆さんが望まない結末の場合、なんか因果が歪むらしいです。
地味に月野くんが負けている。彼女を人質に取られてる精神デバフがやばかった。極点を使ってなんやかんやしてたらダリウスの星戦のタイムリミットが来てたかも。
ダリウスのおっさん:運負け。強いて言えば月が出てる日なのが悪かった。運が悪いが、大抵の依頼はこなす。ありとあらゆる災難に見舞われても生き残っていることから、『その場凌ぎ』の異名を持つ。今回も死なない。
これからも気が向いたら投稿しましゅ……。