禪院の王庫   作:ナムルパス

23 / 23
しばらくは、総司と真依は幕間で登場します


幕間 世界の底で

砂嵐が、地平を削っていた。

 

風は容赦なく、細かな砂粒が肌を打つ。

視界は白く濁り、数十メートル先すら定かではない。

 

それでも、総司は歩みを止めなかった。

 

外套の裾が煽られ、

その下で、微かに金属が触れ合う音がする。

 

王庫に収められた呪具ではない。

現地調達の、使い捨てに近い道具。

 

(……この辺りで間違いない)

 

地形。

風の流れ。

呪力の澱み。

 

どれもが、同じ一点を指していた。

 

総司は足を止め、地面に視線を落とす。

 

砂に覆われた何もない場所。

だが、呪力の“重さ”だけが違う。

 

(埋めた、というより……捨てたか)

 

大切に保管されたものではない。

役目を終え、放置された兵器。

 

「……掘るか」

 

呟きは、風に掻き消えた。

 

次の瞬間、呪力が走る。

 

地面が内側から崩れ、

砂と土が、まるで水のように流れ落ちていく。

 

派手さはない。

爆ぜる音もない。

 

壊すのではなく、道を作る。

 

数分後、地下に眠っていた構造物が姿を現す。

 

石造りの回廊。

装飾は乏しく、実用一点張り。

 

(……古いな)

 

少なくとも数百年。

だが、呪力の残滓だけは、妙に新しい。

 

祈りの場ではない。

墓でもない。

 

(量産拠点、か)

 

総司は、慎重に中へ入る。

 

床に刻まれた符。

壁に埋め込まれた呪符。

 

どれも、現代基準では歪だ。

 

精度が低い。

だが、その分、殺意だけは露骨。

 

(人を守る発想が、最初からない)

 

解除はしない。

破壊もしない。

 

ただ、踏まない位置を選び、

呪力の流れを避けて進む。

 

奥へ行くほど、空気が重くなる。

 

やがて、回廊は小さな空間に行き着いた。

 

中央に、石の台座。

その上に、短剣が一本。

 

刃渡りは短い。

装飾は皆無。

 

だが――

触れなくても、重さが分かる。

 

(……1級か)

 

総司は、短剣を手に取る。

 

瞬間。

 

視界が、僅かに歪んだ。

 

血の匂い。

叫び声。

恐怖。

 

守るためではない。

勝つためでもない。

 

ただ、奪うためだけの殺し。

 

「……くだらない」

 

感想は、それだけだった。

 

短剣を、虚空へ放る。

 

次の瞬間、

空間が“開く”。

 

目に見えないはずの王庫が、

確かに、そこに在る。

 

短剣は、吸い込まれるように消えた。

 

――収納、完了。

 

総司は、軽く息を吐く。

 

(これで、一つ)

 

王庫は、空ではない。

だが、満ちてもいない。

 

世界には、まだ無数にある。

 

価値のある呪具。

管理されず、

封じられず、

いつか誰かを殺す“力”。

 

それらを、放置する理由はない。

 

「……次は」

 

総司は、砂嵐の向こうを見る。

 

「ヨーロッパ、か」

 

呪霊よりも、

呪具の方が厄介な土地。

 

だが、問題はない。

 

彼にとっては、どこも同じだ。

 

同じ頃。

 

遠く日本では、

一人の少年が、呪いと共に歩き始めていた。

 

その存在を、総司は知らない。

 

知る必要も、ない。

 

今はまだ――

道が、交わる段階ではない。

 

世界は、広い。

そして、底は深い。

 

総司は、再び歩き出した。

 




高評価投票ありがとうございます!
やる気に繋がります!
低評価がついて少しやる気が無くなっていたので、高評価して頂いて嬉しかったです 

低評価の方も出来れば、理由などお聞かせくだされば次の執筆で参考にさせていただきます!
感想欄にお願いします!

また、誤字報告もありがとうございます!
自分では気づかないところを指摘していただけるので助かります!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

赤血操術の可能性を追い求めたい!(作者:甚一くんは…髪と眉毛がアカンわ)(原作:呪術廻戦)

良くあるトラックで死亡した主人公は、呪術廻戦の世界に転生してしまう。▼死の危機によって術式を自覚した主人公は頑張って術式を鍛えることにした。▼って感じの二次創作です。もしかしたら恋愛もするかも。


総合評価:1288/評価:7.64/連載:6話/更新日時:2026年04月11日(土) 00:01 小説情報

魔法科高校の劣等生 四葉の火の鳥(作者:ペンギン豚)(原作:魔法科高校の劣等生)

世界とは理不尽である。▼少年はそう思った。だからこそ人を救い続けないといけないと感じていた。▼物語は囚われの少女を少年が救出するところから始まる。▼※初めての投稿になります。


総合評価:608/評価:5.96/連載:63話/更新日時:2026年06月17日(水) 00:45 小説情報

「15分の怪物」(作者:熊々)(原作:ブルーロック)

世界最強の覚醒は、十五分限定。▼そして、覚醒条件は——チームが二点ビハインドで残り十五分。▼それ以外の彼は、ただのサボり魔である。▼覇黒千歳、十六歳。前世は死にゲー廃人ゲーマー。コントローラーを握ったまま命を落とし、気がつけばサッカーが得意でもないガキの体に転生していた。本人いわく、「理不尽な世界に放り込まれたら、攻略するしかない」。▼ 彼の流儀はひとつ。…


総合評価:45/評価:3/連載:9話/更新日時:2026年04月28日(火) 22:25 小説情報

白翼の機械人形になった転生者は海賊(人助け)をしながら、世界を見守る。(作者:キング・クリムゾン!!)(原作:ONE PIECE)

とんでもなく長い話にする予定なのでどうかよろしくお願いします。


総合評価:543/評価:7.1/連載:20話/更新日時:2026年07月04日(土) 20:44 小説情報

魔法科高校の熱を愛する者(作者:パクチーダンス)(原作:魔法科高校の劣等生)

呪術廻戦の秤金次っぽいオリ主を登場させました。


総合評価:4301/評価:8.28/連載:17話/更新日時:2026年05月22日(金) 20:30 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>