日常のホロライブSS(一話完結の短編集)   作:Sano / セイノ

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季節は夏、戌神ころねと猫又おかゆがチュッチュする話、そんなホロメンたちの日常の一コマ。楽しんでいただければ幸いです。



戌神ころねのキスカウンター

それは唇同士が僅かな時間触れ合うだけのキス。

 

 

「ん、ご馳走様」

「……もう、また?」

やわらかな唇をぺろりと舐めとり、猫又おかゆは蠱惑的な笑みを浮かべた。

 

 

今日はこれで9回目である。

戌神ころねは不意打ちでキスを交わしてくる幼馴染の猫の少女を見つめ、大きく息を吐きだした。

 

 

「うん。だって、ころさんとチューすると元気がもらえるから、いっぱいしたいな。ころさんは僕とチューするのはいや?」

悪戯っぽい笑みで覗のぞき込むおかゆは、もうころねの答えを知った上で尋ねてくるのである。

 

 

〝……嫌じゃない〟と、犬の少女は消え入りそうな声で呟いた。それを猫耳は拾っているはずなのに、おかゆは目を細めて再度促すのである。

 

 

「ねえ、もっとはっきり言ってほしいな」

「おがゆとのキスは好き!」

そうして、ころねは口に出さざるを得なくなる。

 

 

「ふふ、僕もだ~い好き」

上機嫌で尻尾を揺らすおかゆの隣で、犬の少女は気恥ずかしさに服の裾をぎゅっと握って赤面してしまうのである。

 

 

「ねえ、もうミオしゃやフブちゃんが戻って来ちゃうよ」

今も舞台ではゲーマーズのイベントが進行しているのだ。この控室に一曲終えた白上フブキや大神ミオが、いつ戻ってくるのか分からないのである。

 

 

そう困り顔で諭すころねに、逆におかゆは嗜虐心が刺激されたように笑みを深める。

「ころさん、二人に見てもらいながらチューしたら、もっと気持ちよさそうじゃない?」

おかゆはころねの手を握って艶めかしく指を絡めると、耳元で囁いた。

 

 

「~~~~」

このちょっとした睦むつみ合いだけで、ころねの胸は早鐘を打つのである。

もうそれ以外は考えられなくなり、早くも自身がもうおかゆの求めを受け入れる態勢になっていることに気づいてしまう。

 

 

ドタバタと近づいてくる足音を背に、おかゆが唇を寄せる。

蛍光灯に照らされた二人の影が重なった。

 

 

互いの唇の柔らかさを確かめるように触れ合い、おかゆは悪戯っぽい笑みを残すのである。

だめだ、この幼馴染はエッチ過ぎる……

 

 

「おかゆん、ころね。交代だよ~」

扉を開けて顔を覗かせたフブキに、おかゆは何事もなかったかのように微笑んでいる。一方、ころねは自身が変に赤くなっていないか不安でたまらなかった。

 

 

「じゃあ、行こうか。ころさん」

「う、うん」

おかゆに手をとられた犬の少女は、もうそれだけで体が火照ってきてしまうのである。

 

 

 

× × ×

 

 

 

腰掛茶屋でかき氷を堪能した二人は、スーパーマーケットに足を向けていた。

これからゲーマーズイベントの慰労を兼ねたご飯会がミオの家で開かれるのである。そのための、足りない食材の買い出しなどを二人は請け負っていたのである。

 

 

ちなみに、このかき氷で有名な茶屋に大空スバルが後輩のハコス・ベールズを連れてきたのはまた別の話。

 

 

横を歩くころねの袖そでをつまんで引き留めたおかゆは、そのまま路地裏に犬の少女を導いた。

「ころさん、またしたくなっちゃった~」

そして、またしても彼女はキスをせがむのである。

 

 

「……もう今日は15回もしたから駄目だよ」

〝そんなぁ〟と悲しげに猫の少女が目を伏せると、結局折れるのはころねの方。

 

 

「ねぇ、あと三回だけ……だめ?」

「しょうがな——」

肩をすくめて嫌味の一つでも言ってやろうとした矢先、ころねの口を束の間おかゆの唇がふさいだ。

 

 

挨拶代わりのような触れ合うだけのキス。

「ふふふ、これで16回だね」

綺麗な笑い声を上げながら、今度は唇同士を啄むようにおかゆはころねに口づけをするのである。

 

 

「……17、18回。ほら、おしまい」

ころねが素早く離れたせいで、終わりを告げられた睦み合い。

おかゆは不満げに口を尖らせるが、それはやられてばかりのころねも同じである。

 

 

そして、何かに気づいたようにおかゆが薄く笑った。

「ころさん、今何時?」

「……えっと17——」

 

 

「じゃあ、18まではあと一回だね」

蠱惑的な笑みを浮かべて猫の少女が唇を寄せた。

 

 

その企みに気づいて、ころねはきっと眦を吊り上げた。

仕返しとばかりにここぞと勝負をかけたのである。

 

 

おかゆの唇を割り開いて、ころねの舌が猫の少女の口腔に侵入する。

「んむ!?」

くぐもった声で目を大きく見開いたおかゆ、彼女が先ほどまで食べていた抹茶のかき氷の味がした。

 

 

驚きに体を離そうとする猫の少女、だがそれをころねは許さなかった。

その細い腰に手を回してグッと引き寄せ、二人はピタリと体を合わせたのである。すると、おかゆが使っている柔軟剤の甘い香りがころね鼻腔に広がるのだった。

 

 

ころねの舌がおかゆの歯を一つ一つ丁寧になぞり、そして遂には舌を絡めとった。

舌同士が激しく絡み、唾液を通して互いの熱を交換し合う。

 

 

ころねの舌が艶めかしい軌跡を描くたびに、おかゆはぴくりぴくりと身を震わせる。

 

 

「ん……んぅ」

猫の少女が何かを言おうとすることさえ、ころねの舌の動きが封じてしまうのである。

そして、おかゆが一度大きく体を震わせると、抗おうところねの腕をぎゅっと掴んでいた力が抜けた。

 

 

いつしか蕩けたように、猫の少女も目を閉じてされるがままになっていた。

口元から溢あぶれた唾液が滴したたり、おかゆの鎖骨のくぼみをなぞって垂れる。

 

 

長い長い口づけから、ぷはっところねは口を離す。

まるでその熱量が残した余韻かのように、二人の唇を結んだ唾液の糸が光った。

 

 

肩で息をするおかゆは、紅潮した顔で目を潤ませる。

「はぁ、はぁ。ころさん……すごい」

 

ころねはただやられっぱなしの、キスの回数を数えるだけの犬ではないのである。彼女は勝ち誇ったかのように、得意気にむふぅと鼻息を荒げるのだった。

 

 

「うぅ、体に力がはいらないよぉ~」

「だ、大丈夫? おがゆ」

へたり込んだ猫の少女は、助けを求めるように手を伸ばす。ころねはその様子に慌てたように目を丸くした。

 

 

結局、おかゆが歩けるようになるまで介抱していたころね。そうして二人はご飯会にまんまと遅れていったのである。

 

 

 

× × ×

 

 

 

ミオの家でのご飯会。

〝なんか唐揚げ少なくない?〟とのおかゆの指摘にフブキは顔を赤らめた。

お腹を空かせて待っていた狐の少女が、唐揚げを先に食べてしまったのは、また別の話である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

おかころはいいぞ

 




(今回と関係する話)
大神ミオの唐揚げ算 https://syosetu.org/novel/401404/5.html
大空スバルの日本語教室 https://syosetu.org/novel/401404/6.html
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