天を継がされたニセモノ   作:ほろろぎ

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最終話 継がない者

Cast off(キャスト・オフ)Change Beetle(チェンジ・ビートル)

 

 

 俺のもとから奪い去ったゼクターを使い、桐崎さんの従者でありワームの元締め代行を務めているであろう男──クロードは、仮面ライダーカブトへと変身を果たした。

 ゼクターを強制的に従えさせている影響か、()()()()()()()は俺がなれなかったライダーフォームにまで進化している始末……。

 

 

『…………』

 

 

 レッドアイのカブトは無言でクナイガン・クナイモードを構え、ゆっくりと俺のもとへ近づいてくる。

 ライダーになれない俺にはもはや、桐崎さんをどうこうするどころか、自分の身を護ることすらもできない。

 

 一度は死んだ身といえ、もう一度死ぬのはいやだなぁ……せっかく隕石もなんとかなるかもしれないってのに……。

 なにより、桐崎さんを守れなくなるのは……。

 

 ……そうか、俺はなんだかんだで、やっぱり彼女のことを守りたかったのか。

 君には涙は似合わない、なんて古典的なセリフがあったけど、桐崎さんにも涙は似合わない。彼女には笑顔が一番ふさわしい。

 その思いが炉にくべられた(まき)となって、ここで黙ってやられてたまるか、と闘志が再燃する。

 

 

『なんのつもりです?』

 

 

 拳を構える俺に対して、心底不思議そうなクロードの声が、カブトの仮面越しに響いた。

 

 

「最後まで抵抗することにしたよ。無駄でもなんでも……俺はやっぱり、桐崎さんを守りたいから」

『おやおや、お嬢に惚れたとでも? 人間がワームに?』

「正体がなんだって、そんなのはどうでもいいんだ。だって、今まで一緒にいて楽しかったから。それが短いあいだでも、俺たちはもう……友だちだから!!」

 

 

 カブトが、振り上げたクナイを降ろした。

 それは人間の目には止まらない速さだった。

 

 けれど刃は、俺の眼前で止まる。

 一体のワームが、カブトの攻撃を止め、俺を守った。

 

 

「……桐崎さん?」

『お嬢!?』

 

 

 ハチを思わせる怪人体──桐崎さんが変異したビーワームが、クロードの、カブトの腕にしがみついている。

 

 

『ごめん、クロード……私、ワームだけど……あんたたちと一緒にはなれない』

『なにを仰っているのです……!?』

『だって、草陰くんや学校のみんなといて、私も楽しかったから……みんな私の友だちなの! 誰も殺させたくないッ』

 

 

 ビーワームが桐崎さんならではの怪力で、カブトを部屋の反対側まで投げ飛ばした。

 気まずげに、俺に視線を向ける。

 

 

『私、こんなだけど……まだ友だちでいてくれる……?』

「当然だよ、今さら縁は切れないって」

 

 

 壁に叩きつけられたカブトが立ち上がって、俺たちに怒りをむける。

 

 

『正気ですかお嬢、人間などに加担するなど……!』

『私はニセモノの桐崎千棘だけど……この気持ちだけはニセモノじゃないから』

「俺もそうだ……本来のカブトに選ばれた者じゃない。天の道もいけないし、総てどころかなにも司れないけど……ニセモノなりに彼女を、そしてこの世界も守ってみせる!」

 

 

 部屋の壁を突き破って、一つの物体が飛来した。

 黒いメカニックボディに赤と金のパーツが混在する、それは──。

 

 

()()()()()()()()()()! 試作品だから、この屋敷の研究室に保管されてたのか……?」

 

 

 原作で、すべてのゼクターのプロトタイプとして設計されていたコイツが、今俺のもとへ……。

 ダークカブトゼクターは俺を、俺の意思を認めたように、自分から俺の手中へと収まった。

 

 

「……変身」

Change Beetle(チェンジ・ビートル)

 

 

 光沢を帯びた黒いライダーアーマーが全身をおおい、俺は『仮面ライダーダークカブト』のライダーフォームへと姿を変えた。

 

 桐崎さん──ビーワームが俺のとなりに並び立ち、カブト・レッドアイと対峙する。

 

 

『……巣立ちの時、ですか……』

 

 

 決意の固まった少女を見てクロードは、あきらめたようにそうこぼした。

 

 武器を構えるカブト。

 俺たちも対応の姿勢をとる。

 

 

Clock Up(クロック・アップ)

 

 

 俺とクロードはベルトのサイドボタンを叩き、桐崎さんは備わった能力で加速をはじめる。

 本来の時間の流れを逸脱した超高速の世界へ、俺たちの体と意識は突入していった。

 

 

 

◇ ◆ ◇ ◆

 

 

 

「みんな、おはよう~!」

 

 

 前日に()()()()()()が起きたあとだからこそ、私はあえていつも通りの振る舞いで登校し、クラスのドアを開けた。

 

 

「千棘ちゃん!?」

「桐崎!?」

 

 

 ワッとクラスのみんなが私の所へ駆けよってきた。

 小咲ちゃんや一条が、まくし立てるように言葉を投げかけてくる。

 

 

「ニュース見たよ! お家が火事になったんだって!?」

「どうやら怪我とかはなさそうだな。いったい、なにがあったんだ?」

「い、いやぁ~……ちょっとその、ガスが爆発した?みたいな? それでうっかり屋敷が全焼しちゃった、みたいな~?」

 

 私は目を泳がせながら、大雑把に説明した。

 もちろん本当のことは伏せてだけど。

 

 ……昨日は本当に大変だった。

 カブトムシのようなスーツを着たクロード相手に、同じように黒いスーツ──『ますくどらいだーしすてむ』だっけ?──を身に着けた草陰くんと一緒に戦って……。

 その中で、屋敷にあった「隕石を引き寄せる機械」を壊したんだ。

 そのせいで出火した火の手が屋敷にまわって、大火事になっちゃったのよね……。

 

 おかげで地球からは完全に隕石が離れていく()()だけど、あとは運に任せるしかないわね。

 当面の脅威は(はら)えたんだし、よしとしましょう。

 

 

「……そういや、総二のやつは? 普段ならとっくに登校してるころなんだが」

「あぁ~、そういえば草陰くん、ちょっと体調が悪いから、しばらくお休みするって連絡があったなぁ~」

「え、そうなのか? 珍しいな」

 

 

 一条にそう言ってごまかす。

 ……草陰くんは今、()()()()にいない。

 っていっても、別に死んでしまったって訳でもない。

 

 あの時、私とクロードと黒いカブトの三人が起こした超加速(クロックアップ)は、共鳴して増幅しあった結果……「超絶加速(ハイパークロックアップ)」とでも言うべき現象を起こした。

 そして……彼一人だけが、その時間の渦に飲み込まれてしまったのだ。

 

 おそらく、草陰くんは……過去にタイムスリップしているんだ。

 私の薄れていた過去の記憶が、ぼんやりと思い出される。

 

 十数年前、どこかの高原で──ワームの私は、本物の桐崎千棘と対面した。

 お互いまだ子供の姿で、私は怪人の本能に従って、オリジナルの千棘(わたし)をコピーした。

 そして……その前に、時空を超えて彼が現れたんだ。

 

 

(草陰くんは、怪人(わたし)が本物の命を奪うっていう凶行を止めてくれた。そして、オリジナルの私とコピーの私がいる、二つの世界が生まれた……)

 

 

 なんでそんなことに?って疑問はあるけど、それもクロックアップで時間の流れがあやふやになった影響なんだろう。

 

 

「どうにか上手いところに収まった……んだよね……?」

 

 

 自分の疑問が誰にも聞こえないよう、小さくつぶやく。

 窓の外、空は快晴。

 太陽の横にある隕石の(かす)んだ光も、なんだか今までより離れて見えるような……。

 

 

「なんにしても、無事でよかったよ~」

「だなぁ。総二も体調がよくなったら、今度はみんなでどっかに遊びにでも行こうぜ」

「それ、いいわね」

「どこ行く? 俺はあそこのテーマパークなんか……」

 

 

 小咲ちゃんと一条、るりちゃんと舞子くんが、いつものように親密な雰囲気でワイワイと騒ぎはじめて……やっぱりいい関係ね、この四人。

 みんなの姿を横目に、私はまた窓の外の景色へ視線を動かした。

 

 

「私もいつか……人間みたいに誰かに恋とかしちゃったり、できるのかな……」

 

 

 もし、そういう日が来るのなら……その時、隣にいて欲しいのは──。

 そよ風の中に、小さく虫の羽ばたくような、そんな音が聞こえた気がした。




 なかなか執筆時間がとれず最後までお待たせしました。
 その割に文字数は一番少ないというね…。

 今回ラブコメ原作と特撮ヒーローもののクロスで書いてみて、この組み合わせでやるのはやっぱちょっと無茶だったかなと次第に気づきました。

「でも楽しかっただろ?」 まあね~(BRJK)

 一度試してみて勉強にもなったし、またこんな感じでなにか非バトル系作品と特撮のクロスやってみたいですね。
 なんならニセコイとライダーの組み合わせでまだネタになりそうなのあるし…。
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